水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

エレオカリス クシングア

エレオカリス クシングアとして売られている謎の植物。

ひじょうに特徴的なEleocharisなのに、相変わらず種類がわからない。

茎が明らかに平たく、かつ捻じれることもなく表面には艶がつよく、地下茎で増殖し穂も妙に白っぽいので、生えていれば外見でもすぐわかるはずである。

誰も同定できていないようなので、そもそも名前がまだないものなのかもしれない。

花序および果実。

痩果は両側凸状で表面はやや粗な顆粒状、柱頭数は2である。


地下茎の性状はE. subg. ScirpidiumおよびE. sect. Eleocharisのものに似ている。ひたすらチェーン状に伸びていくものである。

 

正攻法でいってみる。

果実は凸レンズ状で表面に横長の格子状構造を欠くことから、subgenus Scirpidiumではない。小穂の花数は多く、subg. Zinserlingiaでもない(そもそもこの亜属はランナーではなく短い根茎である)。柱基と痩果の境界は明瞭で突出しており、sect. Baeothryon、sect. Disciformesではない。鱗片の外縁部は明らかに薄くなっておらず、subg. Limnochloaでもない。(また、ここまでの節及び亜属は草体の性質が明らかに異なる。)E. sect. Eleogenusはランナーを欠く。E. sect. Parvulaeは塊茎をもち、チャボイしか含まない。したがってEleocharis sect. Eleocharisであろう。

Eleocharis節はさらにいくつかの列にわかれる。

痩果は凸レンズ状であり先端に向けて細くならず、柱頭は2分岐であり、ランナーをもつことからEleocharis下列に絞り込むが、Truncatae下列も似た増え方をし、柱頭が二分岐のことがあるので候補に残しておく。

さて世界に297種いるEleocharisが40種程度(実質、顔なじみな種と柱頭が必ず3分岐の種を除外すると20種程度)に絞り込まれたのだが、そこから総当たり戦をしてもそれらしきものが見当たらないのである…

葉鞘は観察せねばと思いつつ、抽水条件で育てているのでいつも水でふやけて観察しがたい。もう少し水を切らして栽培しつつ、既知種の変異なのか、それとも本当に謎なのか、さらに詳細に観察していきたい。

また、”Xingu”が本当なのだとすれば、近年南米からあまり知られていない種がいくらか報告されているので、そのあたりも探らねばならない。探求にはまだまだかかりそうだが、ここでは途中経過の報告とする。

”クシングア”はひじょうに育てやすく、低光量や水深が深くても水槽から突き抜けてそれなりに育つ良い水草である。(寒さに弱かったりするくせにとんでもなく光が大好きなsect. Limnochloaの面々も見習ってほしい…)室内での水上部を設けた栽培にはうってつけだろう。ただし種子産生がかなりあるのとランナーによる増殖力が非常に高いので、屋外栽培には非常に注意が必要である。外に出すこと自体が怖いので耐寒性は試していない。ないとよいのだが。