水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

2023-01-01から1年間の記事一覧

他人の空似、似ない兄弟

オモダカ属Sagittariaに関しては以前もこのブログで取り上げているのだが、今回はマメ知識的に、Sagittariaのザックリとした系統に関して書いてみようと思う。 水生園芸、および野外において目にする機会があるオモダカ属を列記してみよう。 オモダカ Sagitt…

黎明を拓け

ここ最近、ヘラオモダカの話をよく見かけるので便乗してみる。 ヘラオモダカは極めて変異が大きく、殆ど線状の葉をもつものからかなり幅広の有柄の葉をもつものまで、サイズも掌に載るような個体ばかりのところもあれば、50㎝を超えるのが基本といったところ…

バルデリア Baldelliaについて

Baldelliaはヨーロッパ南部を中心に分布する、比較的小型のオモダカ科植物である。Cook (1990) はこの属をEchinodorusに含めたが、のちの研究ではLuroniumおよびAlismaとの関連が示唆され (Arrigo et al., 2011)、Echinodorus(およびAquarius)との関連は現…

ツヤハダゴマダラカミキリに交尾しようとするゴマダラカミキリ

珍しいものを見た。 この組み合わせは既報があるのでブログに載せるのみとしておく。https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202202217790516752 ペアになることはあるものの、通常は交尾には至らないようではある。ただここではツヤハダがゴマダラの3…

サジオモダカ属 Alismaについて

サジオモダカ属Alismaはオモダカ科Alismataceaeのタイプ属(科の基準となる属)である。古い属によくあることとして、Alismaにはとても色々な種が含められてきた。たとえばLuronium natansが代表的である(このトンデモ水草に関してはそのうち書きたい)。 …

タウコギに関して

タウコギ。 名前を聞いても姿が浮かばない植物ではなかろうか。 田んぼに生えるウコギ・・・と聞いてウコギの葉が浮かぶ人はなかなかいないと思う。しかしまあ、実物を見れば両者の葉は確かによく似ている。 タウコギは日本でも数少ない、水生キク科であり、…

ササバモのこと

日本最大の水草と聞いて思い浮かぶのは、ササバモである。 わりかしありふれた種だが分布にやや偏りがあるという話もちらほら聞き、興味深い。また水質汚濁に強いようなイメージがなんとなくあるものの霞ケ浦をはじめとした水草にとって汚染がきつくなった水…

餌でソイルが泥化する?

面白い事例を目撃したので書いてみようと思う。 水草水槽において「ソイルが潰れて泥化する」という話をよく聞く。 有名な現象だが、しかしながら泥化する原因に関してはあまりよくわかっていない。 水圧で粒が潰れるとか、魚の糞がたまった成れの果てだとか…

原種温帯スイレンについてのざっくりとしたメモ

ごく簡易ながら、原種温帯スイレンに関してのメモを書いておこうと思う。 温帯スイレンはNymphaea亜属及びその交配種を指す 温帯スイレンはほぼすべて、Nymphaea subgenus Nymphaeaに属する。 この亜属に属するのはヒツジグサやN. albaなどが有名である。 Co…

ヒツジグサ節 Nymphaea sect. chamaenymphaeaについての、簡単なメモ

ヒツジグサは日本の水草の中でも特に知名度が高く、しかし遭遇頻度は少ないものである。さらに輪をかけて、その実態は不明と言ってもいい。 そもそもヒツジグサにどの学名を充てるべきなのだろうか。 日本国内に自生するうちの、どの原種スイレンをヒツジグ…

ヒルムシロについて

朝ドラ「らんまん」にヒルムシロが登場したためか、空前のヒルムシロブームである。 ヒルムシロ。これほど「名前を聞くが実物は見かけない」水草もなかなかないかもしれない。栽培は非常にしやすく、とくに屋外では簡単である。水鉢になにか浮葉植物を浮かべ…

アマゾニア終売だってよ

アマゾニアが終売らしい。 当方もアマゾニアはわりと使っているほうだったし、トニナの栽培などでは1stチョイスといってよかったので残念な限りである。特に、水質が劣悪な地域において被害が激甚だろう。アマゾニアは他社のソイルと比較してそうした環境で…

ビオトープに用いる水草

ビオトープに用いる水草はどんなものがよいですか? そういう質問について、解説しようと思う。 「○○は育てやすい、××は増えすぎる…」といったものはよく聞くけれども、それ以上に踏み込んだ内容はなかなかお目にかかれない。 但し、その方が意味するビオト…

ビオトープとメダカと水生園芸

ビオトープに関する書籍が話題となり、ビオトープ・ブームが来ようとしている。 著者が人気な方であったこともゆえんのひとつではあろうが、装丁や内容も程よくライトでかつ抑えるところは押さえている、好印象な本であった。新しいことを始めるには「やって…

忘れ去られた水生穀物、葟子

狩猟採集生活に注目が集まっている。 野草採取系Youtuberや狩猟系Twittererが人気を集め、とんでもないようなゲテモノを含めて様々な動植物が食卓に上る(?)ようになった。 これは日本の不景気による文化衰退および、農業生産力の低下が末期的となり、つい…

