水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ロタラの基本!

今回はロタラ,ADA流に言えばロターラについて語っていこうと思います.

ネイチャーアクアリウムがどんどん陰性水草と素材に傾倒していく中,水草水槽と言えばロタラやパールグラス,から水草水槽といえばブセファランドラやピンナティフィダ,ミクロソリウムとなり寂しいところです.

それでもなお,ロタラは今もなお大きな存在感を維持している水草と言えるでしょう.

今回はそんなロタラの基礎的なところについて書いていこうと思います.

ロタラとは

ミソハギ科キカシグサ属Rotalaのことです.ミソハギ科の中では,水生~湿生, 花弁は脱落性で蒴果には200以上のきわめて細かい種子をもつことでヒメミソハギAmmanniaによく似ていますが,花が総状花序であり,蒴果には平行な筋があること,蒴果は心皮の境界で裂けること,花粉は小型で表面は鱗屑状ないし疣状であることによって区別されます.

分布

72種が知られますが南北アメリカに分布するのはRotala mexicanaとRotala ramosiorの2種のみで,分布の中心はアフリカおよび南アジアです.アフリカには岩に活着し水中に糸状の葉を茂らせるRotala repensのように珍妙な種がいるほか,Rotala myriophylloidesはじめとして様々なアクアリウムに魅力的な種が分布していますが,栽培されたことは全くといっていいほどありません.日本に分布するのはキカシグサRotala indica,ミズマツバRotala mexicana はやや普通に見られ,稀少なものとしてはミズスギナ Rotala hippuris, ミズキカシグサ Rotala rosea,ホザキキカシグサ(マルバキカシグサ)Rotala rotundifolia,ヒメキカシグサRotala elatinomorphaがあげられます.また,帰化種のアメリカキカシグサRotala ramosiorが見られます.

 

生育環境

生育環境は様々で,池などの水中に生育するもの,水田などの湿地に生えるもの,流水中の岩に活着するものなどがあります.種によって生育環境は大幅に異なり,一概には言いにくい部分があるのもまた事実です.

 

アクアリウムで流通するロタラ

アクアリウムにおいては非常に多種多様なロタラのうち,ほんのわずかな種の些細なバリエーションがことさらに強調されて流通し,カオスな状況に陥っています.そのため,ここではザックリと解説していこうと思います.

Rotala rotundifolia

グリーンロタラ
ロタラ インディカ
ロタラ ロトンディフォリア
ロタラ sp H`ra
セイロンロタラ

等…ものすごくいっぱい.

グリーンロタラやH`raをはじめとして多くのアクアリウムで流通する種を含みます.多年草で水上葉は円形~楕円形,匍匐性,花は総状花序であまり分岐しないことが多いです.葉は対性~3輪生で,水中葉の概形は長方形状,鋸歯はありません.水中でも匍匐傾向があるものも多いです.R. macrandraと非常によく似ていますが,雄蕊が萼より短いことや,小苞と萼のサイズ関係で区別できます.非常に様々なタイプが流通しており,サイズや色調の傾向が異なります.しかしながら生育条件により非常に大きく変化があり,異なる環境で育った個体を比較・区別することは困難です.さらに種としては同一であることからファームでの生産も混乱していると思われます.綺麗に育った水中葉を自分の目で見て納得して買うべきものと私は思います.またさまざまな他のRotala属の名前を冠して売られることがよくあり,名前だけで飛びつくと痛い目にあいます.

Rotala macrandra

ロタラ マクランドラ/レッドリーバコパ
マクランドラグリーン
マクランドラナロー

等…

マクランドラとして知られる膜質の葉をもつロタラです.多年草で水上葉は円形~楕円形,匍匐性,花は総状花序です.葉は対性で非常に変異幅が大きく,水中葉の概形は楕円形~線形,膜質でしばしば鋸歯をもちます.水中では匍匐傾向をほとんど見せず,上方に向かって育ちます.花は雄蕊が長く突出し,よく似たRotala rotundifoliaとは一見して区別がつきます. また,花穂は短く小穂が発達し,しばしば分岐します.(当てはまらない個体群あり)いずれにせよ小苞がガクより短く,雄蕊が突出するのを確認すべきでしょう.分布はインドに限局しており,東南アジアでは見られません.

アクアリウムでも認知度が高く,初便は1973年, ボンベイの500~600㎞郊外で採集されたもののようです.様々なタイプがマクランドラ○○として流通し,他のロタラのように紛らわしい名前で呼ばれることはあまりありません.

