今回は最近アツい(???)ポタモゲトンの育て方について書きます。
この方法ですべてのポタモゲトンが育てられるわけではないですし、種によって環境の好みがかなり異なるので一概には言えませんが…アクアでよく流通する種に関しては対処可能かなという気がします。
ポタモゲの栽培は個人的にはかなり苦手で、雑種がカオスなこともありこのグループ自体に忌避感すら抱いていた私でしたが、ようやくある程度安定させて栽培できるようになってくると好感度も上がってきました。
制御が難しい、というかほぼ制御不能な水草ですが、水草自体の美しさとしてはかなり、光るものがあると思います。
栽培もとても簡単です。なのになぜ苦手にしていたかというと・・・
この仲間は「セオリー破り」なところがあるので、ふつうの水草のつもりでうまくとうまくいかないことがあるためです。
この記事は私のように
「書いてある通りにやってもポタモゲトンが全然育てられなかった」
人に向けての記事です。普段から育てられる方は普段通りの方法で育ててください。
セオリー破り、と先ほど書きましたが具体的には・・・
・ソイルが嫌い
・ピンチカットにも差し戻しにも植え替えにも弱い
・根をなかなか出さないくせに根と地下茎が重要
という3点です。
要するに、熱帯性水草を栽培するうえで基本的に好まれる環境や管理を嫌うのです。
逆に、ただの熱帯魚水槽に入れてほおっておいた方がよく育つこともしばしば…。
変な奴らです。ただ、ポタモゲの好む環境を揃えてやれば、CO2なしでもへっぽこライトでも硬度の高い地域でも水槽を緑で覆うことができるのです。
アヌビアスとミクロソリウム、バリスネリアあたりしか選択肢がないような水槽でもポタモゲトンが考慮に入ってきます。
また、ただ水草が茂っているのを楽しむのもよいものです。
ポタモゲトンはそれだけで美しいですから。
というわけで、栽培が容易なポタモゲトンに関して、育て方を開幕から載せていきます。
コレです。
砂にしっかり根を張らせてしまえば、観賞魚を入れることも全く問題ないですし、エビなどの食害にもそこまでデリケートではない種が多いです。
「観賞魚用の設備が最低限あれば水草の森を楽しめる」のがポタモゲトンの魅力でしょう。
- 1.差し戻しはするな!できればカットもするな
- 2.新品ソイルより砂+有機、あとは鉄
- 3.ライトは貧弱でもOK。
- 4.フィルターも貧弱でOK。水替えで対処
- 5.CO2添加もなくてOK。pHにも寛容
- 6.栽培に向いたポタモゲトン
- 7.ポタモゲトンと一緒に育てられる水草
- おまけ.栽培が難しいもの
1.差し戻しはするな!できればカットもするな
差し戻ししたポタモゲトン ルーケンス×10本のうち、10日後に根が出ていたのは3本のみでした。しかしこれでも「差し戻ししてもOK」な部類のポタモゲトンで、ポタモゲトンの差し戻し成績としてはとてもマシな部類です。
ポタモゲトンは制御されるのを嫌う草です。
特にミネラル不足に陥りやすいソイル環境では一度のカットがしばしば死に直結します。したがって、放置してのびのび伸ばすのが最も良いです。
好適な環境ではカットしても問題ない種もあるのですが(ガシャモク、インバモ、ヒロハノエビモ、エビモ、オオササエビモ、ヤナギモなど線形ないし糸状の葉をもつ種、センニンモ、ヒロハノセンニンモ)、やや外れた環境でもよく育っているように見えてうっかり切ってしまうと枯れることがよくあります。
入手したら水面に浮かせて発根させることを非常に強くおすすめします。立ててしまうと根もランナーも出にくいためです。ランナーと根が出たらそのまま底まで突き刺さるまで様子をみるか、そっと底砂に植え込みます。
カットした際も同様に、根を出させてから植え付けるか、根の出ている部分でカットして植えなおすべきです。
制御して切り詰めて楽しむ「並びたて(レイアウト)」も良いですが、自然に広がっていく水草の森を楽しむのもいいと思います。
2.新品ソイルより砂+有機、あとは鉄
