水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

アポノゲトンについてーアジア産の穂が1本のものを中心にー

世界的には大所帯であるにもかかわらず、日本にはいない――そういう植物にはなかなかロマンがあるように思います。しかも、それが比較的簡単に栽培できるとなると。

 

レースソウ科/アポノゲトン科 Aponogetonaceaeはそんなものの一つではないでしょうか。

 

レースプラントは難しいしアポノゲトンといえば休眠だろう、と言われてしまうかもしれません。しかし、ここで取り上げる穂が1本のタイプのアポノゲトンの仲間はCO2添加なしでもよく成長し、休眠しにくく、したとしてもちゃんと復活し、他の草に埋もれて消えてしまったり水槽から水を抜いてしばらく置いておいたりとしても、しばしば復活してくれるタフな連中です。

さらに、水槽内で結実し簡単に実生繁殖させられる点で、いわゆる他の水草とは異なるアプローチの楽しみ方ができます。

 

しかもこのグループにはかなり奇妙な構造を持つ種を多く含み、水草を語るにあたって避けがたいところがあります。

 

しかしこの仲間の扱いといえば、「レースになってないレースプラント」のようなものが多く、げんに市場で最も雑な扱いを受けているロゼット型水草の一つという印象すらあります。

 

特に、栽培向きのアジア産の花穂が分岐しないタイプに関してはとりわけです…。

入荷は不定期ですが、束になって二束三文で売られていたり、同じロットに複数タイプが混じったまま売られていることもあります。値段はほとんど時価です。

 

そんな、水草としての優秀さと扱いのがあまりにも釣り合わない、もっと評価されるべき水草について、今回は書いていこうと思います。

 

西洋において最初に知られるようになったアポノゲトンは、アポノゲトン ナタンス Aponogeton natansです。この種は Rheede によってParya kelangaと記述され(Hort. malab., XI, p.31, fig.15, 1692)、その後リンネによって Saururus? natansとして記載されました(L. mant., 1771)。その後、リンネの息子であるLinnaeus filiusは1782年にこの種をAponogeton monostachyon(1つの穂をもつ、アポノゲトン)として、キボウホウヒルムシロ Aponogeton distachyos(2つの穂をもつ、アポノゲトン)とあわせて再記載しました(Suppl. Pl.: 215 (1782))。

注釈1 Aponogeton monostachyonはSaururus natansと同種のため、後続異名として種小名は残されてAponogeton natansとなった経緯があります。Aponogeton distachyosに関しても、この記載にはAponogeton distachyonと書かれているようです。

 

ここで私は、はじめからアポノゲトンをカタカナで表記しました。

 

これには理由があります。

 

このアポノゲトンという語は、属名となる前から、アポノゲトンではない、とある特定の水草を指す語として用いられていたためです。もともとはアバノ(Abano terme)にあった温泉 Aquae aponiの周囲に生えるもの(geton)という意味※で、少なくともPontederaが1720年には用いているようです。この語がさす植物はイトクズモ(ミカヅキイトモ)でした。事実1756年にJohn Hillがイトクズモに対してAponogetonという属をあてています。

※注釈2 ポタモゲトンでは、Potamo(川)の隣人(geton)となるがDioscoridesは川に生えるのでその名がある、と書いているらしい: Potamogetonは川の中に、Limnogeton (昆虫:カイススリ)は池の中にいるので、学名としては川に生えるものくらいのニュアンスでいいのではと思っている。)John Hillの名が先行しているので、Aponogetonの属名は保存名扱いです。

 

したがって、アポノゲトンという名前自体は当時から既にある、イトクズモをさす語だったのですが、Linnaeus filiusがいったいどうしてイトクズモを指す語を属名にしたのかに関しては、いまいちはっきりしません。

 

さて、アポノゲトン科は日本の植物からすると、非常にキメラ的な植物です。全草をみると、一部のオモダカ科やサトイモ科を彷彿とさせます。とくに、根が下方では脱落し、葉の直下、根茎の上半分だけから出る新根の組み合わせは、サトイモ科でよく見かけるものと似ています。(ちょうどコンニャクやマムシグサを彷彿とさせます。)葉は平行な主脈が横方向の脈ではしご状に連結されており、これまたある種のオモダカ科や、一部のヒルムシロ科を連想させるところがあります。

花をみると、長い柄をもつ細長い穂状の花序は一見するとヒルムシロ科のようですが、蕾を見ると、一見サトイモ科を思わせるような苞に包まれています。数個の離生心皮を中心とした花は一見するとヒルムシロ科にやや似ていますが、花被片(ガクおよび花弁の総称)はより少数ですし、単子葉類によく見られる3放射性も、ヒルムシロ科で顕著な4放射性もはっきりしません。種子は無胚乳種子で、その殆どが巨大な子葉からなります。そして多くの種で種子内ですでに幼芽が伸長しており、散布とほぼ同時に発芽するものも多いです。

ほとんど事実上の胎生種子のようなもので、穂の上で早くも発芽してしまうものもナタンスで流通するA. cf. robbinsoniiでみたことがあります。しかし、この奇妙な発芽生態が凡てのアポノゲトン科に当てはまるわけではありません。

 

日本人がこの奇妙な水草に触れたのは、やはり大正時代のレースソウ/レースプラントの導入が初であったようです。ただし、現在につながるレースソウの導入は戦後のことであり、また本稿では花穂が分岐しないアポノゲトンを扱うため、これ以上は触れません。

 

さて、日本が台湾に進出すると、日本にはないさまざまな植物に遭遇することになります。

そのひとつに、最も北方まで分布するアポノゲトン属※であるAponogeton lakhonensisがいました。この種にはAponogeton taiwanensisと名付けられ、「ウリカワヒルムシロ」という和名がつけられています。