 

Rotala macrandraともRotala rotundifoliaともつかないRotala

ロタラsp. スウィンドゥドゥルグ

ロタラsp. ラトナギリナローリーフ

ロタラsp.レディッシュ

等…

スウィンドゥドゥルグやラトナギリナローリーフは大型のR. rotundifoliaのようなロタラですが,より大型で時々マクランドラのような鋸歯をもつタイプです.最近話題のレディッシュは少し大きいだけでほとんど普通のR. rotundifoliaですが花序が短く盛んに分岐するようです.ただしR. macrandraのように雄蕊は突出することはなく,少し変わったR. rotundifoliaかもしれません.

 

Rotala mexicana

日本にも自生するミズマツバです.通常一年草で水上葉は先に向けて細くなる線形,主に3輪生,先端は平坦で尖りません.やや匍匐傾向があり,しばしば非常に小型です.水中葉は線形で主に3輪生,鋸歯はなく通常の場合匍匐しません.(ゴイアスは例外)花は葉腋につき,水中でも条件が悪くなると閉鎖花を作り結実します.分布は広く,全世界に広く分布します.アクアリウムでの認知度は著しく低く,さまざまな既存品種に○○メキシカーナという名前が付けられて商品化される場合があります.Rotala pusillaはシノニムですが,同名でまた違う謎のRotalaが流通することがあります.

ゴイアスドワーフロタラ,アラグアイアミズマツバ,メキシカーナプレミアムレッド,プシラ ワイナード産を確認しています.

 

 

Rotala wallichii

リスノシッポ

リスノシッポとして古くから流通します.葉は水中では多輪生,水上では4輪生程度まで少なくなり,花には蜜腺を欠きます.アクアリウムでの認知度は非常に高く,古くから知られています.しかし,一般に流通するワリッキー系の細葉ロタラがどれほど本種かどうかはまだ不透明な点があります.栽培には細葉系ロタラの中でも特に癖がありますが,その草姿や色合いは唯一無二であり,代替手段がありません.大事にしていきたい水草と言えます.

ロタラ ナンセアン

Rotala wallichiiの北限は台湾で,南仁湖周囲に分布します.但しこれは純粋な株ではなく交雑種とみられるようです.アクアリウムではこの交雑種がロタラspナンセアンとして流通しているとみられます.トロピカはマヤカspとしてリリースしたため,ラージマヤカとして本種が売られていることもあります.ロタラ プシラ台湾便もナンセアンに似ているものの色合いは異なり,関連した交雑種の可能性があると私は思っています.どちらも育てやすく姿も美しい,良い水草です.(ところでナンセアンのあの煌めき方はワリッキーや”ミズスギナタイプ”よりも所謂ミズスギナに通じるものを感じるなぁというのはここに一応書いておこうとは思います.)

ワリッキーロングリーフ (ロタラspベトナムレッド)
ワリッキーメキシカーナ
ワリッキーMAXICA
ワリッキー ラオス
メキシカーナ(スリランカ便)
ロタラspカンボジア
ロタラ ボッシー
ロタラ メキシカーナ バングラデシュ

等…ワリッキーロングリーフ系のものが多種多様に流通しています.全体的な雰囲気はリスノシッポよりもミズスギナ的で,そのためミズスギナタイプと言われがちですが,水上葉の輪生数が少なくなるなどワリッキー的な特徴をもつので暫定的にこちらに入れておきます.要するに,精査がなされるべきです.茎は赤く葉はかなり細く,リスノシッポとミズスギナの中間ほどの太さです.栽培下では非常に丈夫です.知る限りリスノシッポのように真っ赤に染まる個体はほぼおらず,また逆に緑単色の個体もほとんど現存していないようです(ロタラspベトナムグリーンなど,かつては存在した)Rotala rotundifoliaと同じく各タイプの見分けが難しいので,混ぜないよう気を付ける必要があります.

また,どこかで聞いたような名前を冠したワリッキーロングリーフ系が海外ファームから乱発されており,どれほど真に受けるべきなのかは再考すべきかもしれません・・・よく見てよく考えましょう.

 

Rotala hippuris

ミズスギナ

日本に分布するミズスギナです.東南アジアでの自生状況は微妙です.葉は水上でも水中でも多輪生,花に蜜腺を欠きます(R. wallichiiなどの近似種にはある).アクアリウムでの認知度はやや高く,日本のミズスギナが和名そのもので稀に流通する他,様々な細葉系ロタラがミズスギナのバリエーションではないか?と勘繰られています.伝統的に日本固有種と考えられてきましたが,分類的な再整理が必要ではないでしょうか.台湾の図鑑にも記載があり,少なくとも台湾にはいるようです.インドにはよく似たRotala cookiiが分布します.アクアリウムでは一見したところの派手さはありませんが,葉裏の非常に繊細な煌めきが美しい水草です.栽培はワリッキーロングリーフ系よりは難しいですが,リスノシッポよりは容易です.

