水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ギニアンツーテンプル Adenostemma caffrum var. longifolium (暫定)

Roots配信で「ファームの名前は当てにならない」例として「エリオカウロンとして入荷したハイグロフィラ」というのが挙げられていた.

www.youtube.com

 

これについてさらなる情報が得られたのでここに記しておく.

この水草を偶然ドイツの水草通販サイト,AquaSabiで見つけることができた.このサイトはよっぽどな水草オタクがやっているらしく,非常に詳細な流通史が書かれていたり,数多くの水草を同定したりしている.そうしたものの一つであった.

www.aquasabi.com

驚いたことに,この水草はハイグロフィラですらなく,ヌマダイコンに近縁であり,Adenostemma caffrumが疑われるらしい.

花が白くてマッチ棒状だったためにEriocaulonとしたのだろうか….

さらに,この水草によく似た草を育てたことがある方からもハルジオンのような花が咲いて驚愕させられたという情報をいただいた.さらに,それはギニア便であったという情報までいただけた.

ゼロ年代から10年代初頭は世界各地から様々な水草が日本にもたらされていた一方で,ほとんどの種…特に有茎草が人気が出ずあっという間に消滅し,今でも謎のままになってしまったものばかりである.

ギニアン○○というのがその最たるもので,属すら怪しいものが多かったようだ.そんな中で,この草は2006年ごろに「ギニアンツーテンプル」として流通していたという.

ギニアンツーテンプルと名前がわかれば情報はもっと集めやすくなるはずだ.

Green Note│大阪、我孫子のアクアリウムショップ » 7月24~27日 熱帯魚 ブラジル・ペルー・アジア便 水草ギニア便・観葉植物各種 入荷しました!

2011年にも入荷がある.しかし写真はない.

asukuzim.cocolog-nifty.com

おお,この時の入荷株の写真があった.確かに,まさにこれである.

 

さて,Adenostemma caffrumであるとすれば分布はアフリカの広域なので,ギニア便というのも納得である.

さて,本当にA. caffrumなのか?という問題が次に出てくる.

普通にA. caffrumとして検索して出てくる種の葉はかなりふと短く,これであるようには見えない.

ひとまずAdenostemmaであるということまではあっていると仮定して,アフリカのAdenostemmaを調べてみる…とすぐ候補が出てきた.

Adenostemma caffrum var. longifoliumである.

http://plants.jstor.org/stable/10.5555/al.ap.flora.ftea006689

Flora of Tropical East Africa, Part Part 3, page 547, (2005) Author: H. Beentje, C. Jeffrey & D.J.N. Hindからの引用.

分布 シエラレオネギニアボツワナ(?)標高 1100~1900m

直立~倒伏する草本で高さは90㎝に達し,茎は多肉質で無毛,しばしば赤みを帯びる.葉は無柄で膜質,狭披針形で0.3~1.7㎝×4~21㎝,無毛,辺縁はほぼ全縁~鋸歯縁,先端は鋭.苞は小さく5㎜未満,頭状花序は2~8,柄は3.3~7.2㎝,疎~密に軟毛を帯びる.総苞片は長さ4~5㎜,幅1~5㎜.時に赤みを帯びる.花冠は長さ4㎜,花柱は短い黒い毛に疎らに覆われる.痩果は結節状,場合により腺状で結節を欠く.

草体の特徴は非常によく合致しそうだ.

さらにこんなことが書いてあった.

おなじく狭披針形の葉をもちインドから記載されたAdenostemma angustifoliaと関連があるかもしれない

 

つまりこれも調べねばならない.

となったらこれに関してはいつも非常にお世話になっている三河の野草観察さんが詳細な記述をすでに和訳してくださっていた.

ヌマダイコン Adenostemma lavenia var. lavenia キク科 Asteraceae ヌマダイコン属 三河の植物観察

 

さて,この写真数枚からどちらの種なのかを検討するのはなかなかに困難ではあるが,AquaSabiによればこの水草の葉長は14~19㎝とA. angustifoliumよりだいぶ長く,A. caffrum var. longifoliumの範疇には合致する.

さらにアフリカ便としてアクアリウム業界で複数回流通があったということも併せてAdenostemma caffrum var. longifoliumの可能性が高そうである.

 

さて,水草としては未知の属ではあるが面白い可能性を秘めていそうだ.現在流通が途絶えていると思われるが,いつか実物を見てみたいものだ.

また,A. caffrum var. longifoliumは標本数も少なく研究があまり進んでいないようであり,そもそもヌマダイコン属がなかなかにカオスに見える.

単なる1水草オタクとしては,今後の研究の進展を祈るばかりである.