水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

エリオカウロン ラティフォリウム カメルーン ンガウンデレ産

 ホシクサ科は約1000種を超える大きなグループである。そのうち2/5が広義Paepalanthus、1/5がSyngonanthus、そして2/5がEriocaulon…と言ったところである。
LeiothrixやMesanthemumといった他の属もあるにはあるのだが、その数は微々たるものと言っていい。
これらの属の分布および多様性は、ほぼ南米に限局している。Mesanthemumがアフリカ固有属であるのが唯一の例外で、他の属はすべて多様性の中心が南米にあるといっても過言ではない。
ホシクサ科といえばなんとなく水草というイメージが持たれがちである。しかしながら水生のホシクサ科はこれらすべての属で独自に複数回進化した形質であると私は思っている。
げんに、Paepalanthusの大部分、Leiothrixの大部分、Mesanthemumの大部分は完全な陸生、Syngonanthusはごく僅かな例外を除いて湿生で水に入らず、Paepalanthusの残りもまた湿生である。
しかし完全に水生の種が発生しているのもまた事実であって、Rondonanthus、Leiothrix、Paepalanthus、Eriocaulonなどで複数回(属内でも複数回!)発生した”ケヤリソウ型”の種があげられる。
それらとは別に、ホシクサらしい形を保ったまま水生となったグループがある。
たとえばEriocaulon aquaticumは水中に進出することで、亜寒帯に近い温帯の厳しい冬を生き抜くことに成功していると思われる。(知る限り唯一の温帯性多年生ホシクサである)
そんな中で異彩を放つのがテープ状の一群である。これらは水中にたなびくように生育するニッチを埋めることに成功した。
旧世界のテープ状で沈水葉の硬いホシクサは互いに近縁なようで、葯が黄色い点で共通する。興味深いことにこのグループは同じく黄色い葯をもち、水田でみられるE. cinereumはじめとした無弁節に形態、系統ともに近縁であるらしい。
アクアリウムで用いられるこの仲間のホシクサはソーシャルフェザーダスターが最も有名であるが、他にもギニアンスタープラントやヒマラヤスターもこの仲間と思われる。
これらは全て、急流の流れる河川上流域の石の隙間に生育し、分ケツおよび種子で増殖する。
仲間全体としての分布はかなり広いようで、西アフリカから香港までに及んでいる。ただし、その中での類縁関係…一見よく似て見える細葉の種どうしの関係など…にかんしては、いまいちよくわかっていない。
前置きが長くなった。
2024年の水草入荷第一弾は、カメルーンからのエリオカウロン ラティフォリウムであった。
Eriocaulon latifoliumという名前で水草が入荷したことは古今はじめてのことであるが、特に全く新しい水草というわけではない。
E. latifoliumは西アフリカに広く分布する沈水性の大型ホシクサで、幅広で非常に長い葉を急流にたなびかせる、葯の黄色い種は西アフリカにこの種しか知られていない。
ギニアンスタープラント ブロードがほぼ間違いなくこの種であろうと以前にもこのブログで紹介したが、そう、そういうことである。
さて、ギニアンスタープラントにはナローとブロードがある。ナローはやや小型でランナーを盛んに出すもの、ブロードは大型でランナーを出さないもの‥‥そう思ってきた。
しかしながら、西アフリカにこういうホシクサは1種しか記載されていない。
つまり
①どちらかがE. latifoliumでもう片方は未記載種
②どちらもE. latifoliumの変異の両極端で、両者をつなぐミッシングリンクが存在する
という2つの可能性がある。なお、⓵と②の折衷案…つまり実際には3種あって中間的な種の存在により認知できていない、というのもありうる。
今回カメルーンからもたらされたホシクサは、とんでもなく巨大なものだった。さらに長く伸びた根茎は、ブロードを強く思い起こさせる。
しかしながら、多数のランナーを又持っていた。
草体の形態的には、ブロードに近いがナローのようにランナーを持つ、それが今回のカメルーン便ホシクサのようである。
私はブロードのほうが断然好きだがブロードは増えないし入荷しない…と悩んでいたので、大変うれしい。