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ホシクサ科の栽培方法

ホシクサ科を育て始めて10年ちょっとになる。始めた頃は同志がたくさんいてさまざまな栽培情報が飛び交っていたものだが、皆ブセファランドラや陸生植物に行ってしまい、さらにGeocitiesやyahooブログの消滅により大部分の情報が失われてしまった。悲しい。

しかも、前述したように
水草水槽をやるメンバーはすでに入れ替わっており、今水草水槽をやっている方々はもはや、ホシクサの栽培経験がない。
流通するホシクサにも問題がある。
 
トロピカのキネレウム組織培養は水槽に入れた途端花が咲く...
ホシクサspクチは栽培条件がホシクサらしくないので、ホシクサの練習にならない。
というわけで今回は、ホシクサ類の栽培方法について網羅的にまとめる。あくまで網羅的なものなので、各種別の栽培方法は各種別の栽培方法を参照してもらいたい。
 
 
 

ホシクサ類の入手方法

園芸品での入手

メリット
  • 安い(高くても1ポット1000円)
  • うまくやれば大量のタネをとることができる
  • 直射日光に耐えられる株が市販されている
  • 花および全草が確認できる
  • 一年草を入手できる

デメリット

  • すでに花が咲いており,虚弱化しているため簡単に枯れる
  • 密集しすぎていることがあり,その場合やはり簡単に枯れる(カビなどで)
  • そもそも枯れた草が堂々と市販されている(特にシラタマホシクサ
  • 流通する種数が少なく国産種に偏っている.しばしば名前が間違っている(ゴマシオホシクサがしばしばクロホシクサとして売られる…)
一般的に園芸ルートでは頭花の「咲いている」株が市販されている.1ポット200~1000円と非常に安いが,基本的にホシクサ類は頭花を出した時点で成長も発根もほぼやめてしまうので,虚弱化しており植え替えたりすると簡単に枯れる.ポットを買っても環境をいじれず,さらにはシラタマホシクサなどの場合「干し草」が売られておりそもそもタネをとる事すら不可能に近い.しかし新鮮なポットを取り寄せてうまいところ養生すれば大量のタネが得られ,次世代を楽しめる.ポットはあくまでも「花見本および種親」として買うのであって,ポット苗から育てるために買うわけではない.
非常にリーズナブルであるため,ついつい手を出してしまう人も多い(特にシラタマホシクサ).そもそも売られている時点で枯れていることが多いため,「非常に栽培が難しい草」として扱われがちであるが,ホシクサは非常に丈夫で雑草的な植物である.
 

アクアルートでの入手

メリット
  • 花が咲いておらず,植え付けて楽しめる
  • 大抵の場合,枯れ草を売りつけられることは無い
  • 種数が豊富で海外産も手に入れることができる

デメリット

  • 高い(安くても1株1000円~)
  • 根にダメージを負っており,植え替えのショックで容易に枯れる
  • 直射日光や水上に耐えられず,外に出すには時間をかけて慣らす必要がある
  • 開花までこぎつけられるとは限らず,増殖も遅いため1株に賭けることになる
  • 流通する種が多年草の水生種に偏っている
アクアルートでは幼株が市販されている.当然のことながらアクアリウムでは多年生の水生種が珍重される.ゴイアススター,マットグロッソスター,ミナススターなどは水上より水中の方が容易に大きく育つようだし,ホシクサspクチやMALAYATOOR,ウォーターリーアイズは敢えて水上に挙げるメリットが思いつかない.
一方で大多数のホシクサ類はどちらかといえば陸よりの水陸両用,基本的に1年草から短命な多年草であり,アクアリウムで流通したことはあっても現在はほぼ途絶えたといっていいだろう.
最悪なのは花芽が出ていて、かつ種子がまだ熟していない株で、しかも根が痛んでいる場合である。ゴマシオホシクサ、スイシャホシクサ、オオシラタマホシクサなどの多年草型なら水槽に浮かべておいて出た吸芽を植え付けることで、ゼロから栽培のリスタートを図れる。
 

種子での入手

ホシクサの最も良い入手方法はタネの熟した一株分の乾燥した頭花を入手することだと思う。種がカビていたりしたら問題だが。まずタネがたくさん取れる。一株分の種があれば、10回は軽く失敗できる。そして、誤同定がほぼない。熟した頭花はバラけるので、カップや三角紙などに入っていると助かる。袋はカビやすいし取り出しにくい。
残念ながら上記のような売り方をしている店はないので、ホシクサのハードルを最高に上げていると言えるだろう。ちなみに知る限り、ホシクサ類で種子が乾燥してアウトなものはいない(セタケウムはやったことないけど)。まぁ花をあれだけ空中高くあげる種だから、そりゃそうだろう。
 
