セレベスカーペットスター,またホシクサspスラウェシと呼ばれる水草がもう長いことアクアリウムで流通している.このホシクサは非常に特徴的な種で,成長しても高さ数センチで根茎を横に伸ばして盛んに株別れしマットを形成する.
これだけ特徴的な種であれば簡単に同定できるだろう,そう思った私であった.
セレベスカーペットスターはスラウェシ・マタノ湖の水深10~50㎝程度,pH8+,GH3,KH2,導電度170μsの水域に生育する(アクアライフのバックナンバーより).
マタノ湖といえば,デナリーがレポートしている
(デナリーのレポートはこれに限らずとても面白い.問屋は仕入れてくれないけれどデナリーは個人的にとても好感度が高いメーカーである)
そこにはマタノ湖の湖底を埋め尽くすホシクサが映っていた.
まあ間違いなくこれがセレベスカーペットスターだろう.
ではこいつは何だ.
とりあえずスラウェシから報告されているホシクサをリストアップしてみると…
ってあれ??あれれ??
あんなに茂っている筈なのにホシクサに関する記述が全然見つからない!Royen, 1960以降の文献が見当たらない.GBIFで見てみると,そもそも記録されている標本も少数だ.
とりあえず報告されている種をリストアップする.
Eriocaulon celebicum
Eriocaulon sexangulare
Eriocaulon truncatum
Eriocaulon echinaceum
Eriocaulon brownianum
Eriocaulon pilosissimum
Eriocaulon leucogenes
Eriocaulon zollingerianum
あたりだろうか.
この時点で,トゥティのデカボシに相当しそうな種は見当たらない.Ecology of Sulawesiでは割と細かく水草について述べられているが,ここにもEriocaulon の名はない.かわりに,Isoetesがトゥティ湖にいると書いている.逆にそっちはアクアリウムサイドから聞いたことがないし,標本も検索したが出てこなかった.もしかして,デカボシが誤認されたのではなかろうか,とも思う.
デカボシの現地動画.たしかにIsoetesっぽい.ぱっと見は.
さて,これらのホシクサの中から大きい種を除外しよう.
Eriocaulon celebicum
Eriocaulon sexangulare オオシラタマホシクサのこと
Eriocaulon truncatum スイシャホシクサのこと
Eriocaulon echinaceum
Eriocaulon brownianum
Eriocaulon pilosissimum
Eriocaulon leucogenes
Eriocaulon zollingerianum
ここでE. celebicumはマットを形成しそれっぽい記述であるが,タイプ産地はラティモジョン山の標高3350mであり,ほかの高山性ホシクサとの関連が強いようだ.これをマタノ湖を埋め尽くすホシクサだと言い張るのは無理がありそうだ.
つぎにE. zollingerianum.2~8㎝とギリギリありうる可能性があるサイズであるが,別にスラウェシに限った種類ではなく標本をみても著しいマット状のものはみられない.
ここで,E. echinaceumはマタノ湖から採集された標本に対して充てられている
ほか,葉長1.3~2㎝×0.5~1.5㎜とスケールも合致する…と思いきや,原記載を見ると「花茎は50㎝」とある.
なんてこった.
たぶんこいつらもそうだと思う.
では,セレベスカーペットスターそのものにしか見えない水草はというと…
sp扱いなのでした.
うーん...
水槽で50㎝の花茎をあげた個体が出てくれば納得するのだけど,今の状況だといまいち納得がいかない.本種の栽培技術の進歩に期待したいと思う.
余談.他にもスラウェシの水草について書いてありそうな文献を検索してみたが学名が誤植だらけだったりとあまり参考になるのか怪しい資料も見受けられ,魚やエビに比べて相当研究が遅れているようだ.
水草は「見ず草」を地でいっているらしい.
まずはデカボシ,お前はいったい誰なんだ…
まとめ
アクアリウムに流通するホシクサはぜんぜんわからない.