謎な水草は謎なのです.
ビハールハイグロという水草があります.当初ピンナティフィダと混同されていたという話を聞くのでこれもインド産だとは思いますが,ビハール産というのは怪しいです.というのも,当初の流通名はピーファウル,孔雀♀だからです.この訛りとインド産ということでビハールになったと思われます.
さて,本種はわりと画像資料に恵まれた種といえます.花写真も海外でStaurogyne peafowlとかHygrophila peafowl, Hygrophila Biharなどと検索すればいくつも出てきます.
しかし,これでもわからないのです.
真に謎の水草と言えます.本種はスタウロギネだといわれていますが,そもそもインドのスタウロギネにこのようなものはいないようです.高城氏によれば鍾乳体はないとのことで,雄蕊は写真から4本に見え,苞葉もあるように見えます.それらをもとに検索するとたしかにStaurogyneに落ちそうなのでいかんせんStaurogyneという同定が間違っているとも言い切れず.腋生の花はStaurogyneとして一般的ではないですが,そうであるものもいます.ただこういうつき方の花といえばハイグロフィラですし,水中葉はH. pinnatifidaやH. odoraと著しく類似しています.
花弁の切れ込みが深く上下に分かれたような形態であることをはじめとしてたしかにハイグロフィラらしくない花ですが,H. costataのような例もいるのでそれだけでは簡単には除外しにくいです.鍾乳体は見逃す危険もあります.
というわけでハイグロフィラを見てみますが,絶滅種のH. anomala以外のアジア産の種はだいたい写真が手に入り,ビハールとは似ていないようです.
またピンナティフィダやバルサミカといった水中葉が細裂するハイグロフィラをCardantheraとして別属にしていたことがあるのでそれを遡ってみても,いまいち該当種が見当たらなさそうです.
となるとハイグロ以外の水生キツネノマゴの可能性も捨てきれません.となると候補は100属を超え,相当厄介なことに...
まさに謎の水草といえます.
とうぶんの間は「ピーファウルキツネノマゴ科」と呼ぶべきでしょう….