今回の変な水草はキンポウゲ科の,Ranunculus polyphyllusです.www.plantillustrations.org
一目見て異常性がわかる事でしょう.
本種は浅い貧栄養の水中に生育し,水中ではヒドロトリックスのものに似たきわめて細い水中葉を輪生させながら成長します.水中茎は長さ80㎝に達し,輪生する糸状の葉をつけます.本種の場合,糸状の葉は葉柄のみが残ったものであり,長さ8~15㎝に達します.
そして水面につくと浮葉を出して開花します.
浮葉は長い糸状の葉柄をもち,披針形から長楕円形,4~23㎜の葉身をつけます.
水上葉はRanunculusらしい,水中葉とは似ても似つかない姿となります.葉は長楕円形~先端が3葉に分かれ,上部では細長くなります.花茎は9㎜~12㎝まで伸び,黄色いキンポウゲ科らしい花を咲かせます.花弁及びガクは3枚のものも5枚のものもあるようです.水上葉も輪生ですが,茎の上部では対性~互生となることもあります.
本種はカザフスタン北部やシベリア西部からパンノニア平原の森林~ステップ地帯に生息しますが,分布の西限にあたるパンノニア平原では僅かな産地からしか記録されず,稀な種となっています.春に水位の高い貧栄養環境を必要とし,また一年草でライフサイクルがきわめて短く,夏までには開花して枯れてしまう点,生息する場所でも毎年みられるとは限らない点などもまた,記録を少なくしている要因のようです.
参考文献
Dítě, Daniel & Balla, Miloš & Dítě, Zuzana. (2021). Ranunculus polyphyllus Willd. still grows in Slovakia. Thaiszia Journal of Botany. 31. 205-212.
Panjković, B., Perić, R., Stojšić, V., & Batanjski, V. (2012). New data on the distribution of Ranunculus polyphyllus Waldst. & Kit. ex Willd. in Serbia. Archives of Biological Sciences, 64(2), 715-720.