ポタモゲトンは根をなかなか出さないくせに、根に依存します。植え付けた後、初期は色が抜けたような、白っぽい葉をだしますが根を張るとしっかり色がついてきます。
また、この仲間はソイルで栽培するとかなり気難しい印象を受けますが、砂+有機を意識するとかなり楽になる印象です。
ソイルでも実績がある地域・水質の方ならいいのですが、水質や地域によりソイルに挿したところから溶けていくことが多く、一般の有茎草が元気に育つような新品の吸着系ソイルで特に顕著です。これが先述した根の出にくさと合わさるともう最悪で、植えただけでロストしてしまう…という失敗経験を植えつけることになります。気にならないといっている方もいるのですが、当方ではかなりの毒性があるように見えます。これはおそらく、ソイルのイオン交換が悪さをしているのではないかと思っていますが、はっきりしたことは不明です。
さらに水道水の水質にもよるのでしょうが、使用し続けた劣化ソイルではさらに成績が悪化することがしばしばあります。(関東の東半分で吸着系ソイルを使った際など)この場合刺さった根が片っ端から溶けていってしまい、こうなると根本的な対策が困難です。(但し、使い古しのアマゾニアは問題なく育つようです。理由は不明)
要するに、ソイルを使った場合ろくなことが起きないです。最近までこの属の栽培をきわめて苦手としていましたが、単に「ソイルを使ってしまっていたから」という一点が原因だったといま振り返ってみると思います。
砂単体でもあまりうまくいかない場合が多いです。うまくいくこともありますが、所謂「砂利の熟成」が必要になり、面倒です。
そのため、有機質と鉄分をあらかじめ底に敷いておき、砂で上から覆土します。
有機質への依存度は他の水草よりむしろ高いくらいだと思います。自生地でも群落に流れてきた破片が引っかかり、根元に枯れた腐植がため込まれている様子や、一見したところ砂利底に見えても掘り起こすとかなりの量の腐植が出てくることがしばしばです。
鉄に関しても赤さび色になるような鉄に富む環境にみられることも多く、野外でもしばしば根に鉄が沈着して赤さび色になっています。また、鉄が多い水域では水がかなり濁っていてもポタモゲトンが生育していることが多く、耐陰性にも強く影響していることが想像されます。
腐植や鉄、肥料を砂に混ぜ込むと水質がひどいことになるし見た目が汚いので、砂で分厚く覆土します。根への依存度が高いので、追肥は底床肥料だけで十分です。当方では鹿沼興産のバーク堆肥を薬用のカプセルに詰めて根本に埋めて使っています。どうせポタモゲトン水槽は差し戻ししないのでそれでOKです。
実績のある砂としては珪砂、津軽プレミアム、スプリングウォータープレミアム、富士砂、左官用の川砂利などが挙げられます。屋外栽培では試験的に、川砂にカキガラを混ぜて育てるのも試しています。少なくとも問題はなさそうです。
砂利底床に関してはぼのぼのさんの記事
水草水槽を1年以上長期維持するのに適した底床とは?|bonobono_armor
により詳しく、この方法で栽培がやや難しい種を含む様々なポタモゲトンが育てられるとのご報告もいただいているので、合わせてお読みください。
3.ライトは貧弱でもOK。
多くのポタモゲトンが弱光に強いです。
専ら湧水性のものを除いて、かなり濁った水域や深い湖底から生えてくるのがみられます。一般的にアクアリウムで使われる水草が生える水深は数センチから深くても50㎝と言ったところですが、ポタモゲトンは透明度が高い場所ならば3m以深まで生育できます。一年中底が見えないような濁った水域でも、棒やアンカーを入れると採集できて驚かされる場合があります。このような環境にも生育できるため、光に対してかなり寛容な種が多いようです。貧弱なLEDではダメなものも勿論あるでしょうが、沈水性の種で水草用LEDではまったく足りない、という種はいないでしょう。
4.フィルターも貧弱でOK。水替えで対処
