水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

エリオカウロン ラティフォリウム カメルーン ンガウンデレ産

 ホシクサ科は約1000種を超える大きなグループである。そのうち2/5が広義Paepalanthus、1/5がSyngonanthus、そして2/5がEriocaulon…と言ったところである。
LeiothrixやMesanthemumといった他の属もあるにはあるのだが、その数は微々たるものと言っていい。
これらの属の分布および多様性は、ほぼ南米に限局している。Mesanthemumがアフリカ固有属であるのが唯一の例外で、他の属はすべて多様性の中心が南米にあるといっても過言ではない。
ホシクサ科といえばなんとなく水草というイメージが持たれがちである。しかしながら水生のホシクサ科はこれらすべての属で独自に複数回進化した形質であると私は思っている。
げんに、Paepalanthusの大部分、Leiothrixの大部分、Mesanthemumの大部分は完全な陸生、Syngonanthusはごく僅かな例外を除いて湿生で水に入らず、Paepalanthusの残りもまた湿生である。
しかし完全に水生の種が発生しているのもまた事実であって、Rondonanthus、Leiothrix、Paepalanthus、Eriocaulonなどで複数回(属内でも複数回!)発生した”ケヤリソウ型”の種があげられる。
それらとは別に、ホシクサらしい形を保ったまま水生となったグループがある。
たとえばEriocaulon aquaticumは水中に進出することで、亜寒帯に近い温帯の厳しい冬を生き抜くことに成功していると思われる。(知る限り唯一の温帯性多年生ホシクサである)
そんな中で異彩を放つのがテープ状の一群である。これらは水中にたなびくように生育するニッチを埋めることに成功した。
旧世界のテープ状で沈水葉の硬いホシクサは互いに近縁なようで、葯が黄色い点で共通する。興味深いことにこのグループは同じく黄色い葯をもち、水田でみられるE. cinereumはじめとした無弁節に形態、系統ともに近縁であるらしい。
アクアリウムで用いられるこの仲間のホシクサはソーシャルフェザーダスターが最も有名であるが、他にもギニアンスタープラントやヒマラヤスターもこの仲間と思われる。
これらは全て、急流の流れる河川上流域の石の隙間に生育し、分ケツおよび種子で増殖する。
仲間全体としての分布はかなり広いようで、西アフリカから香港までに及んでいる。ただし、その中での類縁関係…一見よく似て見える細葉の種どうしの関係など…にかんしては、いまいちよくわかっていない。
前置きが長くなった。
2024年の水草入荷第一弾は、カメルーンからのエリオカウロン ラティフォリウムであった。
Eriocaulon latifoliumという名前で水草が入荷したことは古今はじめてのことであるが、特に全く新しい水草というわけではない。
E. latifoliumは西アフリカに広く分布する沈水性の大型ホシクサで、幅広で非常に長い葉を急流にたなびかせる、葯の黄色い種は西アフリカにこの種しか知られていない。
ギニアンスタープラント ブロードがほぼ間違いなくこの種であろうと以前にもこのブログで紹介したが、そう、そういうことである。
さて、ギニアンスタープラントにはナローとブロードがある。ナローはやや小型でランナーを盛んに出すもの、ブロードは大型でランナーを出さないもの‥‥そう思ってきた。
しかしながら、西アフリカにこういうホシクサは1種しか記載されていない。
つまり
①どちらかがE. latifoliumでもう片方は未記載種
②どちらもE. latifoliumの変異の両極端で、両者をつなぐミッシングリンクが存在する
という2つの可能性がある。なお、⓵と②の折衷案…つまり実際には3種あって中間的な種の存在により認知できていない、というのもありうる。
今回カメルーンからもたらされたホシクサは、とんでもなく巨大なものだった。さらに長く伸びた根茎は、ブロードを強く思い起こさせる。
しかしながら、多数のランナーを又持っていた。
草体の形態的には、ブロードに近いがナローのようにランナーを持つ、それが今回のカメルーン便ホシクサのようである。
私はブロードのほうが断然好きだがブロードは増えないし入荷しない…と悩んでいたので、大変うれしい。

2023年、最も注目されるべき水草30種ランキング (2023年水草アワード Top30)

2022~2023年は様々な水草が輸入された”当たり年”だったように思います。

2013年ころから約10年にわたって新しい水草がほとんど入荷しない時代が続いてきましたが、ようやく雪解けが見えてきた感があって大変喜ばしいことです。

今回は、そんな2023年で特に印象に残った水草を、その理由を含めて紹介していきます。

*かれっくすさんとのスペースでも同じ話をしましたが、重複するものの紹介を飛ばした都合上、順位がやや前後しています。また、本記事では「アクアリウム・園芸での利用可能性」という切り口でみているので、自己満足な日本産種は除外しました。

30位 ムジナモ Aldrovanda vesiculosa

今年は朝ドラ 「らんまん」で取り上げられたり、石川県で新産地が発見されたりとニュースの多い一年でした。観賞魚系問屋に何回も入荷があったり、キヤッセ羽生での販売コーナーが拡大され、生植物(時にはタネまで⁉)が販売されたりと、いままで「欲しくても手に入らない」状態から一気に入手しやすくなった感があります。

 

29位 ゾステレア ドゥビア Heteranthera dubia

なにぶんゾステレアは元の人気がほぼゼロ(泣)なだけに、「売れたという報告があるだけで」注目度の動きを微分してみればランクインすべきでしょう。(厄介ファンが屁理屈こねてるだけとも言います)今年はなんと問屋からのリリースもあったのが注目ポイントです。いったん慣らしてしまえば非常に適応幅が広く、屋外鉢ではよく開花して綺麗なので今後に期待できそうです。

 

28位 ヒドロトリックス ガードネリー Heteranthera gardneri

去年に引き続き、今年も1回だけごく僅かながらも流通がありました。極めて珍妙なミズアオイ科の水草ですが、栽培にかなり癖があるのか一年以上市場に流れ続けることはほぼ無いように思います。私も栽培が苦手なので、とにかく種を維持することを目標に頑張らねばと思っています…。こういうものは、作っているファームが止めたらそれきりになってしまうのが恐ろしいですね。

 

27位 オオササエビモ Potamogeton x anguillanus

今年は若干数名がポタモゲトンにハマったためか、ポタモゲトンの注目度がかつてないほど上がりました。GEXレイアウトコンテストではオオササエビモを主役に沿えたレイアウトがかなり良い成績を収めるなど、大躍進した感があります。(しかも私が渡した株)オオササエビモにもヒロハノエビモを母とするものとササバモを母とするもので見た目にも2型があるので、そのあたりも今後注目されていくのかなあとおもったりします。(あとはオオササエビモはよっぽど採集されても減らないほどのバイオマスがあるので個人的にはそこが大きいですね…希少種が流行ってしまうのは特に国産種においては避けたいものです。)あとは手前味噌ですが今年新産地をみつけられて嬉しかったです。

