水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

2022年ギニア便についての水草がたり.① ホシクサ類

2022年,ギニア便が来ました.

その中でも特に目立ったのがホシクサ類です.

 

ギニアに生息するホシクサ類

ギニアのホシクサ類についてまず触れておきます.

1.小型種,総苞片がイヌノヒゲのように伸びて突出するもの 

1-1 花は2数性,2心皮,雄蕊4

  Eriocaulon remotum 葉幅1~4㎜

  Eriocaulon tingilomum 葉幅0.4~1㎜

1-2 花は3数性,3心皮,雄蕊6

1-2-1 雌花の花弁は長毛をもつ

  Eriocaulon cryptocephalum 花茎が著しく短く叢状となる

  Eriocaulon pulchellum*遭遇頻度は1で扱う他種より高いようだ 

 1-2-2 雌花の花弁は無毛~短毛

  Eriocaulon irregulare*原記載以降殆ど採集されたことがない

 

2 有茎種

Eriocaulon setaceum  

 

3 1で扱った以外の ウニ型,細葉

Eriocaulon plumale 雄花の花弁が著しく突出し,頭花が毛深く見える

Eriocaulon deightonii 

Eriocaulon cinereum 世界的にいるキネレウム

 

4 葉幅の広いもの

Eriocaulon meiklei 葉幅は広く葉はやや厚い.苞が突出し頭花はいが状,

Eriocaulon nigericum 葉幅は広い.葉先はやや丸い.

Eriocaulon fulvum 葉幅は広い.(4~6㎝×3~5㎜)葉先は丸い.

Eriocaulon bongense  葉幅は広い.(5~10㎝×3~6㎜)葉先は突然尖って終わる

Eriocaulon afzelianum 葉幅は広い(1.5~5㎝×2~5㎜)葉先は尖る

Eriocaulon latifolium 水生種.葉は長くテープ状

 

花がない状態で議論するのは無謀ですが,ギニアンナローは

Eriocaulon plumale,Eriocaulon deightonii ,Eriocaulon cinereumのどれか,

ギニアンパープルはEriocaulon afzelianum Eriocaulon pulchellumあたりが候補です.前者は赤みを帯びた標本がいくつかみあたります.

多分ギニアンスター・ブロードはE. latifolium, ギニアンナローはE. deightoniiギニアンパープルはE. afzelianumじゃないかなと思いますが断言はできません.

ギニアでメサンテムムといえばM. radicansみたいな感じかと..

Mesanthemum prescottianum, Mesanthemum tuberosum,M. alenicolaの分布は非常に限られるため,日本にもたらされる可能性は低いと思います.

M. auratumはこの属らしくない小型の1年草.これも入ったことはなさそう.

M. albidumも普通種ではないようです.

ここまですごくザックリとした感じで何が居るのかという話を.

 

メサンテムム ラジカンス(インボイス

今回入荷した巨大なホシクサ類,Mesanthemum radicansとしてカミハタから入荷したものです.葉幅は3㎝もあり,根は非常に太くホシクサというよりはガマかなにかのような質感で,中隔による縞模様は見当たりません.

そのあまりの巨大さからホシクサ以外の植物ではと思わせられましたが,毛深い花茎の鞘がみられたためホシクサ類で間違いなさそうです.花は腋生で,一年草ホシクサ類のように頂点から出るわけではありません.根茎も直径2㎝ほどありますが,株別れしている株もありました.そのため,根茎を伸ばしながら株わかれで増殖する多年草と思われます.根は出てきたので何とかなるでしょう.自生地では水没もするようですが,水中は厳しい感じがします.

ものとしてはMesanthemum radicansでよさそうです.滅茶苦茶期待しているので頑張ります.なんとか発根はしたようで良かった...巨大陸生ホシクサ大好きマンなので僕にとっては本命です.

 

ギニアンスタープラント ナロー

透明感のある硬い葉を出し,細い地下茎を出す植物です.ランナーが謎すぎましたがこれもEriocaulon latifoliumの一型のようで,地下茎を出す標本もみられます.但しギニアンスタープラントにはブロードとナローがあり,大多数の標本はブロードの方に見える地下茎を出さないタイプでした.

基本的に流水に生じる水生植物で,アヌビアスなどと混生しています.ホシクサ類としては異質なことに葉は非常に硬く,ストラティオテス・アロイデスの水中葉の質感によく似ている印象です(酷いたとえ).

入手した株の地下茎及び根は先端で細かくよじれており,砂を噛んでいたと思われます.また,根が石を噛んでいたようにみえる場所もありました.礫の隙間に生じたものと思われます.

丈夫なことで知られますが残っていないことを考えるとなんかしらの弱点があるのかもしれず,少し心配なところです.地下茎を伸ばすことから増殖力は高いようなので,定着した株が一定数以上あれば今後流通が増えるかもしれません.

 

ギニアパープルスター

おそらくEriocaulon afzelianumです.生存したまま到着したことが殆どなく,今回は緑色を保ったまま来た株が数本あったことが奇跡的と言えるでしょう.生存時の色調はホシクサのキングクリムゾン水上葉をやや薄くしたような色合いで,パープルというもののこれは枯れた後の色です.本来の色は新芽や葉基部など葉緑素の薄い部分が赤っぽい緑色です.(つまり,キングクリムゾン同様枯れたり乾燥標本で色が抜けたりすると赤くなる)そもそも生存していた株が数株しかなかったようで,私の来たときにはすでに生きた株は残っていませんでした.輸送方法の見直しやタネのついた株を干して輸入するなど,いろいろ対策を要しそうです.

