水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ヤナギモ関連交雑種

上からヤナギモ、アイノコイトモ、ヤナギモ?。

すべて同じポイントにて。これらとは別にオオミズヒキモらしきものもいた。

葉脈数は肉眼では確認しにくいが光に透かしてカメラのスーパーマクロや顕微鏡モードで確認するのが手っ取り早い。

あっちにもこっちにも3脈のものがいる。ツツイトモ的なやつにも、ヤナギモ的なやつにも、典型的なアイノコイトモにも、ホソバミズヒキモにぱっと見ではみえるものにも…。

サジタリア グラミネア ”クラッシュアイス”はS. gramineaではない

Sagittaria graminea ”Crushed Ice"が売られていたのだが,どうみてもS. gramineaではなさそうだったので検証までに.

見た印象ではS. platyphyllaであったが,具体的にどこを見るべきなのかよく知らなかったため宿題とした.

日本で流通するナガバオモダカは雌花しかつけないため,これを判断材料とするのがフィールドでは手っ取り早いのだが,海外では雄花をつけるS. gramineaが普通に存在しているため,海外由来の改良品種をこれで判断することは極めて危険である.

見るべきはむしろ,花茎の下半分にある雌花の柄であるらしい.S. gramineaでは細くツンとした感じでまっすぐであるが,S. platyphyllaでは肉厚で熟するにしたがって曲がる.

北米産のオモダカ類でこの特徴を持ち,かつ葉がすべてさじ状のものはかなり少ないようで,初見での感想通りS. platyphyllaが一番妥当かなと思う.但し他の地域でのオモダカ類については調べ切れていないので,とりあえずS. gramineaではないとだけ書いておく.

 

さらに,”サジタリア ウェザービアナ”としてラタイ便で入った個体もS. platyphyllaに見える.これは現物を確認していないが...S. weatherbianaS. gramineaの変異で葉幅が出るもの(つまりナガバオモダカのこと)であるが,ラタイ便の株も雌花の柄が太く下垂する写真が見られる.

大阪付近ではS. platyphyllaが拡大し問題になっているが,S. platyphyllaがどこから来たものなのか不思議に思っていた.もしかするとこうした株からなのかもしれない.

S. platyphyllaはアクアリウムで流通する様々な”ジャイアントサジタリア”に関しても紛れている可能性が多いにある.水上葉を作らせて検証していく必要があるように感じるが,興味を持ってやってくれる同志はどのくらいいるのだろうか.

改良品種であり,世界的に広く流通している”Crushed Ice"の誤同定を世界中の誰も指摘していないように見えるのをみるに,相当少なそうだ.

 

花茎が折れてしまい状態がよくないのが残念.しばらく沈水植物鉢の肥料を吸わせながら咲かせて,パーフェクトな花茎の写真を撮らねばならない.そのため暫定稿とする.

 

Crushed Iceの雌花柄.ナガバオモダカとは質感が全く異なる.

葉の形などもだいぶ違うのだけれど,なかなか気づく人はいないのだろうか.

ホソバヒルムシロ

ホソバヒルムシロやエゾノヒルムシロ、ノモトヒルムシロなど、沈水葉しかほとんどつけない植物を「ヒルムシロ」と呼ぶには違和感がある。エゾノヒルムシロはさておき、ホソバヒルムシロとノモトヒルムシロはかなり茎がガッチリしているのでそこがヒルムシロ要素なのだろうか。ではコバノヒルムシロはなんなのか。ホソバミズヒキモはなぜ○○ヒルムシロでないのか。…まぁもうどうでも良いかな。


ホソバヒルムシロは見ての通りかなり大型のPotamogetonで、基本的に沈水性である。その葉脇から長い花茎を伸ばして開花する。花茎は15cmを超えることもあり、かなりのものである。外見からの印象からすると、これこそ「ナガバエビモ」と呼ばれるべきもののように思うのだが…。。。


ササエビモ Potamogeton nipponicus Makino


タイプ産地の日光では素晴らしいことに中禅寺湖遊覧船の桟橋から群落を真上から眺めることができる。もうこれを観光名所にしていいくらいなのだが、気づいている人は僕くらいかもしれない。

桟橋への立ち入りは自由だが、くれぐれも交通の支障をきたさないように。水深2m程度を好むので岸から見ることは難しい。透明度の高い水中をケルプの森のように水底から立ち上がる姿は圧巻で、水草好きなら一度は見ておくべき光景。運が良ければエゾノヒルムシロも見られる(違いははっきりしないが、結実するものはエゾノヒルムシロとしていいのではないか?)

