- はじめに
- 検索表とその簡易な解説
- ザックリと各論
- 陸生の多年草
- 本州にも分布する湿生~水生の一年生種
- 温帯性の地下茎をもつ多年草
- 熱帯性の多年草
- アラゲタデ Persicaria pulchra Soják
- オオサクラタデ Persicaria glabra (Willd.) M.Gómez
- ケタデ Persicaria barbata (L.) H.Hara var. barbata
- リュウキュウタデ Persicaria barbata var. gracilis (Danser) H.Hara
- ダイトウサクラタデ Persicaria taitoinsularis (Masam.) Yonek.
- フトボノヌカボタデ(シマヒメタデ)Persicaria kawagoeana (Makino) Nakai
- ホソバウナギツカミ Persicaria praetermissa (Hook.f.) H.Hara
- ナツノウナギツカミ Persicaria dichotoma (Blume) Masam.
はじめに
琉球列島にはさまざまなイヌタデ属が産するが、かなりとっつきにくく混乱してみえるかもしれない。しかし実物を見てみると、その大部分はネーミングセンスの悪さに由来することに気づく。
基本的にはどれもわかりやすく、草体だけでもほとんど識別可能である。本州のタデ類よりよほどわかりやすいと思う。
今回は、そんな琉球列島のイヌタデ属(ペルシカリア)についてまとめていく。
一般的に、水生の植物は一般的に広域分布種が多く、地域固有のものは少ない。したがって、本州および琉球列島のペルシカリアを理解すれば東南アジア一円の水生多年草のタデ類をだいたい網羅できるといっても過言ではない。
(陸生種や一年草にはより南方系のものが存在する…キヌタデPersicaria lanata とか。)
琉球列島に分布するイヌタデ属(以下タデ類と呼称)はケタデ、リュウキュウタデ、ダイトウサクラタデ、アラゲタデ、ツルソバ、ナツノウナギツカミ、ミズヒキ、オオサクラタデ、ヤナギタデ、シロバナサクラタデ、イヌタデ、イシミカワ、ホソバノウナギツカミ、ボントクタデ、ママコノシリヌグイ、フトボノヌカボタデ(シマヒメタデ)の15種1亜種である(国立科学博物館 琉球の植物データベースより)。
**なお、コサクラタデ、リュウキュウサクラタデなど正体不明なものもあるが…上記の種のいずれかのシノニムの可能性が高いと考えるので、追加しなかった。**
上記の中で、明らかに水生の多年生タデはケタデ、リュウキュウタデ、ダイトウサクラタデ、アラゲタデ、ナツノウナギツカミ、オオサクラタデ、シロバナサクラタデ、ホソバノウナギツカミ、フトボノヌカボタデ(シマヒメタデ)である。
一年草の湿生種はミズヒキ、ヤナギタデ、ボントクタデ、イヌタデ、イシミカワ、ママコノシリヌグイであるが、琉球の環境からこれらはときに多年化することもあり注意が必要である(たとえば、イヌタデは2月でも開花及び栄養成長を続ける個体を確認しており、もはや多年草と言って問題ないと思われる。)。逆に、ヤナギタデなどは短命な一年草としてふるまっているのを見かけた。熱帯域での温帯雑草の挙動はたいへん興味深い。
陸生の多年草はツルソバとミズヒキのみである。ほかにヒメツルソバ等の外来種が帰化している可能性はある。
不思議なことにハルタデやオオイヌタデ、オオケタデといった大型の一年草は聞いたことがない。本州では実にありふれたメンバーだけに不思議である。
検索表とその簡易な解説
フィールド版 改訂新版 日本の野生植物 ミゾハコベ科ースイカズラ科にある検索表をもとに改編・追記した。分布の有無に関しては琉球の植物データベースをもとにした。追記した記述に関しては、改訂新版 日本の野生植物の形態記述をもとにした。
1. 節までの分類
A. 茎に下向きの刺毛がある。棘毛の目立たない種では葉の表面に星状毛や束状毛がある・・・ウナギツカミ節 Sect. Echinocaulon
(琉球に分布する種:イシミカワ、ママコノシリヌグイ、ホソバノウナギツカミ、ナツノウナギツカミ)
*ハリタデはイヌタデ節だがこの特徴を満たす。しかし琉球に分布しない。
A.茎に下向きの刺毛がなく葉の表面に星状毛や束状毛がない