A. lakhonensisは緩い流れのある水路からときに水田にも進出する種です。ロゼット状の浮葉植物であり、ヒルムシロによく似た沈水葉および浮葉と、黄色い穂状の花を咲かせます。ウリカワは水田に生息するオモダカ科のロゼット型の植物で、ヒルムシロは同じく水田に出現する浮葉で長い茎をもつヒルムシロ科植物ですから、日本人からすると「キメラ的な形態を持つ」と言わざるを得ないアポノゲトンの姿をよく捉えた良い和名だと思います。

なおこのウリカワヒルムシロAponogeton lakhonensisですが、台湾から東南アジアの広域、インドまで分布するアジアで最も広い分布域を持つ種かつ立派な沈水葉をもつにもかかわらず、どういうわけかアクアリウムに定着していません。

もしかするとこの理由はこの種のアポノゲトンとしては少し変わった(そして植物としてはやや平凡な)繁殖生態にあるのかもしれませんが…のちに述べましょう。

※注釈3: Aponogeton taiwanensisは現在ではA. lakhonensisのシノニムとされることが多いです。ヒマラヤにA. undulatusがいるという話はありますが、それとともに北限のアポノゲトンといえます。

 

日本における現在につながるアクアリウム、とくに水草水槽の歴史はやはり戦後にあります。アポノゲトン類の初出はもちろん古い部類なのですが、ここで触れる穂が分岐しないグループの所出がどこにあるのかについての資料は集められていません。また、葉による同定が難しいためにどの種が実際に流通していたのかの判別は写真からでは難しいです。

東南アジアにおけるアクアリウム用の水草輸出は1950年代にすでに始まっており、1950-60年代にはこれら栽培材料をもとにしたり、参考とした種の記載が多く行われています。こうした水草の一部は日本にも入ってきていたものと想像されます。

1990年代から2000年代にかけてさまざまな水草が日本に採集、輸入されましたが、アポノゲトン属に関してはそこまでの注目を浴びなかったようです。

少なくともこの時期の野外採集水草で、注目を浴びたアポノゲトン属は少なく、現存するものも稀ですので、ここでは多くを語りません。ただ少なくとも、コレクターズアイテムとしての扱いはあまり重視されなかったようです。

種子がばら撒かれ結実して増えると言う増え方はあまりコレクションに適さず、複数株が開花すると交雑するかもしれないと忌避されたり、レースプラントをはじめとした複数分岐の花穂をもつマダガスカル産種がしばしば突然休眠してそのまま休眠を打破できないと言うトラブルに見舞われることなどの理由もあったのかもしれません。

 

現在流通するアポノゲトン属は殆どが産地情報や由来が不明な株で、ファーム由来のものも名前と実情がしばしば一致しません。

したがって、由来や採集者の話は一切しません。

もとから、人より草見ようぜ、それが何であるのかはタグではなく、実物を見て、育てて知ることにしよう、というのが私のスタンスです。そして楽しむためには、まず資料が必要です。

ここからは、ものが基本的にわからないことを前提として、安価で手ごろなものが多いアジア産アポノゲトンを楽しむ方法について書いていきます。

 

2026年現在私が確認する限り、1株あたりの単価が2000円未満のアポノゲトンは1種を除いて穂が1本で分岐しません。

そのたった1つの例外が「アポノゲトン ナタンス」で流通する、A. robinsoniiに似た(おそらくそのものの)不明種です。ナタンスとして流通するA. crispusもあるので、ここではこの種も共に扱おうと思います。すなわちここで扱うのは、クリスプス、「ナタンス」、「リギディフォリウス」「ウンドゥラートゥス」あたりです。

2000-5000円ほどで取引される高額なアポノゲトンには穂が複数に分かれる不明種がいくつかいます。(「ロンギプルムロスス」で流通するものの一部など)これらを葉の外見上の類似から穂が1本のものと交雑したものが由来とする意見もありますが、基本的に株別れはしにくく、有性生殖でないとうまく増やせないアポノゲトンの都合上、よほど稔性の高い雑種でもない限り大量に雑種が流通するとは考えにくいですし、自家受粉でよく結実するという観察からもやや不思議です。本当に稔性が高いのなら、生殖隔離が疑問ですから…。組織培養で雑種を量産しているのなら、それはそれで興味深いです…。(ぜひその技術を是非レースプラント等の複数の穂をもつマダガスカル産種群に生かしていただきたいところです、と思います。)

 

育て方

ここで扱うアポノゲトンはどれも、もっとも栽培が簡単な水草の一つです。

ある程度pHの低めの(あるいは下がってしまっている)水槽であれば、あまり細工をせずとも育てることができますし、高いpHにも順応します。ソイル底床で魚を飼っていて、アマゾンソードもうまく育たない…と言う方などは、ぜひ試してみてほしいです。

また、睡蓮鉢でも楽しむことができます。クリスプスや「リギディフォリウス」、「ナタンス」などは浮葉を出し、水槽とは違った姿を見せます。クリスプスなどに関して東京で屋外でも越冬できたという話すら聞きますが、念のため球根だけでも室内に取り込んだ方が無難だと思います。

増やし方は3タイプに分かれます。現状流通する安価なアポノゲトンの大半を占めるA. crispusと「ナタンス」では、巨大な種子をつくり散布直後に発芽するため、親株と同じ環境でタネから育ってきます。株別れでは基本的に増えません。「リギディフォリウス」で流通する植物は、盛んに分球するため株分けで増やせます。「ウンドゥラータス」などは、花茎状の茎をのばしてその先端に子株がつくので、それを切り取って増やします。

