水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

水草オタクの海洋博公園探訪記

沖縄の、美ら海水族館で有名な海洋博公園に行ってきました。

今回は海洋博公園でみられる水草についてレポートしてみようと思います。思ったよりかなり多種多様で、へたに沖縄を走り回るよりもいろいろな水草を観察できます。しかしその多くは意図的に展示されているか、かなり怪しいものが多いのでそのうち除草されたりしてなくなってしまう可能性もあります。また、季節によってほかの水草が出現する可能性は大いにあります。

まずは美ら海水族館

リュウキュウスガモ Thalassia hemprichii

美ら海水族館では実生もやっているのだとか。

ちょうど公式ブログが更新されていました。

【リュウキュウスガモを育ててみた】 | 美ら海だより | 沖縄美ら海水族館 - 沖縄の美ら海を、次の世代へ。-

こんなに大きな種子がつくのか、ほぼ胎生種子みたいなものか、と気づきが大きいです。

私は海草がとても苦手です。沖縄に行く際は海だけは見ないぞ、と思いながら行くのですが、毎回チラ見してよくわからないな、となっています。(まじめにやれ)

今回も、展示水槽の前でこれらがすべてリュウキュウスガモなのかリュウキュウアマモが混じっていたりしないのか、と自信を持てずにいました。(栽培条件なのと株元が埋もれているので余計わかりづらい)しかしリュウキュウアマモはヒルムシロ科(ベニアマモ科を分ける意見もあるがどちらにしろ近縁)、リュウキュウスガモはトチカガミ科です。水草としてもっとも洗練されたグループである両科が見分けのつかないほど似た姿になっているのはとても興味深いことです。

さて、これは展示されていたものに混じっていたもの…葉が細く、別種ですよね。いかんせん葉しか見えなかったので自信がないですが、コアマモあたりでしょうか。ウミジグサという線もあるかと思ったのですが。

 

苦手苦手と言っていないで精進しろよ、と感じさせられた水槽でした。

うーむ、修行せねば…。

 

さて、水草の中でも一番の苦手分野を通り越したので一気に筆が軽くなりますね。

 

沖縄の水草展示。

ウリカワ S. pygmaeaとして展示されていましたが、どうもS. subulataだと思います。開花させて要検証でしょう。う~む、おそらくこれは沖縄で採集された個体を展示するというコンセプトの水槽ですよね…。また悩みが増えてしまった…。

今回の沖縄行きではS. subulataやS. pygmaeaを確認することはありませんでしたが、今後行く際があった場合はかなり警戒しながらあたってみます。


クロモ Hydrilla verticillataとオギノツメHygrophila ringensです。

日本のクロモは複数種ありますが、未発表のためあまり深入りしません。各種の区別方法も定量的でないうえに生態の差が重要なようなので、語るのが難しいのです。あけたらあけたでパンドラの箱で大混乱が起こること間違いなしなので、ひとまずゴミ箱分類群としてクロモと呼んでおきましょう…。

オギノツメも南方のものを含めれば相当様々なものがあり、クロモと同じくカオスを極めているので、沖縄の個体群がどのようなものなのかは興味深いです。あぁ、陸上で見てみたい…。奄美では見ていますが、沖縄ではまだ見れていないんですよね。

ヒメシロアサザですね。ヒメシロの沈水葉はとても貧弱で分厚く、やはり水面で生育するものだと思います。西表島の葉がやや長めで斑が綺麗に入る系統はときどき園芸流通していますが、同じ八重山でも石垣の個体は葉の斑がはっきりせず丸めの浮葉だったりするようですね。パネルの写真は丸くて斑がはっきりしない方に見えます。

この類は浮葉の形や色が一見特徴的でも、個体差レベルのほうが種間レベルより大きいです。となると、あの葉の多様性はどのように制御されているのか気になるな…などと見ながら考えていました。それにしても、沖縄では無農薬に近い水田が結構あったりして、ナンゴクデンジソウなどがわりと残っているのにヒメシロがかなり珍しいというのは不思議です。

この水槽にはPotamogetonの一種…ヒルムシロらしきものも展示されていました。アイノコヒルムシロっぽい個体でしたが、特に南方の個体は交雑を含めてかなりカオスであると考えられるので深入りはしません。帰ってきて写真を確認してみたら壊滅的にピンボケでした。ただ、沖縄にヒルムシロがいるのは確実です。