 

26位 ミクロカルパエア ミニマ Microcarpaea minima

インディアンクラッスラの這わないデカいバージョン。というと何がいいのかまったくわかりませんが、とにかく上に伸びて綺麗な茂みを作ることができ、かつ「全く赤くならない」という非常にレイアウト向きの水草です。輸入されてきた時から草体も花も妙に大きく、「ナニコレ?」という感じでしたが、育ってくるにつれ違いがはっきりしました。これに関して、もしかしてミニマではない種なのでは?とも思いましたが、Microcarpaea属のもう片割れはオーストラリア固有のM. agonisですが、これは糸状の葉をもつのでこれではなさそうです。大型化するのと匍匐しないっぽいのは近そうなのでビンゴか?と思ったんですけどね・・・。なんとなくですがオーストラリア辺りには隠ぺい種が潜んでそうな気がしてます。

 

25位 バコパ サルツマニー パープル var. SG Bacopa salzmannii 

バコパ好きとしては入れておかねばと思いました。バコパ サルツマニーは所謂アラグアイアパープルバコパとして知られてきましたが、今回来たものは異常なまでに紫が強く、水槽でもしっかり紫色を発揮するので今後注目されるでしょう。ただし、従来のアラグアイアパープルバコパは早々に駆逐されてしまう可能性が高いと思うので、そちらの維持のほうもされるべきと思います。

 

24位 スタウロギネ スパチュラータ Staurogyne spathulata

東南アジアからオセアニアにかけて広く分布し、どうもバリエーションが非常に大きな水草のようなのですが、全くと言っていいほど注目されていません。今回スリーパドマ特殊便で相当久しぶりに少数入荷し、実物を見ることができ非常に嬉しかったです。本種は成長がゆっくりで完全に直立して育つことから、ダッチアクアリウム向きの水草と感じます。かといって水中が苦手なわけでもなくしっかり大きくなるのはひじょうにすぐれたポイントです。今後、さまざまなタイプの本種が来る可能性に期待したいです。相当高いコレクション性を秘めうります。

 

23位 ハイグロフィラ セルピラム Hygrophila serpyllum

去年とあるお店で”再発見”した種ですが、今年スリーパドマ特殊便でインドから直輸入されてきたので驚きました。前景に使えるハイグロフィラ、という非常に面白い植物で、カット次第でサイズや盛り上がり方も変えられることからレイアウトへの応用可能性が高いと感じています。来年以降のレイコンでは頻出になるでしょう。

 

22位 リムノフィラ アクアティカ ドワーフ Limnophila sp.

育てやすさ、レイアウトへの使いやすさ、安定した供給が実現した、などという面でみれば2023年最優秀水草で間違いないでしょう。しかし本当に新しいかと言われればそういうわけではなく、以前に入荷したこともある種です。トリミングへの強さ、小型水槽でも問題ないサイズ感、他の水草に準じた軟水管理を好むなどの点からすると、おなじみになっているガイアナドワーフミリオフィラムよりはるかに優秀です。

 

21位 アポノゲトン エキナトゥス? Aponogeton cf. echinatus

スリランカ便でアポノゲトン ナタンスとして入った植物です。花が咲いてみて驚きました。今まで認識されていなかった可能性が大ですが、アクアリウムでは新しいといっても過言ではない植物です。クリスプス等に比べて浮葉を出しやすく、浮葉と沈水葉をごちゃまぜに出す、浮葉をカットしても死なないなどの性質があるので、浮葉を交えたレイアウトを作るうえでは今後有用性が出てくる可能性があると思います。

 

20位 ペルシカリア バルバータレッド Persicaria aff. barbata 

手前味噌もいいところで恐縮なのですが、私の採集品を実生更新してみたものです。ケタデに混ざって生えており採集時はケタデ×シマヒメタデだと思っていたのですが稔性があります。実生もやはり結実能があるので、正体はいまいち謎です。ケタデはろくに沈水化しないのに本種は水中適性が高く、茎の下部にある葉まで赤みが残ります。多年生はケタデと同様なので心配いりません。アクアリウム用のタデとしてはかなりいい線をいっていると思うので、今後盛り上がりを見せるかどうかに期待していきたいですね。

 

19位 エリオカウロン スリランカスーパーナロー Eriocaulon cf. fluviatile

スリランカ便で10年以上前に入荷したホシクサです。長らく行方不明でしたが、突然アクバスに並んでビックリ。ソーシャルフェザーダスターに似ていますがより小型です。私の認識ではE. fluviatileらしい個体と思うのでそこもよいですね。アフリカからインド、インドシナあたりにかけてE. fluviatileやE. latifoliumなどの細葉で流水性の頑丈なホシクサが分布していますが、どうもアクア的には違うものとして扱われそうな変わった個体群が各所にいそうな感じです。そうしたものを中心にした第二次ホシクサブームとかきませんかね、と思ってしまったりします。尚、この種ですがエアリフト底面フィルターの栄養系ソイルで維持されていたらしいので栽培はとても簡単です。

 

18位 Wolffia columbiana 

大きな真ん丸のミジンコウキクサです。普通のミジンコウキクサが0.5㎜程度なのに対し、本種は1㎜程度あります。ミジンコウキクサの時点で相当単純化がすさまじいですが、本種は特に構造が単純で、もはやボール状の細胞塊となっています。とあるアクアショップからやってきた(と思われる)のですが、水槽に発生するウキクサの多様性を思い知らされることになりました。恐らくアクアリウムにひっついているミジンコウキクサ属は最低でも3種、おそらく5種以上いるのではと思っており、ショップ巡りをしながら探さねばと思っています。あ、そういえばトップ30の中で唯一のサトイモ科でした

 

17位 バリスネリア スピラリス レッド Vallisneria sp.

