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利根川水系における水生植物の現状と私的レッドデータブック2022 ①アカバナ科,オモダカ科

栃木県・茨城県南部を中心にフィールドワークをしてきた.その中でこの地域に生息する水生植物は大体見てきたように思う.生息状況は刻々と悪化しており,目の前で消滅したこともしばしば.レッドデータブックの更新も全く追い付かないほどに水生植物は次々に消滅していっている.

そのため,現状がどれほどまずいのか知るために今まで見てきた水生植物に関して私なりに脅威度を評価し,私的レッドデータブックを作ることとした.

第一弾ではアカバナ科チョウジタデ属,オモダカ科マルバオモダカ属,ヘラオモダカ属,オモダカ属を対象とする.

 

アカバナ科

ミズユキノシタ

確認地点数 わずか

個体数 少

主な脅威 アメリカザリガニの繁殖,メガソーラーの建設,コイやソウギョの放流,遷移,水質悪化,オオカワヂシャ,イケノミズハコベアメリカミズユキノシタの侵入等

環境省レッドデータブック なし

栃木県レッドデータブック II類

茨城県レッドデータブック II類

評価 絶滅危惧I類

数か所の池に現在もかろうじて生息しているが,危機的な状況にある.そもそも耐寒性が低く,北関東は生育の北限付近と思われる.栽培下でも地上部は枯死し,水中部のみが生存して冬を越すため,生育には一年中水温が安定した湧水とそれが注ぐ池が必要と思われる.生育地は非常に少ないにもかかわらず,生息地付近でメガソーラーの建設が行われ土砂が流入するなどの被害が出ている.

もちろん水中でアメリカザリガニが大繁殖すれば壊滅的な影響が出るため,かつて生息していたとの報がある地域のため池に行ってもその姿を確認することはできなかった.現在残っている,ごくわずかな産地に関しても時間の問題であろう.

 

ウスゲチョウジタデ

確認地点数 多

個体数 多

主な脅威 スクミリンゴガイの侵入,新規農薬

脅威度 低

環境省レッドデータブック 準絶滅危惧

栃木県レッドデータブック 要注目

茨城県レッドデータブック 準絶滅危惧

評価 要注目

低地の水田でよくみられる.極端な低標高地に多いが,鬼怒川水系では鬼怒川に沿ってある程度の標高までは生息が確認できる.但し標高が高くなるほど個体数が少なくなることに変わりはない.環境省レッドデータブックでは準絶滅危惧であるが,農薬使用量がやや多い水田でも見られ,特に脅威度が高いようには思えない.確認地点が少ないのは単にチョウジタデヒレタゴボウとの誤認が多く,さらに低地の保護対象とならないような普通の水田を主な生息環境としているために環境アセスメントの対象にならないためであろう.

そのため要注目にとどめた.本種より危機的な種はいくらでもいるだろう.

 

ミズキンバイ

確認地点数 0

個体数 0

主な脅威 もし生存個体がいるならば可能な限りの保護・域外保全がとられるべき

環境省レッドデータブック 絶滅危惧II類

栃木県レッドデータブック なし(生息なし?)

茨城県レッドデータブック I類

評価 絶滅の可能性あり

霞ケ浦付近での生育情報はあるが,本当にそれがミズキンバイなのか,現在も存続できているのかどうか私は知らない.もしどこかに生育がある場合,遷移やスクミリンゴガイの侵入,ザリガニの大繁殖などにより消滅する前に早急に域外保全を考慮するべきだろう.放置しておいて生育が望めるほど,関東平野の平地は甘い場所ではない.

今後ミズキンバイが霞ケ浦周囲で発見された場合,オオバナミズキンバイの可能性は常に考慮されねばならない.

 

チョウジタデ

確認地点数 多

個体数 多

主な脅威 スクミリンゴガイの侵入

脅威度 低

環境省レッドデータブック なし

栃木県レッドデータブック なし

茨城県レッドデータブック なし

評価 普通種

水田でよく見かける植物である.除草剤がまかれる地域でもしぶとく生き残っているが,スクミリンゴガイが侵入するとこの種すらも見られなくなってしまった地域がある.そのような状況ではもちろん他の水生植物も壊滅してしまうため,早期防除が喫緊の課題となろう.

 

 

オオバナミズキンバイ外来種

確認地点数 少

個体数 少

侵略的外来生物

評価 定着初期

霞ケ浦の一か所にて生育が確認されており,現地でも確認した.現在のところ精力的な除去活動により封じ込められているが,いつ大繁殖し始めるか知れたものではない.いまはおとなしく見えるが,気を緩めてはならない.千葉などでは定着した地域がある.

 

ヒレタゴボウ外来種

確認地点数 多

個体数 多

侵略的外来生物

評価 定着済

ウスゲチョウジタデと同じく低地を中心に多く見られる.現時点で広い範囲に多数が生育し,低地では農業被害が出ている.やや標高が高い地域ではまだ生息密度が薄いが,これから増えてくるのか,それともそういう種なのかはよくわからない.