 

さて、美ら海水族館から出て海洋博公園を散策してみます。

ヤナギバルイラソウですね。ここではまったく水辺ではないところに生えていましたが、九州~沖縄の水辺は本当にこいつばかりで、シュロガヤツリとヤナギバルイラソウでほぼ8割を占める印象です。特定外来生物に指定すべきレベルでしょう。

水辺ゾーン。熱帯スイレンやシュロガヤツリ、ウォーターカンナなどが植栽されています。

映り込んでいる有茎草はアメリカハマグルマ Sphagneticola trilobataです。



ムカゴ種を中心にBrachyceras亜属の様々な熱帯スイレンが植栽されていましたが、実生も多く品種の特定は困難です。沖縄の環境なら一年もあれば開花株になってしまうでしょう。

ウォーターカンナThalia dealbataです。海洋博公園内にある熱帯ドリームセンターには近縁のThalia geniculata `ruminoides`が植えられているので、見比べるいい機会です。

シュロガヤツリCyperus alternifoliusです。沖縄では水辺でも陸上でも悪魔的なまでに増殖し、たいへんなことになっています。積極的に駆除することが望まれるでしょうが、実生や断片からも再生するため困難を極めるでしょう。茎は異常に頑丈で他のカヤツリグサ科とは比較にならないほど硬いので、繊維作物としての可能性はあると思います。


こちらはサイズこそ小さめですがカミガヤツリ Cyperus papyrusです。シュロガヤツリとちがってこちらはあまり帰化していません。パピルス帰化している、といわれているのは殆どシュロガヤツリです。(C. papyrusが本当に帰化していたら見に行くし、見つけたら標本採集するでしょう。)

もう一度。これは、シュロガヤツリです。パピルスではありません。

 

実生カオス。海洋博公園オリジナル品種が勝手に多数作出されていそうです。

あともう一つ言えることは、Brachyceras亜属の熱帯スイレンは沖縄なら路地で実生繁殖するということです。沖縄に在来スイレンがいたという話は知らないですが、もし(園芸ではまず流通しない)N. nouchali var. versicolorとかがひょっこり現れたらどうか…などと思わされてしまいました。分布を阻むものはあまりなさそうです。

不思議なことですが、スイレンは親株が日なたをこのむのに、実生はやや日陰でよく育ちますよね。親の葉の下で育つ…わけでもないのに。足がついて歩ければよかったのに。

 

これはセントルイスゴールドでしょう、と思います。

結局こいつって亜属間交配なのか亜属内交配なのかよくわからず…実物見てもよくわからんですね。("sulphurea"がBrachyceras亜属のN. sulphureaかN. mexicana `sulphurea`かという問題。私は前者だと思ってきたが、IWGSだと後者説となっている)育てて触って色々考えてみたいので、今年度以降に入手してみたいですね。

コロラータですね。花も浮葉もとても印象的です。実生祭りの元凶はこいつかとも思いましたが、実生はコロラータじゃなさそうなのが多かったです。

いやあ、本当にスイレンって楽しいですね。色々いてワクワクします。もし仮に、これらに名札さえついていればどんなに良かったでしょうか…ぐぬぬ

スイレンってたくさんあって園芸的にもとても面白いのに、ちゃんと札をつけて展示しているところがごく少ないのがとても残念です。

そんなスイレンの水際にあったのは…シオカゼテンツキFimbristylis cymosaでしょうね。暖地に多く、海の近くならびちゃびちゃの湿地でも乾燥したコンクリの隙間にも生えてきます。よく見かけるので魅力を忘れがちですが、とってもカッコいい草です。

こちらはイガガヤツリ Cyperus polystachyosだと思います。こじんまりしているし、ふつうの花が咲くのでしょうか。

熱帯スイレンと、カキツバタもしくはルイジアナアイリスっぽいアイリスですね。アイリスの判別は結構苦手。

あ、テツホシダ Cyclosorus interruptusですね。植えられているのか生えてきたのか…。沖縄の遷移が進んだ湿地はこいつばかりになります。何がそんなに強いのかとっても不思議です。