タイトルは(来年の朝ドラの内容も踏まえ)Potamogeton nipponicus Makinoとしたが、同様の雑種は中国にもあり「日本の水草」ではP. × nitensを採用している。


中禅寺湖では個体数が多い上に、草体が長く波に煽られやすいために切藻が多数漂着する。そのため、手にとって間近で観察することもできる。

他のヒルムシロ類とは水中葉だけで区別可能。

葉がやや丈夫で短め、若干茎を抱くことでエゾノヒルムシロから、葉が半周以上茎を抱くことはないことでヒロハノエビモと区別でき、小型であることでナガバエビモから区別できるが、エゾノヒルムシロやナガバエビモとはきわめてよく似ている。ホソバヒルムシロともよく似るが、葉は細くない。ヒルムシロのように葉柄を持つことは基本的になく、ヒルムシロやオオササエビモなどの葉脈が白く目立つ種と違って葉脈は赤っぽく目立たない。

2022年カメルーン便についての水草がたり リムノフィトン,クリナム,ボルビ

ヤバいものが2連発は反則ですよ.次弾装填急げ!

 

リムノフィトン・フルイタンス

激やばです.10年ぶりに生きた株が入荷,サイズは…誰がこんなの育てるのやらというサイズ感.120㎝くらいあり,水槽に入れるのはもはや困難です.水槽というより,温室がある施設などで栽培されるべき種だと思います.本来渓流植物なので,植物園の温室によくある「せせらぎ」に植えればいける気がするんですよね・・・.学術的価値もありそうなサンプルなので,植物園スタッフの眼に触れた株が一つでもあればなあと.

栽培困難な種ですが,もしも日本初開花やら展示やらがいつか見られたらうれしいですね.株によっては開花や果実が見られたので,実生も行える余地があります.

本種は極めて稀な「常緑の沈水渓流植物」です.他にこういう例は殆ど思い当たらないくらいなのですが,どういう環境に生えているのでしょうか.

 

クリナムspコークスクリュー

クリナム・トーチフォリアです.ナタンスに似ますが(?)中肋なしで葉全体がよじれます.特徴からはCrinum natans inundatumであると思われます.この亜種は水位差のある場所で生育し乾季を球根で越すため,休眠期があるのではと疑っています.入荷回数が少ないとはいえ,日本に前回入荷分が残っていないのは何か理由があるのでしょう.

 

ボルビティス

いつもの.ギニア便と比べてみるのも楽しそうです.

2022年ギニア便についての水草がたり③ ニムファ,カヤツリ,ボルビ,クリナム編

これもアツかったんですよ!最ッ高…デス...

 

ニムファsp ギニア

スイレン属Brachyceras亜属の熱帯スイレンです.葉も花も非常に小型で,確認した限り浮葉,水中葉ともに10㎝未満,花は白花,500円玉大でした.つまりサイズはミニミニドウベンと同等です.浮葉の中心部のムカゴは見当たらず,真のNymphaea micranthaではなさそうだと思います(市販のミクランサは園芸品種イスラモラダの劣化量産品のようです).Nymphaea heudelotii var. nanaではないかと期待しており,スイレン類の栽培に精通した友人に頼んで開花確認および栽培をお願いしています.非常に小型の原種スイレンであり,かつ花サイズが比較的葉に対して大きいこと,Brachyceras亜属であり他原種や改良品種と交配が容易であること(昼咲きの熱帯スイレンはたいていBrachyceras亜属の交配で,N. nouchaliとN. micranthaが主な親です)から園芸育種家にこそ手に取って交配原種にしていただきたい逸品です.

 

ギニア便カヤツリグサ科の一種

糸状の水中葉と断面三角形の桿を持つカヤツリグサ科です.一見してクログワイに近い類とわかりましたが,Eleochalis variegataと思われます.近縁のミスミイ(なぜか世界中にいる)より小型で,成長初期に水中葉を,その後桿を伸ばしたイグサ状になる水草と思われます.しかしクログワイのように球根がついている様子はなく,どのような条件で水中葉をだしたり桿を出したりするのかはいまいちよくわかりません.生態的な観点からも非常に面白いです.ちなみにクログワイの水中葉パートだけみたいな植物がエグレリアで,ミスミイ,クログワイ,エグレリアあたりはエレオカリスの中でも互いに近縁です.ただのイグサになってしまって要らないという方が居たら連絡ください.

そもそもミスミイがどうにもこうにも見つけられず,でもいつかは育ててみたいと思っていたのでアフリカのミスミイ近縁種が栽培できるというのは・・・最高ですよ.最高なのです.ただのイグサになったとしても最高であることに変わりはないのです.

