水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

タウコギに関して

タウコギ。

名前を聞いても姿が浮かばない植物ではなかろうか。

田んぼに生えるウコギ・・・と聞いてウコギの葉が浮かぶ人はなかなかいないと思う。しかしまあ、実物を見れば両者の葉は確かによく似ている。

タウコギは日本でも数少ない、水生キク科であり、センダングサとおなじタウコギ属 Bidensに属する。 Bidens自体が水生傾向の強い属であって、かのトンでも水草Bidens beckii(このブログでも過去にちまっと紹介しているので参照あれ?)もそうであるし、そこらへんに生えているアメリカセンダングサもどちらかといえば湿った環境を好み、発芽こそ陸上でしなければならないものの一端大きくなってしまえば抽水条件でも生育可能である。乾田化により中干後のアメリカセンダングサが割と問題になっていたりする。

タウコギに戻ると、知る限り日本のキク科としては最も深い水深まで対応しており、水深20㎝以上でも生育する姿を見ることがある。和名は「田」であるが、最もよく見かけるのはハス田であり、オモダカミズアオイといった水草としか言いようがない植物とともに生育している。ハス田は深すぎる、富栄養すぎる、ハスが競争に強いなどの理由から所謂水田雑草らしい小型の湿生植物はあまりみられないので、タウコギがどれほど水草と言えるかは推して知るべしであろう。

タウコギは水田でみられるものとハス田でみられるもので全く印象が異なる。水田のタウコギは通常は小型の植物で、30㎝前後のことが多い。そこまでタウコギが危害を加えるという話は聞かない。対してハス田のタウコギは高さ1mクラスになり、ハス農家にとって最も悩ましく主要な雑草の一つであるらしい(ハス田に腰まで漬かってタウコギを抜いて回っていたおじさん曰く)。両者の違いはおそらく肥料条件だとは思うのだが、ハス田のタウコギは育てようとした際、肥料を少しでも切らすとすぐいじけてしまった経験がある。どうやれば水田でみられる盆栽サイズにできるのだろうか。もしかすると、生態的に異なるタイプの可能性もある。

タウコギは本来移住を繰り返す湿生植物であったと思われる。これは”センダングサ状の”種子突起をみればすぐに思い浮かぶ。しかしセンダングサアメリカセンダングサに比べてタウコギの突起には返しが少なく、したがって衣服への付着もあまりしにくい。そのことからこの棘は動物に付着するよりむしろ、種子の流亡を防ぐために機能するとする説もある。

しかし近畿地方には”棘を失ったタウコギ”が水田雑草として存在する。こうしたタウコギは通常型に比べて種子が稲束や衣類に付着しにくく、水田への”定住”という方面において有利であると考えられている。日本各地でタウコギは水田雑草としてややふつうにみられるが、種子をチェックしてみると突起の有無や逆棘の数などに違いや新しい発見があるかもしれない。

タウコギは抽水植物であるが、水没への適応は”土中に空気を吹き込むタイプ”であって、茎にスポンジ状のぶつぶつができたり、水中に多数の根を伸ばすなどクサネムチョウジタデを思わせるところがある。したがって抽水植物として楽しむには面白いと思うが(本州のセンダングサ類では花が豪華なほうであるし)、水槽で楽しむことはできないと思われる。(やってみた猛者が現れるかもしれないが・・・)