ヒルギ類の植栽にもチャレンジしているようです。

こんなところにもシオカゼテンツキ。小さいことを除けば、最強カヤツリの一角ですね。

モトタカサブロウ Eclipta thermalisです。本州ではほぼアメリカタカサブロウに置き換わっていますが、沖縄で見かけるのはほとんどモトタカサブロウです。ただ本州のモトタカサブロウと本当に同じなのかやや疑問があり(まず強すぎるし、本州のモトタカサブロウが水湿地のかなりビチャビチャした環境を好むのに対し沖縄の”モトタカサブロウ”は割と乾燥した地面に多い印象)、今後研究されるべきだと思います。

う~む、ジュズダマかな…自信なく。

 


おきなわ郷土村です。建物のほうもとても興味深く、建物の写真ばっかり撮っていましたが…(おもに柱とか屋根裏とか)、ここにも水草ネタが転がっていました。

セッコツソウ Justicia gendarussaです。J. gendarussaを薬草として利用するのはインドから東南アジア一帯ですが、沖縄がその文化圏の北限だと思います。さてこれがなぜ水草なのかと言えば、この種はしばしば「水草」としてアクアリウム用に輸入されるからです。結構バリエーションがあって集めると楽しいのですが、残念ながら全く水中化せずビトリフィケーションしてそのうち枯れます。

 

さて、海洋博公園に来た理由は隣接する「おもろ植物園」にある、シチトウ Cyperus malaccensisを見るためでした。この種はリュウキュウイという別名があり、しかも琉球畳の原料とされるなど沖縄の伝統的手工芸に深くかかわりながら、かつての生産地や自生地からはほとんど姿を消してしまっています。いまではむしろ沖縄というより、むしろ沖縄から移出された本州の各地域でレリクトクロップとして遺残していたり、大分の国東村で栽培されていたりする方が多いでしょう。

コレですこれこれ。沖縄ではせりこ、と呼んだり、三角藺とよんだりしたようです。(紛らわしい。。。)

一見するとサンカクイのようですが、短い苞葉があります。背がたかいわりに、すらっとした細身です。


短い苞葉と長い花序は…まあ蜘蛛の巣張りますよね。カヤツリあるあるですが、この種は巣が張りやすそうで優良物件そうです。

株元です。一応根茎は横走するのですがかなり短く制御しやすそうですね。葉身は3センチくらい残っています。

株元にはミゾハコベElatine triandraがいました。タネツケバナ類はよくわかりませんでした。ちなみに琉球の植物データベースにはタネツケバナ類が何故か載ってないんですよね。

ビーグです。イグサ Juncus decipiensのことです。

本州のイグサがコヒゲと呼ばれる異常に細く長く花序が発達しないイグサを使うのと違って、沖縄のビーグはひたすら株も茎もすべて大きくて、普通に花が咲くイグサを使います。沖縄のイグサ類栽培は在来系イグサ→シチトウ→九州系イグサ、のようです。面白いですね。そもそも沖縄で在来のイグサを見たことがない気もしていて、どこかにないか、今後気にしてみます。

 

Lemnaがいましたが自信なく。ナンゴクアオウキクサでいいのかな?こういう肉厚系ウキクサの葉脈数えるの苦手です。ひっくり返して根端見るべきでしたがさすがにこんなところでは遠慮。

イネのところは落水されていましたが、コウキヤガラ Bulboschoenus maritimusが生えていました。沖縄は石灰岩質なので、水田で最もCommonかつ凶悪な雑草はコウキヤガラとタマガヤツリです。あれ?除草剤普及前の本州と同じようなパターンですね。

ガガブタ Nymphoides indicaが植えられていました。冬に割いていると普通のガガブタですら最高にうれしいですね。

ウキクサ Spirodela polyrhizaがいました。海外にいるような螺旋タイプが沖縄にもいないか期待しているのですが、見ていません。

まあスクミリンゴガイ、いますよね…。沖縄ではいても被害が”比較的”軽微だと思います。冬がなく気温が高いため、年中通じて草の活性が高いためだと思います。

 

白茎ターンム (田芋)Colocasia esculentaです。熱帯系の親芋利用品種です。沖縄には他にも色々なサトイモがあってとても面白いのですが、殆どの作付け面積はこれが占めています。在来系は赤茎ターンムと思われますが、ここには展示されず…。赤茎はかつて沖縄各地で生産されたものの市場価値が低いとされ白茎に駆逐されたんですよね。赤茎も小型の水生里芋ではありますが、背が高く比べてみれば全く別の植物です。鉢植えでいいので今後の展示に期待したいと思います。