 

ギニアンケヤリ

広義Eriocaulon setaceumです.E. setaceumは世界中に分布していますが,それらの系統関係はいまだ不明な点が多いです.一般に流通するケヤリソウに比べて葉が細く,根は下部で細かく分岐します.茎は長いものの脆弱で,扱いには注意を要します.有茎とはいってもケヤリソウに比べてE. setaceumは有茎草として未熟な印象を受け,ロゼット型の種との共通点が多く感じます.今回は非常に小さな株であったものの状態が比較的よく,発根および成長が見られます.多年化する系統なのかはわかりませんが,定着していく可能性もありそうです.

 

 

 

 

「AQUA PLANTSショック」から見る水草と園芸,そして2020年代におけるアクア雑誌の立ち位置

はじめに

なんとも背後から撃たれるような感触を味わいましたが,悲しんでばかりもいられないので色々書いてみました.

 

 

発信力を失い,既存のバブルに便乗するだけのアクア業界

さて皆さん話題沸騰の「2022年号のアクアプランツが水草を扱わなかった事件」についてです.

事件の概要については,2022年号の「アクアプランツ」という水草に関する現状唯一の専門誌が,水草を一種も特集・解説せずかわりにアガベ塊根植物について特集したというものです.レイアウトと水槽については書いてあり,作例は素晴らしかったのですが紙面全体の構成として,

水草雑誌なのに,水草で勝負してない」

と感じました.

この事件に関しては,私が生まれる前から水草をやっていらっしゃる大先輩,アクア日記のまささんが非常にごもっともな意見を寄せており,私の感想と90%くらい被るので,このリンクから読んで欲しいと思います.

aquanikki2.blog66.fc2.com

 

 

さて,皆さん激怒していらっしゃるとは思うのですが私の残り10%の感想をいうと

「もう新しいことを始める気などさらさらないことを隠す気もなくなったんだな」

といったところです.

アガベ塊根植物というのがもう呆れポイントで,周回遅れもいいところです.

「目の前のバブルに便乗する」ほど馬鹿らしいことはありません.

バブルとは弾けるからバブルなのであって,現在バブルになっているということは遠からずそれが弾けるということだからです.

もう流行がヒートアップし,ヤフオクで怪しい商品に法外な値段がついてバブルになっている状況から,全く園芸経験がないアクアリウム業界の人が乾燥地植物を始めるメリットとは何でしょうか?

アガベ塊根植物アクアリストが今から始めたところで,

せいぜい財力をむしられて素性のしれない草を手に入れ,その草が成長する前には価値が暴落するか,そもそも不慣れで枯らしてしまうというのが関の山でしょう.

そしてその頃にはもうすっかりアクアリウムのことなど忘れて,アクアプランツなんて陳腐化した情報をくるくる回すだけの雑誌を手に取ることは二度とないことでしょう.

アクアプランツという名前を冠している以上,水草以外の話を話題にすること自体が読者を遠ざけ,業界を衰退させ,自殺行為となるのです.

 

 

ペット業界が総出でかかっても園芸には全く歯が立たない

日本における園芸の経済規模をご存じでしょうか?

ペット・園芸用品店業界 市場規模・動向や企業情報 | 日経テレコン

ホームセンターだけで年間5372億円が園芸・エクステリアにつぎ込まれています.これが売り上げの8割を占めますから,日本人は年間6715億円を園芸につぎ込んでいると計算できます.日本人の人口が1.258億ですから,日本人は誰でも年間5338円は園芸に投資している計算になるようです((笑))

勝てるかこんなのに.ちなみにペット・ペット関連用品はホームセンターで2846億円.これは犬と猫という二大巨頭を入れた額です.

園芸にもまあ野菜とかが入ってくるので,花卉の鉢物だけの国内供給額に絞り込んでみましょう.

https://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/pdf/kakimeguji1404_1.pdf

955億円…やはり日本人は老若男女みんな年間1000円くらいは植物につぎ込んでいるという計算です.

つまり,裾野の広さが全然違うのです.水草の市場規模?計算する気すら起きませんね.

この経済規模を見ただけで,アクアリストが園芸に参入(上陸)したところで勝負するまでもなく飲み込まれるのはまあ必至のことだと予想できます.

このことに関してはこれまた大先輩,Rootsの仲里さんが書いていらっしゃいます.

roots-aquatic.blogspot.com

roots-aquatic.blogspot.com

 

裾野が違うということは,トップ層の人数も全然違ってきます.なので...

園芸ではコアなジャンルになるとたいてい,各個人が数十年単位の栽培経験を持つことが前提となっています.ポッと出のアクアリストが参入しても,金づるにされたあげく下っ端からはじめなおすだけでろくなことがありません.

 

奥が深すぎる一方で,園芸の入り口はお手軽です.ポットを買って置いておけばいいだけですから.

でもRootsさんがおっしゃっているように,ポッと置いておしまいだから園芸が栄えているのでしょうか??

そうなのかもしれないし,結果は同じ事なのですが私はこの点に少し追記したいと思っています.

ホームセンターや花屋の店頭に,ポッと置いて飾りたくなるほど状態がよい苗が常にリーズナブルに並ぶということは物凄いことです.

水草では?考えようがありませんね.そもそも枯れかけの切り花しか売ってないのでは...

リーズナブルなポットが常に大量にサプライされるというのは,園芸のバックグラウンドに巨大な生産農場があるからです.

たまたまそこに綺麗なものがあるから買うのであって,わざわざ遠くまで探しに行くものですらない.

それに比べて水草は…(笑)

普及化したら売れなくなるとか言っている時点でもう終わっています.

戦う云々以前に,供給側の兵站パワーが全く違いすぎるのです.

 

初心者を拒絶し,騙し,絶望させるアクア業界

アクア業界は現状とても狭いです.

狭いのは日本の住宅事情が狭いからとよく言われますが,観葉植物ってでかくね?

園芸は結構場所をとるし,アガベや洋ランなんて((笑)).