 

オモダカ

マルバオモダカ

確認地点数 わずか

個体数 わずか

主な脅威 アメリカザリガニの繁殖,メガソーラーの建設,コイやソウギョの放流,遷移,水質悪化

環境省レッドデータブック II類

栃木県レッドデータブック 絶滅

茨城県レッドデータブック 絶滅

評価 絶滅危惧I類

関東一円で絶滅したことになっている種だが,まだごくわずかに生き残りがいるようである.但しそれを取り巻く環境は非常に厳しく,確認したもののその直後に周囲植生ごと壊滅した場所もある.ため池を取り巻く状況は非常に厳しく,外来種,特にアメリカザリガニの増殖やコイによる食害によって次々に壊滅していっている.なんとか生き残りが見つかったとして,楽観視するべき要素は何もない.

 

アギナシ

確認地点数 少

個体数 わずか

主な脅威 繁殖できていない.アメリカザリガニの繁殖,メガソーラーの建設,コイやソウギョの放流,遷移,水質悪化

環境省レッドデータブック 準絶滅危惧

栃木県レッドデータブック 準絶滅危惧

茨城県レッドデータブック II類

評価 絶滅危惧I類

主に保護地になりやすい谷津田の最上流部などに生育し,放棄水田や保護湿地で確認されることが多いため生育状況はよく知られている.しかしながら無性生殖は水位の上昇による株もとの球根の拡散に頼り,種子の発芽率も悪いために湿地における生育地では繁殖がほとんどできていない.本来本種が生育するため池でみられることは極めて珍しく,生育地はあっても座して死を待つのみという状況である.そのためI類とした.

 

トウゴクヘラオモダカ

確認地点数 少

個体数 少

主な脅威 遷移,農薬散布,耕作期間の短縮,アメリカザリガニの繁殖,メガソーラーの建設

環境省レッドデータブック II類

栃木県レッドデータブック 準絶滅危惧

茨城県レッドデータブック II類

評価 絶滅危惧II類

主に保護地になりやすい谷津田の最上流部などに生育し,放棄水田や保護湿地で確認されることが多いため生育状況はよく知られている.水田地帯でも時々ヘラオモダカに混じって生育していることがあるが,個体数は少なく,また著しく矮小化した株が500円玉にも満たないサイズで開花していることが多い.種子増殖に頼るため繁殖は自然度の高い湿地よりむしろ水田の方が向いているのではないかと思う.しかし成長の遅さがネックとなっているのだろう.

 

サジオモダカ

確認地点数 少

個体数 わずか

主な脅威 アメリカザリガニの繁殖,スクミリンゴガイの侵入,メガソーラーの建設

環境省レッドデータブック なし

栃木県レッドデータブック なし(生息なし?)

茨城県レッドデータブック 準絶滅危惧

評価 絶滅危惧I類

ごく一部の湿地に稀に生育している.個体数も少なく,繁殖がどの程度行われているのかも不透明に思える.園芸品が多数流通することから,突然出現した場合は園芸逸出も考えられる.自生地が著しく限られ,耕作地ではほとんど見られないことから絶滅危惧I類が妥当だろう.関西地域のサジオモダカは外来個体群とする説もあり,関東での異常なまでの生息数の少なさからするに本種は本来北海道及び東北に生息するものが,移植により関西に分布を広げたのではないかと思う.生薬として古くから用いられてきたことからは,関西に移植された個体群が本当に日本由来なのかすらかなり怪しいと思うのだが,そのあたりは遺伝的な検討が必要だろう.

 

ヘラオモダカ

確認地点数 多

個体数 多

主な脅威 農薬散布,アメリカザリガニの繁殖

環境省レッドデータブック なし

栃木県レッドデータブック なし

茨城県レッドデータブック なし

評価 準絶滅危惧

個体数も生息数も多いが,水田環境が少しでも悪化すると早々に姿を消す.栃木県では普通種だが,茨城県の水田ではかなり稀な種となっている.栃木県でも見られるのはやや環境の良い水田に限られ,個体数が現時点で多くても将来的にどうなるかはわからない.そのため準絶滅危惧とした.

 

ウリカワ

確認地点数 多

個体数 多

主な脅威 農薬散布,アメリカザリガニの繁殖,スクミリンゴガイの侵入

環境省レッドデータブック なし

栃木県レッドデータブック なし

茨城県レッドデータブック なし

評価 要注目

個体数も生息数も多いが,分布にかなり偏りがある.しかも生息地はそこまで環境がよくない低地の水田であることが多く,今後環境悪化の波を大きく喰らう可能性が考えられるため要注目とした.依然として水田の難防除雑草ではあるのだが,オモダカの幼植物と誤認されているケースも多いと思われ,実際にどこからどこまで生息しているのかはより詳しく見ていかねばならないと思う.

 

オモダカ

確認地点数 多

個体数 多

主な脅威 スクミリンゴガイの侵入

環境省レッドデータブック なし

栃木県レッドデータブック なし

茨城県レッドデータブック なし

評価 普通種

最もよく見られるオモダカ科で,平地の水田で今もみられるオモダカ科といえばほとんど本種で,時々ヘラオモダカやウリカワが混じるというのが現状である.これら他のオモダカ科とは一線を画する丈夫さがあるように感じる.但しスクミリンゴガイの侵入した地域ではオモダカすらいなくなる.

 

 

 

気が向き次第更新し,気が向き次第第二弾を公開します.