この種を取り上げたのは綺麗だからということではありません(ホント綺麗ですが…)この植物はバリスネリアとしては異常な質感で、剛性がすさまじいのです。しばしば水面を突き抜けてライトに当たって焼けているバリスネリアなど、他に類を見ません。葉の概形も異常で、先に行くほど緩やかに細くなり鋭頭です。模様が一切入らないのもポイントです。オーストラリアのV. annuaかV. erectaと予想しています。この二者はV. annuaが「唯一の一年草バリスネリア」、V. erectaが「唯一の抽水化するバリスネリア」ですが、両者は極めて近縁であることも知られています。V. erectaはまともな生体写真がほとんど見当たらず、どんな植物なのかという時点で興味津々です。(*Aqua greenの写真にある”V. erecta"はおそらくV. jacobsiiなので注意)こいつが条件次第で抽水化するのか?というところからまずは見ていきたいです。

 

16位 ワイルドパピルスウガンダ

まさか人生でワイルドもののアフリカ産パピルスを見ることがあるなんて思っていませんでした。本当にパピルスでした。す、すげえ… 個人的には一緒に来たCyperus assimilisもとても注目しております。アフリカの草にはロマンがあります…。

 

15、14位 シペルス ヘルフェリー Cyperus helferi (15ラオス、14ミャンマー

ラオスのチャンパサックから野生のシペルス ヘルフェリーが来てビックリ。シペルス ヘルフェリーは現地写真もあまり見当たらず、どんなところに生える植物なのか非常に興味津々でした。カッセルマン図鑑の今年バージョン(ドイツ語だけど)にも野生のシペルス ヘルフェリーの現地写真が載っていて、この種の解像度が一気に上がった感があります。というわけで林内の半日陰みたいなところに生えているのか…へえ・・・

と思っていたら。

ミャンマーからどうも日なたの大河川で雨季に水中生育するらしい水生シペルスが来たので驚きました。ヘルフェリーのインボイスで来ましたが触った感じはヘルフェリーらしくない硬さなので、もしかすると東南アジアにはヘルフェリー以外にも水中生育をよくするシペルスがいるのかもしれません。いや絶対いるのでしょう。

 

13位 キツネノマゴ科の一種(ミャンマー) Acanthaceae gen et sp. indet.

ワイルド有茎草なんてめったに届くものではないですが、しかもピーファウルハイグロらしき謎の水草が来ました。ピーファウルハイグロは全く尻尾のつかめない謎水草ですが、これでミャンマーにも分布があるらしい、というところまではつかめました。しかし本当に何なんでしょうねコレ。私はスタウロギネではないと思っています。謎のハイグロフィラと考えた方がまだましな気がしますが、あっと驚くような属だったりするかもしれません。

 

12位 アイノコカンガレイ Schoenoplectiella x uzenensis

園芸家って本当に交配が好きですよね。私はそこまでではなくて、むしろ原種が好きです。なぜかと言えば、雑種を基準に見てしまうと種を見る上での座標軸が掴めなくなるからです。ポタモゲトンで本当に酷い目に遭ってうんざりなのです。特徴が見えにくくなるだけの余計な交雑をした雑種ばかり見てきましたが、これは明らかに違います。こういうものこそ良い交配でしょう。サイズも繁殖力もちょうどいいし、耐寒性があって育てやすいし、水位の適応幅が広いし、何しろ完全に不稔で種子繁殖しないので逸出リスクも低い。これから外来種問題が深刻化していくと思いますが、ホームセンターなどに並べるには本種こそうってつけだと思います。

 

11位 メサンテムム ラディカンス Mesanthemum radicans

手前味噌ですが…アフリカの巨大ホシクサです。ホシクサは基本的にすべて南米を中心に分布するのですが、メサンテムムだけはアフリカ固有属です。カミハタギニア便2022で入荷した株を増やしていましたが、今年数株を販売譲渡することができました。アクアライフ1月号にもちらっと載ったりしたので、今後に期待です。実生にもチャレンジ中です。本種は水草として輸入されましたが、園芸植物の花ものとしての適性が非常に高いので、園芸家にピックアップされてほしいと考えています。

 

10位 ニムファエア テルマルム Nymphaea thermarum

ルワンダに分布する世界最小のスイレンかつ、タネが好気性発芽という唯一のスイレンです。好気条件で発芽することがわかり、繁殖方法が確立されるようになると世界中で観賞用・実験用などに流通するようになっていましたが、日本にはなぜかほとんど導入されませんでした。(おそらく、繁殖が確立されたのが2014頃で、そこから今まで日本の園芸・アクアが死に体で仕入れ力も需要も干上がっていたからでしょう)

ところで種子が湿った陸上で発芽する本種は、はたして水草なのでしょうか???

水草 Or Notの境界線上にいる植物です。水草は再度水から出ることができるのか。

 

9位 ニムフォイデス フラッキダ Nymphoides flaccida

コロンビアにいるだけという謎めいたガガブタです。ガガブタの中でもこのように細い葉しかもたない沈水性種というのは他に例がなく、しかも分布があまりに狭いためにろくに情報もないという真にマニアックかつ謎の水草でした。本種は形こそ異形ですが、最も近縁な種はNymphoidesの中でもガガブタそのもので、花はタイワンガガブタなど他のNymphoidesよりもガガブタによく似ています。というかほとんど同じです。

カッセルマンが採集しドイツはじめヨーロッパで流通していましたが、今年ようやく導入されました。ヨーロッパ経由とアメリカ経由と思います。(少なくとも片方はオランダ経由のようです、指摘があり訂正しました。)入荷したのはたいへんうれしかったのですが、同時に日本の水草業界がどれほど衰退傾向で、海外に後れを取っているかを認識させられました。日本にあるのは今まで下積みしてきた草の種数なので、維持を頑張らねば…と新しい水草を見ながら思ってしまうのもなんか微妙ですが、そんなことも思ったりしました。カッセルマンの水草だと、次はロタラ セルピリフォリアがきてほしいですね。

 

8位 Xyris sp. red

トウエンソウ科の水草が日本のアクアリウムに初めて導入されました。この種はここ数年シンガポールアメリカを中心に流通していましたが、日本に来ることはありませんでした。他にはない扇状の独特な草姿をもつこと、どことなくホシクサを2次元に圧縮したような姿で同じ感覚で育てられるらしいところからも、面白い水草だと思います。トウエンソウ科が流行る時代がいつか来るかもしれない…と思わされました。こういう新境地を切り開く可能性がある草は本当にうれしいです。

 

7位 Nymphaea nouchali var. nouchali (bulblet type)

ミャンマーから輸入された大量に分球する野生種熱帯スイレンです。ここまで分球するスイレンは他に見たことがないので驚かされました。さらに同様の分球する野生スイレンがタイ東部からも2系統、在来種改良スイレンが1系統知られており、このような奇妙なスイレンメコンデルタの広域に分布する可能性が見えてきました。もちろん改良スイレンの親種として高いポテンシャルを持ちますし、そもそも地味な花の野生スイレンが好きで、かつアジアの野生スイレンが一番好きだけど分球しないしすぐ休眠するのでもどかしく思っていた人としては本当に嬉しかったです。

 

