アブラナ科は野菜をはじめとして非常になじみ深いグループですが,利用されているのはごくわずかです(野菜として使われているのもわずかな種で,猛烈に品種改良が進んでたくさんあるように見えるだけですが).
アブラナ科で水生種は決して少ないわけではなく,国内でもミズタガラシ,オオバタネツケバナ,コバノタネツケバナ,タネツケバナ,ハリナズナ,オランダガラシ,コバノオランダガラシが見られます.しかしミズタガラシ以外は低水温でないと水中栽培できず,アクアリウムで現状流通している水草はミズタガラシとウォーターナスタチウムのみです.
流通名 カルダミネ・リラタ/ミズタガラシ
バリエーション:
インボイス学名 Cardamine lyrata
学名 Cardamine lyrata
分布 東アジア
生育条件 沈水~抽水~湿生
水質 中性~酸性
耐寒性 あり
解説
湧水地帯でみられる水草です.アブラナ科でありながらまるでチドメグサのような成長をする珍妙な種で,冬はタネツケバナのようなロゼット形態になります.春になると花茎をのばし,白い花を咲かせたのちに花茎の途中や脇からランナーを伸ばし,這いまわって夏を迎えます.自生地では殆どの場合湧水の流水で見かけますが,栽培するうえでは湿地状や止水でも特に問題はないように思います.水草としてはCO2添加がなくとも育てられるほど丈夫で,ソイルでも砂でも栽培が可能です.斜めにいったり地面を這いまわったりと動きの読めない水草ですが,野生味のあるレイアウトに向いていると思います.
バリエーション:
インボイス学名 Rorippa aquatica
学名 Rorippa aquatica
分布 北米
生育条件 沈水~抽水~湿生
水質 中性~酸性
耐寒性 あり
解説
北米の冷水に生える種ですが,高水温耐性もあります.ロゼット状の切れ込みの浅い姿で売られますが,本来は細裂します.水中葉は小松菜のような形からハイグロフィラ・バルサミカのような形まで変化し,これは温度などによって変化します.茎もロゼットから有茎草並みに伸びることもあり,伸びた茎の途中から次々とロゼットを吹くこともあります.カットした茎のみならず葉の断片からもウォータースプライトのように再生することができ,まさに変幻自在な草といえるでしょう.自生地が10度台であることから暑さにはあまり強い水草ではないですが,一般的な熱帯魚を飼育する26度程度では問題ないようです.