水草オタクの水草がたり.

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世界最大の水草は何か?

世界で最も豪華な水草はやはり、オオオニバスだろう。さすがに直径3mにもなる円形の葉を何枚も、場合によっては何十枚もつけ、巨大な花をつけられては太刀打ちはできまい。オニバスもときに直径3m級にもなるというが、花が小さいのでひとまず勝者はオオオニバスに譲りたい。

また、地球最大級の生物は水草であり、Posidonia australisの180kmである。これはもう自明に近いことであるので、単一個体の群落のサイズで大きさを競うのはやめておく。

 

さて今回の主題は、世界最長の水草は何か?ということである。

今回の決まりとして、泥に刺さっている根の基部、あるいは根を持たない場合茎の末端から先端までの長さを測ることとし、抽水植物、沈水植物ともに可としたい。

 

最長の葉をもつ沈水植物はまず、Crinum malabaricumであろう。

葉長2~4mが平均的な大きさであり(Lekhak et al., 2012)、他の沈水植物でこのクラスのものを聞かない。同じく4m級の記録があるC. thaianumより大型であるとされるし、3m級に留まるジャイアントバリスネリアよりも長い。

バリスネリアやタチアマモはしばしば1mを超える葉をつけるが、最大のものはジャイアントバリスネリアの3mである。恐らく沈水植物の葉長の限界はこの付近にあるようであり、その原因としては沈水植物の葉は短期間に生え変わること、株数を増やした方が有利になると推測されること、長い葉は波などの影響を受けやすいことが挙げられる(Liu et al., 2020)。

 

さて次は茎の長さである。タチアマモの開花茎は7mに達するものがあり、これが最長の水草であろうと(田中、2012)にあり、かなりの有力候補である。しかしほんとうにもっと長い水草はないだろうか?

熱帯の水辺には、雨季と乾季に合わせて非常に伸長する植物がある。3~5mに達する浮稲がその代表的なものであるが、野生下にはもっとすごいものがある。西アフリカの浮ヒエEchinochloa stagninaは水中部3.2m、地上部1mの合わせて4mほどになる(三浦、2003)。しかしまだまだである。アマゾンの野生イネ、Oryza grandiglumisは水位が10m変動するアマゾンにおいて、水位の増加に合わせて10m以上伸びる(森島、2001)。コスタリカの個体群でも7.6mが記録されている(Sánchez et al., 2006)。これはモウソウチクに匹敵する数字であり、竹以外の草本では最長である。草本とはいいたくない見た目をしているバナナや巨大サトイモ科よりも長い。まことにあっぱれ、驚異的としかいいようがない。

巨大サトイモ科といえば、アマゾンには信じられないほどでかい抽水性サトイモがいる。Montrichardia liniferaは高さ7mほどになり、バナナなどを含めた上でも最大級の草本である。長さでは先ほどの野生イネに劣るが、ボリュームでは最大級の水草であろう。

 

さて、さらに巨大な水草はいないだろうか?

生育初期に水中で育つRavenea musicallisは高さ8mほどに、基本的に抽水性のニッパヤシは高さ9m、葉長10mほどになる。おそらくこれが最も葉の大きな水生植物だろう。

スイショウやヌマスギは抽水状態でしばしば生育し、水生植物と呼ぶべきだろう。この高さはスイショウで30m、ヌマスギは50mに達し、まさしく最大の水生植物とよぶにふさわしい。

 

最後はなんというかやっつけになってしまったが、野生浮稲の長さには感服した。もっと長い水草は本当にないだろうか。そもそも茎をのばす水草の長さに、限界はあるのだろうか。ヌマスギやスイショウを追い越す長さの水草がないか、また考えてみようと思う。

 

 

Lekhak, M. M., & Yadav, S. R. (2012). Crinum malabaricum (Amaryllidaceae), a remarkable new aquatic species from Kerala, India and lectotypification of Crinum thaianum. Kew Bulletin, 67, 521-526.

Liu, Y., Li, Y., Li, W., & Cao, Y. (2020). Is there a maximum length of strap-like leaves for submerged angiosperms?. Aquatic Botany, 161, 103184.

田中法生(2012)異端の植物「水草」を科学する ベレ出版

三浦励一(2003)作物になれなかった野生穀物たち In 山口裕文、河瀬眞琴.雑穀の自然史. 北海道大学出版会, pp. 194-205

 森島啓子(2001)野生イネへの旅 裳華房.

Sánchez, E., Quesada, T., & Espinoza, A. M. (2006). Ultrastructure of the wild rice Oryza grandiglumis (Gramineae) in Costa Rica. Revista de biología tropical, 54(2), 377-385.