6位 ギニアンスレンダーグラミネア Fuirena aff. umbellata

Rootsにカミハタギニア便2022の混じりで入った植物です。最近大きく育ち、購入した友人から写真が送られてきたのですが…これは以前来た、最も欲しかった写真だけしか見たことのない水草、フラグミテスspギニアの再来ではありませんか。これが入手できなかったし、おそらく日本から絶滅したからわざわざ沖縄まで行ってヒロハノクロタマガヤツリF. umbellataを実生したりしていたのです。しかしこの寄り道でさらに面白いことに気づきました。五角柱状の茎や分布などからして本種はF. umbellataとされているものと思われるのですが、沖縄のヒロハノクロタマガヤツリは沈水できないのです。同種とされているものの中にも水中適性の差から見ると明らかに区分されるべきものがある可能性が見えてきました。同様なことを先ほどペルシカリアでも書きましたね。

 

5位 ストラティオテス アロイデス Stratiotes aloides

世にも奇妙な珍妙水草の代表でしょう。夏は浮き、冬は沈む唯一無二の生態、バキバキに硬く触っただけで流血する異常な硬さ、水草なのに高硬度をとにかく好む異質さ、どれをとっても変です。これまで水槽内での栽培に難があるとされてきましたが、攻略法が編み出されたことにより栽培のめどが立ってきました。関東の水草の栽培に極めて向かない水道水がむしろ栽培に好都合なのも今後に期待できるポイントでしょう。この種をメインとした、「草を楽しむ」アクアリウムが広まってくれることに期待します。

 

4位 クラドプス クイーンズランディカス Cladopus queenslandicus

最も奇妙な被子植物にして水草、カワゴケソウ科です。いままで輸入、栽培化が成功した2種のカワゴケソウ科(Indotristicha ramosissimaとTerniopsis sp.)はいずれもトリスティカ亜科で、カワゴケソウ科でも特殊化が進んでいない原始的なグループでした。なので勝手に、より派生的なカワゴケソウ亜科はどれも栽培不可能なのだと信じ込んでいました。しかし今回LA便で持ち込まれた株は各所で栽培に成功しつつあるように見え、少なくともすぐ死んでしまうとか、とても無理という感じには見えません。さらに、輸入されたのは葉状の根部ではなく先端部でしたが、そこから再生することも特筆すべきです。カワゴケソウは栽培が無理な草から、頑張れば育てられる草になろうとしています。

 

3位 エキノドルス ホリゾンタリス Echinodorus horizontalis

トップ5は、「今年初めて見た属の水草」にしなければならないと思っていました。しかしこれは絶対に外せないし、外してはいけないという使命感すら感じました。10年以上ぶりのワイルドエキノドルス、これは水草ファンの最も待っていたものであり、水草時代の再来を感じさせる吉兆であると感じさせられました。

ホリゾンタリスという熱帯性エキノドルスはひじょうに古くから流通していたにもかかわらず、今では何か別物の温帯性エキノドルスにとってかわられてしまっていることについて述べねばなりません。したがって、「charmで500円じゃん」というのは全くもって的外れなのです。それは黄鉄鉱は安いから純金も安く売れといっているようなものです。名前やタグ、そして値段だけを追いかけても何も得られないのです。そのものに向き合って違いを見出し、違いの根拠を見てとるようになること、それこそが植物を楽しむことだと思います。

 

2位 ピルラリア グロブリフェラ Pilularia globulifera

1970年代から書籍では名前だけ知られてきた水草で、しかも海外ではIAPLCに用いられるほどの水草であるにもかかわらず、日本には恐らく一度も導入されなかった水草です。デンジソウの仲間でありながら葉身がなくヘアーグラスのような姿であるという異常性はやはりすばらしいものです。ヨーロッパ原産なので耐寒性があると思われますが、くれぐれも逸出には気を付けてください。

 

1位 バリスネリア ルブラ (マイデニア ルブラ)Vallisneria rubra

バリスネリアには到底見えない、奇妙な植物です。原記載でもバリスネリアの仲間であることは明らかであるとしながらも、別属のMaidenia rubraとして記載されました。今回は増殖品が輸入されていますが、どういうわけか、あまりにも嬉しいことに雄と雌が揃っています。この雄と雌が揃っているというのはこの手のマニアックなトチカガミ科において最も重要なことで、ありがたすぎる話です。なぜなら、多くのトチカガミ科は雌雄異株なので、一株買っても増やせないのです(オテリアやブリクサの大部分が特にそう)。そのあたりに理解のある方が生産されているのだと思いました。さらに、雄と雌に草姿の違いがある様子も見てとれました。そのような植物はきわめて少ないので特筆すべきことです。こんな機会はまずないので、入手できそうな方は絶対に、雄と雌、両方入手してそだててもらいたいものです。損はしない筈です。そもそも、雄と雌が揃えられるバリスネリアは市販のものだと本種しかないと思います。バリスネリアの最大の魅力、それは雄花が水面にばらまかれて漂流し、ゴルフの穴のように水面に口を開けた雌花にキャッチされて受粉するという独特の受粉生態です。これを見ずして、「これでもバリスネリアなんだって」で済ませるのはもったいないにもほどがあるのです。

絶対雄雌揃えましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メモ:スリランカ便の”Aponogeton natans"について

スリランカ便2022ではアポノゲトンが入荷した。

しかしその状況は極めて混沌を極めたものだった。

まずはじめに、背景知識としてアポノゲトンの流通状況をまとめておきたい。

・アポノゲトンという植物の流通状況自体が混沌を極めている。

現在流通するファーム由来のアポノゲトンは以下のようなものが挙げられる。

・クリスプス

・クリスプス レッド

・ウンデュラートゥス

・アペンディキュラートゥス

・ナタンス

・ナタンス

・リギディフォリウス

マダガスカルの種類もファームから来るが、本当に生産されているのか非常に怪しく、現地の球根を養生しているだけの可能性があるので含めていない。

さて、私の調べではこれらはこのように対応する。

・クリスプス=A. crispusまたは広義undulatus どちらも流通する

・クリスプス レッド=A. crispusしか見ていないが赤いものも赤くないものもこの名前

・ウンデュラートゥス=A. crispusまたは広義undulatus どちらも流通する

・アペンディキュラートゥス=広義undulatusとみられるが雑種の可能性もあるので要検討

・ナタンス(国内ファーム)=A. crispusの花が白っぽいもの

・ナタンス(海外ファーム)=全くの不明種。アフリカの種かも。沈水葉は小さくろくにつくらず、短い長楕円形の浮葉ばかりつける。花は二又で、細長い種子をつけ実生で殖える

・リギディフォリウス=A. rigidifolius

 

ようするに、スリランカ便でなくともめちゃくちゃであるということは先に弁明しておく。実物を見て選ばねばならない業界である。

さて、スリランカ便にもどろう。

少なくとも関東には、「ナタンス」と「クリスプス」の名前で入荷した。

「ナタンス」は葉先が丸く非常に幅広の沈水葉主体の植物が輸入され、「クリスプス」は全て浮葉の植物だった。

栽培したところ、両者はよく似た植物に育った。(当方だけでなく他の方のところでもそうなったようにみえる)

