水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

アンブリア,西洋キクモの話

アンブリアってなんだ?

これは水草に注目し始めてすぐ,だれもが遭遇する事態であろう(断言).

しかしながら,その答えにたどり着いたものはどうも殆どいない.

今回は,ありふれていて,かつなお謎に満ちたこの水草について話していきたい.

 

本稿で扱う「アンブリア」とは,現在鉛巻きで良く流通する,全草が緑色で水上葉は細裂~中軸がやや肥厚,水上茎は無毛,花はほぼ無柄,苞葉はもたず水中葉は裂辺があまり細くならず,先端は円頭,水中葉は若干下に向けてカールし,現在北米を中心に帰化して問題となっている個体群を指す.

このようなアンブリアは流通史が非常に古く,1961年〔1〕には帰化が確認されているほか,Philcox, (1970)にも記述がある〔2〕.

しかしながら,Philcoxは本種を正体不明の植物として扱ったことは特筆すべきあろう.概要すると,”Limnophilaにおける交雑種は未だ知られていないものの,ルイジアナ州で得られた株はL. indica及びL. sessilifloraの中間形をとり,雑種とみられる.両親とも染色体数は2n=68の個体があるため,この雑種にも稔性がある.両種ともよく似た旧世界の種であり,両種ともアクアリウムで育てられているため栽培下で出現しルイジアナ帰化していると思われる”

Philcox, 1970よりL. sessiliflora及びL. indicaの比較,その推定交雑種

尚,文中にはルイジアナ採集個体がアクアリウムで量産されるアンブリアであると明言はされていないものの,上に示した表の形質からは現行流通型のアンブリアはこの交雑種(?)ではないかと思われる.(花柄の有無に関しては微妙だが)

さて,似たようなリムノフィラとしては台湾からのL. taoyuanensisも思い当たる.これも無毛の茎にほぼ無柄の花をつけるものであり,これも葉が細裂する.

Yang & Yen (1997)は東南アジアのL. sessilifloraが台湾に帰化していると報告しているが,これは在来のものより大型で花の色が淡く不稔であるとしている.

ちなみに日本のコキクモも典型的なL. indicaとはかなり乖離しているが,これは無毛の茎に有柄の花をつけ,葉は水上でも細かく細裂する.

一般的なL. indicaは水上葉が基本的には輪生だが裂け具合は様々で,茎の上部では全縁の対性になったりするようなものである.

 

 

 

 

 

 

〔1〕https://plants.ifas.ufl.edu/plant-directory/limnophila-sessiliflora/ 2022/10/22閲覧

〔2〕Philcox, D. (1970). A taxonomic revision of the genus Limnophila R. Br.(Scrophulariaceae). Kew Bulletin, 24(1), 101-iii.