水草栽培者には2タイプいる.
一つはレイアウター.レイアウターは水草の美しさを見ている反面,育てにくい水草は「使いにくい」として敬遠しがちな面も否めない.中には自分でレイアウトを作るのではなく,他者に依頼する場合もある.こういう面を見ると,レイアウターはやはりアーティストであり,これはペット飼育や園芸の延長線上というより,芸術の創作活動の一種であるといったほうがいいだろう.彼らにとって水草はパレットであり,ブラシであり,絵の具である.使っている水草がRotala rotundifoliaただ一種であっても,微弱な色の違いによって「世界」を演出する.
世間的に水草栽培者といえば前者を指すと思う.しかし,数的にはマイナーでももう一つの水草栽培者の存在を見逃すことはできない.
コレクターである.
しかしながら,水草のコレクターは他の分野でいうコレクターとは形相が異なる.
もし水草コレクターたちが真のコレクターであるならば,市場に出回る/国内にある水草の種数は右肩上がりに上がり続けていたことだろう.
しかし実際はどうか.減る一方である.
コレクターの目的は長期維持して手元の種数を増やすことではない.
私含めて,コレクターは収集とは違う,他のことを目標にしている.
それは「栽培条件の攻略」
である.
私は,つい最近まで「今の小学生はカードではなくニンテンドー3DSやPSPで遊んでいるのだ」と思っていたくらいにはゲームに疎いのだが,
「育成ゲーム」なるものが巷で流行っていることくらいは知っている.
上述のようによく知らないので詳しくは語れないが,名前の通り推しキャラをゲームを通じて強化させたり成長させたりするものらしい.
さて,水草をこういうゲームだと思ってみてみると,
・水草は失敗しても(魚や爬虫類ほどには)痛くない
・水草は育成に成功すると最高に美しい
・水草の多くは栽培にトリッキーな癖がある
・栽培マニュアルがあるわけでもなく,自力で頑張らなければならない
・栽培する=増えるので,ヤフオクなどでワンチャン換金も可能
・わりと新しいゲームが発売される(少なくとも2013までは)
と,ゲーム性が非常に高いのである.
南米水草がなぜあそこ迄はやったのか?
その原因の一翼は「育てられないから」だったのだと思う.
育てられないものを攻略するのは最高に楽しい.人間の本質的な欲求,快感をくすぐるものがある.その反面,攻略した後はどうか?飽きがやってきて,ついには積みゲーになり,最後はよくて枯れるか,悪くて燃えるゴミである.
なので私は心の中で,水草コレクターは水草ゲーマーだと,ぼそっと呟くのである.
さて,2013年にはコンスタントに来ていた新規入荷,まったく新しい水草がなくなり,ファームで生産された普及種ばかりが流通するようになった.すると水草をやめる人が多く出た(多数派).そしてもう一つ,さらに難しいゲームを探す人が出てきた.
(つづく)