水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ヒルムシロ属についてザックリと語ってみる

縁あって物凄い種数のポタモゲトンを観察する機会に恵まれたので,感想文です.形質は「日本の水草」角野康郎を参照してください.あくまで個人の感想しか書きません.

表記について

フィールドでのサイズ感覚の指標としては単位よりも○○くらいのサイズと言った方がわかりやすいので,いくつかの普通種を指標にしてサイズ感を書くことにした.

ざっくりと.

ササバモ

葉は10㎝を超える大型種.葉の長さが手のひら位をイメージ.

ヒルムシロ,ササバモ,オオササエビモなど

エビモ級

葉幅は広く,葉は5㎝くらいが基本.

エビモ,ヒロハノエビモ,サンネンモなど

センニンモ級

ヤナギモやセンニンモと同じくらい.葉幅2~4㎜の細葉.ヤナギモは概念に揺らぎがあるため使わない

イトモ級

幅1㎜未満.

その他表記については直感的な感触を優先した.学術的なものではないのでくれぐれも注意

 

各論

ヒルムシロ

ササバモ級,大型.葉の質感は水中,水上とも非常に硬い.おそらく日本でみられる浮葉系ポタモゲトンでもっとも大型になる.水中葉がムチ状に長く伸長すること,浮葉はやや太く先端が尖ること,浮葉表面の葉脈がくっきり浮き立つなどは特徴とはなるが決定的ではなく,外すこともある.フィールドでは比較的よく見る.北日本の方が多いといわれるが,決まった越冬形態を持たず地下茎でギリギリ耐えることから湧水や深い水域でしか見ることはなく,完全凍結するようなところでは見たことがない.

 

フトヒルムシロ

ササバモ級,大型.葉の質感は水中でも割としっかりしている印象(他の浮葉系ポタモゲトンに比べて).水上葉はクチクラが発達しているのか,ペタッとワックスがけされたように見える.水中葉はホソバヒルムシロよりも透明度が低い印象があり,茎上部の水中葉はかなり幅広,へら状というか先端に向けてやや広くなった形状.ヒツジグサがあるような腐食栄養かつ貧栄養な場所でしか見ない.pHを下げただけではうまく育たないようで,栽培方法はいろいろ検討せねばならないようだ.

 

ヒメオヒルムシロ

イトモ級,長さはササバモ級.超大型のホソバミズヒキモという印象で,質感は妙に硬くリュウノヒゲモに似ており,葉断面も厚い.そのため数少ない浮葉がなくとも見当をつけることは可能だろうと思う.今年は見れていないので見に行きたい.

 

ノモトヒルムシロ

ササバモ級,太さはセンニンモ級.細葉系ヒルムシロ類の中では日本最大と思われる.非常に太い中脈の左右に丸まった細い葉身がつくため,葉は殆ど曲がらずまるで各節に棒がついているように見える.地下茎も巨大でオヒルムシロやフトヒルムシロのものにサイズが近く,ヒルムシロやエビモ級のものよりずっと太い.枝分かれはあまりしないが,水中茎の途中から根を出しやすく地下茎がなくとも切れ藻で増殖できるようだ.

日本産ポタモゲトンの中でも特に葉鞘が突出する.まるでリュウノヒゲモだが,サイズは全く似ていない.

 

ホソバヒルムシロ

ササバモ級.沈水特化型の無印ヒルムシロといった印象で,葉は茶色く色が入る.葉身と浮葉の区別は明瞭ではないが,フトヒルムシロよりはヒルムシロに近い質感.まだ浮葉を見れていない.どことなくノモトヒルムシロに似ている。

 

ヒルムシロ

超エビモ級ないしササバモやオヒルムシロ,フトヒルムシロよりは小型.浮葉はオヒルムシロやフトヒルムシロよりも細く,笹の葉状,葉の表面のクチクラはオヒルムシロよりは厚いがフトヒルムシロほどではない.サイズ感と浮葉の概形から見当がつくこともあるが変異は大きい.水中葉は薄っぺらで透明,葉緑素が薄く新芽は透明な茶色.浅水深では水中葉を作らず,逆に深水深では水中葉しかないことがありバナナ状の殖芽を見るのが何気に一番楽で確実.激減の最中であり,絶滅待ったなし.

