水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

水田雑草目録(単子葉類編)

おもに本州でみられる日本の水田雑草を概観してみたい。 ここでいう水田雑草の定義は「湛水した水田に侵入すること」 とする。中干し中に発芽してくるものもあるが、その後の湛水により消滅するものは含めない。 出現頻度 ★★★★★(最普通)~★(稀) 稲作への…

ヒロハノクロタマガヤツリ進捗。

以前の沖縄遠征でヒロハノクロタマガヤツリを採種してきていたので、播種して楽しんでいる。栽培の前例があまりない種であるが、草姿が(私基準で)非常にかっこいい種でありぜひとも栽培を確立したい。 現状について。。。 ヒロハノクロタマガヤツリの発芽…

日本産ハリイ属に関する感想とメモ

日本産ハリイ属に関する感想を走り書き。交雑種は含めていない。 ハリイ属 Eleocharis マツバイ級の種 10㎝未満でランナーで増える。 Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Schult. var. longiseta Svenson マツバイ Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Sc…

エゾノミズタデの育て方

エゾノミズタデは北方系の水草で、平地でもみられるようになるのは東北も北のほうである。私の観察した自生地はそうとうに高温になる環境であるが、ヒシなどが生じる、茶色く濁ったやや富栄養の湖沼でふつうに見られた。最も優占するのはヒシとエゾノミズタ…

ミズアオイの育て方(改)

ミズアオイの育て方に関しては以前も記事にしたけれども、今年はやり方をやや変更して、より状態よく育苗できているのでメモがてら書いてみようと思う。 なお栽培中の個体は関東平野産の除草剤耐性がない個体群であり、他の個体群では条件が少し違うかもしれ…

ハナイが開花したので栽培メモ。

ハナイ Butomus umbellatusが開花したのでこれまでの栽培経過をメモしておきます。 2022年8月 入手。余っていたアマゾニアに植え付け。 2022年11月 栽培していた容器がオオバナイトタヌキモに汚染されたうえにベランダ管理でアブラムシ被害がひどかったため…

日本産ホタルイ類について

ホタルイと名の付く植物はコツブヒメホタルイ以外観察できたので、今回は日本産ホタルイ類をまとめてみる。 ホタルイ Schoenoplectiella hotarui (Ohwi) J.Jung et H.K.Choi 生息地:やや撹乱を受けるものの毎年は受けない中栄養の湿地、谷津田の縁、休耕田…

撹乱地の湿生植物

河岸が護岸工事の前準備で撹乱されると、様々なものが生じる。 上流域ではヤナギタデ、オオイヌタデが主要なもので、それにカワヂシャやイが混じる。温度が低ければミズハコベなども常連だ。下流域になるとヤナギタデは減ってきて、タコノアシやウスゲチョウ…

本州の低湿地・水田に生じる抽水性旧ゴマノハグサ科

夏である。 夏になると、水田の旧ゴマノハグサ科に悩まされる人をたくさん見かけるのでまとめてみる。 まずキクモに関してはコキクモと悩む程度でしか鑑別が問題にならないので、よいだろう。 残りを列挙する。 シソクサ アブノメ (成長初期はロゼット状、…

関東で見かけるハリイ属

関東地方の水辺でよく見かけるハリイ属について・・・ ()で囲んだものはふつう出会う機会がないと思われるもの。 ランナーで増殖し小型 マツバイ (きわめて普通) (チシママツバイ 極めて稀) (チャボイ 極めて稀) ランナーで増殖し大型 クログワイ (…

エレオカリス クシングア

エレオカリス クシングアとして売られている謎の植物。 ひじょうに特徴的なEleocharisなのに、相変わらず種類がわからない。 茎が明らかに平たく、かつ捻じれることもなく表面には艶がつよく、地下茎で増殖し穂も妙に白っぽいので、生えていれば外見でもすぐ…

ハナイに関して

ハナイ Butomus umbellatusはユーラシアに広く分布するオモダカ科ハナイ属の植物である。オモダカ科に類似しており、また従来ハナイ科とされてきたキバナオモダカ属やミズヒナゲシ属もオモダカ科に移行している。しかしながら、ハナイはオモダカ科ではなく、…

トウゴクヘラオモダカに関して

トウゴクヘラオモダカはおもに関東地方に分布する、日本固有のオモダカ科植物である。私の見ている限りでは谷津田最上部の湿地や、棚田の堀上(湧水を温めるために掘られた溝)に生育することが「多い」が、何の変哲もない水田にひょっこり出現することも時…

ミチノクホタルイ

ミチノクホタルイ 見慣れないホタルイ類を見かけた。 ホタルイに似るがより大型で、小穂は6~12個とかなり多く、白色調である。 小穂が多く卵形である点でコホタルイとよく似ているが、桿は太く約2㎜、潰すと4㎜ほどもあり、イヌホタルイ並みに太い。触って…

ホソバミズヒキモに関して

ホソバミズヒキモ、という語を使いたくない。 笹の葉状の先端が尖った浮葉をもち、浅い湿地やため池に生える植物をホソバミズヒキモというならともかく。 そもそもホソバとはなんだ。ミズヒキモがないのにホソバミズヒキモがあるというのは変な話である。 牧…

