水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

Sagittaria sprucei

水草おもしろ話」の記述を見て思いを馳せながら、この草はなんだったのだろうと検索している。今回はp.185 「褐色のネグロ川に水草を追う」に出てくるオモダカ科に関して。

1998年3月、川幅5mほどの湿地の入り口の水路にて確認されたオモダカ科である。点々と丸太が浮かび、河岸に雑草がはみ出てしげっている、スイレンの葉柄が1.5m、オオオニバスも散見できるということからおおよその環境が推測できる。

オモダカ科のSagittaria sp. も見かけられる。葉は鏃形でクワイにも似るが、花茎が違う、異常に太く扁平なのである」

と、記述はこれだけである。

さてブラジルのアマゾン地方の鏃状の葉をもつSagittaria、となるとSagittaria spruceiである。この種の特徴が節ごとで細くなるがきわめて膨らんだ花茎であることとも記述が合致する。もう片方の鏃状の葉はS. montevidensisだが、これはもう慣れ親しんだ存在である。両生花のS. guayanensisは浮葉性であるし山﨑氏は既に見ているはずだ。形態がSagittariaに似て両性花であるLimnophyton属などにしても、ブラジルに分布がなく除外される。したがって、これはS. spruceiなのだろう。

S. spruceiは南米アマゾンに分布するSagittariaで、ほかのSagittariaが広域分布だったりアマゾンからパンタナルまで分布するのに対し、S. spruceiはほとんどアマゾン流域にのみ分布する。S. spruceiは現状生体写真もないが、ここまでたどりつけたのは山崎先生のコンパクトながらも要点を掴んだ記述のおかげである。花茎が単に膨らんでいるのではなく平たいという情報も非常に参考になる。いつか標本であれ生体であれ写真であれ、実物を見てみたいものだ。