水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

サルバドールカールラッシュの観察

サルバドールカールラッシュが開花までいったので観察してみます.

サルバドールカールラッシュ

高さ25㎝位まで育ちました.花は数本の桿でみられます.叢生であり,非常に短い根茎を横に少しずつ伸ばし,ランナーを伸ばす様子はありません.全草は無毛で強い光沢を帯びます.

栄養増殖も行い,どうも2株に分かれてきているようです.水中葉では桿の先端に小穂をもたない本種ですが,陸上では盛んに開花するようです.

葉鞘は薄い緑色で筒状,斜めに切れています.先端付近で勢いをつけて尖るように見えます.

葉鞘の先端

水上型の断面

水中型の断面

一見したところ水中でも硬い葉を展開し,水中適応が低いようにすら見える本種ですが,桿の断面は大きく異なっていました.また水上型の桿はやや側扁しており,断面はレンズ型です.メスによって潰れたわけではありません.茎断面は0.8~0.9㎜程度でした.水中のほうがむしろ太く,大量の含気をしていることからは本種がミズニラ類やリトレラにみられるような水生CAM植物ではないかと思わせます.

茎の断面には隔壁はありませんでした.触った感じからしてもそんな感じですね.

小穂

小穂です.Eleocharis属らしいもので,いたって普通ですね.

 

小穂のアップ

小穂の概形は卵型に近いようです.大きさは6㎜×3㎜程度.

鱗片は楕円形で,先端は鈍頭から円頭で,二叉したものは見られませんでした.2.5×1㎜くらい.

未熟な花.雄蕊は3本


小穂には30ほどの鱗片があり,果実に包皮はなさそうです.花は両生花で雄蕊は3本みられます.柱基は著しく膨れており,花の構造からもEleocharis属でしょう.果実は狭倒卵形,柱基は扁球形と言ったところでしょうか.花糸は茶褐色で,咲くとともに2.5㎜ほどまで長く伸びるようです.柱頭は2分岐して2㎜ほどまで長く伸びます.刺棘状花被片はやや子房より長く,透明で目立ちません.濡れていたため小棘毛はよく観察できませんでした.

そもそも花がまだ全然未熟で,果実が熟するにはもう少しかかりそうです.なので,今回は切り取った花をエタノールに漬けつつ,もっとたって成熟した小穂を観察したいと思います.

 

でも・・・ここまでくると正体知りたくなっちゃいますよね.

草姿やサイズからはEleocharis rugosaではないかと思っていましたが,どうやらだいぶ花の構造は異なるようです.E. rugosaでは雄蕊の花糸は透明で,雌蕊は3分岐し,痩実は緑灰色です.植物体でも苞葉は茶色であり,緑白色のサルバドールカールラッシュとは大きく違います.

 

ではバイア州のEleocharisをリスト化して...

まずはまず間違いそうにないサイズと茎の断面から候補を減らしていきます.

僕が今の環境で野外よりごつくて大きく育てられるとは到底思えないので,桿の幅が0.7㎜未満をカットオフにしてより小さな種を除外,また茎に隔壁があったり,茎の断面が三角形や四角形の種類は除外しました.

 

Eleocharis acutangula これは茎断面が△なので違います.

Eleocharis atropurpurea 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis bahiensis 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis capillacea 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis debilis 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis eglerioides 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis elegans ずっと大型であり,葉鞘は斜めに切れないことから違う

Eleocharis elongata 桿は小穂と同じくらいの太さであることから違う

Eleocharis flavescens 

Eleocharis geniculata 

Eleocharis glaucovirens 断面は四角であり,違う

Eleocharis interstincta ずっと大型,茎に隔壁あり

Eleocharis loefgreniana 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis maculosa 

Eleocharis minima 断面は四角であり,違う

Eleocharis montana 茎に隔壁があり,違う

Eleocharis mutata 断面は三角形であり,違う

Eleocharis nana 最大13.5㎝より違う

Eleocharis nigrescens 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis obpyriformis 

Eleocharis obtusetrigona 断面は三角形

Eleocharis olivaceonux 

Eleocharis plicarhachis 

Eleocharis retroflexa 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis rugosa 

Eleocharis sellowiana 

Eleocharis setifolia 断面は四角であり,違う

 

さて,残ったやつを仕留めます.

Eleocharis flavescens 苞の先端には透明で皺の多い付属体をもつ ランナーあり

 Eleocharis geniculata 葉鞘の先端は尖るが,先端の形状が違う 根茎を横に伸ばす

Eleocharis maculosa 小穂は赤茶色~濃茶色 ランナーあり

Eleocharis obpyriformis 雌蕊の分岐数は3

Eleocharis olivaceonux 小穂はワイン色~ダークブラウン

Eleocharis plicarhachis  小穂は尖り,鱗片は細長い

Eleocharis rugosa 雌蕊の分岐数は3

Eleocharis sellowiana 小穂の基部は茶色~緑色,先端部は赤みを帯びた茶色 ランナーあり

うーん.絞れはしましたが結実を待ちましょう.それにしてもこの結果は...