水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ウスモンコホソハマキ ホシクサの頭花を食べる蛾

ホシクサ類の栽培にあたって病害虫はあまりないのですが,ウスモンコホソハマキだけはホシクサ類に特異的な害虫です.

(屋外のオンブバッタ,室内のアブラムシはすべての水草に当てはまるのでこれを除く)

ホシクサ類を育て始めてすぐにこの害虫に遭遇したのですが,正体がなかなかつかめず困っていました.ある程度湿度を保ってカップに詰めておくと小さな蛾が12月頃に羽化してくるのですが,意外に湿度管理が難しく乾燥させすぎるとだめ,湿らせすぎると幼虫は育つものの羽化できずに死んでしまうことが多く結構面倒でした.

それでも何回かは羽化するのですが,羽化したところでよくわからず…というのがだいぶ長引いていました.

しかし「ホシクサ属植物ガイド」p. 73.にてニッポンイヌノヒゲ頭花から出現した蛾がウスモンコホソハマキであったということを読み,調べてみるといつも発生する蛾と全く同じであったためようやく正体が判明しました.

本種は近辺のホシクサ属生息地では非常にありふれた種で,ニッポンイヌノヒゲやイトイヌノヒゲが生えている場所では大抵頭花が崩れた株が見当たり,開いてみると潰れた頭花を器用に綴り合せて内部に幼虫がいるのが見当たります.こういうものを間違って持ち帰ってしまうと…サンプルが滅茶苦茶になり,糸で種子の回収もままならなくなってしまいます.袋を噛んで穴をあけることもしばしば.

害虫としか言いようがないのですが,この虫による被害で全滅するようなことはないことや,なかなか駆除できないことから共存してしまっています.(近くにも多産地があり,実はうちでは世代交代しておらず毎年飛んできているのかも...)

興味深いことに,本種はホシクサ類の中でも選好性があるように思います.

被害は毎年イヌノヒゲ,ニッポンイヌノヒゲ,ヒロハイヌノヒゲに集中し,イトイヌノヒゲにもつくものの上記3種よりずっと頻度は少ないです.ホシクサやクロホシクサも食べないことはないのですが,やはりイヌノヒゲ系を好むようです.また類縁上はイヌノヒゲに近いシラタマホシクサにも被害は少ないようです.

本種は水田ではほとんど見たことがなく,ニッポンイヌノヒゲやイトイヌノヒゲがみられるような自然度の高い湿地で主に見かけます.しかし,栽培下においてはヒロハイヌノヒゲもよく食害するので,多分ホシクサの種類というより環境的な問題なのでしょう.

頭花の内部を食べて,食べかすを糸で綴り合せてあたかも頭花が残っているように見せる習性も興味深いところです.保湿のための巣なのか,それとも頭花に擬態しているのか,はたまた単に足場を作ろうとしたらそうなってしまうとか….さらに,巣を開けてみると何もおらず,隣の頭花に移動したと思われるものも.いったいどうやって移動したのやら…気にしてみると不思議な生物です.

あと,とても疑問なのですがホシクサが咲かない季節はいったいなにをしているのでしょうか.あの微細な蛾が冬に羽化して秋まで生存するというのもない気がしますが…

抽水条件でも発生するので,卵を株本に産んで休眠しているというのも腑に落ちません.(それとも,ホシクサやクロホシクサに少ないのは株本が深く水に漬かっているから??)謎が深まってしまいました.

近縁のコホソハマキはオモダカだけでなくオオバコなども食べるようなので,未知のホストがありそうで気になります.