さて、入手できたら次は発芽方法である。

発芽方法

ホシクサ類の種子寿命について

種によって大きく異なるようである.意外なことに種子サイズが大きいものの方が種子寿命が短い傾向があるようだ.最も短いものはコシガヤホシクサの1年~2年で,「水草を科学する」の記述がもし本当なら恐ろしいことに一度発芽させられないだけでロストが確定する.絶滅するのも納得である.シラタマホシクサあたりもかなり種子寿命が短いようだ.こうした種は取り蒔きか,年度中に播種すべきである(さらにいえば,こうした温帯性ホシクサには春化を必要とするものもある).他の種はわりと種子寿命が長い(ゴマシオホシクサ園芸品は5年以上たっても発芽するのを確認しているし,ホシクサやSyngonanthus chrysanthusやオオシラタマホシクサ,スターレンジも3年は持つことを確認できている.)
まとめると
・コシガヤホシクサは種子寿命がめちゃ短いらしい
・種子がでかい種は種子寿命が短いのではないかと警戒
 

ホシクサ類の種子分離について

種子がばらけないオオシラタマホシクサやスターレンジ,また種子が微細すぎるSyngonanthus chrysanthusなどではやらなくていいし,種子の比重が軽いシラタマホシクサなどでは著しく困難になる.
ホシクサやクロホシクサといった一般的なホシクサ類では種子は分離しておいた方が発芽確認をし易く,カビに悩まされにくい.
こうした種では種子の分離方法が2通りある.
1.水中で分離する方法
発芽させる直前にカップに果実を入れ,水を入れてくるくると内部を円形に攪拌すると遠心力の要領で真ん中に種子だけ出てくるので,これを分離する.この方法では吸水してしまうため,発芽させる直前に行う必要がある.一方でシラタマホシクサなどの種子比重が軽く分離しにくい種にも使え,また分離効率も良い.
2.陸上で分離する方法
大量に果実がある場合に用いている.まず種子をカップ内でほぐし,シャカシャカ振る.すると下の方に重い種子だけ溜まってくる.表面に花の他パーツが出てくるので,これを他のカップに移す.これを繰り返すと純度が高く,よく熟して種子重量が大きい種子を選択的に得られる.
 

ホシクサ類の発芽について

タネを入手できたら次は播く。
発芽の方法には土に直接播く直播き法と、発芽を確認してから播く方法がある。私は従来前者を使ってきたが、今では後者を強くお勧めする。特にソイルを使う場合には後者が良い。
ホシクサは光発芽種子であり、暗黒下では発芽率が極端に落ちる.また,密集した状態では発芽率が悪く,何らかの発芽抑制を行っていると思われる.
発芽抑制の打破には温度と水条件以外にも
・十分に明るい光量
・種子周囲の換水
が必要であり,これは他の草本に被覆されない場所に生える野外での生態を考えても納得がいく.一般にホシクサのように微細な種子をもつ植物は光発芽種子であり,湿生・水生植物は種子を水につけておくだけでは発芽抑制が強く発芽してくれないことが多い.
以上のことから,室内でソイルに直接種子をまいた場合
・ソイルの隙間に種子が落ちて光が当たらない
・種子の発芽抑制がウォッシュアウトされにくく,発芽に著しく時間がかかったり,そもそも発芽しない.
といった問題が生じる.さらに発芽しないからと言ってたくさんタネをまくと,余計発芽せずにカビが生えたりする.
 
屋外では用土に直接種子を蒔いても極めて高い発芽率がみられる.これは屋外の直射日光によって発芽抑制が打破・発芽抑制物質が分解されること,屋外で用いる用土は細かく種子が落ちにくいこと,屋外では降雨により意外に水が入れ替わること,屋外では直射日光により腐敗やカビの発生が抑えられることが考えられる.
 
そのため,現在発芽に用いている方法はこのようなものである.
・種子をカップに入れる.できるだけ種子単体を入れるか,頭花が簡単にほぐれないものは頭花ごと入れる
カップには最初多く水を入れ数日間吸水,種子をロストしないよう注意しながら換水し今度は浅く水を張る
・照明はできるだけ強いものを当て続ける
・2週間動きがなかったら2週間以上冷蔵庫に入れてリトライしてみる
(とくにイヌノヒゲの類)
・発芽を確認し次第,傷つけないよう注意しながら植え付ける
種子をプリンカップに入れる.水は最初は多めに入れる.発芽観測をしやすいようにできるだけ種子は分離しておく.
この方法では発芽率が90~100%担保されるため,あまり種子を使う必要がない.失敗したと思っても粘り強くリトライし続けられる利点がある.
 
