Betta primaとその生息地(Sihanoukville Cambodia)
— けんご@アナバス専門店闘魚庵 (@Balitoridae) 2024年11月14日
立木とホシクサが沢山ある美しい景観の湿地です。
底質は細かくて比重の高い砂でした。
水質データ
pH:6.0
NO2:0
NO3:0
GH:1
KH:0
水質は凄くベタらしくpH、硬度共に低めの水になってました。
マウスタイプの多くはそうよね。… pic.twitter.com/FhvS5yeoE0
今回の記事では闘魚庵さんの現地写真に映り込んだ水草について解説してみようと思います。ビオトープアクアリウムの制作にどうぞ。
大変ありがたいことに画像の利用許可もいただけたので、画像入りで紹介してみようと思います。
1枚目; ハリイ属クログワイ節の穂の先端が映り込んでいます。断面は三角ではなさそう。残念なことに穂は未熟です。茎はかなり細そうですが、幼弱株ゆえの可能性もあります。ハリイ属クログワイ節の特徴は穂が茎と同じ太さかそれより細く、またランナーで増えることで、ハリイ属の中でも熱帯に産する種を多く含みます。
インドシナ半島に分布するクログワイ節は以下の通りです。
・Eleocharis acutangula 和名ミスミイ 茎断面三角 淡水性
・Eleocharis spiralis 和名なし 茎断面三角 汽水性
・Eleocharis philippinensis 和名なし 茎断面四角~五角 淡水性
・Eleocharis ochrostachys 和名トクサイ 茎断面丸 幅2-3㎜ 隔壁なし 淡水性
・Eleocharis koyamae 和名なし 茎断面丸 幅1-2㎜ 隔壁あり、硬く乾かしても円柱、 淡水性
・Eleocharis dulcis 和名オオクログワイ、イヌクログワイ 茎断面丸 幅1.5-3㎜ 隔壁あり、軟弱で乾かすとしばしば潰れる、 淡水性。分類に問題あり
上記を踏まえたうえでおそらくE. dulcisかE. ochrostachysと思いますが、地震はそこまでないです。イヌクログワイは室内でも虚弱化するもののある程度栽培可能で、水深0-30㎝程度で突き抜けさせ、照明強めで栽培できます。国内に自生するものの耐寒性が微妙で、取り込みが必要です。オオクログワイはサイズ的に家庭向けではないです。なんとか越冬できます。トクサイは栽培経験がありません。E. koyamaeは流通がないですが、時々、平野の氾濫原湿地のようなところの現地写真に映っているものがそれだと思います。E. acutangulaは日照要求が強いようで、栽培にマルチスペクトルランプを使わないとすぐダメになるので注意。白色系のLEDではしばしば成長が止まって腐ることになります。E. spiralisやE. philippinensis、見たことも育てたこともないですね…見てみたい。
まあ。ここまでこだわっても正直誰も区別がつかないので、イヌクログワイを植えておけばいい気がします…(東日本では大抵の水田で見かけるクログワイを植えていても、私含めだれも気付かないですね…クログワイも室内で何とかなる草です。マルチスペクトルランプ推奨。)
クログワイ節は水中で発芽するとはじめ、長い沈水茎をだし大変美しいです。ふつうのクログワイでも十分楽しめるので、ぜひ実生も試してみてください。
っておいおい映り込みの茎だけで何行書くんだ私は…
二枚目行きます。
ヒロハノクロタマガヤツリ Fuirena umbellataが沢山映っています。
カッコいい草なので私は大好きです。
この種は湿地のパイオニア植物的な性格があるようで、世界の熱帯~亜熱帯に広く見られます。日本でも琉球列島の休耕田などでみることができます。東南アジアにおける近似種はクロタマガヤツリ Fuirena ciliataのみで、これは遥かに小型で茎に毛が密生する点で容易に区別がつきます。フラグミテスspギニアや、ギニアンスレンダーグラミネアもクロタマガヤツリ属でヒロハノクロタマガヤツリの地域変異である可能性すらありますが、少なくとも八重山、沖縄、大東のヒロハノクロタマガヤツリ実生株に関しては水中化させられませんでした(でもギニアもうまく育たないので、条件を揃えれば可能性があるかも)。