つまり,サイズ自体はあまり問題になっていないのです.

それ以前に「必要なものが無い」のが問題です.

問題を一言でまずまとめましょう.

売っているものがちぐはぐで,組み合わせようがありません.

初心者がメーカーの説明通りにやろうとすると,必ずつまづいて大量の用品を買い集めないといけないかのように商品展開がされています.

たとえば,

「水槽は売っていても,そのサイズの水槽台がない」

というのがよくある事態.60㎝水槽,45㎝水槽以外の水槽台はどこに売っているのか?などよく困るのは私だけでしょうか.サイズの合わない水槽台やメタルラックに無理やり水槽を載せるのがよくある姿ですが,

最悪にユーザーフレンドリーではないです.

しかもこういう企画外水槽に限って初心者向けを謳っています.買ったところでどこに置いているのやら.

「水槽台に置きましょう」と書いてあるのにサイズに合う水槽台がないの,これはもう詐欺商法といっても差し支えないと思います.新しい変なサイズの水槽を売るのであれば,それに見合った価格の変なサイズの水槽台を売ることを義務にしてもらいたい.

さて,水槽の壁の次はフィルターの壁です.

よく「フィルターは週1で交換しましょう」などと書いてあるのですが,はたして濾過バクテリアはいずこへ….替えフィルターを大量に売りたいのはわかるかもしれませんが…本来アクアショップ側で説明してもらうべきことなのだと思いますが,そもそもそのあたりでつまづく人はアクアショップではなくホームセンターで水槽やフィルターを買っていると思いますし,アクアショップ側としてもフィルターをたくさん買って儲けたい店もあるかもしれません.

水槽,フィルターの次に初心者を待ち構えるのは大量の怪しい液体群.

これもまあ,必須かはともかくあるとちょっと便利,でも法外に高いというものが多いです.これらに関して,使って純粋によかったものに関する情報源が不足しています.よさげなこと書いてあるけど本当に必要だったのかよくわからない,ではちょっとねぇ...私も色々買って愛用しているものもありますが(テトラのpH/KHマイナスとか,ADAのECAとかGEXのサイクルとか),意外なものが実は要らない可能性があったりもします.

これじゃあ裾野は広がるわけがないですよ.だって,商品開発側が顧客を搾取する対象としかとらえていないかのように消費者側には見えるから.そんな業界にわざわざ突っ込んでいかないですよ.

そんな混沌の中ですから,道しるべが必要です.

「私の中ではこれがゴールデンスタンダード」

みたいなものを「誰か」が教えてくれればありがたいのですが….

その「誰か」を担うのに一番向いているのが雑誌だとおもうのです.

 

ニッチだからこそ水草は面白い

アクアリウム」という業界だけでもひどく狭いということを書きましたが,その中でも最弱に近く,だれも声を上げないに等しい水草は,ニッチでしかいられない業界と言えます.

しかし同業者が少ないということは,あっという間にトップレベルに上り詰めることが可能だということです.だからこそ水草は面白い.

レイアウトに関してはニッチという立場を逸脱しつつあるようにも感じますが,それでもまだ全然伸びしろがあります.

ましてやもはや数人しか興味を持っていないようにすら見える大多数の水草それ自身はといったら…伸びしろしかないです.

70年代,80年代,90年代,ゼロ年代から手垢にまみれた…とよく聞きますが,それでは誰でもできる栽培方法はどこにまとまっているのでしょうか?その姿の全容は明らかになっているのでしょうか?どういう条件にしたらどういう形に変形するのか知りつくされているのでしょうか?そんなものないですよね.

育ててみれば水草はすごいフロンティアであることがわかると思います.

ホムセンの鉛巻きでもさんざん遊べるし,それが「知り尽くされた」「もう書くことなどない」となる日はそうそう来ないように思います.育て方にしたってソイルで攻略するのと砂で攻略するのと田土系で攻略するのでは全く異なりますし,栽培理論だって全く統一されていません.

たとえば,

pHは下げた方がいいとはよく言いますが,なぜ下げた方がいいのでしょうか?pHが高いにもかかわらず水草がよく育つ環境も普通にありますが,なんなのでしょうか?

KHやGHに関してはどうなのでしょうか?たとえば硬度の親玉たるカルシウムやマグネシウムは園芸ではなくてはならないといわれるくらい重要なものです.なぜ水草では敵視されるのでしょうか?

水温は低くした方がいいとは言われがちですが,日向の田んぼで水草は元気に育っています.水温は40度を優に超しますが,なぜ水槽では30度くらいで調子が狂うのでしょうか?

「ソイルには通水性が」といいますしパワーサンドは通水性を確保するために…とはよく言いますが,ではなぜ水草は田んぼで生きられるのでしょうか?寧ろ通水性のある土壌で水草を見ることは無いような気が.大磯砂で攻略するときは,砂の間が浮泥で埋まったころに育てやすくなるといわれたりします.

整合性はどこにあるのでしょう.謎だらけです.ネタ切れだとか,記事を書くまでの内容がないとは言わせません.

 

現在のアクアライフに求められているもの

現在のアクア生活…アクアライフには,情報が壊滅的に不足,ないし散逸しています.

 

「フィッシュマガジン」もなくなり,「楽しい熱帯魚」もなくなり,アクアスタイルはミニ冊子になり,アクアジャーナルもパンフレット程度になりました.

ネット情報は広告費を稼ぐためのコピペ定型文に駆逐され,

いまや「アクアライフ」しかアクアリウム業界に関する「正当かつ一般的な」情報源になりえないという状況になっています.

しかしそんな同誌が新しい情報や新しい角度からの情報発信をやめ,既存ですでにヤフオクなどでバブルになっているものに便乗して目先の売れ行きに振り回され,アクア業界離れを結局加速させているというのはあまりにも悲しい事態です.