 

 

 

いっぽう、関西には全く違うアポノゲトンが届いていたらしい。ようするに、クリスプスらし・・・い??クリスプスも入荷したらしい。

が、とにかく確かなこととして関東でこのような株の入荷は見かけられなかったし(見たかった~!)、関西で買った方のツイートによれば、関西のものにもどうも2種混じっている疑惑が…。

さて、関西の個体はさておいておいて、関東に入荷したアポノゲトンに関して…。

葉先は普通に入荷するクリスプスに比べて丸みを帯びる傾向があり、これは各方面で保たれたよう。ただ浮葉は入荷時こそ丸かったものの、その後細長いものを出すこともみられるように。たしかにクリスプスではない”何か”だな?という感想を持たせた。

さて、これらの株が結実を始めたのがこの頃の近況である。

Charmの店頭の株でまず”natans"の結実を確認したが、クリスプスでもナタンスでもない「何か」が成っていたので驚かされた。果実は見覚えのあるクリスプスのものよりさらに大型で周囲に3~5稜ないし3~5翼をもち、その稜の先端に数個の突起がみられた。

果実の形状で似ているものはAponogeton crispusとの異同に諸説あるAponogeton echinatusおよび、最近記載されたばかりのAponogeton nateshiiである。両者は胚の形状が全く異なるとされている(A. echinatusはA. crispusに似た細長いもの、A. nateshiiはらせん状に突起を持つ花のつぼみのようなもの)なので、今後の経過観察がカギになってくるだろう。

個人的にはA. echinatusではないかと思っている。A. nateshiiの記録はタイプロカリティに現在限局しているし、Bruggen, 1970ではA. echinatusが「A. natansとして」しばしばアクアリウムに使われるとあるからである。

現状、A, echinatusらしきものはアクアリウムでは見ていないので、生きた化石的なものなのだろうか。国内ファームが出荷しているA. natansと名乗るA. crispusらしきものも再調査が必要だと感じる。

 

 

カヤツリグサ科の水草を楽しもう

最近カヤツリグサ科に執着している。

果てには「カヤツリ来ないっすかねぇ」という話を大声でした結果、大量のカヤツリ輸入を起こさせ大損させかけてしまっている…本当に申し訳ございません。

まあ需要ない…ですよね.

 

というわけで、今回はカヤツリグサ科の水草の魅力を語ろうと思います。

 

ホシクサから水草に入った私にとって、姿かたちが若干似ているカヤツリグサ科は以前から好きなグループではありました。

しかしとりわけ興味を持つきっかけになったのは、とある池での調査の際です。

クロホシクサやミズマツバなどが沈水条件で水深50㎝ほどで生育している場所で、見慣れない水草が生育しているのを見つけて栽培してみたところ、ヒメガヤツリ Cyperus tenuispicaに育ちました。この種が水草であるということは殆ど述べられていませんが栽培するにつれ、水中での生育能力を持つだけでなく加温すれば多年草としてふるまい、穂から出芽して無性増殖も容易であること、ライトさえ強くすれば水上でのストックが容易であることなどがわかってきました。

その後、沈水状態で生育しているカヤツリグサ科を見かけ次第育ててみることをはじめてみたところ、タマガヤツリ Cyperus difformisやヒナガヤツリ Cyperus flaccidusも水中から生えていることがしばしばあり、実際に水槽内でも栽培できることがわかりました。但し、寿命が短くタネをつけると枯れてしまうものも多く、どれもが水草としてよい適性を備えているわけではないことも学びました。

ここで気付いてしまったのです。

カヤツリグサ科の沈水栽培はホシクサ科よりよほど簡単ですし、それでいて水生適性をもつものも多く、気にして見比べてみれば、結構水中形に違いがあるのです。へたなホシクサをやるより、カヤツリを片っ端から沈めてみた方が面白いのでは?と。

 

いまや「シペルスはヘルフェリーしか沈まない」のは幻想なのだとはっきりしました。シペラスはかなりの種が水生適性を持っていますし、ヒメガヤツリ、ツルナシコアゼガヤツリ、ヒナガヤツリのように野外でも沈水状態でみられるものが多く含まれます。

ほかの属にも目を通してみれば、ハタベカンガレイ Schoenoplectiella gemmiferのように自明に沈水生育能力を持ち、水槽栽培も容易なものや、シズイ Schoenoplectus nipponicusのように野外でも素晴らしい沈水形を見せてくれるものの栽培下で活用するのはなかなかコツが掴みにくいもの、クログワイ Eleocharis kuroguwaiのように生活史の一時期だけとはいえ美しい沈水葉を出し感動させてくるもの、オオハリイ Eleocharis congestaのように(折らないように)細心の注意を払ってやる必要があるものの育てて楽しいもの…などなど、あちこちの属に水中栽培が可能な面白い水草が見当たります。

 

世界に目を向けてみるとクログワイに近縁でランナーが直立して成長するエグレリア Eleocharis fluctuansや、ハリイのような生育スタイルでありながら特殊化の激しいラジアルヘアーグラス Eleocharis glauca、そしてマナウスシペルス Scleria sp.やフラグミテスspギニア Fuirena sp.といった正体が謎めいたもの…面白いものがゴロゴロ転がっています。

そして非常に美しく極めて沈水生活に適応しているもののいまだに輸入された話を聞かないウェブステリア Eleocharis(Websteria)confervoidesやアメリカでは水槽で育てる人がいるらしいSchoenoplectus subterminalis、生きた写真すら見たことがないアフリカの季節性湿地で沈水状態で生育するCyperus wailyiやマダガスカル版ハタベカンガレイのようなSchoenoplectiella heterophyllusなど、「まだ見ぬ水草」を多く含むグループでもあります。

 

さらに、東南アジアの採集紀行やかつてのカミハタインド便、今までの様々なワイルド水草の入荷を見回してみれば、謎の沈水性カヤツリグサというのは本当にたくさんあって、調べてもなかなか真相にたどり着けないことがしばしばです。他の水草がたいていすぐに何者か判明するのに比べると、奥深さを感じさせます。

 