B. 花は頭状に集まる。葯は黒紫色・・・タニソバ節 Sect. Cephalophilon
(琉球に分布する種:ツルソバ)
B. 総状花序は円柱かひも状に伸びる。葯は乳白色か淡紅色、ときに紅色か淡紫色。
C. 柱頭は2本で果期まで宿存し、硬質化して鉤状になり、動物に引っかかって果実を散布する。・・・ミズヒキ節 Sect. Tovara
(琉球に分布する種:ミズヒキ)
D 花序の苞は卵形で花序軸を完全には取り囲まない・・・エゾノミズタデ節 Sect. Amphibiae
(琉球に分布しない。)
D 花序の苞は花序軸を完全に取り囲んで漏斗状となる・・・イヌタデ節 Sect. Persicaria
(琉球に分布する種:イヌタデ、ヤナギタデ、ボントクタデ、フトボノヌカボタデ(シマヒメタデ)、オオサクラタデ、ケタデ、リュウキュウタデ、ダイトウサクラタデ、シロバナサクラタデ)
2.イヌタデ節の簡易な検索表(琉球の種に関して)
E. 托葉鞘の上縁は葉状に広がる。葉の基部は心形~円心形・・・(オオケタデ 帰化種のため沖縄に出現する可能性もある)
E. 托葉鞘の上縁は葉状とならず、葉の基部はくさび形。
F. 花序に腺毛をもち、酢酸イソアミル臭がする・・・(ニオイタデ 沖縄分布なし)
F. 花序に腺毛がなく、酢酸イソアミル臭はない
G. 托葉鞘に縁毛をもたない。
H. 多年草・・・オオサクラタデ
H. 一年草・・・琉球分布なし。(オオイヌタデ、サナエタデ、オトメサナエタデ)
G. 托葉鞘に縁毛をもつ
H. 一年草
(本州と同じため略)
H. 多年草(この検索表ではシマヒメタデ/フトボノヌカボタデが一年草とカウントされており注意を要する。)
I. 花柄は苞より長く萼は長さ3㎜以上、茎や葉の裏面、托葉鞘、苞に著しい腺点あり**
・・・シロバナサクラタデ(国内の種だとほかにサクラタデ。)
*個人的な観察では地下茎が明らかに発達するのはこの二種のみ。
**日本の野生植物によれば琉球には萼に腺点を欠くサクラタデの型であるリュウキュウサクラタデがある、という記述もあるが、実物や写真を見たことは無く琉球の植物データベースにも記載がない。そのため、いちおう打ち消しを行ったが行う必要がない可能性もある。
I. 花柄は苞とほぼ同長。
J. 苞は上縁以外無毛、葉は上面に細毛をつけるか無毛、下面は脈上を除き無毛。萼は長さ2~3㎜、花柄とほぼ同長。
K. 葉は幅広で上面に毛をもつ。基部は楔状。***花柱は3本。痩果は3稜形。・・・ケタデ
***改訂新版 日本の野生植物の形態記述より、筆者追記。
K. 葉は細く縁以外に殆ど毛を持たない。基部はやや円形となり托葉鞘の毛は托葉鞘より短い。*****
L. 花柱は3本。痩果は3稜形。・・・リュウキュウタデ*****
L. 花柱は2本。痩果はレンズ形・・・ダイトウサクラタデ
*****改訂新版 日本の野生植物の形態記述より、筆者追記。
J. 苞は有毛、両面に毛が多く萼は3.4~4㎜、花柄より長い・・・アラゲタデ
ザックリと各論
陸生の多年草
ツルソバ Persicaria chinensis (L.) H.Gross
ツルソバは沖縄では各地で食用にされるなど親しまれており、本州では黒潮の影響を受ける海岸付近に分布する。館山辺りが北限らしい。半日陰に生育する種だけあって丈夫で栽培も簡単、弱い照明でも枯れないと強健な植物だが、水中には多分進出しない。沢沿いで水辺に生えているのはみたことがあるが・・・偶発だろう。
ミズヒキは見るからに特徴的なのでこれも大丈夫だろう(時折ハナタデやボントクタデと紛らわしいこともあるが…)。
ヒメツルソバは流通が多く帰化をよくみかけるが、これも他の種とは一見して異なるので判断に困ることは無い。
本州にも分布する湿生~水生の一年生種
イヌタデ属で明らかに多年草なものと一年草なものに分ける…のは事実上難しい。
しかし、さいわい一年生種はどれも本州にも分布するので、本州にも分布する種をまず除外したい。
水生~湿生の種は、まず葉幅が明らかに太く丸葉に近い半つる植物であるママコノシリヌグイとイシミカワをまず除外する。この二種は、本州にも分布するので情報が多い。
細葉で一年生の本州に分布する種は、ヤナギタデ、ボントクタデ、イヌタデである。さいわいなことに、これらはどれも花や痩果のサイズが多年生種に比べて小さく、参考になる。沖縄にはボントクタデのように花序が細長く伸びる種もミズヒキ以外いない。