「アクアライフ」はアクアライフにとっての最後の希望なのです.

だから,そんなやすっちいことはしないでほしいです.正当にアクアリウムを「もっと」楽しむことに注力してほしいのです.

情報「発信」とは,ないところから情報を創生ないし再解釈して出すことであって,情報を転送することではありません.

そして,1000円以上する雑誌である以上,購入させる動機が必要です.

なので,ネットで起きたブームの後追いになってしまっては買う価値がもはや見出せません.タダで手に入る情報のほうが価値があるということになってしまいますから.

2020年代のネットでは誰かが(それこそ私のように)コアな情報を発信してもそれは大量のコピペ定型文に埋もれてしまい,もはや発見不能です.

しかし雑誌は違います.

雑誌はとりあえず買ってみるものであって,もはや同業者がいなくなってしまったアクアライフに至ってはアクアリストなら基本的に読んでみる一般教養になっています.

ネットは一つのことを調べるにはまだ向いているかもしれませんが,他のジャンルを含めて俯瞰したり,「新しいナニカ」に気づくには向いていないものと言えます.

なので雑誌こそ,ついついニッチな分野にハマらせるということには最も向いた媒体と言えるでしょう.また,ネットが混沌と化したいまだからこそ発信力と雑誌情報の価値は相対的に上がっています.

つまり,出版側からすればリスキーなのかもしれませんが

「裾野を広げる」

「スタンダードの座標軸」

この2点こそ,ネット社会における雑誌の立ちまわり方になるはずです.その方法には何通りか思い当たります.

「基本の基本を丁寧におさらいする」

これが一つ目の無難なコンセプトで,30キューブ水槽特集や60㎝水槽特集もこういうコンセプトでしょう.「基本の基本過ぎて意外に知らなかった」が最高ですね.

そしてもうひとつ

「それまで注目が集まらなかったコアでニッチなところに光を当てていく」

これも大事です.一極集中は何かの拍子に壊滅しますから(それこそグッピーエイズとか,ブセの禁輸とか…),多くの枝を出しておいた方が良いです.

先にも述べましたが,

「基本的な熱帯魚や水草の飼い方・育て方」

も人それぞれのやり方を記事にしていけばいい連載になりそうです.結局収束して,金太郎飴みたいな連載になるかもしれませんが…それはそれで正解が確立されているということで,同じようなことを色々な人がいろいろに解説するのも読んでみたいです.

 

最後に

火のないところに着火するのが雑誌に今求められていることであって,もしネットの混沌に引火すれば爆発的に大きな炎となることでしょう.

それがアクア雑誌という,小さな小さな火種の一番効率的な使い方です.既存の火にさらに火を足すのは無駄撃ちもいいところなのです.

とりあえず出ていて他に読むものもないから買ってはみる…ではなく,この面白そうな記事を読みたいから大枚はたいて買う!雑誌になってほしいものです.

アクアフィーチャーに過去掲載された水草 備忘録

過去のアクアフィーチャーに載っていたものから気になったものを抜粋した備忘録.僕の好みを反映しています.

 

マルバノサワトウガラシ

吉野氏が栽培してアクアフィーチャーに載せている.低pH,CO2多く必要とのこと.

マナカプル・ファーン

吉野氏がマナカプル水草を収容していた水槽から生じた水生シダとのこと.

 

イヌゴマ

吉野氏が栽培してアクアフィーチャーに載せている.低pHだがKHはあったほうがよさげとのこと

 

カロリネンシス・コブラグラス

葉先が細く草体はより長いとのこと.(それ本当に??)

 

ラヌンクルス リモセラ

トロピカ社から入ったことがある(ニューコブラグラスか)

ジャンボマクランダ

葉が500円玉より2周り大きい,国内ファームで突然変異したもの.

 

マナカプルヘアーグラス

葉先に子株を付けず緩やかなウェーブを描くタイプ.

リムノフィラspベトナム

ベトナム中部ダーナン産,現地では食用に切られていたとのこと.暗紫色が出る.

エリオカウロン ギニア (のちのギニアンケヤリ)

銀松に大手輸入業者によりはいったとのこと.(「花序を挙げた株の入荷があったが,今のところ他のケヤリソウの仲間のような子株を形成するなどの展開はない」とあるが,セタケウム系って直撃するっけ?)

ストラティオテス アロイデス

ドイツファーム便とのこと,ある程度高温に耐えるため現地ではポンドプランツ 水質は中性がよいとのこと

ヒメアメリアゼナ

吉野氏…チョイスがさすがです笑.水中葉を展開するとは知りませんでしたが,写真は水上葉にも見える.

アメリカヒメミソハギ

ナンゴクヒメミソハギのことのようだ.これも幼植物の水中葉をつくらせている.そういえばこいつ生育初期は異形の水中葉だすよね...さすが吉野氏です.

ミズオオバコ

またもや吉野氏.紫のつよい個体もいるという話.

イトキンポウゲ

暑さに強く山野草としては容易とのこと.水中育成は「できそう」とのことだが写真は水上葉.もちろん吉野氏です.

メリケンムグラ

パンタナルハイグロと同じグループということが述べられている.形状的にどうということはないが着実に成長し成長が遅く景観を見ださない有用な種とのこと.激押ししててびっくり.

ショート・ヘアーグラス

ベトナムのダー・ナン近郊のヘアーグラス.草丈3㎝,成長は通常より遅くやや硬度を要求する.(もしかして今のショートヘアーの元祖だったりする??)

アフリカンミクリ ナロー/ブロード

ギニア産.のちのギニアンスターか.

オテリアの一種”ギニア”Guinea Killy river

後のギニアンオテリアか.

ギニアンクリスパ

下の方の葉は水上葉にみえる.