面白いのが、沈水可能な種が様々な属で独自に発生していること、そして沈水栽培可能な種がいる属であっても水槽栽培できるものとできないものがあることです。

今のところ沈水可能な種を含むカヤツリグサ科は以下の通りです。

・Cyperus

・Eleocharis

・Schoenoplectus

・Schoenoplectiella

・Fuirena

・Scleria

・Isolepis

・Schoenus

他の属にも水中育成可能な種がいる可能性が大です(たとえばFimbristylis)が、まだ情報不足です。抽水性のものにも面白いものがいそうです。

同じ属内でも水中適性は様々です。

カンガレイ Schoenoplectiella triangulataやイヌホタルイ Schoenoplectiella juncoidesといった種は発芽直後に数枚の短い沈水葉を出し、その後シュノーケルのように茎をするすると伸ばして抽水植物に育ちます。しかしそれらの近縁種であるハタベカンガレイ Schoenoplectiella gemmiferはかなり長い間沈水形で生育可能で、ヒメホタルイ Schoenoplectus lineolataは茎の状態で沈水で育ちます。ヒメカンガレイ Schoenoplectiella mucronataは沈水葉を長く伸ばし、もしかしたら沈水で生育する場所もあるかも…事実、ハタベカンガレイのように茎状態で沈水して生育する個体群が海外にはいるようです。マルホホタルイ Schoenoplectiella hotarui globosospiculosusなどは水中での発芽能力に乏しく、水草と言えるかすら疑問です。

こうした様子から見るに、カヤツリグサ科は比較的水中への適応力が潜在的にはあるものの、水中と陸上との相互移行をおびただしい回数繰り返してきたグループと考えられます。

 

現地写真をみるに東南アジアの水辺などはカヤツリグサ科で満ち溢れていて、河川の水位が非常に上下する環境であるにもかかわらず多年性の種がみられる場所が多く見られます。そういった場所のカヤツリグサはおそらく沈水状態で休眠するか、水中生育することによって雨季を耐えているものと考えられますが、これにフォーカスした研究や個人観察例をなかなかみつけられず、まだ未知な点が多いです。

 

このようにカヤツリグサ科の水草はまだまだ探検の余地が非常にあって、水草の中ではカワゴケソウ科や南米のホシクサ科と並んで何も知られていないグループだと思います。さらに多くの種が世代交代が非常に速く増殖力も強く(Mapaniaなどの陰性種は例外な気がしますが)、今流行りのサトイモ科などの植物に比較して環境負荷をかなり小さく抑えられると考えられます。

というわけでカヤツリグサ科、水槽で試してみませんか?

 

 

 

 

Nymphaea nouchali のbulblet

ミャンマーから輸入されたNymphaea nouchaliの球根です。

一見したところ普通に見えますが、表面が何やらぼこぼこしています。

拡大すると、球根を包む軟毛に何かが”埋もれて”いるように見えます。

球根の下半分、根と根の間に集中しているようです。

少し触るとボロッと落下します。抵抗はあまりないです。球根にソケット状にはまっていることがみてとれます。

15個の小球根(bulblet)が外れました。

外れた小球根です。ひじょうに特徴的な増殖方法だと思います。

花はワイルド感のある地味なもののようなので、たいへん期待しています。

あとは、休眠性がどうかですね…。簡単に目覚めてくれるといいのですが。

熱帯アジアに分布するホシザキスイレン Nymphaea nouchaliについて

ニムファエア ノウカリ Nymphaea nouchaliは、世界の熱帯域に分布するBrachyceras亜属のスイレンであり、園芸において「昼咲きの熱帯スイレン」は全て本種の血をいくらか引くもの・・・と言っても過言ではない。

しかしながら、N. nouchaliには深刻な分類的混乱があり、また倍数性が極めて複雑であることも問題を難しくしている。

 

園芸に用いられる「熱帯スイレン」はおもにNymphaea capensisと呼ばれていた、アフリカ南部に分布する花弁数が多く花弁があまり尖らない系統をもとに改良されているものが多い。この種は現在、東アフリカから南アフリカにかけて広く分布するニムファエア ノウカリ ザンジバリエンシス Nymphaea nouchali zanzibariensisとされている。但し、N. n. zanzibariensisには様々な見た目の個体がいるので一概にまとめることは難しい。ザンジバリエンシスは花上がりがよく花がとても大きく花弁数も多いので、園芸に好まれるのも当然といったところである。

N. n. zanzibariensisには特殊なものとして、"N. colorata"と呼ばれていたものがある。”N. colorata"は球根の周囲に多数の小球根をつけるため殖やしやすく、花も雄蕊が赤く色づき時計草を思わせるような風合いがあるため人気も高い。オリジナルのコロラータおよび、タイに帰化した系統を親とするホワイトコロラータが流通している。

N. n. zanzibariensisと並んで改良によく使われているのが北東アフリカを中心に分布するN. caeruleaと呼ばれてきた、N. n. caeruleaである。エジプトでは長く珍重されてきた植物ということもあり、栽培されることも多いが葉の大きさに対して花が小さい問題もある。花弁はよく尖り、東南アジアの個体群の一部によく似ている。

N. nouchaliの近縁種としては、西アフリカ産で葉の中心にムカゴをつけるN. micrantha、北米南部~中米に分布し花を非常に高く上げるN. amplaなども園芸品種の原種として用いられている。また、アクアリウムではマダガスカルN. dimorphaがよく用いられている。

 

さて、華々しく、また様々な改良品種が作出されているアフリカや新世界のNymphaea nouchaliに対して、アジアのNymphaea nouchaliに関して述べられることはひじょうに少ないように感じてならない。

そもそも、”N. nouchali"という呼称自体が混沌を極めている。

まず、オセアニアを除く旧世界の熱帯域に生育する野生スイレンN. pubescensおよびN. rubraの、「夜咲きで大型の種」であるlotos亜属と、昼咲きのBrachyceras亜属の2系統しかない。オセアニアにはAnecphya亜属がいる。

この中でN. nouchaliという名称は長らく、lotos亜属のN. pubescensのシノニムとして扱われており、かわりにN. stellataが現在のN. nouchaliに相当する種の名称として用いられてきた。なお、アクアリウムで”N. stellata"として扱われる植物はN. rubraもしくはN. pubescensないし両者の雑種(?)であることも混沌を深めている。

さて、東南アジアには花の色がピンク、青、白の3色の野生スイレンがいて、花の大きさにも大小がある。それらをどう分類するかは混沌を極めてきた。

 

Hooker(1875)、Hooker &Thomson (1855)

N. stellata var. cyanea (中程度の大きさの青花)

N. stellata var. parviflora (小さい青花*N. stellataの基変種を含むのでN. stellata var. stellataと呼ばれるべき)

N. stellata var. versicolour (大花で白、青、紫、肌色)

 

Conard (1905)

N. stellata var. cyanea (中程度の大きさの青花、若干香りがあるもしくはない)

N. stellata var. versicolour (中程度の大きさのピンク花)

N. stellata var. stellata(白花が出現するのはこの種のみ)

 

Landon et al. (2006)

