水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

「水上栽培は逃げ」なのか?

「水上栽培は逃げ」という話を聞きます.

要するに,水草は水中で育てるのであって,水上でやるのは邪道であると.

しかし,フィールドとアクアリウムの両方をやるものから言わせてもらえば,それは決して逃げではないと思います.

フィールドにおいて,「一年中深い水の中で生育する」水草というのは殆どが金魚藻的な生態を持つ水草です.つまり濃緑色の透明感の高い葉をもち,葉は細かく裂けるか極めて薄く,ヒョロヒョロと伸びはするがトリミングには弱い,もしくはランナーなどで無限増殖する...そういう種が目立ちます.バリスネリア,ポタモゲトン,ミリオフィラム,カボンバ,クロモ,アナカリス,ナヤスなどなど.

これらを水草レイアウトに使おうとするとどうなるか?

ぎっしり水草で埋まった藻場になるか,もしくはトリミングで全滅するか.うまくいってもあまり見ごたえのしないものになるでしょう.正直言えば,こうした「陸地より水の方が好きな水草」の殆どが水草レイアウトに使えたものでは無いのです.

また,そもそも草姿や色味から言っても正直とっつきにくい部分がありますね.

 

フィールドで「レイアウトに使える水草」を見かけるのは年中水のある川や湖ではなく,主に水田や湿地,湖でも岸際,年間の水位差が激しい地域や,年間の多くにわたって水深が30㎝未満の水域,湧水などでCO2供給が異常に多い水域などです.

こうした種は一年でも水中で生育するのは数か月で,それ以外の時期は抽水型で水上葉になっていたり,もはや乾燥して陸地になっていて種で過ごしていたり….トリミングに強い性質をもつものが多いのは沼地で採食する草食動物への耐性からくるのではないか?と思っています(水中で草を刈り取って食べる生き物はあまり多くはないですから(引っこ抜く生き物はとても多いですが)).

湿地などの水中で生育する,こうした水草は最高に美しいものです.

ミズユキノシタ,ミズネコノオ,ミズマツバ,ホシクサ,スブタ,ミズオオバコ,ミゾハコベなどなど…海外でスター水草と呼ばれるものが生えているのも,自生地写真を見る限りたいていこんなところです.

陰性水草はどうよ?といわれそうですが,活着系の陰性水草が生えているようなところはもはや渓流の縁で,増水時以外は水をかぶらない環境です.(つまり渓流植物が当たり前のように持っている短時間の水没耐性の延長線上)

 

つまり...こうした水草を水中,しかも水深30㎝級~で栽培し「続ける」のは生理的ではない筈です.

 

水上から水没した時に一時的に水中で生育するのも十分水草たりえる育ち方ですし,それらを有効に使う方法があってもいいはずです.水に沈めるとバリバリ育って美しいが基本は水上,それでいいんじゃないでしょうか?

 

「水上で育てるようならばもはや園芸と変わらない」

そんな意見もよく聞きますが,たとえそれがどこで育てられていようが,「水没しても育つんだぜこいつ」というのは強烈なパーソナリティ,ロマンであり,並みの観葉植物を何十種まとめてよこしても太刀打ちできないものなのです.たとえ水上のほうが得意だったとしても,水没したって育つ植物というのはかなり珍奇な部類に入るのです.

 

そもそも栽培というのはその植物に合わせて最大限に工夫することであって,その植物を育てるのが目的であればそこに変な足かせを付けるべきではないと思うのです.

園芸植物では数十年単位の維持栽培が当たり前なのに水草はすぐに消えていく,その原因はここにあるのではないでしょうか.

 

水上のほうが育てるのに向いているならば,楽しむ時だけ沈めておいて,基本的には水上でストックすべきだと私は思うのです.

要するに,やり方は何でもいいので,その水草にとって一番育てやすい方法でやるべきだということです.

最後に問いかけます.

あなたはその「水草」を育てたいのでしょうか?

それとも,単に珍しくて自慢できる「水槽の飾り」がほしいだけなのでしょうか?