前回,水草レイアウトを取り巻く私の史観をいつものように述べました.ここからが本題です.
私は熱帯魚ショップもうろつきますが,その10倍以上の時間をフィールドに費やしてきた人間です.そうした人間にとって,景観というのは「普通種の山の中に煌めく珍種」で構成されます.
さて,採集者が植物や魚を採集してくるとき,どういうことをするでしょうか?
答えは単純.
「目だって,珍しいものを持ってくる」
つまり,そうして集められたものをベースに構成された水槽は,私にはなんというかギラギラして目に悪いのです.さらにいえば,人工的です.
ダッチアクアリウムや密植水槽がいまいち受け入れられていない理由にもこれがあるような気がします.
だから,NAで多用される水草は「グリーンロタラ」とか,「パールグラス」「ロングヘアーグラス」みたいな「ただの緑で個性の少ない」水草になるというわけです.(最近シペルスヘルフェリーとかもよく見ますね)ギラツキを押さえるという面において,これらは優れています.
こうしたギラツキをADAの天野氏も嫌っていたように私は解釈していて,不自然に派手すぎると改良エキノを批判したり,水槽に入れる魚も地味なものをメインに選定しています.
さて.
私が好きなのはこの「ギラツキを押さえるバッファー役」です.目に優しいのは勿論,群生すると非常に美しいのです.
それがなんであるかに付加価値があるわけではないですし,誰も取ってきませんし,売られていてもだれも買わないようなものでもあります.だってそれそのものは水のようなものだから,ぱっと見でよさに気づくことは難しいということです.その良さが生きるのは「光景」の一パーツとしてであって,その草を見るだけではなかなかよさが見つからない.そういう草を私は好きです.
たとえば,イネ科.
どの水系にもあって,支配的です.しかしイネ科の水草って...ほとんど流通ないじゃないですか.イネ科のない水景などないのに,イネ科が使われる局面はほとんどない.理由は単純,だれもイネ科自体に価値を見出していないのと,イネ科が大きすぎるからです.
たとえば,ラージマヤカ.
南米の現地写真には大抵映っていますが,レイアウトでは見ません.なぜか?
水槽の南米度が足りないからですねぇ.(栽培条件がかなりシビアなのです)
そういう要素もネイチャーの一つであり,加えることで水景が良くなることは必至でしょう.ワイルドアクアリウムではある程度使われ始めているので,今後に期待したいところです.
さて,さらに続けます.
たとえば南米のテトラ.美しいのは一部で,多くは地味な配色のものです.
地味なものの中に美しいのが居るから,美しさが際立つのです.そして,水草に映える魚というのはむしろあまり色合いが派手でないものです.たとえばカージナルテトラは派手すぎるので,グリーンネオンが多用されます.でもグリーンネオンは赤すぎるという話もよく言われる.ということで私が言いたいのは,「そんなこと言うならヘミグラムス・アームストロンギ使えばいいじゃん」・・・
でも輸入されないんですよね,アームストロンギ.あんなに現地写真には無数に映っているのに.魚においても水草と同じ現象が起こっているというわけです.
で,さてと.前置きが滅茶苦茶長くなりました.
ここで私が作りたいレイアウトのコンセプトをここで発表しましょう.
「自然の風景を切り出すためには現地で普通種の水草をふんだんに茂らせ,魚は地味な現地での普通種を中心にするべきである.」
「現地を再現するうえでできるだけ現地に生育する種を使用するが,入手できないものは近似種で代用する.」
「レアもの,目立つものはあくまで少数の配植にとどめ,最小限の数で最大限の効果を狙う」
それが私のコンセプトです.