白茎ターンムも赤茎ターンムもランナーをもたず、親芋の周囲から子株が出て、この子株を刈り取って植えることにより植栽されます。へたに植えると芋が腐りがちな熱帯では、活性の高い頭部分のみを植えるのは合理的ですが、消毒が難しいなどの問題は付きまとうでしょう。

白茎ターンムはかなり小型のサトイモで、手のひらよりやや大きいくらいの葉です。茎も短いので、殆ど盆栽のようなサトイモです。かわいい。。。

熊沢分類では葉柄の屈曲と色合いが重要なので一応写真をば。いや条件でめっちゃ変わると思うんですが。

アメリアゼナ Lindernia dubiaがいました。沖縄ではあまり見ないかも。そんなことないか??。

植物あるところ害虫あり。ミズメイガの一種がいました。

 

モトタカサブロウ

陸生植物ですがナガバハリムグラ。沈めるとやはりビトリフィケーションしてしまいますが、そこそこ長持ちはします。

 

というわけでようやく、熱帯ドリームセンターに。

もう看板からし水草要素が半分くらい占めてますよ。もう水草館といっても過言ではない、のでは。

ラベルないですがツルウリクサ Torenia concolor ですよね。

違ったらすみません、が、水草になりうる気配を感じました。

水草ブログですがこれは流石に掲載せざるを得ないでしょう。結実したアルソミトラ。

1つの果実には2000枚のグライダー状の種子が入っていて、それが5個ぶちまけられていました。つまり1万枚のグライダー種子が温室内に散乱したことに…。。。出口にたね回収Boxが置かれていました。持ち帰りNGだそうです。ちなみにこの巨大つる植物、雌雄異株です。

ド迫力のグリーンカーテンです。

これもそろそろ「水草」で来るんじゃないかと思っているPseuderanthemum `Stainless Steel`。ぱっと見はJusticia gendarussaそっくりですが、開花写真を見るに違うみたいです。Pseuderanthemum だとかのvariabileのイメージが強くて、ぎょっとしますね。

 

 

 

植物園の、メダカ展示…なんかある予感。

 

スイシャホシクサ Eriocaulon truncatumとオギノツメ Hygrophila ringensですね。イネ科は自信ない…タイワンアシカキとかそのへんでしょうか?

タマハリイ Eleocharis geniculataも植えられていました。

水中にはS. subulataっぽいものとヒルムシロ ORアイノコヒルムシロ。

 

 

スイレンがいろいろ。こっちは熱帯夜咲きのlotos亜属が多いです。間にシルバーアロワナがうじゃうじゃいます。

Thalia geniculata `ruminoides`です。ウォーターカンナとは葉の形がちょっと違います。カッコいいですが、ウォーターカンナと違って耐寒性に不安があります。いい草です。

まだ子株ですが、ティフォノドルム Typhonodorum rindleyanumです。

キルトスペルマ Cyrtosperma johnstonii ですね。

ヒメショウジョウヤシ。スゴイ色。

そしてすごい腰水。

しれっとミミモチシダ。奥はインドクエルイモ…じゃなかったインドクワズイモでしょうか。

何らかのエキノドルス。手前はランナーが出る水生コロカシア…つまりおそらくサトイモ Colocasia esculenta aquatilisですね。ランナーを伸ばしまくる‘Black runner‘とかそのあたりな気がします。ただ、小さいのでほかのものかも。少なくとも日本の系統ではないです。

Alocasiaの鉢にいたシュロガヤツリ実生とオオバナイトタヌキモ。シュロガヤツリは発芽後すぐに苞葉をだしてきますね。他のカヤツリグサ科より耐陰性が著しく強く、薄暗い環境下でも伸長し下から追い抜くことができます。

うーむ、この悪魔的水草たちよ…。

ナヤス グアダルペンシスNajas guadalupensis。

スイレン鉢に入っていました。まあ沖縄ですし、越冬も増殖もします。今後どのくらい増えてくるかは要観察でしょう。

ちなみにヒロハホッスモは全く別の種ですが、何なのかに関しては未発表です。ヒロハホッスモを外来種として駆除しないでください。

 

しかしよく見てみると…

Najas gramineaもいました。本州のホッスモか、倍数性の異なる八重山の変なものなのかはこれだけでははっきりしません。結構大きい感じでしたが、両者ともに変異幅が被るので…夏きたらでっかくなっていそう。そもそも本州のやつは基本一年草なような気も。つまり冬も青々ということは???