トリグロキンの一種

ドイツの有名ファームからのものとのこと.根本はミクリに似ていて,葉幅1㎝弱のテープ状.

バリスネリア カウレッセンス

東南アジアファームは雄株,ドイツのポットは雌株.雄株はねじれ葉,雌は幅が広い.KHは低い方がよさそうだとのこと

 

ブロードリーフ・ポリスペルマ

ベトナムダーナン近郊とのこと.

 

アポノゲトン ナタンス コンパクト

中国,福建省.中国のA. natansの記述はあるが花が黄色で水中葉は長さ5~6㎝とインドやスリランカのものとは全く別のものであったとのこと.(それ,A. lakhonensisじゃね?)

 

ダナン・アンブリア

花は白.

 

ダナン・ファン・ソード

ブラックウォーターであることはなくどこでもクリアウォーターだたとのこと.多分タヌキアヤメ

ミゾカクシ

中国産の花色が濃いタイプが山野草業界で売られているとのこと.KH3~5と中硬水の方がよいとのこと.

ムジナモ・レッド

水槽ではKH3~5 の方がよいとのこと.園芸品のもの

プロセルピナカ パルストリス

初入荷したものはキューバ産だったとのこと.

ダナン・カールラッシュ

3~4㎝のカールする葉/(Schoenoplectusにみえる)

サンフランシスコ・バコパ

葉先は尖り,三角形の葉.(これは面白そうな予感…)

ハイグロフィラ グイアネンシス

アラグアイア川流域の細葉のもの.現存していてほしかった…

ニムファ ミクランサ

シンガポールファーム便.レッドフレアーに似るが,むかごができにくい

マナカプル・ウォーターファーン

マナカプルのコケシノブ的なもの

エグレリア 

マナウスの北,ワツマン水景に多く生息する

レッド・ドワーフ・アマニア

アラグアイア水系で採集されたもの.成長は遅い.(のちのレッドクロスプラントと思われる)

シペルスspマナカプル

マナカプルのキペルス.マナウスのものに酷似.ブラジルの水辺のキペルスは殆ど水中葉を作る(おいおいパワーワードだな)

セトヤナギスブタ

中国地方産.ヤポニカに似ている.アルテルニフォリアとヤポニカが逆だとするとつじつまが合う,by吉野 (まさにその通りだと思います.それがなぜ20年後もハチャメチャに混乱しているのやら)

アラグアイア・レッドピンネイト

一部でグリーンピンネイトとしてよばれる.茎頂部以外あまり赤くならないが,肥料を濃くすると赤くなるのであまり適切な名前とは言えない

ブラジリアンヒドロトリケ

アラグアイアさん.茎や葉が細い.いつか花を咲かせて同定を…

(写真見てもわからない.なんだこりゃあ!燃えます)

アラグアイアレッドロタラ

サンフランシスコ・オレンジロタラより大型.

(というかこの写真,現行流通型のアラグアイアレッドロタラとは別物じゃないか?こんなに水中葉が細くならないと思うんだよな)

ジュンクスレペンス

オランダから入荷

ミゾホオズキ

湧水の池の淵に使っていたもの

サンパウロウェーブリーフハイグロ

小さいパンタナルウェーブリーフハイグロという解説だが,見た目はむしろ緑のレッドライン.

アマゾンハイグロ・レッドライン

アラグアイア産と判明.うれしい

 

 

 

イエローバコパ Bacopa lanigeraの観察

昼間の数時間しか咲かないのでバコパの花観察は大変です.

今回はイエローバコパが咲いたので観察してみます.

 

子房とそれを囲む長く伸びた蜜腺

雄蕊は4本

 

葉が丸いことも併せて,Bacopa lanigeraでよさそうです.

サルバドールカールラッシュの観察

サルバドールカールラッシュが開花までいったので観察してみます.

サルバドールカールラッシュ

高さ25㎝位まで育ちました.花は数本の桿でみられます.叢生であり,非常に短い根茎を横に少しずつ伸ばし,ランナーを伸ばす様子はありません.全草は無毛で強い光沢を帯びます.

栄養増殖も行い,どうも2株に分かれてきているようです.水中葉では桿の先端に小穂をもたない本種ですが,陸上では盛んに開花するようです.

葉鞘は薄い緑色で筒状,斜めに切れています.先端付近で勢いをつけて尖るように見えます.

葉鞘の先端

水上型の断面

水中型の断面

一見したところ水中でも硬い葉を展開し,水中適応が低いようにすら見える本種ですが,桿の断面は大きく異なっていました.また水上型の桿はやや側扁しており,断面はレンズ型です.メスによって潰れたわけではありません.茎断面は0.8~0.9㎜程度でした.水中のほうがむしろ太く,大量の含気をしていることからは本種がミズニラ類やリトレラにみられるような水生CAM植物ではないかと思わせます.

茎の断面には隔壁はありませんでした.触った感じからしてもそんな感じですね.

小穂

小穂です.Eleocharis属らしいもので,いたって普通ですね.

 

小穂のアップ

小穂の概形は卵型に近いようです.大きさは6㎜×3㎜程度.

鱗片は楕円形で,先端は鈍頭から円頭で,二叉したものは見られませんでした.2.5×1㎜くらい.

未熟な花.雄蕊は3本


小穂には30ほどの鱗片があり,果実に包皮はなさそうです.花は両生花で雄蕊は3本みられます.柱基は著しく膨れており,花の構造からもEleocharis属でしょう.果実は狭倒卵形,柱基は扁球形と言ったところでしょうか.花糸は茶褐色で,咲くとともに2.5㎜ほどまで長く伸びるようです.柱頭は2分岐して2㎜ほどまで長く伸びます.刺棘状花被片はやや子房より長く,透明で目立ちません.濡れていたため小棘毛はよく観察できませんでした.