ポタモゲトンは大きな水域(湖など)や流水に生えるため、水が入れ替わる環境を好みます。フィルターなどで水が動くのもまあ良いのですが、正直ひじょうに貧弱、ないしまったくの止水でもよく育ちます。フィルターで時間稼ぎするよりも水替えに励んだほうがよいようです。水質立ち上げの時間短縮にはなりますが…そこはむかしながらの種水を貰ってくる、他の水槽から最初だけ水を移植、などでよいでしょう。
5.CO2添加もなくてOK。pHにも寛容
ポタモゲトンの多くは重炭酸イオンも使えるので、CO2添加のない環境でも急速に育ちます。重炭酸イオン≒KHなので、半ば硬度を吸って育っているようなものです。(軟水を好まない一因かも)もちろん水生植物はみなCO2の方が利用効率がよいので、CO2添加があるにこしたことは無いのですが…なくても育つのは間違いない事実です。
pHにも寛容で、弱アルカリ性の水域でも育ちます。というかポタモゲトン自体が光合成によりpHを上げるので、昼間のpHがとんでもないことになっていることが…。pH11までは見たことがあります。しかし育ちます。少なくとも育てやすい種に関しては、pHには寛容です。pH6~9の間なら問題ないでしょう。
水温に関してもそこまで暑さに弱いとは思っていません。
夏場の水温は30度以上は好まないとは思いますが、ほかの水草より特別弱い気はしません。ただし、細葉系とヒロハノエビモは暑さが苦手そうです。
6.栽培に向いたポタモゲトン
日本のポタモゲトンは全種および既知の全雑種を触ったことがあります。研究中のものおよび保護されているものに関してはここで取り上げることはできませんが、代表的なものに関して述べてみようと思います。
各記述は流通する系統をベースに書いているものと、採集栽培したものについて書いているものがあります。
・採集したものは市販品よりも栽培が数段厄介な場合がある
・同種だからといって栽培難易度が同じとは限らない
ことにご注意ください。
データのあるものに関しては角野(1982)から水質データを引用、加筆しました。
Kadono, Y. (1982). Distribution and habitat of Japanese Potamogeton. The botanical magazine= Shokubutsu-gaku-zasshi, 95, 63-76.
pHは日内変動が大きいため、最高値をとるとみられる10時~16時のデータです。水槽での比較の際は正午ごろのpH極値と比較しうる値といえるでしょう。
ヒロハノエビモ
深い湖を好む種です。
日本産ポタモゲトンの中では珍しく、差し戻ししても安定感があります。ほぼアナカリス感覚で育てられます。ただしソイル環境の弱酸性の軟水を「嫌う」ので注意!
水質 pH7~10
CO2添加 不要
照明 弱くても可
推奨底床 砂 ソイル非推奨
ピンチカット いちおう可 但し草姿が乱れる
差し戻し 可
自生地の水質データ(角野, 1982より)
pH 6.5-9.7 (中央値7.5)
アルカリ度 0.18-1.19 meq/L (中央値0.60)
Ca2+ 2.65-77.75 mg/L (中央値7.77)
Cl- 4.0-1230mg/L (中央値18.8)
導電度 48-9800μS (中央値139)
インバモ、ガシャモク
平地の富栄養な止水域を好む種です。
どちらも日本の水辺からはほとんど姿を消してしまった種ですが、定評のあるように栽培下では頑丈で増殖品がよく流通します。ただし、インバモはそれなりにランナー依存性が強いので差し戻しよりは浮かせて発根を待ち植え込んだ方が得策です。ガシャモクはヒロハノエビモほどではないですが挿し木します(発根率は低く時間もかかる、後述)。この二種はソイル環境や高水温に耐性があり、さまざまな条件で育ってくれるかと思います。
水質 pH6~10
CO2添加 不要
照明 弱くても可
推奨底床 砂 ソイル可
ピンチカット いちおう可
差し戻し 避けるが吉
オオササエビモ
湖沼の止水域を好む種です。