超小型スイレンの、紫式部でしょうね。いい花です。なかなか売ってないのが悩み。流通するムカゴ系熱帯スイレンの最小クラスはドウベン、ミロク、そしてこの紫式部だと思います。三者の中では花に最も特徴があります。なおこの品種名ですが確か通称だったような…元の品種はなんなんでしょうね。

タグはN. lotusだけど咲いているのはN. rubra。まあ白いのも咲いていますし、ランナーで混ざったのでしょう。水中には沈水葉が沢山ありましたが、実生なのかどうかは不明です。Nymphaea subg. lotosは八重山では路地でいけますが本島中部では加温するものなのかな?と思いました。

 


オオサンショウモ Salvinia molestaとエキノドルスの何か。まあ広義A. uruguayensisなのかな…じつは趣味のホレマニーという可能性もあると思います。深緑系がしれっと置いてあった水槽もあったので…。

君は完璧で究極なスイレン、ドウベン。最初が至高のいい例ですね。

 

バリスネリアのなにか。

やっぱり葉柄が赤いとカッコいいですね。ウォーターカンナよりぐんと高級感が。

おやおや水中植生が。

クロモ Hydrilla verticillataでした。水族館や室内水槽にあったクロモより典型的で自然な感じのタイプですね。ギザギザして華奢そう。

ヒメガマ Typha domingensisです。

沖縄にはなぜかこいつしかいないことになってます。本州だとやや深いところにヒメガマと言われがちですが沖縄では乾きぎみの湿地にも出てきます。記憶が正しければ、那覇空港の滑走路上にまで生えています。

むむ?

これは、Cyperus proliferです!いま売られているものはほとんど同じ見た目のC. isocladusが殆どで、この種が園芸流通ほんとうにしているのか?とまで思っていましたが実物を拝めました。ラベルないけど…。

株元のセリOenanthe javanicusは沖縄の林縁にある通称サケバゼリかと期待しましたが普通っぽいかんじでした。しかしよく見れば違うかもなので違ったらすみません。

 

アイリスとエキノドルス。

エキノドルスとナヤス。

影が薄いけど、ナガバミズアオイ です。

カッコいいなあ…Thalia geniculata `ruminoides`

冬が問題ですが育てたくなっちゃいました。クズウコン科はうちの水草コレクションにないのです。苗は時々売っているのでトライしたいな…

 

というわけで今度は熱帯・亜熱帯都市緑化植物園に。ここは無料ゾーンです。

植物に管理されてしまった植物管理センター。

ミミモチシダ。雑草化しかけていない…?

西表島まで行かずとも、海洋博公園で目の前でまじまじと、無料で全ステージ見られますよ!

見たことない立派さのタマハリイ Eleocharis geniculata。野生でも立派なやつみたいなあ・・・。多分展示ではなく雑草でしょう。

フトイガヤツリ Cyperus articulatusです。インド~インドシナに分布し、国内では沖縄本島の沿岸湿地と河口域にのみみられます。フトイやシチトウに一見似ますが、花序の配置や苞をほとんど欠くこと、茎の断面が円形であることなどで判断可能です。

ナガバミズアオイ。沖縄でも加温しないと冬枯れするんですね。知りませんでした。

 

結局よくわからなかったCyperus。気になる。。。

あー、ロタラと見せかけて、アマニアグラキリスっぽいアフリカのヒメミソハギ属だ‥滅茶苦茶蔓延っていました。放すと帰化するので本当に気をつけねばです。

 


ウチワゼニクサアメリカハマグルマ。沖縄ではこの両者は湿地を破壊する系外来種なのです。

マングローブ植物の展示も。このくらい育てられればなあ…

 

といったところでそろそろ9000文字ですしこの記事を終わろうと思います。

へたにフィールドをめぐるよりも、いろいろ見られるかもしれません。

 

琉球の水生・湿性植物 オクラレルカ

"オクラレルカ"は、沖縄県では重要な水生花卉である。大宜味村で栽培されるのが有名であるが、うるま市恩納村でも育てられているようだ。沖縄産とみられるものは生花として全国に出荷されている。