発芽方法に関しては毎年色々試しては簡易化できないか検討中であり,今後変更が加わると思う.
 

ホシクサ類の栽培方法について

ホシクサは栽培が基本的に極めて容易である.しかし,一部厄介な種が存在する.
屋外栽培,室内栽培でセッティングが大きく異なるため,別個に解説する.
 

屋外栽培

数百株単位での栽培維持が可能である.交雑リスクがあるため近縁種を近接して栽培するのはやめた方がいい(特にニッポンイヌノヒゲは節操なくあちこちの種と交雑するので,栽培を自粛している).
用土に関しては黒土,ミズゴケ+鉄釘,芝の目土+マグァンプK,ハスクチップ,パーライトピートモス等様々なものが使え,湿っていてある程度鉄分があれば何でもいい印象すら受ける.しかし種により好みがある.
・ホシクサ,クロホシクサ,ヒロハイヌノヒゲなどの低湿地性種
→肥料要求が多いため,黒土での管理.ミズゴケ植えでは矮小化してしまう.
黒土にマグァンプKやIB化成を混ぜると大きくなるが,変に枯れるトラブルも増えるので一長一短.黒土単用が正直無難である.水量は種により好みが異なる.たとえばクロホシクサは水中葉を展開するので,全草が水没している浅い条件を好むが,ゴマシオホシクサやヒロハイヌノヒゲは冠水しない方がよい.
シラタマホシクサ,イトイヌノヒゲ
→肥料要求は少なく,また冠水を嫌う湿生植物である.栽培方法は食虫植物に順じ,ミズゴケ+鉄釘+腰水や芝の目土+マグァンプK+腰水などが使える.
食虫植物と同じく,浮舟式栽培箱を用いると水温や水位が安定する.
なおモウセンゴケ類などを同じ鉢に植えて楽しむこともできるが,ホシクサ類を間引き続けないとモウセンゴケ類が負けて駆逐される.
・イヌノヒゲ,ニッポンイヌノヒゲ(栽培中止),ゴマシオホシクサ
これらの種は↑2パターンのどちらでも栽培可能である.
・スターレンジ
根が冠水すると成長が鈍ることが多い.根の通気を好むことからハスクチップで栽培したところ何気に成績が良かった.室内での使用は全然ダメだったが,屋外での栽培用に今後検討してみる.また,直射日光よりやや日陰の方がよさそうだ.
 

屋内栽培

水中栽培に関しては先達が多いため言及を避ける.栄養系ソイルでホシクサ類の周囲に他の草が被らないようにマージンを取り,pHを低め,水質を良好に保てば育つかと思う.ソイルにはパワーサンドを併用した方がよさそうだ.トニナspやケヤリソウのように基本的に水中でしか満足に育たないものもある.
*パワーサンドに植え付け,吸着系ソイルで薄く覆土するのがよさげではないかと思い始めた.今度実験してみようと思う.
 

内水上栽培

腰水~湿生,高湿度で栽培する.光量は種類にもよるが,そこまで強い必要がないようだ.ただやはり,光は強い方ががっしりした株になるし成長も速いように感じる.弱光だとやはりヒョロくなりがちで株の充実も遅い.
水中株を水上にあげる際,いきなり強光だと葉焼けする.水上化は敢えて弱光で行うべきである.
栽培用土はソイルが無難である.
腰水か,単に湿らせておくだけかは種によるようだ.個人的には腰水は浅くして,株本は浸水しないようにした方がトラブルが少ない.
 
肥料は最近は水やりを兼ねて薄めた液肥噴霧にしている.ミカドホシクサやスターレンジの成長促進が著明に認められる.濃くしすぎるのを防ぐため,ハイポネックスのストレートシャワーをさらに10~20倍くらいに薄めている.
 
*ミカドホシクサは肥料要求がべらぼうに多そうなので,植え付けを園芸用土やケト土にしてみている.
ターレンジに関しては特殊なので別記事で書く.
ボリビアンスターに関しては少し条件が違うようなのでもう少し検討してみる.

 

関連リンク

http://risuke77.fc2web.com/archive101.html

↑ sonsi氏による国産ホシクサ類の栽培マニュアル.宮崎県でのホシクサ栽培について詳しくまとめてある.困った時などに何度も穴が開くほど読んだ覚えがあり,大変参考にさせていただいている.