世界の珍妙水草シリーズ,久しぶりの投稿となります.
今回紹介するのは,Eriocaulon huanchacanum.
HensoldによってボリビアのNoel Kempff Mercado 国立公園から2004年に記載された,渓流性かつ沈水性の有茎ホシクサです.
ホシクサなのに有茎であること,ホシクサなのに渓流性であることも十分奇妙で,葉鞘が発達して茎を覆い,その後幅0.3㎜程の糸状に,9~16㎝ほど長くのびる葉も極めて特異ですが,根も奇妙で他に類を見ない形態をしています.
普通ホシクサ属の根は強く含気して白く,多数の隔壁に仕切られた構造をしていますが,本種の場合含気していません.さらに根毛は普通のホシクサならば全体に生えるところ,本種一部に限局して密生してパッチ状の構造をなします.これにより流速のある場所でも草体を固定しやすくなっていると思われます.
さらに,こうした根をは有茎で糸状の葉をもち,よく似た形態をした「別の属の」ホシクサ類であるRondonanthus capillaceusやLeiothrix fruitans(こいつらも珍妙水草シリーズで扱いたいですね…)にもみられ,これらはよく似た形態でありながら全て別属です.アマゾンの酸性の流水域では様々なホシクサ類が何度も水生適応と収れん進化を繰り返してきたようですが,このどれもが局所的な分布です.本種もボリビアの1地点,マットグロッソ州との境界付近の限られた水域でしか確認されていない希少種です.
きわめて珍妙で面白いですが,アクアルートに乗ることは無いでしょうし,乗ることを私も望みません.
こんなのあるぜ!という進化の可能性を見るのがこのコーナーの趣旨です.