 

では、種までの検索表にうつろうと思います。

 

種までの検索表

対象

東南アジア、南アジア、パプアニューギニアまでの種および、現在流通している個体群を対象としました。オーストラリアの種は検討に含めていません。

 

方法

各種の記載および既存の検索表をもとに、アクアリスト向けに検索表を組み直しています。アポノゲトンの分類は、伝統的に胚の形態をベースにしています。ただし、結実が確認できない場合でも先に進めるようにしました。

流通名「リギディフォリウス」は花色および根茎が独特ですが結実を確認できていません。

 

0-1. 花序は2本

0-1-1.花は紫色、雌雄異株、しばしば抽水性

 →A. satarensis 流通なし

0-1-2. 花は黄色から白色、雌雄同株、通常沈水から浮葉性→A. robinsonii (広義)

細葉で沈水傾向の強いものをA. eberhardtiiとする意見もあります。

流通 Da nangのA. robinsoniiとよばれているものはA. eberhardtiiと呼ばれる個体群と思われます。「ナタンス」として流通する謎種はおそらくA. robinsoniiだと思いますが、2本の花序をもつ種はアフリカにかなりの種数がいるため、それらをすべて否定出来てはいません。

0-2. 開花していない、あるいは花序は1本

→1.

1. 胚珠4以上、あるいは結実した心皮には、4以上の種子が入る。種子は幼芽が目立たず、通常の種子に似る

→2. (このグループは知る限り流通なし)

 2-1. 花は黄色、2重の種皮をもつ、幼芽を欠く→A. lakhonensis 

 2-2. 花は黄色、種皮は1重、幼芽は小型で目立たず(子葉に覆われほとんど見えない)、葉は細長く硬く、主脈と側脈のなす角度は約50度(A. rigidifoliusに似る)→A. loriae

    2-3. 花は白からクリーム色、種皮は1重、幼芽は小型で目立たず、(子葉に部分的に覆われ)葉は細長い。主脈と側脈のなす角度は約70度→A. womersleyi

 2-4. 花は白〜桃〜紫色、2重の種皮をもつ、幼芽を欠く→A. natans

 

1.開花していない、あるいは結実していない、あるいは胚珠2以下、あるいは心皮あたりの種子数は1または2で、種子は大きく幼芽が内部で成長しており、放出とほぼ同時に発芽する

→3.

 

3.以下の特異な形質を持つ。根茎を伸ばす、あるいは分球する

→4.

3. 以下の特異な形質を持つ。ランナー様の子株をつけた器官を伸ばす

→5.

3. 以下の特異な形質を持つ。抽水性である

→6.

3.上記に挙げた特異な形質を持たない。

→7.

 

4. 根茎で栄養増殖するようなもの

4-1. 葉は細く根茎は細かく分岐しくびれがあるため分球様。条件により浮葉をもつ、花は疎につき、黄色、幼芽未確認→「リギディフォリウス」で流通する植物

4-2. 根茎は長く円筒形、葉は太く、成熟した花序は間を開けた輪生状になる、幼芽は胚の中央付近やや下方につく、花は(白〜緑色〜?:個人観察)〜ピンク、葉脈と側脈のなす角度は90度に近い→A. kannangarae

4-3. 根茎は円筒形(でよく分岐し?)、葉は細く、花は白から緑色、幼芽は胚の下端につく。花は白〜緑色、花は螺旋状につく(現記載にはない)、葉脈と側脈のなす角度は45度に近い→A. rigidifolius

4-4. 根茎は数珠繋ぎ状。花はピンクから紫。結実率は低い。しばしば抽水性→A. bruggenii

4-5. 根茎は不整形でよく分蘖する。葉は先端が丸いさじ状。花未確認。

→アポノゲトン'バンメトート'で流通する植物。個人的にはA. robinsoniiの沈水葉に似ている様に思っているが、栽培が気難しく確認できなかった。

4-6. 根茎はやや伸長するが明らかな分岐はなく、円筒形で匍匐する形態でもない

→3.に戻る。

 

5.花茎状の茎の先端に子株をつけて栄養増殖するもの

5-1. 花が確認でき、花被(花びら状の部分)は細長く、先端に向けて幅広になり、突出してよく目立つ(この検索表にある種の中では突出して変わっている)→A. undulatus 狭義

5-2. 花が確認でき、花被は伸長せず短く、横長で目立たない→A. dassanayakei

注:花も果実もA. crispusによく似ている。スリランカから記載されているが、Bruggenはよく似ている可能性のある標本をカチンから確認しており、より分布が広い可能性がある。

5-3. 花が確認できない

→同定不能なA. undulatus種複合体。

複数の染色体型をもち、おそらく複数種を内包している。なおA. undulatus狭義はほとんど滅多に咲かないため、実質的に開花を確認できるまでほとんどがここに入る。

 

6.抽水から浮葉植物で、沈水葉はほぼないもの。

6-1. 数珠状の根茎を持ち、結実率は低いが大型の胚をもつ→A.bruggenii

6-2. 根茎は単純。

→A. natans を疑いつつ、果実が得られれば2.に戻って確認。スリランカのA. natansは少なくとも抽水から浮葉性とされ沈水葉を欠くようであるが、他の種(A. jacobseniiなど)でも抽水型の観察例はときにあるため。

 

7.胚(果実ではなく、その中に入っている緑色の部分)に付属体(突起)をもつ

→8

7.胚に付属体(突起)を持たない

→9.