温帯性の地下茎をもつ多年草
沖縄に分布するタデ類の中で花が大きく開き、地下茎が発達するのは観測する限りではシロバナサクラタデのみである。サクラタデも分布する可能性は潜在的にあるかもしれないが、両者の判別は割と難しく、かつ本州での定番の問題なのでここでは述べない。
もしかするとコサクラタデもそうかもしれないが…情報が足りない。後述するが、シロバナサクラタデの亜種扱いされがちなダイトウサクラタデは全くもってサクラタデ的ではなく、地下茎は発達せずただ倒伏した茎の各所から出芽するのみである。
シマヒメタデ、ホソバノウナギツカミも温帯にも生育するが、熱帯種との判別が問題で、かつおもに温帯にも分布する熱帯性の種とみなしているのでここでは触れない。
熱帯性の多年草
さて、本題に入ろう。国内では沖縄を中心に分布する水生の多年生タデ類をみていく。
まずイヌタデ節の多年生種である。
ザックリ分けると…
大型種 アラゲタデ、オオサクラタデ、ケタデ
中型種 リュウキュウタデ、ダイトウサクラタデ
小型種 フトボノヌカボタデ(シマヒメタデと同種とする意見に従う)
である。
アラゲタデ Persicaria pulchra Soják
アラゲタデ P. pulchraは東南アジア~南アジアに広く分布するが、琉球列島においてみられるのは南北大東島のみである(南大東島では2か所でしか見ておらず、片方は5本しか見当たらなかった。)本種の特徴はビロード状の軟毛が覆うことであって、けっして「アラゲ」ではない。粗い毛がごわごわと生えるのは、ニオイタデやケタデである。
ビロード状の毛が生える多年生のタデは日本では他にいないので、すぐ判断できる。
果実は時間をかけてばらばらに熟するようで、熟するとともに随時落下し、穂についたまま熟し一斉に落ちるわけではない。(同様のパターンは国内のタデ類ではオオサクラタデとアラゲタデのみに見られると思う。)
なお、学名がかなり混乱している。Wikipediaにも掲載されているP. tomentosa (Willd.) SasakiがP. pulchraのシノニムなのか、P. madagascariensisのシノニムなのかは私自身追いかけられておらず、Plants of the World OnlineではPersicaria tomentosa Sasakiをnom. illeg.・・・命名規約誤用が見られるため保留、としている(
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:695178-1
)。さらに、Plants of the World Onlineではサナエタデの学名をPersicaria tomentosa (Schrank) E.P.Bicknellとしており、日本で主に使われているPersicaria lapathifolia (L.) Delarbre var. incana (Roth) H.Haraはこのシノニムとしている。しかし説明に”Japan to Nansei-shoto"とあるから、もしかするとアラゲタデの記録と混同しているのではないかと心配になってくる。(
Persicaria tomentosa (Schrank) E.P.Bicknell | Plants of the World Online | Kew Science
)
さらに、本種の学名にPersicaria attenuata (R.Br.) Sojákをあてる意見もある。大東島にオーストラリアやミクロネシアとの関係がある植物がある(ボロジノニシキソウなど)ことを考えると東南アジアに分布するP. pulchraやアフリカに分布するP. madagascariensisではなくオセアニアに分布するP. attenuataである可能性は捨てがたい。しかし・・・そもそもこれら3種の違いが具体的にどの程度あるのか、という問題も出てくる。3種とも同じ、と考えた方が地理的にはしっくりくるように思う(旧世界の熱帯~亜熱帯に広く分布する、ということになる)。日本のアラゲタデがこれらのどれに相当するのか、そもそも世界のアラゲタデ的な植物がいったい何種あるのか、今後の検討が必要だろう。