そもそも花がまだ全然未熟で,果実が熟するにはもう少しかかりそうです.なので,今回は切り取った花をエタノールに漬けつつ,もっとたって成熟した小穂を観察したいと思います.

 

でも・・・ここまでくると正体知りたくなっちゃいますよね.

草姿やサイズからはEleocharis rugosaではないかと思っていましたが,どうやらだいぶ花の構造は異なるようです.E. rugosaでは雄蕊の花糸は透明で,雌蕊は3分岐し,痩実は緑灰色です.植物体でも苞葉は茶色であり,緑白色のサルバドールカールラッシュとは大きく違います.

 

ではバイア州のEleocharisをリスト化して...

まずはまず間違いそうにないサイズと茎の断面から候補を減らしていきます.

僕が今の環境で野外よりごつくて大きく育てられるとは到底思えないので,桿の幅が0.7㎜未満をカットオフにしてより小さな種を除外,また茎に隔壁があったり,茎の断面が三角形や四角形の種類は除外しました.

 

Eleocharis acutangula これは茎断面が△なので違います.

Eleocharis atropurpurea 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis bahiensis 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis capillacea 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis debilis 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis eglerioides 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis elegans ずっと大型であり,葉鞘は斜めに切れないことから違う

Eleocharis elongata 桿は小穂と同じくらいの太さであることから違う

Eleocharis flavescens 

Eleocharis geniculata 

Eleocharis glaucovirens 断面は四角であり,違う

Eleocharis interstincta ずっと大型,茎に隔壁あり

Eleocharis loefgreniana 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis maculosa 

Eleocharis minima 断面は四角であり,違う

Eleocharis montana 茎に隔壁があり,違う

Eleocharis mutata 断面は三角形であり,違う

Eleocharis nana 最大13.5㎝より違う

Eleocharis nigrescens 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis obpyriformis 

Eleocharis obtusetrigona 断面は三角形

Eleocharis olivaceonux 

Eleocharis plicarhachis 

Eleocharis retroflexa 桿が0.9~1㎜に達することを説明できず

Eleocharis rugosa 

Eleocharis sellowiana 

Eleocharis setifolia 断面は四角であり,違う

 

さて,残ったやつを仕留めます.

Eleocharis flavescens 苞の先端には透明で皺の多い付属体をもつ ランナーあり

 Eleocharis geniculata 葉鞘の先端は尖るが,先端の形状が違う 根茎を横に伸ばす

Eleocharis maculosa 小穂は赤茶色~濃茶色 ランナーあり

Eleocharis obpyriformis 雌蕊の分岐数は3

Eleocharis olivaceonux 小穂はワイン色~ダークブラウン

Eleocharis plicarhachis  小穂は尖り,鱗片は細長い

Eleocharis rugosa 雌蕊の分岐数は3

Eleocharis sellowiana 小穂の基部は茶色~緑色,先端部は赤みを帯びた茶色 ランナーあり

うーん.絞れはしましたが結実を待ちましょう.それにしてもこの結果は...

 

 

 

 

ロタラの基本!

今回はロタラ,ADA流に言えばロターラについて語っていこうと思います.

ネイチャーアクアリウムがどんどん陰性水草と素材に傾倒していく中,水草水槽と言えばロタラやパールグラス,から水草水槽といえばブセファランドラやピンナティフィダ,ミクロソリウムとなり寂しいところです.

それでもなお,ロタラは今もなお大きな存在感を維持している水草と言えるでしょう.

今回はそんなロタラの基礎的なところについて書いていこうと思います.

ロタラとは

ミソハギ科キカシグサ属Rotalaのことです.ミソハギ科の中では,水生~湿生, 花弁は脱落性で蒴果には200以上のきわめて細かい種子をもつことでヒメミソハギAmmanniaによく似ていますが,花が総状花序であり,蒴果には平行な筋があること,蒴果は心皮の境界で裂けること,花粉は小型で表面は鱗屑状ないし疣状であることによって区別されます.

分布

72種が知られますが南北アメリカに分布するのはRotala mexicanaとRotala ramosiorの2種のみで,分布の中心はアフリカおよび南アジアです.アフリカには岩に活着し水中に糸状の葉を茂らせるRotala repensのように珍妙な種がいるほか,Rotala myriophylloidesはじめとして様々なアクアリウムに魅力的な種が分布していますが,栽培されたことは全くといっていいほどありません.日本に分布するのはキカシグサRotala indica,ミズマツバRotala mexicana はやや普通に見られ,稀少なものとしてはミズスギナ Rotala hippuris, ミズキカシグサ Rotala rosea,ホザキキカシグサ(マルバキカシグサ)Rotala rotundifolia,ヒメキカシグサRotala elatinomorphaがあげられます.また,帰化種のアメリカキカシグサRotala ramosiorが見られます.

 

生育環境

生育環境は様々で,池などの水中に生育するもの,水田などの湿地に生えるもの,流水中の岩に活着するものなどがあります.種によって生育環境は大幅に異なり,一概には言いにくい部分があるのもまた事実です.

 

アクアリウムで流通するロタラ

アクアリウムにおいては非常に多種多様なロタラのうち,ほんのわずかな種の些細なバリエーションがことさらに強調されて流通し,カオスな状況に陥っています.そのため,ここではザックリと解説していこうと思います.

Rotala rotundifolia

グリーンロタラ
ロタラ インディカ
ロタラ ロトンディフォリア
ロタラ sp H`ra
セイロンロタラ

等…ものすごくいっぱい.