7.胚を確認できない

→3に戻る

 

8.胚に付属体(突起)をもつもの

8-1.胚に付属体(突起)を1つ持ち、全体として二叉に見える。幼芽は中央付近にある→A. wolfgangianus

(原記載では付属体なしとしているがどうみても付属体であり、Chougule et al., 2023の会議論文アブストラクトでも付属体ありと数えているため実務上ここに入れた)

8-2.胚に付属体を3-4並べ、幼芽は頂点にみられる→A. appendiculatus

8-3. 胚に螺旋状の付属体をならべ蕾の様な形態をとる→A. nateshii

 

9.胚に付属体(突起)をもたないもの

9-1. 花被(花びら状の部分)は細長く、先端に向けて幅広になり、突出してよく目立つ(A. undulatusに似る)→A. microphyllus

9-2. 幼芽は胚の中部につく。葉は幅広く、浮葉は稀(筆者より: ウルバケウスに似た印象をうける)→A. jacobsenii

*Bruggen本人の回顧録により、Bruggen(1970)でA. echinatusとされていたものがA. crispusで、A. crispusとされていた幅広のものをA. jacobseniiとして記載したとのことです。(Bruggen,1988)

9-3. 幼芽は胚の下部につく。幼芽を収める溝の幅は広い。浮葉をもち、葉の形は幅広な披針形。 しばしば果実に突起を複数持つ。

Aponogeton crispus (=A. echinatus)

*A. dassanayakeiの子株のない株に関して: A. crispusとの違いは、読む限り胚、果実、花ともほとんど差がありません。根茎がA. dassanayakeiではやや細長いとされますが…縦横比の記載がなく、図及び写真を見る限り、根茎や葉だけで見分けられるかは疑問です。

 

参考文献

Planchon, J. É. (1844). Observations sur le genre Aponogeton et sur ses affinités naturelles. Annales des Sciences Naturelles; Botanique, série 3, 1, 107–120.

van Bruggen, H. W. E. (1970). Revision of the genus Aponogeton (Aponogetonaceae). Blumea: Biodiversity, Evolution and Biogeography of Plants, 18(2), 457-487.

van Bruggen, H.W.E. 1988. Aponogeton jacobsenii. Het Aquarium 58(11): 288–290.

van Bruggen, H. W. E. (1972). Aponogetonaceae. Flora Malesiana-Series 1, Spermatophyta, 7(1), 213-218.

Manawaduge, C. G., Yakandawala, D., & Les, D. H. (2016). A reappraisal of leaf morphology in Aponogeton natans (Aponogetonaceae). Phytotaxa, 265(1), 095-097.

Manawaduge, C. G., Yakandawala, D., & Les, D. H. (2016). Morphometric analysis reveals a new species of Aponogeton (Aponogetonaceae) in
Sri Lanka. Phytotaxa, 275(3), 243-262.

Chougule, R., S, Yadav, M.M. Lekhak.(2023) Embryo morphology of Aponogeton and its taxonomic significance. Conference Paper. XLVI All India Botanical Conference of the Indian Botanical Society and the international symposium on Synergy in Plant Science and Sustainable Future-2023, Sant Gadge Baba Amravati University, Amravati, Maharashtra, India (Abstract)

De Silva, M. A., Deshaprema, K. M. S., & Manamperi, J. P. J. (2016). Aponogeton kannangarae, a new species of Aponogeton (Aponogetonaceae) from Rakwana hills, Sri Lanka. Phytotaxa, 272(3), 220-224.

Yadav, S. R. (2017). A new species of Aponogeton (Aponogetonaceae) from India with critical notes on embryo morphology.

Wakkumbura, J. R., Ariyarathna, H. A. C. K., & Yakandawala, D. M. D. (2026). Re-evaluating the species limits of Aponogeton kannangarae and Aponogeton jacobsenii using ISSR data. Ceylon Journal of Science, 55(2).

 

 

 

マルチスペクトルランプについての所感と、湿地帯水槽への期待

勿論ながら流行と衰退はどの業界にもあるものですが、水草関連の用品で最近気にしているのはライトの色味です。

 

暖色蛍光灯→青緑系蛍光灯/青緑系メタハラ→青白色系LED→赤・青追加白色LED→RGB(全体としては青白)→マルチスペクトル(電球色に近い暖色)

 

というような流れになっているように思います。

栽培に関して言えば、室内ライトでは維持が難しいような、全日照を好むような植物でも対応できる点でマルチスペクトルにかなりの優位性があると思います。アガベなどのバリバリ全日照が基本の植物を育てるためのライトだけはあるな、という使ってみての感想でした。なお、これは照量の問題ではなさそうに思います。(追試験する必要はありそうですが…マルチスペクトルの暗い端っこの領域でも、通常照明では厳しい植物が育っていたことがありました。)

また、他のライトでも栽培できるような水草でも、マルチスペクトルのほうが開花しやすいのでは?という使用感や、同様の感想も聞いています。

 

ただ、全体の色味として、現行のマルチスペクトルランプはかなり暖色が強く、さらにスポットライト的な製品が多いので、メタルハライドランプ以上に光と影がはっきりするように思います。陽だまりを作るランプ…いや、爬虫類のバスキングランプを発展させて植物も育つようにした、というか、そんな印象でした。

 

さて、これをどう使うべきだろうか?ということについて、(レイアウトを普段は基本しない人が、他人の作例を観察したうえでの机上の空論的な)考察です。

 

1.ライトを複数組み合わせるとちょっと不自然になりそうだな?