N. minutaは粗い鋸歯状の葉縁、少ない花弁数である点でN. stellataに似る(N. nouchaliではない、我々の意見ではこれは異なる種である)

 

Chomchalow and Chansilpa (2007)

(タイの個体群に関して)

N. nouchali var. cyanea (`Bua Khap` 青花)

N. nouchali var. versicolour (`Bua Phan‘および‘Bua Phuean` ともに青みを帯びた白色ないし薄青)

 

Ansali and Jeeja (2009)

(インドの個体群に関して)

N. nouchali var. nouchali=N. nouchali var. cyanea (花は~7㎝、薄青もしくはピンクもしくは白、芳香なし、花弁数12~20、長披針形から楕円形、2~3×0.5~1㎝、鋭頭)

N. nouchali var. versicolour (花は~12㎝、白もしくは薄ピンクを帯び、わずかに芳香あり、花弁数20~30、楕円形、尖形、3.0~4.5㎝×1.0~1.4㎝)

N. malabarica(インド固有、白花)

 

Guruge et al. (2017)

スリランカの個体群に関して)

N. nouchali var. nouchali (葉裏は紫~濃い青紫、葉柄は薄緑、花は青、直径4.5~9.6㎝、花弁数8~24、鋭頭、2.4~7.8×0.3~3㎝、6~25心皮)

N. nouchali var. versicolour (葉裏は赤茶色、葉柄は赤みを帯びた緑、花は白もしくはピンク、直径5~12㎝、花弁数8~28、やや鈍頭、鋭頭のことは稀、2.0~6.5×0.5~2.2㎝、7~22心皮)

 

さて、上記の頭の痛くなる記述をみてから写真を見比べてみると…

たしかに東南アジアの野生スイレンには2種かそれ以上がいる。

所謂「星咲き」を連想させるような、花が大きく花弁の先が鋭く尖ったように見える(実際には先は鈍いようだが…)方がN. nouchali var. versicolourで、それに比べると取り上げられることの少ない、花が小さく花弁数がやけに少なく、花弁の先はあまり尖らない(様に見えるがよく見ると尖っている)青花の個体群がN. nouchali var. nouchali・・・ということのようだ。

ピンクの個体群の所属はGuruge et al. (2017)では白花と同じクレードに入り、また葉の特徴からしてもそれを示唆するようなのでこれに従うこととするが、花弁の先があまり尖らず、花弁数が少なく、青というかピンクというか微妙な個体の写真もあって、ややグレーゾーンかもしれないとも思っている。

 

花弁の色はひとまず、あまりあてにならないのではないだろうか。げんに、タイの‘Bua Phuen`を青か白かと議論するのはなかなかに無謀という気がする。となれば、花の色はひとまず無視して葉の概形や葉裏の色で議論するなり、花弁の数や形状で議論したほうがよいように思う(あくまで私の感想だと、nouchali var. nouchaliのほうが卵円形、nouchali var. versicolorは中央付近で急にテーパーがかかり、また先端ですぼまるように見えるが…)。

ひとまず両者は別の植物であるように概形からは見える。また、分布域の広域にわたって同所的に生育するので将来的には別々の種として考えられるべきではないだろうか…とまで、私には思えてならない。(そう簡単に分けられないことも承知の上で。)

 

さて、東南アジアのNymphaeaはlotos亜属とBachyceras亜属しかない、と書いたが、”N. siamensis"(‘Jongkolnee`)がタイから記載されている。しかしこの個体は八重咲であって両者のどちらにも分類できない・・・とある。草体の形質からするに、Brachyceras亜属をもととした園芸品種である可能性が極めて高いと思われる。ただ、Brachyceras亜属のどの種をもとにしたのかは不明である。この種はタイに野生(野生化?)して生育していたもので、きわめて古くから育てられてきたものではないかと推測されている。

N. siamensisの特徴として、塊茎の周囲に無数の小塊茎をつけ、これで盛んに無性生殖することがあげられる。この形質は園芸種ではコロラータくらいでしか聞いたことがないが、コロラータとの直接の関係性を著者らのチームは否定しているようだ。

また、興味深いことに、タイ東部のラオス国境付近から青花および白花(白花だが花弁数は少なく花弁はふと短い)のN. nouchali var. cyanea(=nouchali var. nouchali)らしき植物(‘Bua Bae Muang`および‘Bua Bae Kao`)が確認されており、これらは稔性を持ちかつN. siamensisやコロラータのように多数の小塊茎で増殖する。

さらに、ミャンマーからも同様に小球根をつけて増殖する、‘Bua Bae Muang`に酷似した植物が輸入されてきたため、小球根で盛んに栄養増殖するタイプのNymphaea nouchali var. nouchaliがおそらくミャンマー、タイ、ラオスカンボジアに渡ってインドシナの広域に分布している可能性がでてきた。

これが自然な種なのか、はたまた人為的なかつての園芸植物の遺残なのかはよくわからないが、あまりに地味な花なので園芸品種というのは考え難いように思う。特定の増殖に有利な系統がメコン川の氾濫に乗じて拡散したのであろうか。

そう考えると、‘Jongkolnee`もこうした野生の栽培化しやすい系統をもとに、外来の品種群が入る前からタイ付近において改良されてきたのではないか?という気はする。

 

正直言って東南アジアのホシザキスイレンには謎しかない。ごく一般的な水田雑草であり食材であり観賞植物でもあるにもかかわらず、わかっていることの方が少ないといっても過言ではないのではないだろうか?

 

上述したように、東南アジアのホシザキスイレン Nymphaea nouchaliは想像以上に多様な形質の個体を含んでいる可能性がある。

しかしながら、GBIFで検索してみたりするとわかるように、N. nouchaliの変種に様々なアフリカのスイレンを含んだり、北米のスイレンと混同されるなどしたために園芸品種によるミーム汚染がはなはだしい。

情報汚染だけでなく、帰化や交雑による混乱も始まっている。N. micranthaを片親に持つドウベンはいまや東南アジア各地で侵略的外来種と化し、コロラータはタイで野生化し、他の園芸スイレンもあちこちで帰化していると思われる。スリランカでは外来のN. nouchali近似種の帰化および交雑が深刻化しており、またN. nouchaliと混同される問題も発生している(D. Yakandawala and K. Yakandawala, 2011; K. Yakadawala et al., 2017)

上述したような多様性を楽しめるのは、いつまでだろうか。謎が謎のまま滅んでいってしまわないことを切に願うばかりであるが、そうなる未来はもうすぐそこまできている。

今後の課題としてぱっと思い浮かぶことを列挙してみる。

1.スリランカに2種あることは明らかだが、他の地域でも本当に2種なのか?さらにいえば、熱帯アジア全域に分布するN. n. nouchaliおよびN. n. versicolour、それぞれの地域変異を踏まえた上での両者の区別点はどこにあるのか?スリランカにおける形態的差異だけで語るのにはまだ不足があるとしか思えない。