名のある大型湖沼では大抵本種が優占してしまう、最強のポタモゲトンです。肥料豊富な環境を好むため水槽でフルのポテンシャルを発揮させるのは難しいのですが(されても困る)、そこまでのサイズを狙わないのであればインバモに準じる栽培の容易さでしょう。また野外のサイズ感だとかなりうざったるいのですが、水槽で矮小化させると美しいものです。
水質 pH6~10
CO2添加 不要
照明 弱くても可
推奨底床 砂 ソイル可
ピンチカット 避けるが吉
差し戻し 避けるが吉
ヒロハノセンニンモ、フジエビモ
深い湖の深場を好む種です。
センニンモとその雑種は多くが陰性水草のような性質をもっていて、低光量でほかの水草が育たないような環境でもみられます。(湖などでは浅いところがオオササエビモなどに占領されてしまいますが、その根本でひっそり生えています。)
硬い茎をもち成長は遅いのですが、粗悪な環境でも枯れにくい性質を持ちます。ペットボトルに茎を入れたまま忘れて、部屋に転がしたまままる一年以上放置しても生きているほどです(ごめん)。根もランナーも出すまで時間がかかりますが、転がしておくとそのうち成長をはじめます。
水質 pH6~10
CO2添加 不要
照明 弱くても可
推奨底床 砂 ソイル可
ピンチカット いちおう可 ただしリカバリ遅い
差し戻し 避けるが吉
センニンモ、アイノコセンニンモ
深い湖の深場を好む種です。
栽培や頑丈さはヒロハノセンニンモ/フジエビモに準じます。アイノコセンニンモや、全国の湧水河川に広くみられるセンニンモ”のような”植物はある程度ソイル耐性があり成長もそこそこ速いです。湖の厳密なセンニンモはちょっと難しいというか、遅い印象が。根依存性は低いですし頑丈なのでいいのですが…。
水質 pH6~10
CO2添加 不要
照明 弱くても可
推奨底床 砂 ソイル可
ピンチカット いちおう可 ただしリカバリ遅い
差し戻し 可能
自生地の水質データ(センニンモ 角野, 1982より)
pH 6.1-9.7 (中央値7.5)
アルカリ度 0.18-1.24 meq/L (中央値0.55)
Ca2+ 2.65-19.56 mg/L (中央値8.11)
Cl- 4.0-617mg/L (中央値14.8)
導電度 36-1430μS (中央値110)
ササバモ、ポタモゲトン ”マライアヌス”、ポタモゲトン”ベトナム”
平地の湧水河川や湖沼などに生育する種です。河川や湖沼でみられるササバモと、ササバモとしてアクアリウムで流通するもの(”マライアヌス”および”ベトナム”)は葉先の形状や葉の質感などに差異があり、何らかの雑種ではないかと私は考えています。どちらも砂水槽で栽培は容易で、Co2なしでもよく育ちますが、ランナー依存性がきわめて強い種です。特に何か条件が足りない条件下(硬度(ミネラル)、CO2、栄養など)でトリミングを行うと最悪枯れるので注意が必要です。(特にササバモ!)
またササバモは調子に乗るとCO2添加のない水槽ですら葉長40㎝ほどになるので、それを踏まえて楽しむ必要があります。水面にとぐろを巻かせてどこまで大きくできるか楽しむのも乙なものです。
水質 pH6~10
CO2添加 不要
照明 弱くても可
推奨底床 砂 ソイル可
ピンチカット 環境により不可になりうる
差し戻し 避けるが吉
自生地の水質データ(ササバモ 角野, 1982より)
pH 6.8-9.2 (中央値7.9)
アルカリ度 0.41-2.08 meq/L (中央値0.72)
Ca2+ 9.50-28.06 mg/L (中央値14.35)
Cl- 9.2-678mg/L (中央値14.5)
導電度 82-2400μS (中央値132)
sp. 新潟、ツツヤナギモ
水路で採集したアイノコイトモのようなものです。典型的なアイノコイトモではない気がするので、この名で呼んでいます。ツツヤナギモも(少なくとも栽培している系統では)栽培環境は準ずるもので、一般的な水草水槽でも育てやすく扱いやすいポテンシャルがあります。