基本的に観賞魚用ランプはバー型に細長く発光素子を並べており、その光の向きは基本的に、横倒しにした三角柱に近いものになります。(アクロTriangleのような。)

メタルハライドに関しても発光部は横長であり、反射板がついているために、全体としては横倒しにした三角柱をうんと縦長にしたような形になります。スポットランプ型マルチスペクトルLEDと比較してみると、メタルハライドランプもほぼ面光源として近似していいかなという認識です。なので、どちらにしても前面から見るとほぼ平行に上から光が降ってくる形です。(ヴォルテスはやや変わっていましたが、あれは螺旋状の蛍光管を発光させて反射板で散らすランプなので、やはり比較的散乱はされる印象でした。)

しかしアクアリウム用のマルチスペクトルランプはコンパクトに並べられた強力な発光素子から円錐形にビームが直射されるような構造になっているものが多く、メタルハライドランプに比べても強烈に陰影が目立ちます。

ここで陰影の向きにけっこう人は敏感で、複数の向きに影があるとみていて落ち着かなくなりがちです。同様のことはレイアウトに限らずいえて、建物の照明などでも、なるべく複数の方向からランプを照らしたり、影ができにくいように散らしたりする設計が多いです。(シーリングライト売り場をその目線から見て歩くと楽しい。)

 

ただ、この影のできかたがすごく自然に見えるというのが、むしろこのランプの魅力でしょう。となると、ランプが照らす円錐形の照射範囲に合わせて、水槽も円筒形に近い形、つまりキューブ型水槽がベストであろうと思いました。

もし水槽サイズを増す場合、水槽に合わせてランプの本数を増やしたときも、方々に置くのではなく中央に集約させた方がこのライトの特性を生かせるように思います。

そして、横長水槽の凹型構造よりも、凸型構造、またはキューブ水槽での片側によせた三角構図のほうがよく似合うと思います。というのも横長水槽で凹型にしようとするとどちらかの山が暗くなるか、真ん中だけ明るい、となりやや違和感が…。

 

2.せっかく抽水植物を育てられるのだから

個人的に注目しているのがこのポイントです。従来のLED・メタハラ・蛍光灯ではやはり抽水植物を育てるにはかなり不満を感じることが多く、どうしても外に比べると貧弱になってしまうという面がありました。耐陰性の強いもの…となると、結局は水に強い観葉植物の根を水に漬けて…という、湿地帯というよりジャングルの木陰のような印象の水景になってしまいがちでした。(サトイモ科とエキノドルス以外実質的に抽水植物の選択肢がなかった、という感があります…。)

しかし、満足に抽水植物を育てられるランプがあるとなるとだいぶ方針が変わります。抽水植物を積極的に使った、横から見る湿地帯断面というレイアウトが可能になるでしょう。抽水植物は大気中で活発に光合成し、光合成で生じた酸素に富むガスを土中に(しばしば加圧)対流して根表面を好気化させながら育つので、土中環境やセットアップ後の安定性も改善しうります。(CO2が普段あったほうがよい水草も、抽水植物の足元に植えるとなんだかんだ育つケースが多々あります。これはおそらく根周囲の好気化と抽水植物根からの有機酸供給およびCO2供給が絡んでいるとは思います。)

また水槽内では敬遠されがちだった泥系用土(荒木田土など)も、強力なライトと抽水・浮葉植物の組み合わせであれば使いようが出てくるかもしれません。(屋外スイレン鉢と同じように。)

げんに水田で水草がよく育っているし屋外栽培下でもイネ+沈水植物はよく育つので、あれの再現ができれば最高です。

 

3.現地再現風レイアウトによさそう、と思います

1で述べたように、電球型マルチスペクトルは照射範囲の制約から、従来型のランプで使われてきた「全面を均等に照らす」使い方にはあまり向いていなさそうです。

しかし、自然な陰影のでき方や、栽培可能な植物の幅広さ、とくに抽水植物の栽培適性からすると、その適性は現地再現風レイアウトのほうにあるように思われます。

魚を採集してみるとすぐ気づくことですが、水中に立ち並んだり、オーバーハングした抽水植物の影は様々な生き物のゆりかごです。そうした環境を水槽で再現できるというのは、非常に大きなポイントではないでしょうか。

 

4.水草をより簡単に楽しめる…かも?

また、マルチスペクトルランプは水草の楽しみ方を広げるとともに、省設備での楽しみ方を作れるのではないかと思います。

現状ではCO2添加装置がきわめて強力かつ有効なツールだけに、CO2が実質的に必須アイテムです。しかしこれは水槽に入れる=水中で育てるという前提があったためです。

水槽に植物を入れる

→1.CO2添加設備を整えて水中に植物を入れる

→2.ライトをグレードアップして抽水植物を育てて花を楽しみつつ、なんなら水中の植物も狙えるかどうか試してみる

という選択肢になれば、CO2添加装置を薦めるより初心者にもとっつきやすいかもしれません。(そしてランプさえ何とかすればよいので、長続きします。)

 

上記、マルチスペクトルランプについての所感と期待でした。

重要なのは、ここまでの話は植物がよく育つ、ということに関してはスペクトルの話であるものの、他の要素に関しては単に製品の光量と素子配置の問題であることです。園芸用マルチスペクトルランプには面で照射できるものが幾つか発売されており(殆ど中国メーカーであり、信頼性はともかくとして…買ってみた幾つかはひとまず点灯します)、普通のレイアウトに面照射でマルチスペクトルランプで強力化・暖色化したい、という方にはそちらの方が向いているのだろうと思います。

それにしても、人工的な色合いの感がとてもあるRGBの青白い(が赤系が異常に赤く見える)光と、思い切り電球色のちょっとノスタルジックなマルチスペクトルランプが今の2大流行とは、なかなか面白いトレンドのように思えてなりません。

