年末年始に45㎝水槽の調子を著しく落としてしまったのでレポートしてみる.
事故レポート
条件 フィルター エーハイム500
底床 使い古し→アマゾニアに変更
pH 5付近
経過
12月中旬
某所で野外採集した雑草を数種入れてみる.着状態が悪く腐り始めているものもあり,腐った部分を除去して導入.
12月後半
ダメそうな水草は溶けたものもあったが大きな損害はなく経過.
12月末
年末大掃除していたらアマゾニアが出てきたのでソイルを交換してみたところ,濁りがとれず浮泥が舞いがちとなる.対策をとる時間が取れないまま帰省
1/3~6
浮泥は出がちだがこれといった損害はみられず.ロタラ系とマヤカはいつになく調子がいい.他はくすぶっている.ポタモゲトンは一部の種が成長.結構速い.ムジナモが寒くもないのに冬芽になり始める.
1/6
他水槽で調子を崩したヒナザサ水上葉を入れる
当該水槽にも某所の溶けかけ水草を入れており,ヒナザサ以外は問題なく経過していた.ヒナザサだけ妙に葉色が悪く,肥料切れかと思い試しに入れてみた
1/7~8
用事により家を空ける
1/9
事故発生
セタケウムとマットグロッソスターの葉が溶ける.他のホシクサ類に拡大すると被害甚大であること,替えは沢山あるため処分.ゴイアススターやクチ,ウォータリーアイズ,ソーシャルフェザーダスター,ヒマラヤスターには被害なし.
ポタモゲトンが複数種溶ける.葉が重なり合った部分で顕著.一部残して除去.
浮かせていた株分け後のブリクサが溶ける.替えは沢山あるが,溶けた部分を除去して様子見.
レッドカボンバ全滅
ムジナモ,すべて冬芽になる.ゴハリマツモ,新芽を残して溶ける
ミクロソリウムの葉に枯れが広がる
1/9
各種の溶けた部分を除去,アマゾニアを本間ソイルで被覆.外部フィルターを1年ぶりに掃除する.溶けた部分を除去するためシナヌマエビ導入.
1/10
被害の進行見られず
1/10~15
ロタラとマヤカがいつになく調子がいい.ポタモゲトンが息を吹き返し始める.ためしに他水槽からトニナとラージナヤスを入れてみる(溶けがでないかのチェック用)
1/15~18
ムジナモが急激に復活.死にかけブリクサも根を出し始める.トニナ及びラージナヤスも発根および成長開始.ミクロソリウムは相変わらず調子が悪い.ゴハリマツモも復活傾向.
事故の原因について
・溶けかけの水草導入
・アマゾニアへのソイル交換
の2つが原因である.
・某所で採集した水草は異常なまでに立ち枯れ病が出やすく,(入れた当初は単に輸送が悪いのかと思っていたが...)その被害が拡散したものと思われる.採集前後にずっと雨続きだったことも原因だろう.最終的にヒナザサの移植により壊滅的な被害が出たが,その後の経過をみるに,どうも不調の原因はこれも立ち枯れ病だったようだ.些細な不調を見誤った結果と言える.
・ソイルの交換を機に有機物量が増え,浮泥が舞ったことがバクテリア叢のバランスを崩したことが引き金になった.さらにアマゾニアは窒素量が多く,N-P-K比がNに偏り立ち枯れ病が発症しやすい条件となる.
・さて,水槽ではふつう,立ち枯れ病などの被害はそこまで拡散しない(正常なバクテリア叢が保たれていれば…)ため,12月後半は被害が出ておらず,潜在的に病原体が残っている筈の条件でも再燃せずに経過している.
***おまけ***
そもそも,水槽で出る「溶け」ないしワイルド品の痛みもじつは多くが立ち枯れ病であると思っている.立ち枯れ病自体も単一病原体によるものではなく,多くの病原体により起こる疾病の総称である.
・日和見的な性質が強いうえに,水中では維管束が一部障害されたとしても全草が枯死するわけではないため,「安定した」水槽に浮かべておけば多くの場合,軽快する.生長点がどこか残ってさえいれば水草は復活するし,そもそも溶けるということ自体が慣れ親しまれている.要するに出たとしても「ちょっと溶けた」で済まされてしまっているのだと思う.「なぜか水草では病気らしい病気がない」現象に関しても,おそらく上記のようなことが他の病気でも起こっているのだろう.
・水分過多だったり,N-P-K比がNに偏ると立ち枯れ病が出やすいことが園芸業界では常識であるが,致命的な「茎から出る溶け」が実は水中の立ち枯れ病であったと仮定するならば,水槽内でもK重視で施肥する方針は対策として有効だろう.(おそらくN過多だと成長が速くなって細胞壁が脆弱になり,感染を誘発する)
・水槽のバクテリア叢が安定していれば立ち枯れ病は出にくいと先に書いたが,安定した水槽の水でミズゴケを戻すと水上栽培でもこの手の被害はかなり減る(たとえばピシウムとか).最大の予防策は水槽のバランスを崩さないことであろう・・・
***おまけ2***
特にソイルを交換する必要はなかったのだが,なんか替えたくなってしまったというばかばかしい話.いつものように泥抜きして施肥すればよかったものを.
但し,いくつかの戦訓は得られた.
・ロタラ・ロトンジフォリア系は相性が悪く,基本的に不調なものという印象だったが,ソイルを交換すると調子がばっちり上がった.その他マヤカやルドウィジアにも同様のことがいえた.それに対して,アンブリア系はそこまで影響を受けない(追肥条件の方がむしろ元気)ように見えた.
・エイクホルニアはソイルを交換すると調子を落とす.経験則上そんな気がしていたのだが,やはり.そもそも環境変化に弱そうだ.
・他の水槽でも気になっていたのだが,アマゾニアは他のソイルに比べてポタモゲトン系に及ぼす負の影響が少ないような気がする.
結局今回の失敗で完全に枯れてしまった種はレッドカボンバだけであったし,他の種で被害を受けたものに関してもバックアップが各所にとってあったことから,そこまで大きな被害にはならずに済んだ.色々考える機会になったので総合的にはプラスに評価しておく.