水草オタクの水草がたり.

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「なんとかリウム」の本当の意味

 

 

 

「○○リウム」が氾濫している。

しかも「○○リウム」が本来何を意味しているのか分からないまま作品を作っているのが殆どではないか。なんだ単語の定義くらい、と思われるがこれは重大事である。なぜならこれら「なんとかリウム」はラテン語を嗜むことを権威と教養に結び付けがちなヨーロッパ人が、敢えてラテン語を使って小難しくカッコつけて作った名前であるからだ。要するに、その意味に沿わない作品を公開するというのは自身の教養のなさを公開しているのに等しく、非常に恥ずかしいことなのである。

 

 

 

さて、「○○リウム」と聞いて何を思い浮かべるだろうか?

殆どの人は「アクアリウム」が出てくると思うが、最も歴史がある語はビバリウムである。

ビバリウム Vivarium

Viva-rium

Vivaはラテン語で生きる、riumは場所。

少なくとも1600年代から使われている語であり、私が見つけた例としては1730年の英語辞書に「Vivary」があり、そこには「生き物を飼う場所」とある。

1730年の英語辞書、Dictionarium Anglo-Britannicumより

というわけでビバリウム Vivariumは「生き物を飼う場所」である。

その後の変遷の中でも「生き物を飼う」という性質は変わらない。

Oxford dictionaryでは「a container for keeping live animals in, especially for scientific study」とあり、「生き物を(とくに科学研究のために)飼育する容器」とあり、Collins dictionaryでも「A place artificially arranged for keeping or raising living animals.」「生き物を飼うために用意された場所」である。

ただしCambridge dictionaryでは「a container, often with a glass front, in which small animals, especially small reptiles, are kept as pets or so that they can be studied」とある。これは爬虫類愛好家がビバリウムという単語を使いがちであるためだろう。

少なくとも、ビバリウムに「爬虫類」という意味はない。中に入っているのがトカゲでなくとも、クワガタだろうがカエルだろうがハムスターであろうが、ビバリウムと呼んで問題はないだろう。

 

さて、1800年代になると水槽が発明される。するとAquariumという語がアクアリウムに対して誤用され始めた。

 

アクアリウム Aquarium

Aqua-rium

Aquaはラテン語で水、-riumは場所。

もともとは文字通り家畜の水場だったようだが、その後Marine Vivarium(要するに「水生生物を飼う場所」)を表す語としてAquariumが使われるようになる。

Aquariumおよびその後の(生き物関連の)「○○リウム」は、「○○+ビバリウム」からきている、とみなすこともできる。まあ「○○の場所」と直訳しても通じるし意味は分かる。

 

さて、このVivariumから水のみを差すAquariumが分離すると、今度は陸側を指す用語としてTerrariumが派生する。

テラリウム Terrarium

Terraはラテン語で大地、riumは場所。

ようするに陸のビバリウムである。

 

アクアテラリウム Aqua-Terrarium

 

さて、では水と陸を両方もつものはどうか?

むろんAqua-Terrariumである。

ただし世の中にはこれに加えてPaludariumと、Ripariumがある。

 

パルダリウム Paludarium

Palude+rium

Paludeはラテン語で沼地・湿地、-riumは場所。

 

リパリウム Riparium 

Ripaはラテン語で岸、-riumは場所。

 

う~~ん悩ましい。両者は作風の微妙な違いとしか言いようがないが、どちらもあくまでAqua-Terrariumの一部であることが最も重要なことである。

陸だけではTerrariumだし、水だけではAquariumである。

ここ5年程、日本人が「沼」「湿地」という本来の語義を無視した作品を乱発しているが、その前に書かれた記事を見てみると面白い。

https://www.aquaportail.com/definition-2044-paludarium.html

「Un paludarium est la réunion d'un aquarium couplé à un vivarium humide, aménagé pour recevoir et élever des animaux aquatiques et amphibies, et pour cultiver des plantes aquatiques ou terrestres nécessitant une très grande humidité, avec un climat paludéen. Le paludarium, une forme particulière d'aquaterrarium, recrée ainsi un environnement de biotope tropical ou subtropical avec une faune et une flore paludicoles.」

「パルダリウムとは、水生・両生の生き物と水草ないし高湿度を要求する陸生植物を育成するためにつくられた、アクアリウムと”湿った”ビバリウムを合体させたものである。パルダリウムはアクアテラリウムの一種であり、熱帯もしくは亜熱帯のじめじめした気候の動植物の生息環境を再現する。」(2007)

ちなみにこのAquaportailというサイト、他の○○リウムについても詳しく解説されているので面白い。

 

https://showcase.aquatic-gardeners.org/2013/index2.html

This category has some nice examples this year and the winning tanks deserve their positions. However there were far too many tanks that really attempt to stretch the definition of "paludarium" to extremes. A paludarium is neither an aquarium with some wood sticking out the top nor is it a terrarium (with or without a "damp" spot. A paludarium needs to have a water area AND a land area both fully developed!

「このカテゴリー(パルダリウム)は今年も素晴らしい作例が集い、また受賞した作品はそれに値するものでした。しかしながら「パルダリウム」の定義を無理くり拡張しようとするような作品があんまりにも多かった。パルダリウムは水槽の上に流木が数本突き出したものだけでもなければ、テラリウムでもありません(”びちゃびちゃした”場所があろうとなかろうと)。パルダリウムは、水中と陸上、両方がしっかりしていないとならないのです!」(2013)