グリーンロタラやH`raをはじめとして多くのアクアリウムで流通する種を含みます.多年草で水上葉は円形~楕円形,匍匐性,花は総状花序であまり分岐しないことが多いです.葉は対性~3輪生で,水中葉の概形は長方形状,鋸歯はありません.水中でも匍匐傾向があるものも多いです.R. macrandraと非常によく似ていますが,雄蕊が萼より短いことや,小苞と萼のサイズ関係で区別できます.非常に様々なタイプが流通しており,サイズや色調の傾向が異なります.しかしながら生育条件により非常に大きく変化があり,異なる環境で育った個体を比較・区別することは困難です.さらに種としては同一であることからファームでの生産も混乱していると思われます.綺麗に育った水中葉を自分の目で見て納得して買うべきものと私は思います.またさまざまな他のRotala属の名前を冠して売られることがよくあり,名前だけで飛びつくと痛い目にあいます.

Rotala macrandra

ロタラ マクランドラ/レッドリーバコパ
マクランドラグリーン
マクランドラナロー

等…

マクランドラとして知られる膜質の葉をもつロタラです.多年草で水上葉は円形~楕円形,匍匐性,花は総状花序です.葉は対性で非常に変異幅が大きく,水中葉の概形は楕円形~線形,膜質でしばしば鋸歯をもちます.水中では匍匐傾向をほとんど見せず,上方に向かって育ちます.花は雄蕊が長く突出し,よく似たRotala rotundifoliaとは一見して区別がつきます. また,花穂は短く小穂が発達し,しばしば分岐します.(当てはまらない個体群あり)いずれにせよ小苞がガクより短く,雄蕊が突出するのを確認すべきでしょう.分布はインドに限局しており,東南アジアでは見られません.

アクアリウムでも認知度が高く,初便は1973年, ボンベイの500~600㎞郊外で採集されたもののようです.様々なタイプがマクランドラ○○として流通し,他のロタラのように紛らわしい名前で呼ばれることはあまりありません.

 

Rotala macrandraともRotala rotundifoliaともつかないRotala

ロタラsp. スウィンドゥドゥルグ

ロタラsp. ラトナギリナローリーフ

ロタラsp.レディッシュ

等…

スウィンドゥドゥルグやラトナギリナローリーフは大型のR. rotundifoliaのようなロタラですが,より大型で時々マクランドラのような鋸歯をもつタイプです.最近話題のレディッシュは少し大きいだけでほとんど普通のR. rotundifoliaですが花序が短く盛んに分岐するようです.ただしR. macrandraのように雄蕊は突出することはなく,少し変わったR. rotundifoliaかもしれません.

 

Rotala mexicana

日本にも自生するミズマツバです.通常一年草で水上葉は先に向けて細くなる線形,主に3輪生,先端は平坦で尖りません.やや匍匐傾向があり,しばしば非常に小型です.水中葉は線形で主に3輪生,鋸歯はなく通常の場合匍匐しません.(ゴイアスは例外)花は葉腋につき,水中でも条件が悪くなると閉鎖花を作り結実します.分布は広く,全世界に広く分布します.アクアリウムでの認知度は著しく低く,さまざまな既存品種に○○メキシカーナという名前が付けられて商品化される場合があります.Rotala pusillaはシノニムですが,同名でまた違う謎のRotalaが流通することがあります.

ゴイアスドワーフロタラ,アラグアイアミズマツバ,メキシカーナプレミアムレッド,プシラ ワイナード産を確認しています.

 

 

Rotala wallichii

リスノシッポ

リスノシッポとして古くから流通します.葉は水中では多輪生,水上では4輪生程度まで少なくなり,花には蜜腺を欠きます.アクアリウムでの認知度は非常に高く,古くから知られています.しかし,一般に流通するワリッキー系の細葉ロタラがどれほど本種かどうかはまだ不透明な点があります.栽培には細葉系ロタラの中でも特に癖がありますが,その草姿や色合いは唯一無二であり,代替手段がありません.大事にしていきたい水草と言えます.

ロタラ ナンセアン

Rotala wallichiiの北限は台湾で,南仁湖周囲に分布します.但しこれは純粋な株ではなく交雑種とみられるようです.アクアリウムではこの交雑種がロタラspナンセアンとして流通しているとみられます.トロピカはマヤカspとしてリリースしたため,ラージマヤカとして本種が売られていることもあります.ロタラ プシラ台湾便もナンセアンに似ているものの色合いは異なり,関連した交雑種の可能性があると私は思っています.どちらも育てやすく姿も美しい,良い水草です.(ところでナンセアンのあの煌めき方はワリッキーや”ミズスギナタイプ”よりも所謂ミズスギナに通じるものを感じるなぁというのはここに一応書いておこうとは思います.)

ワリッキーロングリーフ (ロタラspベトナムレッド)
ワリッキーメキシカーナ
ワリッキーMAXICA
ワリッキー ラオス
メキシカーナ(スリランカ便)
ロタラspカンボジア
ロタラ ボッシー
ロタラ メキシカーナ バングラデシュ

等…ワリッキーロングリーフ系のものが多種多様に流通しています.全体的な雰囲気はリスノシッポよりもミズスギナ的で,そのためミズスギナタイプと言われがちですが,水上葉の輪生数が少なくなるなどワリッキー的な特徴をもつので暫定的にこちらに入れておきます.要するに,精査がなされるべきです.茎は赤く葉はかなり細く,リスノシッポとミズスギナの中間ほどの太さです.栽培下では非常に丈夫です.知る限りリスノシッポのように真っ赤に染まる個体はほぼおらず,また逆に緑単色の個体もほとんど現存していないようです(ロタラspベトナムグリーンなど,かつては存在した)Rotala rotundifoliaと同じく各タイプの見分けが難しいので,混ぜないよう気を付ける必要があります.

また,どこかで聞いたような名前を冠したワリッキーロングリーフ系が海外ファームから乱発されており,どれほど真に受けるべきなのかは再考すべきかもしれません・・・よく見てよく考えましょう.