ハリイに関して、メモ

日本のハリイは3種だといわれている。 ザックリというと、 ・穂が黒っぽくて、大型で、根本の赤い部分が長い多年草・・・オオハリイ ・穂が白っぽくて、中型で、根本の赤い部分が短い一年草・・・ハリイ ・穂が黒っぽくて、小型で、根本の赤い部分が殆どない…

他人の空似、似ない兄弟

オモダカ属Sagittariaに関しては以前もこのブログで取り上げているのだが、今回はマメ知識的に、Sagittariaのザックリとした系統に関して書いてみようと思う。 水生園芸、および野外において目にする機会があるオモダカ属を列記してみよう。 オモダカ Sagitt…

黎明を拓け

ここ最近、ヘラオモダカの話をよく見かけるので便乗してみる。 ヘラオモダカは極めて変異が大きく、殆ど線状の葉をもつものからかなり幅広の有柄の葉をもつものまで、サイズも掌に載るような個体ばかりのところもあれば、50㎝を超えるのが基本といったところ…

バルデリア Baldelliaについて

Baldelliaはヨーロッパ南部を中心に分布する、比較的小型のオモダカ科植物である。Cook (1990) はこの属をEchinodorusに含めたが、のちの研究ではLuroniumおよびAlismaとの関連が示唆され (Arrigo et al., 2011)、Echinodorus(およびAquarius)との関連は現…

ツヤハダゴマダラカミキリに交尾しようとするゴマダラカミキリ

珍しいものを見た。 この組み合わせは既報があるのでブログに載せるのみとしておく。https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202202217790516752 ペアになることはあるものの、通常は交尾には至らないようではある。ただここではツヤハダがゴマダラの3…

サジオモダカ属 Alismaについて

サジオモダカ属Alismaはオモダカ科Alismataceaeのタイプ属(科の基準となる属)である。古い属によくあることとして、Alismaにはとても色々な種が含められてきた。たとえばLuronium natansが代表的である(このトンデモ水草に関してはそのうち書きたい)。 …

タウコギに関して

タウコギ。 名前を聞いても姿が浮かばない植物ではなかろうか。 田んぼに生えるウコギ・・・と聞いてウコギの葉が浮かぶ人はなかなかいないと思う。しかしまあ、実物を見れば両者の葉は確かによく似ている。 タウコギは日本でも数少ない、水生キク科であり、…

ササバモのこと

日本最大の水草と聞いて思い浮かぶのは、ササバモである。 わりかしありふれた種だが分布にやや偏りがあるという話もちらほら聞き、興味深い。また水質汚濁に強いようなイメージがなんとなくあるものの霞ケ浦をはじめとした水草にとって汚染がきつくなった水…

餌でソイルが泥化する?

面白い事例を目撃したので書いてみようと思う。 水草水槽において「ソイルが潰れて泥化する」という話をよく聞く。 有名な現象だが、しかしながら泥化する原因に関してはあまりよくわかっていない。 水圧で粒が潰れるとか、魚の糞がたまった成れの果てだとか…

原種温帯スイレンについてのざっくりとしたメモ

ごく簡易ながら、原種温帯スイレンに関してのメモを書いておこうと思う。 温帯スイレンはNymphaea亜属及びその交配種を指す 温帯スイレンはほぼすべて、Nymphaea subgenus Nymphaeaに属する。 この亜属に属するのはヒツジグサやN. albaなどが有名である。 Co…

ヒツジグサ節 Nymphaea sect. chamaenymphaeaについての、簡単なメモ

ヒツジグサは日本の水草の中でも特に知名度が高く、しかし遭遇頻度は少ないものである。さらに輪をかけて、その実態は不明と言ってもいい。 そもそもヒツジグサにどの学名を充てるべきなのだろうか。 日本国内に自生するうちの、どの原種スイレンをヒツジグ…

ヒルムシロについて

朝ドラ「らんまん」にヒルムシロが登場したためか、空前のヒルムシロブームである。 ヒルムシロ。これほど「名前を聞くが実物は見かけない」水草もなかなかないかもしれない。栽培は非常にしやすく、とくに屋外では簡単である。水鉢になにか浮葉植物を浮かべ…

アマゾニア終売だってよ

アマゾニアが終売らしい。 当方もアマゾニアはわりと使っているほうだったし、トニナの栽培などでは1stチョイスといってよかったので残念な限りである。特に、水質が劣悪な地域において被害が激甚だろう。アマゾニアは他社のソイルと比較してそうした環境で…

ビオトープに用いる水草

ビオトープに用いる水草はどんなものがよいですか? そういう質問について、解説しようと思う。 「○○は育てやすい、××は増えすぎる…」といったものはよく聞くけれども、それ以上に踏み込んだ内容はなかなかお目にかかれない。 但し、その方が意味するビオト…

ビオトープとメダカと水生園芸

ビオトープに関する書籍が話題となり、ビオトープ・ブームが来ようとしている。 著者が人気な方であったこともゆえんのひとつではあろうが、装丁や内容も程よくライトでかつ抑えるところは押さえている、好印象な本であった。新しいことを始めるには「やって…