水生・湿生植物の栽培セッティング

夏ということで水草の屋外水上・抽水栽培にチャレンジされる方が増えてくる季節だと思います。

しかし、失敗も多く聞きます。

当方では黒土をトロ舟に入れて浅く水を張っておけば大抵のものは育つと言っても過言ではないのですが、どうも地域によってはそうもいかないようです。

 

失敗のパターンは2つあるようです。

1.水温失敗パターン

・コンクリ上などで水温が40度を超える

(それ自体で枯死するとは限らない)

→高水温を避けるため遮光する

→高水温で代謝が上がっているにもかかわらず光が足りず、枯死

 

2.pH・硬度失敗パターン

・硬度が高すぎ、pHが高すぎて植物が水中で動かない

 

そこで、上記2つの代表的な失敗を回避できる、汎用性の高い栽培セッティングを載せておきます。

当方でも日常的にやっている方法です。

小型種は水槽で使う水草であっても、水上で湿生植物に準じた扱いをすべきです。草体が小さい分、水深が深いと無理に水中化しようとして失敗リスクが上がります。浅くしておく~水上栽培が無難です。

 

 

中大型の抽水・浮葉植物で失敗パターンは多くないですが…オモダカ科を黒土に植えてしまうパターンは割とよくあります。

芝の目+園芸培養土が手軽で無難ですが、長期維持には向いていないため毎年の植え替えをおすすめします。(抜いて、かき混ぜて追肥して、また同じ土を詰めなおして芝の目覆土、でもOK。)長繊維ピートを大量に混ぜ込むと数年単位でもよく育つようです。

 

抽水植物や浮葉植物がよく育つと、完全に沈水性の水草(タヌキモ類やムジナモ、スブタ類、クロモなど)も育てやすくなります。

複数種を一緒に育てたほうが栽培成績はよく、水鉢あたり1種だけは、失敗のもとです。

(複数種あると1種くらいうまくいかなくても許容できるという心理的効果も大)

 

*内鉢の用土(芝の目土+園芸用土)は、Kazuのメダカ睡蓮ビオトープさまのYoutubeで知った方法です。非常に簡便でよく育ち、誰でも再現性がある点で優れています。肥料の入れ方などについては、KazuさんのYoutubeでより詳しく方法があげられていますので是非ご参照ください。

www.youtube.com

水中で生活するには?――わかっていないことが多いのだけど――②

①では光合成の話をする前に、根と茎の通気組織の話を先にしました。

なぜかといえば、水草がなぜ水中に適応するのか?というとき、湿地への進出と、湿地の季節的な冠水が大きな要因となっているからです。

まず乾いた陸上からいきなり水中に進出することは少なく、また水中の土壌は言わずもがな水浸しです。通気組織のほかにも嫌気代謝の発達などもあるのですが…これについてもいつか書くべきでしょう。

ともあれ、湛水土壌や過湿への適応は、水中生活の前に前提として話しておかねばならないだろう、と思い、一見すると目立たない根と茎の話を先にしました。

さて、湿地に進出した植物の中から、株元が深く水に漬かった状態でも生育可能な植物が出現し、やがて季節的な水位の増減に適応して、葉を水面に浮かべたり、水中で葉を広げるようなものがでてきた――というシナリオにおいて、茎と葉が通気できるようになってようやく、葉の話が出てくる、というわけです。

 

株元までを水中に沈めて生育する抽水植物の葉は、陸で生育する植物と比べてとりわけ変わっているかと言われれば、そうでもないように見えます。ただしイネ目イグサ科やイネ目カヤツリグサ科などで収斂進化している、茎のみが細長く伸び葉が退化する形態や、ショウブ目ショウブ科やキジカクシ目アヤメ科、ツユクサ目タヌキアヤメ科などでみられる単面葉などは、水辺に対する適応的な意義がある可能性もありそうです。

また、ハスのように極めて独特な通気システムとそれに対応する特殊化した気孔を備える抽水植物もあります。このような例からすると、実は他の抽水植物の葉にも秘密が多々隠されているかもしれません――湿生植物と抽水植物の間には、やはり一つの壁があり、それはどの程度深くても対応できるのか…という点にあります。

びちゃびちゃな土に対応するから株元を深く沈めてもよいのかと言われれば、意外とそうでもないのです。

さきにも話題に出したイグサ科およびカヤツリグサ科ですと、イグサ科イグサ属、カヤツリグサ科フトイ属、ホソガタホタルイ属、ハリイ属、ビャッコイ属などなどで中空に近い棒状の茎だけの形態が見られます。これらの少なくとも一部は内部を加圧して地下部にガスを送り込んでおり、かつ水位の上下に影響されにくい形態といえます。

抽水植物によく見られる形があるのかどうか、またそれらに適応的意義があるのかどうか、は気にしているテーマです。先にあげた”イグサ状”の形態はまさしく内部の加圧機構としての機能的意義のある形態です。いっぽうで単面葉をもったり、葉先を上に立てるものが多いのは、増水時の影響が少なく、かつ木本やより大型の草本との競争を避けられることに意義があるのかもしれません。他にもオモダカ目オモダカ科とツユクサ目ミズアオイ科などは、どことなくかなりよく似ていますし、抽水植物らしい葉形と言うのはやはりありそうです。

抽水植物では、気孔は陸生の近縁種と比較してもよく発達しています。水中で生活する沈水植物では気孔は退化傾向のため、やや意外に思えるかもしれません。

これは常時水がある環境のため、水不足による道管の塞栓(太い道管ほど影響を受ける)の影響を受けにくく水流量を増やせるためではないかとか、光合成を活発に行い草体内でのガス対流を促進しているのではないかなどの要因が考えられます。

 

