水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ヒメタイヌビエ

意外に写真がないヒメタイヌビエ。関東では局地的な印象を受ける。

小穂は丸みを帯び、ヒメイヌビエを丸くした程度には小さく、第一護エイは日本産種でも特に短い。イネ擬態でサイズはイネ準拠。ほかのヒエ類より葉が青っぽく、タイヌビエより小さく穂も寸詰まり。本州のヒエではかなり晩生。

いろいろなヒエ

右はタイヌビエ、左はケイヌビエ。やはりタイヌビエの方が同じくらいの長さでも、ぷっくりしている。

イヌビエだが立ち性傾向の強いもの。穂は細くてやせた印象を受ける。

 

タイヌビエではなさそうな、一見ヒメイヌビエを思わせるような小穂も小さい開帳型草体だが小穂の裏面が膨らみ艶も強い。ヒメタイヌビエとも開花期、株元の色調が異なる。気にしてみるともう少しマシなサイズの株を含めあちこちにいるようだが、よくわからない。

 

ケイヌビエ

関東の田園地帯では実によくみかけるヒエ類。

日本のノビエ類ではもっとも野生に近い種だと思っていて、平野部の低湿地に多く、水田よりむしろ自然湿地でよく見かける。

長いノギが特徴的で、強豪かつ横向きに周囲の植物をなぎ倒すように生育する様子も他のノビエ類とは違ったものを感じさせられる。本種が蔓延った水田が収穫もされず放棄されているのをときどき見かけるが、これは管理者に不幸があったためか、それとも管理不能になったためかはわからない。こういうことがあるので私にはうらみのある水草でもある。


紫色の禾はカッコいいのだが凶悪な雑草性をもつため栽培はやったことがない。生えてきてしまう場合もあるがとにかく抜くようにしている。

 

さて、あまり言及されないのだがケイヌビエはイヌビエとはかなり違うように見える。

典型的な禾の短いイヌビエよりそもそも小穂が一回り以上大きく、長さだけならタイヌビエや栽培ヒエと同格である。全体に細長いので勿論これらほどのボリュームはないが…。

さらに、第一護エイはかなり長く、この点ではイヌビエとは明らかに違っていてむしろタイヌビエと紛らわしい。これだけを見ると、タイヌビエの写真としてケイヌビエを紹介しているサイトがあるのも納得である。ただ野外でみるとタイヌビエは立ち性で穂は粒が大きいが種子数も少なく穂がほぼ直立しているのに対し、ケイヌビエは匍匐性に近く穂は大きく枝垂れる。タイヌビエにも禾があるものがあるが短く、ケイヌビエのように発達するものはない。タイヌビエは西日本ではC型(粒の下面が膨れて艶を持つ)、東日本ではC形ないしF型(粒の下面は平坦で艶を欠く)だが、いまのところ見る限り、ケイヌビエはつねにF型に近いようすである。

リュウノヒゲモとその類縁

あくまでメモ書き。

さきほどTLを眺めていたら北海道にホソバリュウノヒゲモ Potamogeton filiformisが分布するという情報があった。初耳だったので違いについてとりあえず調べてみた。

リュウノヒゲモは極めて変異が激しく、ヨシの茎を思わせるほどに巨大化したり、糸状になったり、さまざまな姿をとるので全く見た目が信用ならない。Kaplan(2008)では信頼できる特徴は葉鞘の基部と果実の大きさのみとし、他の特徴、概形や葉先の形状、葉舌の長さ、花序の間隔、分岐…といった特徴はあくまで補助的か、もしくはあてにならないとしている。

私自身、何度もS. vaginataを思わせるほど巨大化し主茎が異常に太くなるS. pectinataに惑わされたことか…。ただあれに関しては本当に別種である可能性を捨ててはいないけれども。

 

Stuckeniaには今のところ6種ほどが知られているが、うち3種は中央アジアを中心に分布するようだ。今のところは。

のこり3種は広域分布種であり、日本で記録が出る可能性がある。

これら3種に関しては主茎と葉さえあればきわめてシンプルに分別できると判断した。

1.葉鞘は筒状になり、断面は円形で連続する。果実2.1~2.6㎜

・・・Stuckenia filiformis

2.葉鞘は筒状とならない。果実2.6㎜以上・・・3

3.主茎の葉鞘は葉舌を欠き、膜質の上縁を持つ。果実2.6~3.4㎜・・・S. vaginata

4.主茎の葉鞘は葉舌をもつ。果実3.4~5.8㎜・・・S. pectinata

 

 

Kaplan, Z. (2008). A taxonomic revision of Stuckenia (Potamogetonaceae) in Asia, with notes on the diversity and variation of the genus on a worldwide scale. Folia Geobotanica, 43, 159-234.