客層により求めている水草は全く違う!
即売会や学祭などで水草コレクションの余剰を時々放出しています。
そのたびに、
A 一般の客層が求める水草
B 多く流通する水草
C レイアウターなど水草を扱う人が求める水草の間にきわめて大きな乖離があることに気づかされます。
ショップはおもにB, Cにあてはまる水草を販売していますが、最も数が出るのは必ず、Aの超入門種です。そして、このジャンルはほぼ必ずと言っていいほど、ショップでの流通が少ないのが現状です。
これらの水草に関しては潜在的な需要が極めて大きいことが予想されます。
つまり、PRさえ上手くいけば水草を育てたことがない、あるいは育てるつもりもなかった客層を水草の面白さに目覚めさせる可能性があると考えています。
A 一般の客層が求める水草
・関東の水道水と硬度の上がる市販の底床で生存可能
・CO2なしで2ヶ月は生存可能
・ライトの要求量が低い
・できれば浮かせておいても生存する
B 多く流通する水草
・ファームで増やしやすい
・入荷時の見た目が派手
C 水草を扱う人が求める水草
・色や見た目が派手
・トリミングに強い、云々…
さて、ほとんどの客層はAの超初心者でありながら、プロショップはCの玄人向けのPRに明け暮れ、ホムセンなどに行くとBやCにばかり遭遇する…
というのが、水草を必要以上に難しくし、失敗経験を量産している原因ではないかと思います。
まず客層を知るために、フリーマーケットやアクバスで水草に関する質問やこんな水草ないですか?という話でよく聞く、2020年代の初心者アクアリストの特徴を列記してみようと思います。
水草に興味を持つ2020年代の初心者アクアリストの特徴と傾向
・水槽サイズが極端に小さい
なんと「1L未満」という声すらしばしば聞きます。メーカーでも数が一番出るのは15cmキューブなのだとか。
17cmキューブでも「それなりにしっかりした大きさ」という認識のようです。
・底砂が殆どない
底砂を殆ど敷いていない方が多いために植え込む必要があるもの(エキノなど)も売れにくかったです。売るにはあらかじめ鉢に植えるなどして固定する必要があります。
・餌やりはできるが水換えを知らない
餌やりに関しては毎日行える人が多いです。つまり、毎日炭酸水添加などは説明すれば苦にはならないと思われます。(私は餌やりも水やりも毎日できないのとは対照的)
一方で、水換えというものがあることを知りません。足し水を水換えだと誤解しています。
・黄緑色で広葉が好き
低スペック環境であるにもかかわらず、有茎草が好きです。アヌビアスやミクロソリウム、オオカナダモなどにあまり満足してくれないようで、まぁそれは私も大変よくわかるのです。黄緑で広葉が好き…というのはかなり言える傾向と思います。
・派手な色彩や美しい必要はない
赤い水草はあんまり好きじゃないのは、特筆すべきでしょう。とりわけすごく綺麗な水草を欲しているわけではないです。とりあえず黄緑を保ってくれればいいのです。
・部屋がしばしば寒い
冬場、15度以上を保てない人がいます。WHOは健康的な就寝時温度として18度以上を強く推奨していますが、それを守れていない家が非常に多いです。そうしたところでは、ヒーターを準備する/させる必要があります。
何がそんな環境で耐えられるか?