2.熱帯アジア全域にわたって2種のホシザキスイレンが同じ地域に分布しているようだが、両者のすみわけや生殖隔離があると考えないと不自然である。両者を形態的および遺伝子的な観点から分類したうえで、ニッチの相違や染色体数、また受粉能の相違を比較すべきであり、それを踏まえたうえで別種とすべきではないか。

3.熱帯アジアのN. n. versicolourは一見したところN. n. caeruleaに、N. n. nouchaliN. dimorphaに著しくよく似ている。そして、Nymphaea subg. Brachycerasの系統解析において、なぜかアジアのサンプルがあまり用いられていない。少なくともスリランカにおいては2種あることが分かった以上、両種を組み込んだうえで系統解析し、Brachyceras亜属の分類を一から練り直す必要があるのではないだろうか?特にマダガスカルからは花の小さいNymphaeaが知られてきた経緯がある。インド洋をまたいで遺伝的交流があったとしてもおかしくないように思う。

4.そもそも、世界のNymphaea subg. Brachycerasの形態的識別点が十分に整理されておらず、結局Conard(1905)を参照することになる…ように思っているのだが、もうそろそろアップデートが必要ではないだろうか。

5.人為交配による改良品種の作出がカオスの域に達しようとしている。しかし、原種の特徴がはっきりしないために混沌を極めるばかりで、何を目安に見ればいいのかわからない。それぞれの原種において、”座標軸”になるような典型的な個体の全草および葉面、葉裏、花写真、花弁数、雄蕊数、心皮数、根茎の概形および子株の出方などが記録され、データベース化される必要があるのではないか。それに付随して、きちんとした原種の系統保全が急務になると思われる。

 

Guruge, S., Yakandawala, D., & Yakandawala, K. (2017). A taxonomic synopsis of Nymphaea nouchali Burm. f. and infraspecific taxa. Journal of the National Science Foundation of Sri Lanka 45 (3) 307-318.

Hooker, J. D. (1875). Flora of British India, volume 1, pp.113-116. L. Reeve and Co., 5, Henrietta street, Covent Garden, London.

Hooker J. D. and Thomson T. (1855). Flora Indica: being a Systematic account of  the Plants of British India, Together with Observations on the Structure and Affinities of their National Orders and Genera, volume 1, pp. 243-244. W. Pamplin, London, UK. 

Conard H. S. (1905). The Waterlilies: a Monograph of the Genus Nymphaea Carnegie Institute of Science, Washington DC, USA.  

Landon, K. C., Edwards, R. A., & Nozaic, I. P. (2005). A New Species of Waterlily, Nymphaea sp., from Madagascar. Water Garden Journal20(4).

Chomchalow N. and Chansilpa N.N. (2007). The role of `Suthasinobon` Waterlily complex in introgressive hybridization, AU Journal of Technology. 11(02): 67-76.

Ansari R. and Jeeja G. (2009). Waterlilies in India:Taxonomy and Cultivation of the Genus Nymphaea L.
(Nymphaeaceae), p. 88. Indian Association for Angiosperm Taxonomy, India

Puripunyavanich, V., La-ongsri, W., Boonsirichai, K., & Chukiatman, P. (2013, July). Nymphaea siamensis, the new species of waterlily in Thailand. In VI International Symposium on the Taxonomy of Cultivated Plants 1035 (pp. 87-98).

Yakandawala, D., & Yakandawala, K. (2011). Hybridization between native and invasive alien plants: an overlooked threat to the biodiversity of Sri Lanka. Ceylon Journal of Science (Biological Sciences)40(1).

Yakandawala, D. M. D., Kumudumali, D. P. G. S., & Yakandawala, K. (2017). Evidence for interspecific hybridization between exotic ‘Dam manel’(Nymphaea× erangae) and native ‘Nil manel’(Nymphaea nouchali Burm. f.) in Sri Lanka. Ceylon Journal of Science46(3), 81-91.

 

問題提起:淡水には水草の森、海には海藻の森…なのはなぜ?

水草」といえば維管束植物で、「海藻」といえば藻類の謎・・・逆に言えば、なぜ「淡水海藻」も「海草」は例外的なのか。

 

 ずっと気になっているテーマであり、おそらく水草趣味にまつわる謎の最大のものだと思っている。

水草水槽においてしばしば藻類に悩まされるが、もし藻類がグリーンロタラくらいの大きさがあったらどうだろうか?

たぶん、藻類アクアリウムが流行っていたのではないだろうか。

海水ではげんに海藻レイアウトが行われ、水草のように育てられる大型藻類としてイチイヅタやクビレズタが取引されているではないか。

 

(多くのアクアリストの水槽や崩壊した日本の平野部の水辺とは裏腹に)淡水域において、藻類に比べて水草が圧倒的に優勢なのは疑いようもない。

長さ数メートルにもなる”森”を水中に作る藻類はたった1グループ、シャジクモ類しかおらず、しかも、そのシャジクモ類も水草に比べてみれば、とてもちんけで小型のものである。

藻類は小さいもの…というのも、幻想ではないだろうか?

淡水でもよくみられる緑藻においてもミルやクビレズタ、イチイヅタといったそれなりに大型になるものが多くいる。

淡水では黒ひげゴケとしておなじみの紅藻にもテングサのようにかなり大型のものが多くいる。淡水にもそこそこ大型のものはいるが、カワモズクやオオイシソウ、アヤギヌ(レッドファイヤーモスとか)のような地味なサイズ感である。

褐藻類はコンブやワカメといった巨大な「海藻」の多くを含み、長さ60mにも達するものがあり、水草では到底なしえない次元の巨大化を達成している。淡水では「稀」ではあるものの(10種ほど淡水種がいる)、汽水域に進出する種がいくらかいるのでいつ淡水に進出してもおかしくない。

それに対して海草の貧弱さは指摘するべくもない。実質的にヒルムシロ科とトチカガミ科しかないではないか。淡水において最強クラスに水中に特化した2科が海にも進出した・・・が、あまりうまくいっているようには思えない。なにせ、世界の海草は60種ほどしかいないのである。形態的多様性にも乏しく、いまだに一見したところヒルムシロ科なのかトチカガミ科なのかわからない。

 

それとは全く逆に、淡水域において「海藻の森」はシャジクモ藻類によるものしか聞いたことがなく、形態的にも多様性に乏しい。

非常に興味深い現象ではないかと思う。

おそらく淡水域と海水域の根本的な環境の違いが原因だと思っていて、おそらくそのあたりに自然環境や水草水槽における藻類と水草のバランスを決める答えがあるように思えてならない。