流通はおもに葉が全国に出荷されるほか、主に沖縄島内向けに(だと思うが)蕾が出荷されて、翌日開くものがある。

大宜味村のホームページによれば有名なターブクでのオクラレルカ栽培はイグサ栽培地を転作したものだというが、もとの「イグサ」が沖縄在来品種、シチトウイ、九州系のビーグのどれであったかははっきりしない。沿海湿地であることから一時はシチトウが栽培されたのではないかと期待して探してみたが、発見することはできなかった。沖縄本島でのシチトウはかなり発見困難な部類かもしれない。九州系のビーグはうるま市のほかに国頭村でも盛んに栽培されるので納得ではあるが、現在でも商業的価値の高いこれらの植物をわざわざ転作するかには疑問がある。個人的にはシチトウ説を推したいが…現時点では物証も情報も得られていない。

なお、いま他に大々的に育てられている植物はフトイガヤツリであり、これも花卉用である。

 

名前に関してはやや問題がある。そもそも「オクラレルカ」という植物がほかにない。元々はオクロレウカIris ochroleucaの訛りとみられるが、ochro-が淡黄色、leucaが白色、であるように、淡黄色に白色の模様が入る陸生植物である。沖縄の"オクラレルカ"は淡青色の花弁に黄色い模様が入る水生種であり、オクロレウカではない。したがって、謎植物である。

沖縄でオクラレルカが栽培されるようになる以前に同様な植物がどこか…おそらく本土でオクラレウカとして流通し、それが入ったと考えるのが自然だろうとは思うがはっきりしない(あてはあるかもなので後であたってみる)。

なお、杜若園芸でオクロレウカとして売られているものもオクラレルカと同様であり、なんかしらのヒントになるかもしれないし、単にオクラレルカを誤植とみて直したのかもしれない。

クラレルカはルイジアナアイリス、特に原種のIris giganticaeruleaに酷似していることを指摘するネット記事がいくつか見当たる。非常に大型で水生傾向がカキツバタ並みかそれ以上に強く、花の色も合致する。おそらくただしいのではないかと私も思うが、この類に関しては明るくないので断言は避ける。

ただ、少し言葉遊び的ではあるが、ひとつ可能性は思い当たるように思う。

Iris ochroleucaのシノニムとして、Iris giganteaがある。これとIris giganticaeruleaが混同されたのではないか、と。

となると、オクロレウカと呼ばれるようになる前段階でギガンティアとかギガンティケルレア、というIrisが流通していたのではないかと推測してみる。そういった情報がないか、今後アンテナを張ってみるつもりでいる。

 

クラレルカはいまのところめだった疫病などもないのか、栽培放棄はあまり見当たらなかった。水田は比較的長い期間湛水されるようで、ヒメクグとオオハリイ、シマヒメタデ、シマウリクサ、アカウキクサ類などの短命な多年草が目立つ印象を受けた。ここ数年毎年渇水が続くようになり、沖縄の湿地環境が極めて悪化している。その中で湛水期間の長いオクラレルカ田は水草以外にも水鳥や水生昆虫などの多様性保全に大きく役立つのではないかと思った。もし今後生花店で見かけたら飾っておこうかと思う。

水草の分類はまだまだ発展途上とはいえ

アクアリウムでは日々、様々な植物が流通している。あるものはファームから量産されて輸入されるし、あるものはワイルド品が流通する。

さて、ここでよく聞くのが「新種」の話題である。

「このあたりはまだ未記載種が多い」という話をサトイモ科や陰生植物まわりではよく聞くし、また「〇〇の新種」と銘打って未記載種や、もしくは既存の種の外見上で明らかに異なる個体群を販売する例もみかける。

私自身、水草にまだ多くの未記載種がいることを認識しているし確認もしているので、それらにプレミアをつけて売ってしまいたい気はわからないでもない。

ただそれには問題があり、まだ新種として発表されていないものがあたかも新しいもののように流通してしまう状況は避けたいと思っている。

新種といわれるものの殆どはあくまで「既知種に酷似するがやや異なる」ものであって、新属新種であったり、既存のものと全く似ても似つかない…というものは残念ながら殆どない。

