水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

世界の水草食

世界の水草食について、ザックリと紹介します。以前準備したスライドのサルベージ記事になります。なので、内容が薄いのはご了承ください。あとまったく網羅的ではないです。ボコボコ抜けがあります。

真面目な記事が別に準備されているものも多いです。そちらのリンクも気が向き次第張る・・・かも。

イネと水生イネ科植物

アジアイネ

日本人の主食であるイネは水草である。稲作には連作障害がないことや、単位面積あたりの収量が極めて多いなど、他の主食として用いられる作物に比べて数々の優れた特性がある。これは水稲が湛水栽培できるからであって、陸稲では収量は少なく連作障害に悩まされることになる。アジアイネ Oryza sativaはインディカ種とジャポニカ種に大きく分けられる。

 日本で育てられているジャポニカ米は温帯に適している。粒が丸く粘りがあり、生育期間が短いものが多い。しかしインディカ米に比べると小柄で水位の上下に弱く、渇水にも弱い。

インディカ種は粒が細長く粘りが少ないだけでなく、大柄で雑草との競合に強く、降雨量が年間に大きく変わる熱帯の環境によく適応しているが、晩生で温帯での栽培には向かない。

種籾から育てるのも良いが、市販の玄米はよく発芽するので是非育ててみてほしい。

 

アフリカイネとNERICA

世界の栽培イネの殆どはアジアイネOryza sativaであり、その原種はO. rufipogonである。しかし、アフリカではO. barthiiをもとに改良されたアフリカイネO. glaberrimaが局地的に栽培されている。アジアイネと異なりアフリカイネは収量が少なく地域的な雑穀にすぎないが、耐病性や乾燥耐性、増水耐性、高温耐性、雑草との競合性など数々の優れた形質がある。

アジアイネにアフリカイネの遺伝子を導入し、アフリカの食糧事情を改善すべく作られたのがNERICAとよばれる品種群である。

アフリカイネとアジアイネは自然交配困難だが、胚培養により雑種を作成できる。雑種もほとんど不稔だが、これにアジアイネを数回戻し交配することにより稔性を回復させ、アジアイネの高収量性を引き継がせている。

今年のNERICA栽培は不慣れな点も多く、課題が多かった。来年以降にフィードバックしたい。

コラム:野生イネの生存戦略

イネ属の野生種を野生イネと呼んでいる。栽培化された野生種以外にも様々なものがある。

 イネ属は殆どが雨季と乾季のあるサバナ気候に生育し、さまざまな生存戦略をみせ興味深い。

多くの種において野生イネは池などに生える多年生で自家受粉せずランナーで殖える個体群と、季節性湿地に生じる一年草で自家受粉による種子で繁殖する個体群に分化している。この分化は各種で独自に生じたものである。

 雨季の水位上昇への適応も様々である。

茎が著しく伸びる性質はさまざまな野生イネや栽培イネ(浮稲)で独自に獲得されている。

逆に、成長を止めて代謝を落とし、水位が下がるまで待つ戦略をとるものもいる。

アマゾンのO. grandigulmisなどは、水位変化の速度を感じ取って水面まで伸びるか待機するかを決めることが知られている。

ヒエ

ヒエは東北か北海道において酒用作物として改良されたと考えられる日本原産の作物である。救荒食としての歴史が有名だが、先入観を取り払って食べてみると香り高く美味である。

劣悪な環境でも育つ頑丈さだけでなく、糖化能力はあらゆる作物の中で最も高いなど、ヒエの持つ特殊な性質はもっと着目されるべきであろう。水田にはさまざまな野生ヒエが自生するが、栽培ヒエとの関連性は薄い。小鳥の餌として市販されているヒエはよく発芽するので、そこから育てられる。猫用の草の代用にもなる。

ちなみに、緑肥用のホワイトパニックはよく似た別の作物であるインドビエである。

 

マコモダケ

中国南部を中心に、マコモの花芽が黒穂菌に感染したものをマコモダケとして食用に用いる。黒穂菌に感染したマコモは生涯感染するので、感染苗が流通している。珍食・奇食のたぐいのように聞こえるがきわめて美味であく抜きもいらない。なお、家庭菜園には全く向いていない。収穫するには2mほどに育てねばならない。

 

ハス、浮葉植物

レンコン

茨城の名産品となっているレンコンだが、元々レンコンの栽培は消費地に近い東京周囲で盛んであって、霞ヶ浦近辺でレンコン栽培が盛んになったのは輸送網が発達した20世紀に入ってからである。

 洪水に悩まされたかつての霞ヶ浦において、稲作より安定した換金作物であったことが理由として挙げられる。

 はじめレンコン用に用いられる蓮は日本産の花が白い個体群が用いられた(赤花は小さいうえに黒ずみ、質が悪いとされた)。

しかし、満州事変の際に兵士が持ち帰った中国種が利用されるようになると急速に取って代わられたという。

現在では中国種とのハイブリッド品種が主流である。花ハスもほとんどが中国温帯域の品種であり、いまや日本在来のハスはめったに見ない。

 