うちではかなり増えるのでショップを訪れた際などにもっていっています。関東圏のショップではそのうち目にするようになるかもしれません。ランナーや根への依存性が低く、成長もCO2を主に使うように感じます。ふつうのソイルを使った水草水槽にかけらをひっかけておけば育ちますし、トリミングにも耐性があり、差し戻ししても何ら問題がないです。ランナーをあまり出さないので、場所を制御しやすいのもよいでしょう。
これらは湧水河川でCO2がふんだんに供給される環境で生育するもので、要するに水草水槽の環境に近い条件で良く育つ種です。また根への依存性が低いので、「他の水草にひっかけて植える」方がよく育ちます。
逆に、砂の硬度をあげたポタモゲトン向けの環境をあまり好まない印象を受けています。注意。
水質 pH5~7
CO2添加 必要
照明 強 (アクロTriangle×1程度)
推奨底床 ソイル
ピンチカット 可
差し戻し 可
ヤナギモ/アイノコイトモ/ポタモゲトン ガイー/市販のオクタンドルス
平野の湧水の影響を受ける富栄養水域の種です。
水草水槽に向いた軟水環境にするとうまくいかないことが多いです。中途半端に硬度が上がってしまった水草水槽だとよく育つことがあります。草体が大きい分要求する栄養量が多く、栽培下だとひどく矮小化することが多いです(特にヤナギモおよびヤナギモ類似雑種!)。そして矮小化させてしまうとリカバリがなかなか。。。
ガイーは着状態も原因のひとつでしょう。成長が速いぶん、環境変わった際の丈夫さに欠ける印象。根への依存性が低く、差し戻しに耐えるのがよいところですが…。うまく導入さえできればsp.新潟やツツヤナギモに近い扱い方ができると思います。
水質 pH6~10
CO2添加 不要
照明 弱くても可
推奨底床 砂 ソイル可
ピンチカット 可
差し戻し 避けるが吉
自生地の水質データ(ヤナギモ 角野, 1982より)
pH 5.3-9.1 (中央値7.1)
アルカリ度 0.11-1.62 meq/L (中央値0.62)
Ca2+ 1.28-29.33 mg/L (中央値11.62)
Cl- 7.4-5790mg/L (中央値15.1)
導電度 26-16200μS (中央値174)
7.ポタモゲトンと一緒に育てられる水草
エクストリームな環境で育てるようにみえるポタモゲトンですが、結構色々な水草が同じ環境で育てられます。
・マツモ
マツモは水質の立ち上げなどの面でもお勧めです。根を張らず競合が少ないこと、マツモは切って捨てても問題ないので水槽内の水草量のコントロールがし易いことが理由です。
・クロモ
・カナダモ類
・ラガロシフォン
・ナヤス
このあたりの沈水性トチカガミ科は好む環境がだいたい同じなので良く育ちます。ソイルが苦手なのも共通です。
・パールグラス
・エキノドルス
・ニムフォイデス ミニマ
・ゾステレア ドゥビア
このあたりも同じ環境で育てられますが、エキノドルスはpH9~10を超えると枯れはしないものの成長が鈍るので注意が必要です。
ごく簡易な方法でいいのでCO2を添加すれば、ヘテランテラやルドウィジアなど、もっと多くの水草が育てられるでしょう。
おまけ.栽培が難しいもの
ミズヒキモ類(ホソバミズヒキモ、コバノヒルムシロ含む)、イトモ、ツツイトモ
殖芽をすぐ作って休眠してしまうため栽培は難しいです。しかも作ったが最後起きてこないことが多いため、非常に厄介です。しかも無尽蔵に殖芽を作って水槽中にばらまくので、産地管理も困難になります。なお、イトモはこれらに比べるとかなりマシです(休眠性および殖芽が大きく回収しやすい、止水への耐性)。ツツイトモもかなりましな方ですが、ランナーで飛んでいく、休眠する、殖芽が飛んでわけがわからなくなる…といった点は共通します。
自生地の水質データ(ホソバミズヒキモ 角野, 1982より)
pH 5.7-9.3 (中央値6.9)
アルカリ度 0.06-1.62 meq/L (中央値0.44)
Ca2+ 0.48-77.75 mg/L (中央値6.41)
Cl- 3.1-1640mg/L (中央値11.4)
