北米~南米に分布する大型のミジンコウキクサ属。
去年の秋ごろに購入した水草に混入しており、日本のミジンコウキクサとは別種と直感したので1年ほど注目して育てている植物である。
草体には何の特徴もない。まさに何の特徴もないのが本種の特徴である。絵を描くとしたら、「丸かいて終わり」である。そして、この「丸かいておわり」なところこそが本種最大の特徴であるらしい。
一年ほど育てているが、サイズなどには顕著な変化はみられない。草体は長径0.7~1.3㎜、短径0.6~1.0mmといったところで、草体に上下極性がろくになく、水面上に出る部分は球形の草体の頂点部分のみである。
Wolffia属のうち、このような円形に近い、縦横比1:1程度の植物はW. arrhiza, W. cylindrica, W. globosa, W. columbianaであるようだが、W. arrhizaは水面に接する表面がやや平らになり光沢を帯びた緑色になることでこの個体とは異なっているし、のこりの2種は0.6㎜を普通超えないようだ。また、最大直径は水面より明らかに下の部分にあるのも特徴的である(W. arrhizaは水面直下)。以上から本種をW. columbianaと判断した。
さて、W. columbianaは南米および北米に分布するミジンコウキクサ属で、本種がアクアリウムトレードで(少なくとも付随植物としても)流通しているという話は聞いたことがない。どこから持ち込まれたのか、日本国外でも流通しているのか、それとも日本において南米などからの熱帯魚に付随して持ち込まれたのか・・・(北米からの熱帯魚、水草輸入は少ないため)興味は尽きない。
さて栽培についてだが、本種はWolffiaの中でも特に育てやすく、一般的な熱帯魚水槽に浮かべておけば勝手に増えると思われる。やや硬度のある環境を好むらしく、ソイル水槽ではうまく増えてくれず、珪砂などの水槽のほうがよく増える。ミジンコウキクサに比べると魚に喰われにくいようで、最初の数がそれなりにあればエンドラーズやヤマトヌマエビとも共存可能である。増殖力はウキクサとしては鈍いようで、思ったほど増えてくれない…バンバカ殖えて水面を埋め尽くすくらいになってほしいのだけど。
ところで、他の種のWolffia…おそらくW. angustaを水槽で見かけた覚えがある。あからさまにツヤツヤで草体は細長く、とても変わっていたので記憶に鮮明なのだが、なかなかまた出会えない。探しているところである。
W. columbianaらしき植物を他の熱帯魚店でも最近見つけたので購入してみたが、何か違うというか、こんどはW. arrhizaである可能性が捨てきれないのでしばらく増やしてから観察しようと思っている。
世の中には面白い水草がまだまだたくさんあって、楽しむ余地はいくらでもあるのである。