オオサクラタデ Persicaria glabra (Willd.) M.Gómez
オオサクラタデ P. glabraはひじょうに特徴的で美しいタデである。葉は両面が無毛でつるっとしており(かつ艶消し)、白い葉脈が非常に印象的である。葉が先端にかけて緩やかに伸び長く伸長するのもポイントだろう。花はピンク色で遠くからでもよく目立つ。が、サクラタデとは全く印象が異なり、巨大なイヌタデのような感がある。というのも花弁はあまり開大せず密につくためである。痩果は2稜(レンズ状)で非常に大きい。熟するまで時間がかかり、熟した順に落下していく。これはアラゲタデと共通する。また、托葉鞘が短く毛を欠くので、これを確認すれば一発で見分けられる。
ちなみに、オオイヌタデと形も名前も似ているし見た目が大きなイヌタデなのでしょっちゅう間違える。オオイヌタデはこんな厚くて革質の葉ではない。
本種は本当に広域分布で、新世界を含めた世界の熱帯~亜熱帯に広く分布する。が、オーストラリアでは帰化種だとされているようだ。よくわからない。
リンク
http://hanamist.sakura.ne.jp/flower/riben/tade/oosakura.html
ケタデ Persicaria barbata (L.) H.Hara var. barbata
ケタデ P. barbata var. barbataは沖縄でもっともありふれた大型の多年生タデ類で、葉幅の広い非常に大きな葉をもつ。ぱっと見の特徴は楔状の葉基部、托葉鞘の毛が非常に長く伸びること、湿度の低い環境ではゴワゴワとした毛が葉にやや疎に生えることである。痩果の稜は3。花は白花である。琉球列島および栽培下ではおもに冬咲き。
非常に大型のタデで、当方の栽培条件では生育するもののコンスタントに開花させることはできていない。いかに大きく育ててよく開花させるか、今後の課題である。
(参考: 室内栽培個体。野外ではもっとずっと大きくなるが、施肥がかなり必要)
リンク
https://koma33.web.fc2.com/ketade.html
リュウキュウタデ Persicaria barbata var. gracilis (Danser) H.Hara
リュウキュウタデP. barbata var. gracilisは学名上はケタデの変種であるが、両種の分布域は東南アジアほぼ全域で広くオーバーラップする。どの地域でもケタデとリュウキュウタデは共存しており、地理的隔離はない。国内でもリュウキュウタデは数は少なく影は薄いながらも広く分布するようだ。
両者は葉の形状(リュウキュウタデのほうが細くシマヒメタデに似る)、托葉鞘の毛の長さ(開花時はやや伸びる傾向があるもののそれでも托葉鞘より明らかに短く、きわめて短くなることもある)、葉の毛が葉脈をのぞきほとんどないこと…で区別できる。一見したところケタデとリュウキュウタデは概形からしてまったく似ていないが、同種の変種として扱われている。
アクアリスト的に両者にはきわめて重大な違いがあって、ケタデは沈水葉をもたず水中では矮小化し枯れていくだけだが、リュウキュウタデは明らかな紅色の沈水葉を持ち水中でもよく生育する。水上に出た葉も赤くなることがしばしばある。
リュウキュウタデは一見したところ、シマヒメタデとケタデの中間型のように見える。初見ではそれを疑い実生も行ったが、リュウキュウタデの子はリュウキュウタデであることが確認できた。
葉のクチクラが厚いのも印象的であり、ケタデやシマヒメタデ/フトボノヌカボタデにはよく入る葉の中央の斑は滅多に入らず、あっても薄い。葉の質感や沈水葉の存在およびその色味はダイトウサクラタデと酷似し、私の目には全く同じように見える。
琉球列島および栽培下ではおもに冬咲き。花は白花だが、ときに薄桃色を帯びる。痩果は3稜。
栽培はとても容易なので、さまざまな生育段階・条件下での栽培個体の形態に関してのちのち記事にまとめたい。
リンク
https://jousyuu2.sakura.ne.jp/ryuukyuutade.html
https://koma33.web.fc2.com/ryukyutade.html
ダイトウサクラタデ Persicaria taitoinsularis (Masam.) Yonek.