導電度 15-5130μS (中央値91)
自生地の水質データ("P. pusillus" 角野, 1982より)
pH 6.5-8.9 (中央値7.6)
アルカリ度 0.20-1.93 meq/L (中央値0.62)
Ca2+ 2.49-25.09 mg/L (中央値6.81)
Cl- 3.6-249mg/L (中央値14.0)
導電度 27-909μS (中央値119)
エビモ
本種は適応水温の幅が極めて狭く、そこから外れるとすぐに休眠する性質を持っています。殖芽は大きく体力もあるので起きてこない…事案は少ないのですが、狙ったときに育ってくれないのです。系統によりかなり性質に差があるようなのと慣らすことも可能なようなので、やってみる価値はあると思います。
自生地の水質データ(エビモ 角野, 1982より)
pH 6.3-9.6 (中央値7.4)
アルカリ度 0.27-3.05 meq/L (中央値103)
Ca2+ 3.86-101.8 mg/L (中央値12.87)
Cl- 3.1-5790mg/L (中央値16.2)
導電度 55-16200μS (中央値161)
エゾヤナギモ
本種はデリケートで、栽培は厄介です。夏場の富栄養で急激に成長するものの腐敗に弱い…という北方の湿地に生える草らしい挙動をしてきます。葉も茎も硬いが脆く簡単に折損してそこから腐ること、地下茎を欠くことも栽培を難しくしている原因でしょう。
当方では何度も導入を試みているものの、いまだにうまくいったことがありません。
自生地の水質データ(エゾヤナギモ 角野, 1982より)
pH 6.5-8.0 (中央値6.9)
アルカリ度 0.37-2.32 meq/L (中央値0.59)
Ca2+ 4.65-48.18 mg/L (中央値7.49)
Cl- 4.0-238mg/L (中央値18.7)
導電度 70-787μS (中央値95)
エゾヒルムシロ、ササエビモ
デリケートな個体とそうでない個体の差が激しいようです。育てられる個体はそこそこ育てられるのですが、やはり簡単とはいいがたいです。CO2依存性のようで、試した限りではアルカリに寄る環境では育たなかったり溶けたりしました。砂水槽で底床施肥+CO2多めなどの環境ではそれなりにいけるでしょう。(当方ではソイル水槽の中に砂の鉢植えを入れることで対処)エゾヒルムシロは北方系ですが水溜まりのような場所にも生え、高温にはそれなりに耐性があります。
自生地の水質データ(エゾヒルムシロ 角野, 1982より)
pH 6.5-8.6 (中央値7.2)
アルカリ度 0.26-1.93 meq/L (中央値0.53)
Ca2+ 2.81-19.13 mg/L (中央値5.29)
Cl- 4.1-249mg/L (中央値20.5)
導電度 33-909μS (中央値107)
ヒルムシロ、オヒルムシロ
浮葉性のものは光要求性が高く厄介です。しかし屋外鉢では育てやすいのでそうすることをお勧めします。ただし両種とも個体差がかなりあり、育てにくい系統はひじょうに苦労します。育てやすい系統は水鉢に赤玉やソイル、荒木田土などを入れて植えておけばよく育ちます。ソイルは使い古しでOK。浮葉のついた浮葉性の種はあまりソイルの悪影響を受けないようです。
フトヒルムシロ
好む水質が特殊でいまいちうまくいきません。今後の課題です。
その他おすすめしないもの
珍しいポタモゲトンはいくつかあるのですが、栽培が難しいものが多いようです。
特に下記のものはやめておいたが無難でしょう。
ノモトヒルムシロ・・・巨大なくせに折損と腐敗に弱くデリケート。たとえ育ってもまったくもって美しくない(個人の感想)。
ホソバヒルムシロ・・・北方系かつ低水温性かつ巨大。種小名からして「高山の」。
ナガバエビモ・・・種の保存法指定種(国内希少野生動植物種)で採集してはいけない。海外の報告では水温25度を超えると枯れるとのこと。要するに渓流魚のような管理を要する。そもそも巨大で水槽に入れるサイズではない。