ブリクサも最近は売られなくなったものだ。"ロングリーフ"が売られていないのはまだいいとして、ショートリーフですら最近あまり売られていない。輸送がなかなかに面倒で溶けることがあり、さらに組織培養にも向いていないということで流通が絶えかけているのだと思う。
一部地域ではショップでブリクサを見つけてくるより野外で絶滅危惧II類のBlyxa echinospermaや準絶滅危惧のBlyxa japonicaを探した方がよっぽど早い状況である…ナニコレ。
さて、アクアリウムで扱われるブリクサは殆どBlyxa alternifoliaで、それでない場合も殆どがBlyxa aubertiであると言っていいだろう。
"Blyxa japonica"でも"Blyxa novoguinieensis"でもない。"Blyxa vietii"として流通するものはBlyxaですらない。
ではまず、ブリクサとはなんたるやと言う話である。
いろいろ属が統合された結果、トチカガミ科の沈水水草はHydrilla(クロモだけ)、Elodea(カナダモ類やグレートモス)、Lagarosiphon(ラガロシフォン)、Najas(ナヤス、イバラモの類)、Ottelia(ミズオオバコの類)、Nechamandra(ヴィエティが有名)、Vallisneria(バリスネリア)、そしてBlyxaが残るのみとなった。
Blyxaはこの中では形質が安定した属と言えると思う。ほとんどの種がロゼット状のよく似た形態をしていて、同定のポイントは花がメイン、この辺りはホシクサにおける状況によく似ている。
Rashmiら(2017)の検索表ではブリクサはまず基本的に両性花のBlyxa auberti, B. echinosperma, B. alternifolia, B. japonicaの4種と、それ以外の雄花と雌花を持つ大勢に分けられる。一部例外的に両性花を持つものもいるが、雄蕊が3本であれば上記4者である。
ブリクサはよく咲くので確認がしやすいが、現状流通しているものはみな両性花の雄蕊3本のようなので上記4者である。
この4者(と、B. aubertiに含まれがちなB. leiosperma)に関しては、Blyxa japonicaとBlyxa aubertiの2種にしてしまうと言う見解がかなり根強いくらい形質的にはよく似ている。が、生態的には差が大きいため別種とするのが妥当だろうと自生地巡りをしている者としては考える。
これら両性花をもつBlyxaはすべて日本に自生しており、絶滅危惧種とはいえフィールドワークでも見慣れたものたちである。
そしてここまで絞り込んで仕舞えば変異の影響こそあれ、基本的にはタネだけですら全種同定可能である。
•種子は細い、突起なし。果実の長さは短い。茎は長く伸張する。小型
→Blyxa japonica
•種子は太くゴツく、突起がいくらかある。果実の長さは短い。茎はやや伸張し、株別れを盛んに行う。中型
→Blyxa alternifolia
•種子はつるっとしていて平滑、果実は細長い。種子は米粒に似た形態を取り太くてやや平たい。茎は伸張することもしないこともある。
→Blyxa leiosperma
•種子には突起の列が前後長に沿って多数並ぶ。前後に伸びる突起はない。大型で茎はほとんどない。
→Blyxa auberti
•種子には突起が多数あり、前後に長い突起を持つ。大型で茎はほとんどない。
→Blyxa echinosperma
leiosperma, auberti, echinospermaは種子以外あまり変わらないのでまとめてaubertiと読んでもさほど支障はないのだが、そうしてやると
大きい、株別れが少ない非耐寒性多年草→B. auberti
中くらい、株別れする非耐寒性多年草→B. alternifolia
小さい、茎がひょろひょろと伸びる、加温しても基本一年草ですぐ枯れる→B.japonica
と、実に単純である。
では各種の紹介は…次回また気が向いた時にでも。
途中引用した検索表
Rashmi, K., Krishnakumar, G., & Les, D. H. (2017). Blyxa mangalensis, a new species of Hydrocharitaceae from India. Kew bulletin, 72(1), 1-8.