 

その他の細葉系Rotala

ロタラspバングラデシュ
パンタナルドワーフマヤカ”
ロタラspジャマイカ

ADA BIOみずくさの森から出ている謎のロタラです.しかも育てやすい.葉は水中でも幅広で数枚輪生し,葉先は妙に丸みを帯びます.水上でも数輪生し,水中葉とほとんど輪生数は変わりません.ところで流通は混乱をきわめており一部ではそれらしきものが”パンタナルドワーフマヤカ”として販売されていたり,”ロタラspジャマイカ”として販売されていたりします.他に似たものがない謎の水草だけに正体をつかみかねているのかもしれません.ワリッキーロングリーフ系と並んで非常に強健で初心者にもおすすめできるロタラです.

 

Rotala ramosior

アルアナの夕焼け
スラウェシの朝焼け
ラモシオールフロリダ
アメリカキカシグサ

陸生傾向の強いロタラで,日本でもアメリカキカシグサとして帰化し一部地域で猛威をふるっています.一年草で葉は長楕円形,十字対生です.花は葉腋につき,花弁は容易に脱落し果実はロタラ属としてはかなり大型で目立ちます.ミズマツバとともに新大陸に分布するただ2種のロタラです.知る限りではアルアナの夕焼け,スラウェシの朝焼け,ラモシオールフロリダが流通しています.栽培ではやや硬度が必要だといわれており,少し癖のある種です.そもそも野外のアメリカキカシグサを見る限り水が嫌いなような挙動を見せているので,水中で維持できるストライクゾーンは狭いものと思われます.

 

Rotala cf. densiflora

アマニアspサレイ
?アマニアsp バンルン

陸生傾向の強いロタラで,茎は角ばっており断面は四角形です.水上を見る限り水中化しそうにないのですが,ちゃんと水中葉を展開します.現在流通するサレイはバンルンではないのか?と疑っている方もいるようなので,?としてバンルンを付けておきました.

 

Rotala welwitschii

ギニアロタラ

何とアフリカ産です.栽培にも輸送にも癖があり,現在も生き残っていることが奇跡のようにすら感じます.大事にしていきましょう.

 

Rotalaではないもの

Didiplis diandra

ディディプリス ディアンドラ

ロタラには近縁でよく似ていますが一属一種のディディプリス属です.本種もなかなかに面白い水草ですので,いつか紹介したいと思います.

Cuphea spp.

アラグアイアレッドロタラ
ロタラspルッシラ
アラグアイアレッドクロスプラント
ロタラspレッドクロス

などはメキシコハナヤナギ属です.花が全く異なります.栽培には低pHを用意してあげましょう.アルアナの夕焼けとよく混同されますが,茎の質感や水中葉の縦横比や質感がだいぶ違います.成長はゆっくりですが着実に育ってくれます.弱い草ではないです.

 

ロタラの栽培と楽しみ方

ロトンディフォリアの栽培に関しては「ネイチャーアクアリウムRotala rotundifoliaを美しく育てるために発展した,Rotala rotundifoliaのためのアクアリウムである」といえるくらいなので(そんな定義ないですよ),ネイチャーアクアリウムを教科書通りにやっていれば育つはずです.但し我流でやっているとつまずくことも多くあり,簡単な水草と言い切れるわけではありません.異常にいろいろ流通しているので,一般的に使われているものに限らず色々レイアウトに使ってみると面白いかもしれません.一方でどれも大同小異で流通の混乱もあるので,気に入った株があれば自身でストックしておくべきだと思います.

細葉系ロタラはpHさえ下げておけば基本的に栽培は容易です.リスノシッポはその中で頭一つ抜けて難しいですが,ストックするだけなら水位を下げて水面になびかせておきましょう.育て方はRotala rotundifoliaに近く,レイアウト向きです.

アルアナの夕焼けなどは若干硬度を要するという話ですが,私はRotala ramosiorをかなり警戒しているので手を出したことがありません.やるなら水上の方が楽でしょうが,管理はバイオハザードクラスにしてもらいたいところ.水中では成長も遅く,ピンチカットにあまり耐えられないのではと予想します.どうなんでしょうか.

ゴイアスドワーフロタラとアラグアイアミズマツバは肥料,特に窒素リン酸カリが重要です.根がなくなったり,肥料が少ない環境だとすぐ弱ります.したがって差し戻しよりはピンチカットで,カットした後はお礼肥を供えておきましょう.

その他のミズマツバ系やアマニアspサレイ,ギニアロタラは栽培が難しく,すぐ頂芽がいじけたり下葉が落ちたりしがちです.そのためロタラだからという甘えをもたず,攻略することを楽しむ,高いゲーム性をもった植物だといえます.この手の難しい変なロタラは殆ど消滅してしまって,いま手に入る「おもしろいみょうちきりんロタラ」はサレイとギニアロタラくらいです.大事にしていきましょう….