水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ストロギネ レペンス

続きましてスタウロギネです.

www.shopping-charm.jp

通名    スタウロギネ レペンス

別名・略称    スタウロギネsp

学名  Staurogyne miqueliana

海外流通名  Staurogyne repens,Staurogyne "Rio Cristalino"

分類   キツネノマゴ科

分布    マットグロッソ州,クリスタリーノ川

この水草について

トロピカから2008年にリリースされたスタウロギネ属の水草です.アマゾンハイグロ類の中では最も普及しています.匍匐しながら密に葉をつけ,前景草として使えます.

Staurogyne repensとして同定されていましたが,Braz & Monteiro 2017を参考に検索してみると特徴が全く合わず,S. miquelianaと思われます.

そもそもS. repens自体の記録がもう100年以上ないようで,(最後の記録は1907年),絶滅種である可能性すらあります.但し,真のレペンスが流通する様々なアマゾンハイグロ類の中に紛れ込んでいる可能性も捨てきれず,ロマンがあります.

野生下での生態

トロピカが採集した株は河畔や水中に生息するようです.

私なりの育て方

一般的な水草水槽で育成可能です.根はりが非常に強く,肥料を要求する印象があります.肥切れになると葉が落ちて茎が露出するので注意.南米水草ですが,低pHをこれと言って要求する印象はありません.むしろ中性付近を好むのではと思います.

水槽以外での楽しみ方

アマゾンハイグロ類と同様.ミズゴケ単用では根はりが悪く,成長不良となりやすいです.そのため水上でもソイルに植え込んだ方が調子が良いです.低温には弱く,15度でも危険域だと思います.

混同されがちな種と見分け方

本種が一般的にいわれるようにStaurogyne repensではないと考えた理由は以下の通りです.

・葉の概形が異なります.本種の葉は柄の短い木の葉状で幅があります.しかし,S. repensの葉は先のとがった披針形です.(縦横比でみてみると違いがはっきりします.S. repens:0.9~5.3×0.3~0.7, S. miqueliana:0.9~2.3×0.3~1.2㎝,本株:2.5×1㎝程度)

・水上葉の性状です.低湿度で管理された場合,水上葉は有毛になります.高湿度で管理している場合毛は目立ちませんが,オープンで栽培していると毛が濃くなります.尚,S. repensの葉には毛がありません.

・花の付き方も異なります.S. repensの花は花穂メインの直立した花茎を形成し,本属としても異様であるといえますが,本種の花は普通の茎の先端に花穂を作ります.

・S. repensの記録は稀で1907年以降記録がないということですが,そんなものを2000年代に一コレクターが発見できるのか疑問.

これらの特徴から葉は有毛の楕円形,茎頂に花穂を作るS. miquelianaであろうと判断しました.検索表にもかけてみましたが,やはり葉の形からS. miquelianaに落ちます.

 

GBIFにはクリスタリーノ川で2009年に採集された流通するものと同系統の株の写真が出ています.

https://www.gbif.org/ja/occurrence/1852149749

19世紀に採集された標本とも見比べることができ,サイズも葉の形も花序の概形も全く異なるように見えます.

https://www.gbif.org/ja/occurrence/437276029

https://www.gbif.org/ja/occurrence/437276028

https://www.gbif.org/ja/occurrence/1265495902

https://www.gbif.org/ja/occurrence/1231125153

https://www.gbif.org/ja/occurrence/1265495946

但し花のサイズに関してはS. repensとする同定を支持する要素も見られます.

S. repensの苞は4.3~8㎜,花冠の長さは4.8~7.8㎜と花冠と苞が同長です.

本株の苞は8~10㎜,花冠は10㎜程でした.

S. miquelianaは苞8~10㎜,花冠3.8~5.1㎜とされ,花のサイズが本株の半分ほどです.花のサイズこそS. repens的ではありますが他の特徴があまり合致せず,S. miquelianaに近いことからひとまずS. miquelianaの花が大きい一型であろうと考えました.

 

ちなみに他に匍匐性の種であるS. stoloniferaは葉が狭披針形で長さが幅の10倍程度,S. spragueiは花の構造やサイズが似ていますが分岐が疎で葉も披針形,S. trinitensisは葉が長い柄を持ちます.S. spraguei,S. repens, S. miquelianaはいずれも水辺を好む種であることが知られており,たとえばS. miquelianaに関してはメキシコの乾燥林を流れる川底で確認されています(Staurogyneは基本的に熱帯雨林の植物なのでこうした分布は例外的).

 

アマゾンハイグロ類はS. stoloniferaとS. spraguei,もしかするとS. repensもいるかもしれません.これに関しても今後開花し次第見ていこうと思います.S. repensとS. spragueiの違いに関してはちょっと微妙な気がするのですが,あとでフィーチャーしたいと思います.

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スタウロギネspの花

 

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スタウロギネspの花 表面

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スタウロギネspの花 裏面

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Staurogyne repens

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Staurogyne miqueliana(Braz & Monteiro, 2017より)

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Staurogyne miqueliana(Daniel & McDade,2014より)



Braz, D. M., & Monteiro, R. (2011). Typification of neotropical species of Staurogyne (Acanthaceae). Novon: A Journal for Botanical Nomenclature21(2), 174-177.

Braz, D. M., & Monteiro, R. (2017). Taxonomic revision of staurogyne (Nelsonioideae, Acanthaceae) in the Neotropics. Phytotaxa296(1), 1-40.