簡単かつ安価な水草水槽を目指して

水草を趣味とする人間は非常にすくない。 時折、(あくまで水草関連で知り合った人ではなくて)水草も買いますという人に会うが、そうした人のほとんどは「数週間でダメになるので新しく買ってくる」というパターンであり、ちゃんと育てられている人に会うこ…

日本産水草が好きなわけではなくて

私を日本産水草の人と思っている人が結構いると思うけれど、あくまで私が好きなのは水草であって、そこにロカリティはさほど関係がない。熱帯の水草があればそっちのほうが、もちろん好きだ。南米やアフリカ、インド、ヨーロッパなどなど、海外の水草は本当…

ツツイトモ

狭葉性ヒルムシロ属の紹介、第二弾はツツイトモにしようと思う。 ツツイトモは絶滅危惧II類とかなり高ランクに位置付けられているものの、出会う機会がそこまで少ないかと言われるとそうでもない。皇居のお堀や井の頭公園の池などに出現して話題になることも…

誤った名称で市販されていたヒゲスジヌマハリイ

ヌマハリイ類を探してGWは粘ったのだけど、よくわからない幼弱個体と残りはコツブヌマハリイとオオヌマハリイだった。(スジヌマハリイやヒメハリイ、クロハリイあたりが見たかったのだけど…) 意気消沈しながらホムセンの熱帯魚売り場をぶらぶらしていると……

誤った名称で市販されていたヒゲスジヌマハリイ

ヌマハリイ類を探してGWは粘ったのだけど、よくわからない幼弱個体と残りはコツブヌマハリイとオオヌマハリイだった。(スジヌマハリイやヒメハリイ、クロハリイあたりが見たかったのだけど…) 意気消沈しながらホムセンの熱帯魚売り場をぶらぶらしていると……

ウォータースプライトは何者なのか

ウォータースプライト、アメリカンスプライト、ベトナムスプライト、ラオススプライト…さまざまなスプライトがある。ウォーターファンもまた、スプライトの一種であるし、日本の水田で普通にみられるヒメミズワラビもまた、どうみてもスプライトである。さて…

ミカワスブタと呼ばれている植物について

栃木県においてミカワスブタと呼ばれている植物がある。かれこれ見つかってから20年以上そう呼ばれているし、そう呼ぶことに納得がいっているので、私もそれに準じてそう呼んでいる。 分布域ははっきりしていて、その種だけが多産する地帯があり、その周辺部…

春の微細水草たち

3月後半から5月初めにかけて現れる微細な水草たち。春先に水が引くと水際に出現する。 気にしてみると微妙に必要とする条件が違う様で、面白い。 アズマツメクサ 条件は「20度前後で適度な湿度がある裸地」と思っている。発芽は水上で出るため、水が引いてす…

イトモ Potamogeton berchtoldii

最初に紹介する狭葉性ヒルムシロ属はイトモである。 イトモほど誤って理解されている水草も多くはない、と言いたいが水草は大抵誤って理解されている。そもそもネーミングセンスが最悪である。イトモは確かに細いが、糸のよう細葉系ヒルムシロ属はミズヒキモ…

狭葉性ヒルムシロ属の混沌

狭葉性ヒルムシロ属こそ最もわけのわからない水草であり、身近に潜む水草最大の闇である。 狭葉性ヒルムシロ属について なぜ狭葉性ヒルムシロ属は混沌なのか? ・形態がよく似ている ・花と果実が特徴に乏しい ・条件により大きく形が変わる ・花が咲かない …

本物のポタモゲトン ガイーについて

ポタモゲトン ガイーとして流通している水草がある。 しかしながら、流通する水草は真のPotamogeton gayiとは大きく異なるものである。 真のP. gayiはFlora neotropicaの図を見る限りヤナギモというよりもセンニンモに似た植物で、葉は3.2~6.5㎝×2.5~4.5㎜…

「新種」を買う前に

新種、魅力的な響きかもしれない。 少なくとも、アクアリウムや珍奇植物、ジメジメ系業界においては新種!ほど客の興味を引く売り文句はないようにすら思える。 しかし、私はそれがひじょうに腹立たしく思えて、反吐が出るほど嫌いだ。 私は科学者ではないが…

ワイルド品に関して

ワイルド品、というものに関する印象が気になっている。 先日も南西諸島での野生生物の採集・販売行為や、南アフリカの生育に何百年も要する砂漠性植物の乱獲が話題になったところであるが、日本において「ワイルド品」はどのように認知されているのだろうか…

世界最大の水草は何か?

世界で最も豪華な水草はやはり、オオオニバスだろう。さすがに直径3mにもなる円形の葉を何枚も、場合によっては何十枚もつけ、巨大な花をつけられては太刀打ちはできまい。オニバスもときに直径3m級にもなるというが、花が小さいのでひとまず勝者はオオオニ…

水草レイアウトについて

水草を楽しむうえでもっとも有名なのが、水草水槽であろう。 はじめに、水草水槽と水草レイアウトは同義ではない。水草水槽とは水草を育てるための水槽であって、水草レイアウトは水草で作った芸術である。だからストック水槽も立派な水草水槽であるし、ナヤ…