水草オタクの水草がたり.

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エゾヒルムシロ Potamogeton gramineus

最も美しい日本の水草は何か?ともし聞かれたならば、エゾヒルムシロはかなり有力候補になるだろう。 

 

エゾヒルムシロは亜寒帯を中心に周極分布するヒルムシロ属で、日本では北海道や東北北部、山間部の湖沼などでみられる。適応範囲は広いようで、水深数センチしかないような浅い水域から非常に深い場所まで、様々な場所で見かける。

 

エゾヒルムシロはじめ、Potamogetonはきわめて形態変異に富み同定は難しい。さらに、花は地味で各種の特徴が酷似しており、決定打にならないことも多い。

ただ水中深くに群生するエゾヒルムシロに関して言えば、草姿で一目見ればだいたい見当がつく。

なんといってもきわめて分岐に富み、まるで森のように水中を覆うことが印象的である。また、葉は極めて透明感が強く薄く軟弱で無柄(ただし茎を抱かない)である。

この性質は他の種と交雑しても色濃く残るため、ツガルモク(ガシャモク×エゾヒルムシロ)やササエビモ(ヒロハノエビモ×エゾヒルムシロ)でもはっきりと見て取れる。

エゾヒルムシロは特徴的な分岐と軟弱かつ小型であることで他の種からは容易に区別できるものの、変異の幅が非常に広く、また遺伝的にも多様な分類群であることが知られている。さらに交雑もよくする。

ガシャモクとは極めて近縁で、広義にP. gramineusと呼ばれている植物の範疇内にP. lucensが入ってしまうようだ。ツガルモクに不完全ながら稔性がある(結実率は高いが完熟までいくものは少ない)ことからしても納得である。なお牧野富太郎いわくササエビモも不完全に結実するらしい。(みたことはない)

エゾヒルムシロの沈水葉は極めて透明感が強く無柄(最上部のみ、ときに有柄)、披針形で長さは10cmを超えない。ただし春先の葉は時に大型化し、分岐を繰り返すごとに葉が小さくなる傾向があるので注意が必要である。

エゾヒルムシロの浮葉はしばしば不完全で、また形態は極めて多様である。非常に細長いものから強く丸みを帯びた小判形のこともある。浮葉は花茎を持ち上げて結実するためのバランサーとして用いられるのだが、密度が低く、浮葉が発達しない個体群では家女が水没してしまうために稔性があったとしてもあまり結実していないことがある。密に茂ると花序を持ち上げられるようだ。

痩果は丸みを強く帯びるのが印象的だが、ヒルムシロのものと酷似していて単体では区別困難である。ヒルムシロは2心皮で2つずつ雌蕊がつきそれに結実し、エゾヒルムシロは4心皮で4つずつ雌蕊がつき、それに結実する。ただ基本的にヒルムシロ属は4心皮なので、2心皮ならヒルムシロというのはだいたい正しいのだが4心皮ならエゾヒルムシロということにはならない。

越冬手段はレンコンのように肥大した先端数節の地下茎で、ガシャモクのものと酷似している。