 

ササバモ

ササバモ級.葉柄がとにかく長く,水面からだとなにか細いポタモゲトンのようにすら見えることがある.しかしこんなに大きな沈水ポタモゲトンは他にノモトヒルムシロ,オオササエビモ,インバモしかいないので,まあ普通はササバモだろう.と思っていたら結構アイノコヒルムシロが混じっているようだ.警戒して当たっていかねばならない.

 

アイノコヒルムシロ

ササバモ級,ヒルムシロより大きい.フトヒルムシロやオヒルムシロと同クラスになることもある.葉の辺縁は波打ち,浮葉のまま水没することもしばしば.ササバモに似たタイプもあるようで,時々よく見かける「茶色くて浮葉が混ざったササバモ(?)」の正体もまたアイノコヒルムシロと思われる.ササバモヒルムシロとの誤認が後を絶たない.僕も自信がないことがしばしば.

 

ガシャモク

葉は丸く葉脈がくっきり.本当に美しい水草である.まるで愛玩用植物だが,これが現地に生えている姿を見てみたい

 

インバモ

ササバモをコンパクトにして水槽に収められるようにした植物.ガシャモクのかわいらしさは失せてしまっているが,丈夫らしい.いつかフィールドで見つけるのではないかと目に焼き付けているのだが,なかなか見つからないなあ.

 

エゾヒルムシロ

エビモ級よりやや小さい.葉は膜質で非常に華奢,すぐ溶ける.間延びしながら上に伸び,先端で急に太くなって小型の草体とは全く不釣り合いな巨大な花序を挙げる.エビモ級なのに花序だけササバモ級であり,数少なく貧弱な浮葉もおそらくそのバランサーなのではないかと思う.「日本の水草」には「盛んに分岐し」と書いてあるが,これはヒルムシロやフトヒルムシロと比較してのことであってエビモ類に比べるとかなり分岐は少ない.

 

ササエビモ

エビモ級.水中葉は膜質でペラペラだが,ヒロハノエビモの血が入っているためだいぶ耐久性がまし.あとヒロハノエビモはヌルヌルしているので,触った間食はエゾヒルムシロに比べてよく滑る.ササエビモとエゾヒルムシロの区別は微妙で,正直エゾヒルムシロが本州でみられるところにはたいていヒロハノエビモもいるので明確に分けることは困難.アンバランスな花序はあるが,花序だけ水面に突き出して倒れている.バランスが悪いので花序が出ると簡単に波にもまれて根っこから抜けて打ちあがる….

注意点として,本種はナガバエビモの成長の悪い個体に非常によく似ている.正直サイズ感が倍ほど違うのだが,騙されそうになる.

 

ヒロハノエビモ

エビモ級.アクアリウムでは一般的だが滅多に出会うことはなく,もっぱら湖の深いところに生えるためいたとしても漂着数が少ない.困ったことに変異が非常に大きい.葉基部が茎を巻いていれば確実に近いが,割と簡単にその特徴もほどけてしまう(特に水槽内).本種は他のヒルムシロ類に比べてぬめぬめしていて,葉の質感もしなやかで透明だけどしっかりした厚みと強度を保っている.花茎をあげるときもバランスが取れた花茎の太さ.地下茎の先に殖芽をつけるとのことだが写真すら見たことがない.見たいけど見に行くのがしんどいなあ…

 

ナガバエビモ

ササバモ級.とにかく巨大でヒロハノエビモをインバモの大きさにしたような植物.葉の変異は非常に大きく,質感はヒロハノエビモに似てぬるぬるしている.ナガバとはいうが葉は長くない.長いのではなく,とにかく大きい.花茎は草体のわりにショボくぴよーんと伸びる.先端が表側に反り返って尖った感じになるのは特徴的なのかどうか微妙.ササエビモでもそういうのを見た覚えがある.サイズ以外を見るとササエビモにそっくりであるが,花は全く違うしサイズも倍くらい違う.色合いもササエビモが明るめ菜音に対しナガバエビモはかなり色が濃い.