ダイトウサクラタデP. daitouinsularisは、サクラタデや以前その亜種とされていたシロバナサクラタデとは全く似ておらず、リュウキュウタデと酷似する。
多数のパッチを様々な条件でみることができたが、肉眼上ではリュウキュウタデとの間にほとんど違いを感じられなかった。リュウキュウタデを種に昇格しその変種ないし亜種とすべきだろうと個人的には思う。
違いがないと考えた根拠は以下の通り。
葉の形態・・・葉の基部は円形に近く葉の表面は無毛、裏面は葉脈上にのみごくわずかに有毛、葉縁のみ有毛。ケタデよりはるかに小型でリュウキュウタデと同大。リュウキュウタデと同様に両面にクチクラが発達しワックス感がある。概してリュウキュウタデとの差はないように思われた。
托葉鞘の形態・・・托葉鞘の毛はひじょうに短く短縮するものが多いが有花茎ではやや伸びて托葉鞘本体の2/3程度まで伸長するものがみられるが、長さ及びパターンにリュウキュウタデとの差はないように思われた。
生育形・・・すべて倒伏した茎から発根し匍匐しながら成長していた。横走する地下茎から茎が直立するシロバナサクラタデやサクラタデとは一切似ていない。リュウキュウタデも倒伏した茎の各所から茎をのばして匍匐するように生育し、両者に違いは感じられない。
花序・・・どちらも白花で密な棍棒状の花序をつけ、時々その中に淡紅色の花が混じる点までそっくり。唯一確認できた違いは柱頭の分岐数がリュウキュウタデで3、ダイトウサクラタデで2であること。
痩果・・・採集しなかったので確認できていないものの、痩果の稜が2であり、リュウキュウタデの3稜とは異なる(日本の野生植物および日本の野生植物フィールド版より)。*しかし稜の数には変異が多く、イヌタデなどでは同一花序の中ですら2稜と3稜、2分岐と3分岐が混在するのをみたことがある。
分布・・・日本の書籍では海外(ミクロネシアからマレーシア東部)にも分布があるとしているが、海外の文献やサイトで本種が海外に分布することについて触れたものはみたことがない。
沈水葉も野外で観察できた。リュウキュウタデと全く同じ色味の、真っ赤なものである。沈水葉だけでなく水上にでた葉も赤くなったり、ストレスからか水上でも赤い葉が混じるのもリュウキュウタデと同じだった。
絶滅危惧IA類かつ国内希少野生動植物種であるが、南大東島でみるかぎり極めてありふれた種のようである。主な脅威は水路への除草剤散布で、多数のパッチが犠牲になっていた。次にあげるならテツホシダおよびクロミノシンジュガヤによる遷移の進行だろう。水質汚濁には強いのか、市街地のドブにすら生育している。
フトボノヌカボタデ(シマヒメタデ)Persicaria kawagoeana (Makino) Nakai
野外での写真が用意できず・・・
フトボノヌカボタデ(シマヒメタデ)はそもそも和名が矛盾塊である。琉球のタデ類としては最も小型であるが、実はかなりリュウキュウタデとよく似ている。葉の概形はリュウキュウタデより細い。湿度が低ければクチクラが薄く葉に軟毛があるのでリュウキュウタデと区別できる。が、高湿度では毛もなくなる。高湿度条件では葉が細いことで区別しやすくなるが…。
学名に関してはかなり混乱している。アジア熱帯域の小さいタデの分類はどの学名を使うべきなのか、もう少し調べてみなければならないと思っている。日本ではPersicaria tenella (Blume) H.Hara var. tenellaとしているが、あきらかに南方系の本種がこの学名に相当する種なのかどうかには疑問があるので、一旦保留して詳しく調べたい。
ウナギツカミ節
ホソバウナギツカミ Persicaria praetermissa (Hook.f.) H.Hara
ホソバウナギツカミは葉の基部がしばしば矢じり状であるのが特徴的である。形態変異が多い種だが少なくとも沖縄の近似種でこうなるものはないと思う。
ナツノウナギツカミ Persicaria dichotoma (Blume) Masam.
ナツノウナギツカミは葉の基部が楔状にすぼまり一見イヌタデ亜属と紛らわしいが、茎の節に逆棘ないし剛毛があるので草体だけでもすぐわかる。水上葉は赤っぽいので遠目でも見当がつく。なお、ナツノとあるが四季咲きである。
といったところで今回の記事を終わろうと思う(もっと書きたい・・・)。
なお、ここで述べた琉球列島の多年生タデ類は国内希少野生動植物種に指定されているアラゲタデとダイトウサクラタデ以外は栽培を試みている。夏場に野外での生育状況に近い屋外全日照での栽培条件下で育てた個体をもとに、今後各種について観察・投稿できればと思っている。