さて、こうした条件から、私の考える最悪環境…密閉した2L容器で3ヶ月耐久して育てられるる水草というのをやってみました。
結果
・パールグラスとモスファンしか持たない
・アイノコイトモがときに耐久しうる
といったところでした。
ソイル+水道水足し水のみ、17cmキューブの環境ではだいぶ選択肢が広がりました。浅くなればなるほど選択肢が広がります。
バリスネリア、ハイグロフィラ、サジタリア、ヘテランテラ、エレオカリスビビパラ、マヤカ、ナヤス、ニテラ、マロンフラスコモ、ブラジリアンフラジャイル、エキノドルス各種、テネルス、ゾステレア、ルドウィジア、ミズワラビ類各種など。浅いのと、そもそも浮かせているだけなのでろくに根を張らせる必要はなく、劣化ソイルの影響も受けにくいです。
有機質+砂だとポタモゲトン、ニムフォイデスミニマ、グレートモス、ラガロシフォンマダガスカリエンシスあたりが選択肢に入ってきます。新品ソイルじゃなければマツモとか。
つまり…浅ければ浮かせて育つ有茎草を半水上でやればよく、深ければ砂+有機で沈水植物を育てればよいだろう、ということです。
どちらでも追従可能なのはパールグラス、アメリカンスプライト、ウォータースプライトあたりです。ウォータースプライトとか。要するに古典系ですね。やはり古典は偉大です。
タヌキモ類も頑丈なものがあるので、オオバナイトタヌキモはもちろん、タヌキモやノタヌキモは耐久しやすいです。
底床がとりあえず深ければ、アマゾンソードはじめエキノドルスが最強。あと案外、アポノゲトンのウンデュラータス、クリスプスあたりも強い。肥料があればスイレンもいけます。
クリプトコリネはウィリシィ系が上記の需要を満たすでしょう。茶色いのは初心者にはウケません。
超初心者におすすめできるだろう水草
A1 植える必要すらないもの
そもそも底砂が飾り程度だったりする場合を考慮し、浮かせておいて生き延びることを重要視した選定です。そもそも、ハイスペックな水草水槽でない水槽の場合、底床に植えて根を張ることによる恩恵よりも浮かせてCO2供給を多くしたことによる恩恵の方が大なので、植えないという選択ができるのはとても大きいです。
パールグラス
モスファン
アメリカンスプライト
ウォータースプライト
ナヤス
ルドウィジア(広葉)
ハイグロフィラ ポリスペルマ
マツモ
ノタヌキモ
エレオカリス ビビパラ
ゾステレア ドゥビア
ヘテランテラ
マヤカ
ブラジリアンフラジャイル
マツモ
ポタモゲトン各種(地域による、砂底床に限る)
このあたりならとりあえず何とかなるか…と思います。色々混ぜて一本ずつとかで提案すれば、どれかは残るでしょう。
A2 植える必要があるもの
植えるという大仕事をさせるわけにはいかない(しようとしない)ので、予め植えて販売する必要があると思われます。
また、このグループは植えることにより真価を発揮し、浮かせておいてはあまり上手く育たないことが多いことも特筆すべきでしょう。
・バリスネリア ナナ
・タイガーバリスネリア(レオパード)
・タイガーハイグロフィラ
・ハイグロフィラ トリフロラ
・テネルス
・アマゾンソード
・アポノゲトン ウンデュラータス
・エキノドルス ウルグアイエンシス
・エキノドルス ルブラ
この辺りを考えています。
A3 自家生産すべき水草
生産性が高く、ショップや個人などで自家生産することに価値があるだろう水草は以下の通りと考えます。
パールグラス
ファームとの相性が悪いです。ファームからくる水上葉はすぐダメになるので、水中葉で生産直売することが絶対に必要です。
ウォータースプライト類
ファームとの相性が悪いです。
バリスネリア類、サジタリア
入荷サイズがデカすぎて、入門者が引いてしまう可能性が大です。小さくていいので…。
ナヤス
生産コストが低く輸送に弱いので自家生産すべきです。
ハイグロフィラ ポリスペルマ、タイガーハイグロ
ファーム便が混沌としているので、育てやすい系統を残して自家生産すべきです。
育てやすい雑種(レッドルドとかナタンスとかグランデュローサとかで流通するいくつか)は耐寒性もあるので表に水鉢が一つあれば大量に収穫できます。廃ソイルを使えますし、自家生産コストが低いです。
エレオカリス ビビパラ
ルドウィジアと同じく生産コストが低いです。ちなみに植えなければめっちゃ丈夫。植えたり鉛で巻いたりするから枯れるんです。
このあたりかなぁ…他にも思いついたら書き足します。