 

オオササエビモ

ササバモ級.ナガバエビモほどではない.インバモと同レベル.葉はヒロハノエビモよりササバモの方に似ていて,ガサガサ.インバモのような美しい葉脈は見られず,葉のふちがチリチリしていて葉は大抵丸まっている.(丸まってるの重要な気がする)日本の温帯の湖では何度でも独自に出現しており,(琵琶湖で27回以上,宍道湖で1回,河口湖でも発生,霞ケ浦でもかつて存在,等...)湖のポタモゲトンが生んだ完成形の感がある.完成形なので発生した場合たいてい優占種になる.

 

センニンモ

センニンモ級.葉の先端が凸状になることで簡単にわかると思いきやそうでもない.葉縁の鋸歯があることもちゃんと見たいところ.かなり変異が多いのか,いろいろなものと交雑しているのかわりと形質が安定しない.他のポタモゲトンに比べて地下茎への依存度が低く,切れ藻から容易に発根するし比較的扱いやすい.湖から川,水路まで手広く生息しており大したものである.しかしどこでも優先度は低い

 

センニンモ×ヒロハノエビモ

フジエビモ,ヒロハノセンニンモ,サンネンモあたりと思われるがなぜか雑種に3型以上あるようであると伝統的にされてきた.正直センニンモにじつは何種類もあるとかでない限り偶々生じた雑種の性質としか言いようがないように思うので,ここでは詳しくは述べない.

 

アイノコセンニンモ

センニンモ×ヤナギモとされているが,なぜかどちらにもない性質として葉縁がチリチリ波打つ.よくわからない.葉が長めのセンニンモでチリチリだったらもしかしたらそうかもしれない...葉に鋸歯があり葉鞘をもつヤナギモ的な植物から,なんか変なセンニンモまで色々.

 

ヤナギモ

センニンモ級.センニンモ,ササバモ,ヒロハノエビモ,ツツイトモと並んでカオスの元凶.特徴がないだけにいったい何がヤナギモなのかという問題すら.とりあえず5脈で葉が弓なりにカーブし,鋸歯をもたないものを見かけたらヤナギモと思っておくのが精神衛生上は良い気がする.疑いだすとどこまでも深い闇に飲み込まれる.ほとんど低地の水路でしか見かけず,湖では稀.全国的に水路環境は年単位で急激に悪化しており,そのため頑健な普通種であるにもかかわらずこのままではそう遠からず絶滅すると思われる.

 

アイノコイトモ(ヤナギモ×イトモなど)

センニンモ級より小さくイトモ級より大きい.アイノコイトモは現状物凄くザックリとしたゴミ箱分類群の感が強い.つまり,オオミズヒキモとアイノコセンニンモでないヤナギモ関連交雑種すべてということになる.花が2段状だったり,結実したり,殖芽を作ったり,作らなかったり,茎が扁平だったり,浮葉を作ったりともう何が何だかわからない.オオミズヒキモやヤナギモよりも明るくてきれいなグリーンであることが多く,上からでも見当がつくことがある.しかし同所的にヤナギモが居ない場合非常に判断に悩む.葉先がすとんと急に細くなるようだったらアイノコイトモを疑った方がよさそう.葉脈はふつう3脈.

アイノコイトモがあまりにもカオスなので,ツツヤナギモやアイノコヤナギモも隠れているのだろうが一旦はまとめておこうかなと思う.

 

イトモ

イトモ級.他のポタモゲトンに比べて浅く腐植栄養の止水を好む.湿地で出会うことが多いため,他のポタモゲトンと同所的にみられることはそう多くない.水生昆虫や湿生植物を探していると出会う.結実率も発芽率も高い果実が丸くまとまって着くこと,殖芽が非常に大きくガッチリしていることで区別できる.ところでポタモゲトンが発芽するのを本種以外ではほとんど見たことがない気がする.

