今回はアブノメ属Dopatriumについて.
DopatriumはBenthamにより1835年に提唱され,タイプ種はインド産の Dopatrium junceum(日本のアブノメと同種)である.分布の中心はアフリカ熱帯地域であり,11種が分布する.アフリカ産の種は岩盤にできた季節性の水たまりに生えるものが多い.なお,マダガスカルには分布しない.アジアに分布するのは4種のみである.D. junceumは非常に広域分布で,アフリカからアジア,オーストラリア,極東ロシアまで分布が見られる.日本では水田の印象が大きいが東南アジアでは池などにも出現し,またアフリカでは岩盤にできた季節性の水たまりにも生育する.アジアに分布する他の3種に目を向けてみると,D. acutifoliumはインドシナ半島に生息するが情報が少なく詳細不明である.D. nudicauleとD. lobelioidesは南インドとスリランカに分布する.これらの種は岩場の水たまりだけでなく,湿地,水田にも出現する.
ようするに,日本では水田の印象が強いアブノメだが,この属は基本的に岩場の季節性の水たまりに生えるということである.
日本のアブノメという名は花序の下部にみられる無柄の閉鎖花を虻の眼にたとえたものだが,同定に当たってはこれがキーとなる.D. junceum以外のDopatriumは閉鎖花をもたず,また無柄でもない.
さて,以前からずっと気になっていたことがある.インド~スリランカあたりの現地写真で,妙に立派すぎるし巨大だし,ド派手なアブノメが映っていることがあるのだ.
Species of wilpattu national park
ようやく詳細な写真を見つけたのでよく見てみるが,これはDopatrium lobelioidesであろう.この種はアブノメに比べて一回り大型で,花もだいぶ立派だ.アブノメ類が一面の花畑を作り湿地をピンク色に染めるとは,圧巻である.ちなみにD. lobelioidesで検索するとLindernia hyssopifoliaあたりか???とおぼしきLinderniaceaeの画像ばかりヒットしてしまうので注意.
こちらはDopatrium nudicauleである.
Dopatrium nudicaule - Leafless Dopatrium
青い花が美しい.アフリカの種に関してはあとでもしかしたら書くかもしれない.