水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

カージナルテトラをもっと楽しむための水草

 

このシリーズについて

このシリーズでは熱帯魚の現地写真に映り込んだ水草や産地情報から、熱帯魚を飼育するときにどんな水草が似合うのか?ということを書いていこうと思います。

最近はやりのワイルドアクアリウムビオトープアクアリウムですが、熱帯魚サイドからは何の草が生えているのかがイマイチわからない…という人が多そうに思います。というわけで

第一回は「カージナルテトラに似合う水草」について書いていこうと思います。

いまや一匹100円を切ることもあるカージナルテトラですが、現地に思いをはせてみるとその魅力を再発見できるのでは?と思います。

カージナルテトラについて

カージナルテトラはおもに、ネグロ川流域およびオリノコ川上流部に分布します。ネグロ川と言えばpHの低いブラックウォーターで、実際カージナルテトラもpH4~6の弱酸性水域で得られています。ただしクリアウォーターに生息する例も多くあり、ブラックウォーターにしなければならないというわけではありません。ただ、流速は遅く、pHは弱酸性を好むという点に関しては間違いないようです。

そして、pH 4~6というのは多くの水草の栽培に非常に適した水質帯であり、この水質なら多くの水草をさほど手間をかけずに栽培することができます。事実カージナルテトラ水草の生息する水域で主に見られることもあり、水草レイアウトに泳がせる魚の定番となったのもうなずけます。

 

では今回は、「カージナルテトラの泳ぐ水草水槽」をより一歩深く踏み込んでみようと思います。

 

カージナルテトラの現地写真ではかならず何らかの植物がみられる…とたとえばMikoljiは書いていますが、事実カージナルテトラは調べていても水草との組み合わせを見やすい種です。

ネグロ川、オリノコ川上流域の水草

KasselmannがAquarium plants(2020、英語版を参照)にネグロ川の水草について書いているので、とても参考になります。ネグロ川のブラックウォーターで最もよくみられる水草はスターレンジであり、中流下流ではCabomba schwartziiCabomba aquaticaの変異)がみられます(通常のC. aquaticaスリナムからガイアナのブラックウォーターとのこと)。またマヤカやエグレリア、ウトリクラリア・フォリオサはネグロ川に広く分布し、時にシャーマンシダやカヤツリグサ科、ホシクサ科が見られるとのことです。

Ivan Mikoljiは自身のウェブサイトでオリノコ川上流域のカージナルテトラの現地写真を多数挙げていらっしゃいますが、やはりヘアーグラス系の水草がよく見当たります。乾季と雨季の差が激しい地域で撮影しているためか、水没したイネ科やツユクサ科などの抽水~湿生植物が目立ちます。残念ながらこうした植物は現在維持されている株がないので、それっぽい植物で代替するしかなさそうです。(そもそも、水中での長期維持ができそうなものにも見えない)

非常に興味深い情報として、オオミテングヤシが抽水性のヤシとして同所的にみられることがあるとのことです。オオミテングヤシなら食用ですし、苗が流通したこともあるのでいつか、運が良ければ栽培できるかもしれません。

 

天野尚が見たカージナルテトラ水草

アクアデザインアマノ(ADA)で有名な天野尚は写真集「最後のアマゾン」でネグロ川支流、バリリ川にてカージナルテトラの現地写真を撮影していますが、そこにはエグレリアEleocharis fluctuansや、エレオカリス ミニマ Eleocharis cf. minimaが映っています。他の熱帯魚としてはチェッカーボードシクリッドやホタルテトラ、赤目金線テトラなどがおり、落ち葉や流木が堆積したブラックウォーターです。天野氏はネグロ川でほかにもトニナsp Syngonanthus anomalusやラージマヤカMayaca sellowiana、マヤカ Mayaca fluviatilis、スターレンジ Tonina fluviatilisスイレン属ヒドロカリス亜属の一種を撮影していますが、この写真自体にはカージナルテトラは映り込んでいないようです。ただ、近い環境に生育していることが伺えるので植えてみると面白いと思います。

 

 

Youtubeで見るカージナルテトラ水草

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ネグロ川中流域、Daracua川の水中写真カージナルテトラが沢山映っています。浸水してあまり時間がたっていない沈水林なのか、落ち葉と木、水没した苗木が中心で水草はほとんど見当たりません。

 

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ネグロ川支流、Zalala川の水中写真です。カージナルテトララミーノーズテトラは勿論のこと様々な熱帯魚が映っています。

水底を覆いつくす水草はエグレリアEleocharis fluctuansで、ところどころエレオカリス ミニマらしきヘアーグラス類が見当たります。

 

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詳細な地点は不明ですが、カージナルテトラをはじめとして様々なテトラとヒドロカリス亜属のスイレン、ラージマヤカがみられます。

 

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日本語字幕がついており、カージナルテトラを手っ取り早く知るうえで大変ありがたい動画です。

抽水植物オモダカのような葉をもつサトイモ科など)も映っており大変参考になります。水中に茂るのはエレオカリス・ミニマやアパランテ・グラナテンシスでしょうか。

 

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沈水林でみられるカージナルテトラ水草はあまり映っていませんが、ビオトープアクアの参考になりそうです。

 

推奨される水草エビデンスレベル

他にも色々動画や現地画像がありますし、もっと組み合わせられる水草は増えていきそうです。ただ現時点での推奨を出しておきます。

推奨度A 確実に同じ場所でみられるもの

エグレリア、エレオカリス・ミニマ、ラージマヤカ、オオミテングヤシ、ヒドロカリス亜属のスイレン、アパランテ・グラナテンシス、イネ科、カヤツリグサ属、水没した木本など

推奨度B 同じ地域・流域でみられるが、同じ画面に映った例を指摘できなかったもの

ターレンジ、トニナ、マヤカ、ウトリクラリア フォリオサ、イエローカボンバ、シャーマンシダなど

推奨度C 同じ大陸・気候帯から記録があるが、水質や条件的に外れている可能性が否定しえないもの

アマゾンソード、ピンネイト類など

推奨度D 地域や流域、気候帯、水質から大きく外れるもの

ロタラルドウィジア、エキノドルスの多く、パンタナルクリスパ、コブラグラス類など

 

→代替案などについて

南米のエレオカリス・ミニマと呼ばれるような水草としては現在アラグアイアヘアーグラスが残っており、レイアウトには有効と思われます。アクアリウム的にはヘアーグラス類はそこまで違いが見当たらないので、レイアウトではある程度代替がききそうです。(ただし、カーペットになるタイプは南米ではあまり一般的じゃなさそう)エグレリアに関してはマナカプル産しか流通していないが代用できるでしょう。マヤカ、ラージマヤカ、スターレンジ、トニナに関してはある程度だいたい近めのもの・・・という選択ができそうです。

 

というわけで今回はここまでです。