抽水植物に頁をさきすぎたので、このあたりにして次に進みます。

水中で生活するには?――わかっていないことが多いのだけど――①

水草は「結構無理をして水に適応した陸上植物」です。

基本的に陸上植物は陸で生活することに適応しており、その生育を支えるのは極めて古典的には、水、空気、土です。そのうち空気を省くと、いったいどういうことになってしまうのか。

 

――水草において、私が最も注目しているのは、その根です。

水辺への適応において、根は最初に水浸しになり、酸欠にさらされます。

地球に重力があって太陽が上から光を照らす以上、根が最初に酸欠対策を発達させねばならないのは必然です。

これに対するアプローチは、大きく分けると

1.空気(≒酸素)を送り込む

2.酸欠でも育つようにする

の2つです。2つとも多くの植物で見られますが、水草では特に発達しています。

1.は、抽水植物(根や株元は水に漬かっているが、葉は水面にある植物)や浮葉植物(水面に葉を広げる)でよく見られる適応です。シュノーケルのように空気まで気根を伸ばしたり、まだ水中のほうが土中(もはや泥中)より酸素が多いので根を水中に伸ばすなど、さまざまな適応が見られます。

また、沈水植物(水中で育つ植物)でも確認できますが、これはアクアリストにとって、超重要な情報です。アクアリウムにおける水草栽培の成否に直結します。

なぜなら、空気中から酸素を取り入れられない沈水植物に水中でよく根を張らせるには、水中で根に送り込ませるだけの光合成をおこない酸素を生じさせねばならない、酸素を生じさせるためには植物を育てねばならない、植物を育てるには根を張らせないといけない、というループができてしまうからです。

(だから、私は抽水植物を幾つか水槽に入れるようにしています。空気中から土壌に通気させるため。ソイルがなぜ粒なのかに関しても、このあたりが関連するのでしょう。)

 

さて、根をクリアすると、今度は茎です。

茎には、根に送り込むためのガス通路を発達させねばなりません。養分はもはや土中の専売特許ではないので、水中に根を突き出したりして水中の養分をとりこめたほうが有利です。スポンジ状の通気組織やチューブ状のものだけでなく、ハスなどのように一方向の流路を作っているものすらあります。

主に陸上に生育する植物でも、土中の水分が過剰な状態では茎や根の通気組織を発達させるものが多く見られます。(例えばダイズなど)しかし、そこから湛水下での成長に耐えられるかどうかはまた別の話であり、水草かどうかを分けているもののひとつでしょう。

根と茎をいかに特殊化させるかは、水草への進化にあたってまさに入り口にあたる重要なポイントです。

 

そして――ようやく、葉と光合成の話になります。

短いですが今回はここまで。

 

 

 

なぜ水を目指すのか――いや、目指したのか?溺れないよう足掻いたのか?、凍えないよう水の中で耐えるのか?――

もう、ありとあらゆるグループの陸上植物が、多かれ少なかれ水への挑戦を挑んできては、敗北したり勝利したりしてきた、と言っても過言ではないでしょう。

 

しかし興味深いことに、科レベルでは水草を含む科は全ての被子植物の科の17%をも占めるにもかかわらず、種レベルでは1~2%にすぎません。つまり、水生に適応する回数は非常に多いものの、水生になったことで爆発的に多様化できたかというと――

 

じつは、そうでもないのです。

 

もし水草が、水草になることで爆発的に多様化できたのであれば、水草のグループとしてはもっとまとまったものが作られていたでしょう。こんなに多系統で、てんでばらばらの、色々なグループの水草が一堂に会するという事態には陥らなかったでしょう。

 

この現象に関しては様々な解釈が試みられていますが、すくなくとも「水中に入ると言いう挑戦は数多行われたが、水生の現生種はそう多くない」

「1億年以上も水生植物をやっているマツモ目やスイレン目ですら、水を支配できていない」

というあたりは、いえそうです。

 

さて――ちょっとしょぼくらけた話をしてしまいましたが、これが結構ヒントかもしれません。

 

「植物には、水に適応せねばならない時があるのだ。」

そういう目線で、アクアリウムプラントから、水草誕生の経緯を見ていこうと思います。

 

ケース1.ロタラ・ロトンディフォリアなど

 

アクアリストにとって、「水上葉」と「水中葉」という言葉はあまりにもあたりまえです。そして、「水上葉を水に沈めると水中葉になる」とか、「水上葉で増やしておいてストックする」とかも、また、ごくあたりまえです。

しかし。

野生で水上葉を刈り取って水に沈める人がいるわけがありません。

野生で起きているのは、寧ろその正反対です。

「水草が水に潜った」のではなく「水が陸上に攻めてくる」のです。

熱帯域においては、雨期と乾季が支配的です。河川や湖沼の水位は何メートルも上下します。熱帯域でなくとも、水位上下が大きな環境は多くあります。

するとそこには、普通の植物には対応できない、空白地帯ができます。

そこに適応するには、

1.水の中でも育てるようにする

2.水面や水の上に逃避しつつ、水に漬かっても育てるようにする

3.水没しても、タネや地下茎、成長を停めた草体で動かずにじっと耐える

などの適応が必要でしょう。

そうした適応をみているのが所謂、アクアリウムプラントの「水上葉」と「水中葉」です。攻めてくる水に対して、溺れることを防ぎつつ水面に向かって急速に育つ植物が多いです。また一部ではホシクサ科のように、水底に居座りつつも、水中・水上両方にある程度対応できる葉を作ってその場で育つ植物もいますし、オリザ・グルメパチュラやブラジリアンフラジャイルプラントのように水面で分岐した茎が猛烈に脆くなって分離拡散して版図を広げるものすらあります。