 

Rotala hippuris

ミズスギナ

日本に分布するミズスギナです.東南アジアでの自生状況は微妙です.葉は水上でも水中でも多輪生,花に蜜腺を欠きます(R. wallichiiなどの近似種にはある).アクアリウムでの認知度はやや高く,日本のミズスギナが和名そのもので稀に流通する他,様々な細葉系ロタラがミズスギナのバリエーションではないか?と勘繰られています.伝統的に日本固有種と考えられてきましたが,分類的な再整理が必要ではないでしょうか.台湾の図鑑にも記載があり,少なくとも台湾にはいるようです.インドにはよく似たRotala cookiiが分布します.アクアリウムでは一見したところの派手さはありませんが,葉裏の非常に繊細な煌めきが美しい水草です.栽培はワリッキーロングリーフ系よりは難しいですが,リスノシッポよりは容易です.

 

その他の細葉系Rotala

ロタラspバングラデシュ
パンタナルドワーフマヤカ”
ロタラspジャマイカ

ADA BIOみずくさの森から出ている謎のロタラです.しかも育てやすい.葉は水中でも幅広で数枚輪生し,葉先は妙に丸みを帯びます.水上でも数輪生し,水中葉とほとんど輪生数は変わりません.ところで流通は混乱をきわめており一部ではそれらしきものが”パンタナルドワーフマヤカ”として販売されていたり,”ロタラspジャマイカ”として販売されていたりします.他に似たものがない謎の水草だけに正体をつかみかねているのかもしれません.ワリッキーロングリーフ系と並んで非常に強健で初心者にもおすすめできるロタラです.

 

Rotala ramosior

アルアナの夕焼け
スラウェシの朝焼け
ラモシオールフロリダ
アメリカキカシグサ

陸生傾向の強いロタラで,日本でもアメリカキカシグサとして帰化し一部地域で猛威をふるっています.一年草で葉は長楕円形,十字対生です.花は葉腋につき,花弁は容易に脱落し果実はロタラ属としてはかなり大型で目立ちます.ミズマツバとともに新大陸に分布するただ2種のロタラです.知る限りではアルアナの夕焼け,スラウェシの朝焼け,ラモシオールフロリダが流通しています.栽培ではやや硬度が必要だといわれており,少し癖のある種です.そもそも野外のアメリカキカシグサを見る限り水が嫌いなような挙動を見せているので,水中で維持できるストライクゾーンは狭いものと思われます.

 

Rotala cf. densiflora

アマニアspサレイ
?アマニアsp バンルン

陸生傾向の強いロタラで,茎は角ばっており断面は四角形です.水上を見る限り水中化しそうにないのですが,ちゃんと水中葉を展開します.現在流通するサレイはバンルンではないのか?と疑っている方もいるようなので,?としてバンルンを付けておきました.

 

Rotala welwitschii

ギニアロタラ

何とアフリカ産です.栽培にも輸送にも癖があり,現在も生き残っていることが奇跡のようにすら感じます.大事にしていきましょう.

 

Rotalaではないもの

Didiplis diandra

ディディプリス ディアンドラ

ロタラには近縁でよく似ていますが一属一種のディディプリス属です.本種もなかなかに面白い水草ですので,いつか紹介したいと思います.

Cuphea spp.

アラグアイアレッドロタラ
ロタラspルッシラ
アラグアイアレッドクロスプラント
ロタラspレッドクロス

などはメキシコハナヤナギ属です.花が全く異なります.栽培には低pHを用意してあげましょう.アルアナの夕焼けとよく混同されますが,茎の質感や水中葉の縦横比や質感がだいぶ違います.成長はゆっくりですが着実に育ってくれます.弱い草ではないです.

 

ロタラの栽培と楽しみ方

ロトンディフォリアの栽培に関しては「ネイチャーアクアリウムRotala rotundifoliaを美しく育てるために発展した,Rotala rotundifoliaのためのアクアリウムである」といえるくらいなので(そんな定義ないですよ),ネイチャーアクアリウムを教科書通りにやっていれば育つはずです.但し我流でやっているとつまずくことも多くあり,簡単な水草と言い切れるわけではありません.異常にいろいろ流通しているので,一般的に使われているものに限らず色々レイアウトに使ってみると面白いかもしれません.一方でどれも大同小異で流通の混乱もあるので,気に入った株があれば自身でストックしておくべきだと思います.

細葉系ロタラはpHさえ下げておけば基本的に栽培は容易です.リスノシッポはその中で頭一つ抜けて難しいですが,ストックするだけなら水位を下げて水面になびかせておきましょう.育て方はRotala rotundifoliaに近く,レイアウト向きです.

アルアナの夕焼けなどは若干硬度を要するという話ですが,私はRotala ramosiorをかなり警戒しているので手を出したことがありません.やるなら水上の方が楽でしょうが,管理はバイオハザードクラスにしてもらいたいところ.水中では成長も遅く,ピンチカットにあまり耐えられないのではと予想します.どうなんでしょうか.

ゴイアスドワーフロタラとアラグアイアミズマツバは肥料,特に窒素リン酸カリが重要です.根がなくなったり,肥料が少ない環境だとすぐ弱ります.したがって差し戻しよりはピンチカットで,カットした後はお礼肥を供えておきましょう.

その他のミズマツバ系やアマニアspサレイ,ギニアロタラは栽培が難しく,すぐ頂芽がいじけたり下葉が落ちたりしがちです.そのためロタラだからという甘えをもたず,攻略することを楽しむ,高いゲーム性をもった植物だといえます.この手の難しい変なロタラは殆ど消滅してしまって,いま手に入る「おもしろいみょうちきりんロタラ」はサレイとギニアロタラくらいです.大事にしていきましょう….