蓮の実と熱帯のハス利用

蓮の食材としての利用と言えばレンコンだが、熱帯では寒くならないのでそもそも越冬器官としてのレンコンがつくらない品種が多い(日本で寒さにさらしても越冬できないこともしばしばだとか)。

熱帯地域でもハスは食用によく利用されるが、肥厚しない地下茎を野菜のように食べたり、種子を利用する。種子利用用のハスはきわめて大型の種子をつけ、亜熱帯で栽培される。

日本においては、石垣島において種子利用用のハスの生産が小規模に行われ始めた。

ハスの種子はドングリ大だが、成熟した種子はひじょうに硬いため、未熟果を剥いて利用する。未熟果かつ殻のついていない状態でも日本の蓮の種より大きいほどで、食用品種の特殊さを伺い知ることができる。

 

ヒシ

ヒシですら滅多に見なくなった。現在食用に用いられているのは主に大陸で食用に改良されたトウビシだが(これもきわめて多様で面白い)、かつては普通のヒシを食用とした。今でも猪苗代湖などでは刈り取ったヒシを食用に加工している。

また、棘のついたタネは無論、忍者の使う「マキビシ」の語源である。

ミズオジギソウ

ミズオジギソウは東南アジアではしばしば食用とされ、かつては日本にも冷凍品が輸入されていたとされる。しかし現在では殆ど見かけず、どこかに売っていないかと探している。アフリカ産クサネム属のオオバミズオジギソウと混同されがちだがこちらは食用にされない。

ガガブタ

台湾ではヒメガガブタの葉柄を水蓮菜として食用にする。葉柄が長く伸びるように遊水池で深い水深にして栽培する。何度かごま油で炒めて食べてみたが、きわめて美味である。

なお、日本においても琵琶湖周囲などでアサザを食用にしたが、実際に食べた人によるとえぐみが強く美味しくないのだとか。

クウシンサイ

中華食材として、最近ではごく一般的な野菜として普及している空芯菜

日本ではもっぱら陸上で栽培されているが、本領を発揮するのはやはり水の上で、陸上はあくまでも待機・退避モードである。

野生型は茎が赤いものが多く、栽培型は茎が緑のものが好まれる。加熱した際に色が綺麗だからである。

東南アジアの水辺でもっともありふれた水草と言っても過言ではない。中空な茎は水が満ちるとフロートとして機能し、草体を水面上まで持ち上げ、水面を這うように水辺を埋め尽くす。より背の高い植物があり邪魔な場合はアサガオのように細い茎に変形し、茎が障害物に巻き付いて上に伸び、水辺を独占する。

言うまでもなく野菜であり、きわめて美味。

オニバスの食用利用

オニバスは葉一枚の直径が3m近くなることもある、世界最大級の水草のひとつである。

南米のオオオニバスは子供が乗れることで有名だが、アジアのオニバスも葉のサイズに関しては勝るとも劣らない。全草に極めて鋭い棘が密生しており、触るにも躊躇する。この巨大さで一年草なのは驚くほかない。

こんなオニバスだが、各地で食用利用されている。日本では「みずぶき」といって葉柄を主に食用とし、株元の肥厚部も食用とする。

中国では葉裏以外に棘がなく、さらに大型になる品種があり、ハスと同様に未熟果を剥いて食用とする。

インドでは完熟した種を土中から集め、乾燥させたのちに加熱し、金づちで叩いて炸裂させて剥き食べる。

 

香味野菜、ハーブとしての利用

セリ

春の七草や食材としてよく用いられるセリは水田や小川でよくみられる水草であり、水温が低く二酸化炭素濃度が高ければ水中でも育つことができる。日本だけでなくアジアの広い範囲で食用に栽培されている。地域によりサイズや鋸歯の尖り方、裂片の幅が異なる数タイプがあり、気にしてみると面白い。なお、日本だけでなくアジア各地で食用とされている。

クレソン

クレソンもまた、有名な水辺野菜である。低水温を好むため水槽での栽培は難しいが、上流域の河川や湧水のある場所ではきわめて普通に見られ、侵略的外来種として問題になっている。

なお、国内に帰化しているクレソンだけでも数種ある。国外でもクレソンはよく利用されるが、ジャワ島でクレソン畑をみたときは驚いた。

 

抽水植物

クワイ

正月料理のクワイは水田などに生えるオモダカの改良品種。日本で流通するクワイは青クワイ系、白クワイ系、吹田クワイ系の3系統あるが、売られているのはほぼ青クワイ系のみ。吹田クワイは日本で独自にオモダカから改良されたもので、他2系と異なり花が咲く。

アメリカの中国系移民はアメリカの近縁種であるSagittaria latifoliaクワイの代用に栽培すると聞くので今年は育ててみた。が、なかなか塊茎ができない。。。

 

オオクログワイ

クワイと名がつくが全く関係のない植物で、カヤツリグサの仲間。いまでこそ熱帯の作物とされ、日本人からは全く認知されていないが江戸時代には食用とされていた。古名は烏芋、地栗など。根茎は茹でる、炒る、もしくは生で食べられ、食感はレンコンに似て甘味があるとされる。缶詰での流通もある。