トウエンソウ科という耳慣れない科があります.
台湾の桃園県からついた名です.アヤメ状の葉から花茎をのばし,少しホシクサ科のものにも似た頭花から黄色ベースの虫媒花を咲かせます.珍妙な植物ですが,熱帯では割とありふれたグループといえます.
その中にあって,アマゾンでは完全沈水性のものがみられます.それが今回紹介する
Xyris aquaticaです.
Xyris aquaticaは糸状の30~50㎝の葉を流水にたなびかせる種で,アクアリウムでいうソーシャルフェザーダスターに非常によく似ています.葉の基部には葉鞘が目立ち,その先は糸状になっているのもソーシャルフェザーダスターそっくりです.
驚いたことに完全沈水性で,水中で開花することもあるようです.
本種も基本的に標本写真とモノクロの図しかない種ですが,Mikolji氏のグリーンネオンテトラの現地画像では本種とみられる沈水性トウエンソウ科が映っており驚かされました.なんと生きている本種は,ものすごく濃い赤系だったのです.色味としてはロタラ レディッシュ並みと言って過言ではないでしょう.記述を見るかぎり深紅であるということは述べられていないため本種全般に言えるのかは不明です.
しかしあれを見たら水槽で育てたくなってしまうのが水草オタクの性でしょう.
えっ希少種なんじゃないかって?
本種はベネズエラからパンタナルまで,アマゾン流域の上流域では南北に幅広く分布します.もし南米採集の水草がまた流通することがあれば,最も見てみたい水草といえるでしょう.ただし日本でどれだけ南米水草が流通したのかを考えると(出そうなものはだいたい出尽くしているレベル),もう何回も入ってきたものの輸送がどうにもならなかった種である可能性もあります.Bacopa reflexaみたいな.
The Genus Xyris (Xyridaceae) in Venezuela and Contiguous Northern South America
Robert Kral
Annals of the Missouri Botanical Garden, Vol. 75, No. 2 (1988), pp. 522-722