これらは他の植物が動けない・休眠する水位の高い時期にも育つことにより、水が引いたときには他より有利に動くことができるのでしょう。

 

ケース2

「では、ブセファランドラなどは?」

これらは、上記とは違う適応をしていそうです。これらは水没しても長期間堪えられるようになった、渓流植物――増水時に流されにくいように特化した、渓流沿いの陸生植物――です。では、増水に適応するとは言っても、渓流の流水域と湿地や沼地の増水では、植物に対する制限要因がまったく違います。増水期に水面に逃避するアプローチは流水中では使いにくいですし、根の周りの酸素環境は特に大きな違いです。

 

ケース3

「では、ロベリア・カージナリスなどは?」

ダッチアクアリウムで伝統的に用いられてきたような、ロベリア・カージナリスやルドウィジア・グランドゥロサなどはやや事情が違いそうです。これらは野生に近い状態で栽培すると、沈水葉は冬場にみられます――そう、冬の間、水温は0度を下回らないので、水中で凍らないように生活していると思われます。古典的な「ラウンケルの生活形」を地でいっているとも言えます。

 

このように、いくつかの類型化できる要員により、陸上の植物が水中や水面、抽水状態に適応せざるを得ない局面にさらされてきたと考えられます。

水草を扱う際に、「なぜこいつらは潜るのか?」ということを、一つ一つの草に問いかけてみると、楽しくなってきます。

 

Meseguer, A. S., Carrillo, R., Graham, S. W., & Sanmartín, I. (2022). Macroevolutionary dynamics in the transition of angiosperms to aquatic environments. New Phytologist, 235(1), 344-355.

水草は、多様で、それぞれが異質だ――あまりにも様々なグループの陸上植物が、水に進出している――

水草とは何か?どこから水草なのか?という話は、さておこうと思います。

というのも、その境界には極めてあいまいなものがあるためです。

なのでまずは、水草としか言いようのないものについて、話をしようと思います。

 

まず、一番重要なことは、「水草」という分類群はないことです。

 

マツモ目とスイレン目に関しては、その構成員の全種が水生です(但しスイレン目のTrithuriaおよびBarclayaの一部を本当に水生と言っていいかは議論の余地あり)。しかし、マツモ目は現生種が1科、スイレン目に関しても3科しかありません。

したがって、これらにかんしてもなお、水草の一大派閥というわけではないのです。

 

水草は、きわめて多系統です。

というより、陸上植物の種数が沢山いる大きなグループには、目単位でみてみると大抵水草がいるといっても過言ではなさそうです。

 

葉を水中に沈めて育つ、沈水植物とよばれる水草に限定したとしても、スイレン目、イネ目、ツユクサ目、キジカクシ目、オモダカ目、マツモ目、キンポウゲ目、ナデシコ目、ミズキ目、ツツジ目、セリ目、キク目、リンドウ目、シソ目、キントラノオ目、アブラナ目、フトモモ目、ユキノシタ目にみられ、ヤシ目、ムラサキ目、コショウ目などにも環境や成長の一時期によっては、積極的に水中で生育する種がいます。

葉や茎を水に浮かべる植物は、スイレン目、イネ目、ツユクサ目、オモダカ目、キンポウゲ目、ナデシコ目、ツツジ目、セリ目、キク目、ナス目、シソ目、マメ目、カタバミ目、キントラノオ目、フトモモ目、ユキノシタ目にみられます。

さらに、根や株元を水中に沈めて育ち、かつ水に依存するような植物も水草というほかありません。

これを抽水植物と言います。

抽水植物はスイレン目、コショウ目、ショウブ目、イネ目、ショウガ目、ツユクサ目、ヤシ目、キジカクシ目、オモダカ目、タコノキ目、キンポウゲ目、ヤマモガシ目、ナデシコ目、ツツジ目、セリ目、キク目、リンドウ目、ナス目、ムラサキ目、シソ目、バラ目、マメ目、キントラノオ目、アブラナ目、フトモモ目、ユキノシタ目にみられます。

*但し、上記には湿生・抽水性木本が含まれていません。水中から生えて育つことができるかどうか、も水への強い適応ですが、陸上で芽生えた植物体が、抽水状態で恒久的に生育できるようなものも、やはり水への適応と呼んで差し支えないかとは思います。そのような挑戦を含めると、もっと様々な植物が水という環境にチャレンジを繰り返していることがわかります。まあさておき。

 

上記のリストからは、いくつかの法則が読み取れます。

 

1.有名な植物を含むグループには、大抵水草がいる。

例外:ユリ目、ウリ目、ブナ目、ブドウ目、センリョウ目、モクレン目、クスノキ目あたり。しかし後半はみんな木ばかり含む目です。

…どこから有名と取るかにもよりますが、もはや「有名な草本を含む目で水草がいないのはユリ目とウリ目くらいだ」と言っても割と過言ではなさそうです。しかもそんなことを言っていると、マコモと混生して抽水に近い状態で育つゴキヅル(ウリ目)の写真が流れてきたりします。

 

2.沈水植物を含む目には、たいてい抽水植物か浮葉植物がいる

例外:マツモ目、ミズキ目

これは、結構なヒントになりそうです。

水草が水中に進出する際、比較的陸上の環境に近い(浮葉なら葉の表面だけ、抽水なら葉の全体)抽水植物や浮葉植物を経由して水中に適応してきたのではないか?

という示唆を与えてくれます。そしてこれは結構あたっていそうです。

 

では次回は、「なぜ、どうやって水を目指したのか?」ということに関して、見ていこうと思います。

アクアリウムプラントが、そのヒントになるでしょう。