そうしたものは「分類上問題がある」。

そうしたものの厄介な点として、そもそもその種がどの個体群をもとに記載されたか…という問題が付きまとうことが挙げられる。しばしば最初の記述…原記載はざっくばらんだし、この地域の個体をもとに記載されたから元々はこれだろう…といったことになることが多い。

なので、いま市場にありふれたものが元々の種、ではない。

そうした中でちょっと違うものを「新種」というのはかなり抵抗がある。とくに水草においては、形態的違いが必ずしも形質的違いを反映しない。つまり、同じ条件でもモードチェンジする条件が若干違えば別種のように見えてしまう。水草のかたちは三次元的だけでなく、時間と環境に対する応答を含めた多次元的に判断する必要がある。遺伝子とてクリアカットとはいいがたいし、陸生植物に比べると分類や知見に著しい遅れがある。このように水草は植物の中でも特に違いの真贋を見極めにくいものである。

「広義〇〇の一員だがよく知られてきたものとは個人的に違う気がする」というのがこういうものに対する扱い方ではないかなぁと思うが、すぐ個人崇拝が発生して自信満々であることを求められがちな状況では難しい、のかもしれない。

結局のところ、水草はよくわからない。よくわからない植物がよくわからないまま流通するのは気味が悪いがそうするしかない。

また、そういった中で、国内にも同種が存在するとされる種が流通したり、逸出すると非常に問題がある。

〇〇類似の外来系統で形質が違う隠蔽種と思われるものが広がっているが、〇〇は分類上の問題があり…というのはありがちな頭の痛い話である。

結局のところ、水草は古くから流通するもの、由来がわかっていて新しく流通するもの含めて須く、だいたいは「よくわからない、もしかすると未記載種かもしれないもの」であって、よくわからない草だということを前提に扱われるべきだろう…と思う。その上で、その個体群とドンピシャなものが記載され次第、アレはこの種だったのかー、となるくらいで良い気はする。

ひとつ言えることは、流通する水草…とくに、古くから流通する古典種にはドンピシャに合致する名前がつけ難かったり、日本に生育する同種と同じ種とみなすにはあまりにも問題がある、ように見えるものが多い。

そうしたわけのわからなさを楽しむのが私は水草の遊びようがある部分だと思う。

エキノドルスの「イモ」?

 水草業界では(そんな「業界」と呼べる規模なのかは疑問だけど)、エキノドルスの増やし方としてよく「イモを切り分ける」という言葉を用いる。しかしエキノドルスの「イモ」はただ葉の落ちた地下茎に過ぎず、葉がついてから二次的に肥大するわけではないし、さほど澱粉質でもない。したがって私にはこれが「イモ」であるとはとても思えないし、イモではないものをイモと言うのには、抵抗がある。

ということで、イモとはなんなのか、と(吉田, 2019)にさっと目を通してみた。

「イモ」とは、もともとサトイモのことである。平安時代の和名類聚抄ではサトイモを「芋」、ヤマノイモを「山芋」としている。本州において古代から江戸時代まで、イモとはサトイモのことである。

※南西諸島においてはウム系の語は主にヤマノイモ類、ムジ系の語がサトイモ類に対応する…とも聞いたことがあるが…※

他に日本で伝統的に芋として扱われてきたものは、クワイ、クログワイ(orオオクログワイ?)、そしてサジオモダカである。

これを踏まえて

現在主に「イモ」と呼ばれているのはサツマイモおよびジャガイモで、どちらも新大陸由来の作物である。

さて、サジオモダカが異質ではあるが…基本的に芋とは澱粉質を蓄える、肥厚した塊茎および根である。澱粉質というのが重要と思っていて、ダイコンやニンジンはイモではない。

 

しかし、サジオモダカのやや横走する、またやや澱粉質とはいえそこまででもない塊茎が伝統的に「芒芋」と呼ばれたとすることを踏まえると、エキノドルスのあれを「イモ」というのはあながち間違ってもいないのかもしれない。ただ、そうだとしてもアレはただの地下茎だろう…という印象は拭えない。

ということを書きながら、サジオモダカの塊茎を実はまじまじとみたことがないことに気づいた。栽培しているものがあるので、もう少ししたら抜いてみてみようと思う。それをみた感想で、エキノのイモがイモか否か、を問いたい。

 

 

吉田宗弘. (2019). 日本人とイモ. 食生活研究, 39(5), 235-248.