 

ツツイトモ

イトモ級.見過ごされていたカオスの元凶.認識されていなかったにもかかわらず実にどこにでもこの種を媒介とした雑種が存在するようで,気にしてみると汽水域,平地田園の水路,平地湖沼,高山の貧栄養湖などと本当にどこにでも出現しうる.もしかすると魚の種苗放流などにひっついて移動しているのかもしれない.しかしどこまでがツツイトモそのもので,どこからがそれに関連した雑種なのかはわからない.とにかく怪しい細葉系ポタモゲトンは殖芽を作らせることが重要そう.殖芽は棒状,小型.葉先は急に尖ることが多い.

 

ツツミズヒキモ

高山湖ではふつうにみられるほか,水路などにも出現するようだ.もしかすると魚の種苗放流などにひっついて移動しているのかもしれないと思っている.ツツイトモとの判別は困難だが,殖芽が棒状,託葉は筒状だが切れ込みが深い,葉先が緩やかに尖るなどは指標になりうるかもしれない.

 

ホソバミズヒキモ

イトモ級.先端がとがった浮葉を出す狭義ホソバミズヒキモは極めて稀である.現在関東でみられるほとんどの個体は浮葉をほとんど付けない.葉は糸状,殖芽は小型で「鳥の足」状.葉身は非常に細い印象があるが,浮葉をつける個体群をよりよく観察せねばと思っている.そもそも探すだけでかなりしんどい.

 

コバノヒルムシロ

イトモ級.狭義ホソバミズヒキモに非常によく似ている.発生時期が短いため,むしろ消えたことで気付くべき草なのかもしれない.確実な実物を見た個人的な感想として殖芽がホソバミズヒキモよりだいぶ大きい.イトモなのかホソバミズヒキモなのか判断に悩むような殖芽を見かけたらコバノヒルムシロがいる可能性を考慮してもいいのかもしれないと思った.

 

ミズヒキモ/ナガレミズヒキモ

イトモ級.殆ど浮葉をつけず,つけたとしても葉は小判型で先端はあまり尖らない印象.本当によく見かけるが,本当に湿地にいるホソバミズヒキモと同じ植物なのか疑問がある.イトモなどとの稔性のある雑種だったりしないだろうか?葉先はシュッとなだらかに細くなるのがらしい個体で,そういうものはまあ断言できる,先端で急に細くなるものも時々いるが殖芽が鳥の足状で小さければ暫定的にそうか…という感じ.暑さに弱い個体群が多いが,そうでもないものもある.どちらにせよ短命ですぐ微細な殖芽を量産してばら撒かれ厄介なことに.イトモやアイノコイトモに比べて葉の縦横比が著しく長い.また,葉脈をしっかり見てみてちゃんと1脈であることを確認せねばならない.3脈のものが周囲にゴロゴロいる.これらはオオミズヒキモなのだろう.

 

オオミズヒキモ

超イトモ級.葉が非常に長く先端がシュッとなだらかに細くなる.ヤナギモとホソバミズヒキモの雑種とみられ,ぱっと見はホソバミズヒキモにしか見えないが3脈だったり,ヤナギモっぽいけど葉がストレートだったりする.そもそもヤナギモの葉がまっすぐだった場合,それはヤナギモであるか非常に怪しい.「日本の水草」には完全な浮葉を作ると書いてあるが,浮葉を作る暫定オオミズヒキモはほとんど見たことがない.

 

エゾヤナギモ

超センニンモ級.葉は鈍頭で先端は尖る.茎は扁平で葉と茎の幅があまり変わらない感じ.ヤナギモより一回り大きい.地下茎はないが,しょうじき漂着している状態では判断できない.かつては関東平野にも広く分布したようだが,皆絶滅した.関東の高山湖にも見当たらない.富士五湖でも絶滅寸前であり,猪苗代湖などからも絶滅している.

 

イヌイトモ(??)

センニンモ級で葉先は丸い.葉はエゾヤナギモほど長くはない.地下茎はない.それらしきものは観察したことがあるが正直自信がない.はたしてあれがそうだとして,なぜ「イトモ」とつけたのかわからない.「日本の水草」にも葉幅1.5~3㎜とあるように,イトモ級というよりセンニンモ級なのだ.確実な個体を見てみたいものである.