水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

メモ:スリランカ便の”Aponogeton natans"について

スリランカ便2022ではアポノゲトンが入荷した。

しかしその状況は極めて混沌を極めたものだった。

まずはじめに、背景知識としてアポノゲトンの流通状況をまとめておきたい。

・アポノゲトンという植物の流通状況自体が混沌を極めている。

現在流通するファーム由来のアポノゲトンは以下のようなものが挙げられる。

・クリスプス

・クリスプス レッド

・ウンデュラートゥス

・アペンディキュラートゥス

・ナタンス

・ナタンス

・リギディフォリウス

マダガスカルの種類もファームから来るが、本当に生産されているのか非常に怪しく、現地の球根を養生しているだけの可能性があるので含めていない。

さて、私の調べではこれらはこのように対応する。

・クリスプス=A. crispusまたは広義undulatus どちらも流通する

・クリスプス レッド=A. crispusしか見ていないが赤いものも赤くないものもこの名前

・ウンデュラートゥス=A. crispusまたは広義undulatus どちらも流通する

・アペンディキュラートゥス=広義undulatusとみられるが雑種の可能性もあるので要検討

・ナタンス(国内ファーム)=A. crispusの花が白っぽいもの

・ナタンス(海外ファーム)=全くの不明種。アフリカの種かも。沈水葉は小さくろくにつくらず、短い長楕円形の浮葉ばかりつける。花は二又で、細長い種子をつけ実生で殖える

・リギディフォリウス=A. rigidifolius

 

ようするに、スリランカ便でなくともめちゃくちゃであるということは先に弁明しておく。実物を見て選ばねばならない業界である。

さて、スリランカ便にもどろう。

少なくとも関東には、「ナタンス」と「クリスプス」の名前で入荷した。

「ナタンス」は葉先が丸く非常に幅広の沈水葉主体の植物が輸入され、「クリスプス」は全て浮葉の植物だった。

栽培したところ、両者はよく似た植物に育った。(当方だけでなく他の方のところでもそうなったようにみえる)

 

 

 

いっぽう、関西には全く違うアポノゲトンが届いていたらしい。ようするに、クリスプスらし・・・い??クリスプスも入荷したらしい。

が、とにかく確かなこととして関東でこのような株の入荷は見かけられなかったし(見たかった~!)、関西で買った方のツイートによれば、関西のものにもどうも2種混じっている疑惑が…。

さて、関西の個体はさておいておいて、関東に入荷したアポノゲトンに関して…。

葉先は普通に入荷するクリスプスに比べて丸みを帯びる傾向があり、これは各方面で保たれたよう。ただ浮葉は入荷時こそ丸かったものの、その後細長いものを出すこともみられるように。たしかにクリスプスではない”何か”だな?という感想を持たせた。

さて、これらの株が結実を始めたのがこの頃の近況である。

Charmの店頭の株でまず”natans"の結実を確認したが、クリスプスでもナタンスでもない「何か」が成っていたので驚かされた。果実は見覚えのあるクリスプスのものよりさらに大型で周囲に3~5稜ないし3~5翼をもち、その稜の先端に数個の突起がみられた。

果実の形状で似ているものはAponogeton crispusとの異同に諸説あるAponogeton echinatusおよび、最近記載されたばかりのAponogeton nateshiiである。両者は胚の形状が全く異なるとされている(A. echinatusはA. crispusに似た細長いもの、A. nateshiiはらせん状に突起を持つ花のつぼみのようなもの)なので、今後の経過観察がカギになってくるだろう。

個人的にはA. echinatusではないかと思っている。A. nateshiiの記録はタイプロカリティに現在限局しているし、Bruggen, 1970ではA. echinatusが「A. natansとして」しばしばアクアリウムに使われるとあるからである。

現状、A, echinatusらしきものはアクアリウムでは見ていないので、生きた化石的なものなのだろうか。国内ファームが出荷しているA. natansと名乗るA. crispusらしきものも再調査が必要だと感じる。