実生からの栽培の場合、種子をソイルや水稲育苗用土に蒔き屋外で栽培すると秋には高さ1.5mほどに育ちます。実生は容易で発芽率も高いですが、実生苗はその年のうちに結実まで育つことができないようで、温帯域では生育が間に合わないのが分布の制限要因になっているのではと思います。
栄養増殖では茎を切り取って水に浮かべておくと発根して節々から新しい株ができるので、それを植え込みます。株分けも可能です。室内でもライトをかなり強めにすれば育てられます。白色光では2000lm/30㎝×30㎝はほしいです。なので、マルチスペクトルランプ推奨ですね…。カヤツリグサ科はマルチスペクトルランプにしないと育たず腐る種が知る限りでも結構います。
ちなみにですが、近縁のクロタマガヤツリは一年草なのに発芽率がとても悪く、栽培はお勧めしません。休眠打破のシグナルが気になっています。本州でもきわめて稀ながら自生し、こちらは屋外栽培下でもなんとかサイクルが回ります。
これは最初にも触れたハリイ属クログワイ節ですね。このスケール感はイヌクログワイかトクサイだと思います。
下端にはオオシラタマホシクサかそれに近縁なホシクサ類が映っています。これに関しては次の写真で紹介します。
なかなか判断に苦しいですが、おそらくはヤエヤマアブラスゲRhynchospora corymbosaじゃないかなという気がします。ヤエヤマアブラスゲは実生したぶんが発芽してくれなかったので、栽培実績に乏しいです…。おそらく水中では育たないと思うのですが、Rhynchospora属には水中栽培可能なシラサギカヤツリやラージナヤスを含むのでワンチャンあるかも(ただしシラサギカヤツリもラージナヤスもDichronema節で、ヤエヤマアブラスゲとは属内での位置は遠い)。
ちなみに、どういうわけなのか、ぐんま昆虫の森で栽培されています。なぜ。
たぶん本州でみられる場所は他にないでしょう。
大型のホシクサ類が多数映っています。花茎の間から葉が出ており、多年草の大型種です。さらに倒伏した花茎にばらけない頭花がそのままくっついているのも見られ、恐らくオオシラタマホシクサかそれに近縁な種でしょう。オオシラタマホシクサ Eriocaulon sexangulareとそれに近縁な数種(恐らく分類的再検討を要する)はホシクサ属の中でも早期に分岐した一群で、多年草かつ松ぼっくりのような硬い鱗片をもつ花をつけるのが印象的です。ホシクサブーム時にはたくさんの系統が輸入されていましたが、大型化し水中栽培に向かないためか、めっきり姿を消してしまいました。
栽培は陸上で行う分にはホシクサの中でも特に容易で、花ものとして園芸流通することもありました(10年以上前の話)。実生はソイル等に蒔くことによって得られますが、水替えしながらカップで水中芽出しして、動き出したら蒔くほうが発芽率がいいです。成長は室内照明でも可能です。白色光で1000lm/30㎝×30㎝あればいいと思います。屋外でもどういうわけなのか、全日照で劇的に生育が改善する印象がないです。日本の一年生ホシクサたちとは違って、半日陰で十分なようにすら思います。
本種は多年草なので開花しても枯れませんが、やはり弱りはします。開花が終わると株本から子株が出てくるので、十分育つまで待てば株分けで増やせますが、やはり実生した方が早いと思います。水中栽培も出来はするしホシクサでよくある「すぐ溶ける」には見舞われにくいのですが、ネギのように葉がやたら伸びて突き抜けるので予想外れな感じに…。大柄ですが四季咲きで大変美しいので、アクアテラリウムの水上部などがふさわしい気がします。
…問題なのが混生している2種のイネ科植物です。
カモノハシ属 Ischaemum な気がしますがいかんせん映り込みなので判断が難しい…
Ischaemumは湿生なのか海浜性なのかいまいちよくわからない属ですが、一部の種は水田雑草になるようですし、カモノハシは少なくとも国内では湿生植物としてふるまっていますね。ただ国内のカモノハシは海跡地に分布が局限されていますし、塩性湿地や海浜にも出現するのでうーむイマイチ読みにくいという感想。
ウーム難しい…日本のものだとヌメリグサに似ている印象ですね‥‥
しかし私はカンボジアのイネ科に明るくはないので結論は避けておきます。