 

ボルビティス,クリナム・ナタンス

アヌビアスが植物防疫上ビミョウになってしまったので,アフリカ版定番がこれだけになってしまいましたね….まあ無難に発送できて,育ち方が無難に発想できて,細かいバリエーションがあって,無難に売れる水草ということでありがたいですね.変草だけ入荷しても変態の数は限られていますから…ボルビは2タイプいますが種レベルで分けられてはいないかと.ナタンスは普通の波打つ方で,イヌンダツムではありません.

 

ギニア便クリナムsp

変なものが届いたのでクリナム…なのかな?というUnknown plantです.葉はV字型に折れており,葉基部は赤色,わりと硬く肉厚です.葉が数枚しかない状態で届いたので何とか生き返ってほしいと思いつつ,こういう謎陸生植物が好きな方に届けて栽培及び同定を頑張ってもらうことにしました.いやぁ~.面白いですよネこういうの.水草できたってことは,河岸に生えるのかなぁ…

 

ギニアンスプライト

実はごく少量だけ入荷していたっぽい?ギニアのミズワラビ類です.私は現物を見れていません.わたるべき人のところに渡ったようなので,今後増殖株で見る機会があるかもしれません.楽しみですね.

 

 

 

2022年ギニア便についての水草がたり② 謎めいた有茎草編

今回最高に面白かったのが有茎草です.

バコパ フロリブンダ(インボイス

対性で細葉の水草が来るということでB. floribundaが来るのでは?ギニアンエウステラリス再入荷?と思いましたが全然違いましたね…苦笑.キツネノマゴ科のなにかだと思います.茎断面は四角形,やや稜があり非常に硬質です.その割に腐りやすい.葉は対性で葉身基部付近に毛があり,中脈が目立ちます.葉基部にも毛がありそうですが,保存状態の関係であまりはっきりは観察できませんでした.茎と同じく,葉も硬質なのに簡単に真っ黒になって腐るようです.葉には強いキツネノマゴ臭があります.青臭いというか,マダガスカルキツネノマゴやジャスティキアをちぎった時のような...ツルムラサキにも匂いが似てますね.こういう細葉のキツネノマゴはギニアには結構いるのですが,Hygrophila senegalensisに酷似しています.もしそうだとすれば水中ポテンシャルはあるはずです.(Hygrophila senegalensisの水中葉はどんなになるかは具体的な記述を見つけられませんでしたが,水中葉自体は存在するようです)今回のギニア便でもオモシロ案件の一つでした.また同じ注文をしても同じ草をとってくる気がしません.

なんとか生かすぞ,うひょひょひょひょい.

 

ギニアンフロスコパ(インボイス

川岸の雑草が来てうれしいですね.黄緑色のやや凹凸がある葉を持ち,表面にはうっすらと短毛が密生します.アクア業界はなぜかツユクサとイネとカヤツリの区別があまりつかないようですが今回のこれはツユクサ科なのは間違いなく,雰囲気的にはFloscopaっぽい感じです.Floscopaの誰なのかはわかりませんが,(たとえば,F. africana??)育てながら検証していただきたいと思います.関東までは着状態が良好だったので,期待できそう.

 

ギニアンクリスパ

Floscopa aquaticaと思われる水生ツユクサです.今回は赤いタイプが届き,関東までは葉の形態をなんとかとどめていたものの関西に来る頃にはもう茎だけになっていたようです...前回入荷のギニアンクリスパがちょうど去年かおととしあたりに断絶したように見えたので,再入荷はうれしい限りです.誰か蘇生に成功すれば広まってくれるポテンシャルがある水草だと思っています.葉縁がなみなみになるのがカッコいい.クリプタンサスを有茎にしたような草ですからね.

 

アデロスティグマ セネガレンシス(インボイス

真っ黒く枯れた謎草が届きました.前回来た植物(Adelostigma senegalensis)とは明らかに別物で,何なんでしょうかこれ.見当がつきません.同じ注文で違うものが来るというのはちょっとどうにもなりませんね…問屋さん泣かせだと思います.

救いのあることに種子が大量に熟しているようで,これに賭けて成功したものだけがその正体を知ることができるでしょう.水草ファンというより,謎植物を愛好するコアな園芸家に刺さるものだと思います.来たれ挑戦者.

 

講評

今回は非常にエキサイティングでした.次回がもしあるのならば,こういう水草なのかどうかすら不明でチャレンジングな草をどんどん入れてもらいたいものです.そもそも園芸では派手派手した草や熱帯雨林林床の草は来ても,こういうのは来ないので雑草好きとしては物足りないんです.

最後に.水槽にいきなり入れる人が多いかとは思いますが,今回の着状態のこともあり(特に関西!)それだけでは水中適性があるか否かは判断しにくいと思います.いったん養生・水上で増殖させてから沈めることをお勧めしたいです.