トチカガミって本当にないですよね.
「一般的な水草」であるかのように本には書かれていますが,本当にどこにもない.10年前にあったという情報を手掛かりに霞ケ浦付近をうろちょろしてみましたが,滅茶苦茶苦労するはめに.そこも次の年にはない.
日本で安定的に生えているのはもはや琵琶湖だけなのではないかという気すらしてきました.杞憂であればいいのですが….
栽培では夏場にとんでもない量のIB化成肥料をやるととんでもなく増えます。秋に地下茎の先端が殖芽になるのでこれを保管するほか、睡蓮鉢ならビニールハウス(メダカの保温用に売られているスプリング式のもの)を使えば常緑越冬も可能です。殖芽形成+成長ストップは加温していても時々起こすので、多分低水温がトリガーではないと思っています。なのでビニールハウスをつけてても休眠してしまうこともあるかもしれません。
殖芽の発芽は気まぐれで、てんでバラバラな時期に発芽してきます。休眠性が高い殖芽なのでできれば常緑越冬の方がいいかもしれません。
霞ヶ浦の周堤水路ではトチカガミは前年度生えていた場所での再発率が低く、以前なかったところからの発生も多いことが知られているので、越冬にちょっと無理をしている気がします。
そして…
「以前なかったところからの発生も多い」
…
栽培していてトチカガミの種子はほとんど見たことがありません。
これはどう言うことなのでしょうか?
多分ですが、自家不和合性が強い植物なのだと思います。しかしトチカガミはクレイジーな程よく殖える水草なので、複数クローンを一つの鉢で維持することは不可能!ですし、野外でも一面の株が全部1クローンの可能性が高いと思います。
つまり…
…
ここからはあくまで私の予想ですが…
…
「もう自然界ではトチカガミの種子はほとんど産生されておらず、かつてトチカガミが豊富にあった時代のシードバンクが時々発芽しては繁茂し、そして種子を残さずして消えていくのを繰り返している」
…と言う仮説が頭に浮かんでしまうのです。
もし本当にそうだとしたら、もうトチカガミは詰みに近い状況なのではないかと危惧しています。かと言って近接した産地の複数クローンのトチカガミを別々に維持して種子を取り続けるのは、滅茶苦茶困難ですよね。