水草にハマりだした頃,園芸店の店先で見つけたオオシラタマホシクサともう10年以上も付き合っている.もう誰も育てている様子はないし,いまや私が日本で最後の園芸便オオシラタマホシクサのキーパーなのかもしれない.
他の人にあげようとしてもみな白い目で見るし,自分から進んでもらってくれた人は皆無といっていいくらいなのだけれど,これはいい草である.
現時点で殆どのアクアリストが「水草とは水に沈めるものである」という固定観念にとらわれており,水上で育てる人は熱帯植物の投機会場に特攻していって,みんないなくなった.私のように「水中でも育てられるとか,水生種が同じ属にいるロマン」から熱帯植物にはいかずに水草を水上で育て,水と陸のはざまを彷徨い歩く存在はかなり希少なのかもしれない.
これは他の植物にもいえる.山崎美津夫といえばヤマサキカズラとマダガスカルキツネノマゴだが,ヤマサキカズラもマダガスカルキツネノマゴも湿生~抽水植物であってアクアリウムに沈めて使う草ではない.ヤマサキカズラはまだギリギリ水中で耐えることができるが,このあたりが両者の明暗を分けたのだろう.ヤマサキカズラはいまでもマニアックな店に茂っているのが流通に乗るが,マダガスカルキツネノマゴは山崎先生の温室とみずのもりにしか,今や現存しない.ほとんどの水草ファンにとって水草は「水中で育てられるかどうか」で価値が9割決まり,水辺の熱帯性植物や,水上での観賞価値に興味を持つ人はまあさらさらいないのである(水とは関係ない熱帯の林床や着生植物は好きな人がわりといるのに.)
さて,オオシラタマホシクサはそんな植物である.水中適性はあるけど低く,わざわざ沈めて使うかといわれれば水上栽培をおすすめする.しかし水上では非常に丈夫で,花も綺麗で,多年草なので咲いても枯れない.設備投資からいえば,熱帯植物の中でも楽な方に入るし,
栽培方法は,湿らせたソイルもしくは水苔等に植え付け,土を乾かさないようにして,温度を20度以上に保ち,ある程度の光を与える.以上.光の強さはクリプトとかブセと同程度でもOKで,強い必要はない.しかし強くしたって当然大丈夫である.高湿度にするのは干からびるのを防ぐためであって,高湿度でないと育てられないわけではない.密閉しておいても育つので,水やりが面倒だから高湿度にするのである.
花は発芽から早くて4~5か月程度で咲きはじめる.ホシクサ類としてはかなり遅いが,他の植物からすると早めだろう.花が咲いたら綿棒でポンポンと人工授粉する(個人的にはそうしているだけで,そうする必要の有無は不明).他のホシクサと違ってタネが勝手にほぐれてどこかに行ったりはしないので,そのまま気長に待つ.高湿度で水につかった状態が長く続くと,種子がその場で発芽してしまう場合もある.
親株から子株が出てくることもあるので,ある程度育つと株分けできる.まあ種子の方が早いけど.
種子の発芽は頭花ごとコップの水につけて,水を頻回に換水すると非常に高い確率で発芽する.発芽苗の生着率もホシクサとしてはかなり高い.発芽が一番のハードルである.
小さくても直径20㎝くらいで咲くが,大型種なのでできるだけデカくするともっと楽しめる.Maxサイズの直径60㎝級にするのは結構厳しいものがある(開花する前にできるだけデカくしないといけない).
東南アジアでは巨大な方に入るホシクサでサイズの話をするとドン引きされるが,ミナススターとかより葉は細いので言うほど大きくない.
さーて,みんなで販売会にて売れ残った8株パックを真面目に植え替えるか.
8株でマリーナLを占拠するくらいのスペース感覚ですかね.
意外に詰めこめるでしょ?