水草オタクの水草がたり.

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アマモ科の花





アマモ科の花は非常に変わっていて、イカやタコの足を彷彿とさせる外観をしている。

アマモ属とスガモ属があるが基本構造は同じで、但し両属において欠落するパーツもある。形態的にはアマモ属コアマモ亜属がすべてのパーツが揃っているため、模式図はコアマモをベースにしている。

扁平な肉穂状花序には片面にのみ平面的にぎっしりと雄花1つ、雌花1つからなるセットが2列に並んでいる(もしくは雌蕊1つ、雄蕊1つの両性花とも解釈される)。スガモ属の場合、雄花序が別に存在する。雌花序にも葯をもつ雄花様の部位があるが、雌花序の葯には花粉ができない(そのため雄部は仮雄ずいとよばれる)。雄花序に雌蕊はない。

 

1セットが1つの花なのか退化した花序なのかは議論を避けるが、雄部分と雌部分にわけると雌部分は雌蕊のみからなる。雄部分は大きな2つの半葯、花序の中央部に位置する葯隔、花序の両側に存在する葯隔付属突起からなる。葯隔付属突起はどうやら花被に相当するようだが、苞である可能性も捨てきれない。

スガモ属の場合、葯隔付属突起がひじょうに発達するが葯隔は退化的、アマモ属アマモ亜属の場合は逆に葯隔付属突起は退化的となる。

 

アマモ科は基本的に雌性先熟なようで、アマモやコアマモの場合最初に雌蕊の花柱が伸長して受粉し、その後雌蕊は花序内部に折れ曲がって格納され、そして雄蕊の半葯が立ち上がるようにして開き花粉を放出する。花粉は糸状で、これはほかの水媒だが分類上無関係な海草類にもみられる(たとえばポシドニア科)形質と言える。

花粉を放出した後に結実して種を放出し、タネを放出したのち/放出しきない間に花をつけた株ごと、もしくは花茎が枯れ始めてちぎれて漂流する。この切れ藻も種子を運ぶ拡散手段となっているようだ(淡水の水草と違って、アマモの生殖枝が再生して新株になることは基本的にないようだが、放出され切っていない種子を運ぶことになる)。

 

アマモ科は基本的には温帯の海草である。分布域の一部では一年草として生育する場所もあり、開花・結実の占めるウェイトが非常に大きい。海草の中ではむしろこうした開花結実重視の生態は珍しいように思う。