インスタを見ていたらヤマサキ水草園さんのところで2021年のマダガスカルキツネノマゴの花写真が上がっていてびっくりした.昔の水草図鑑(たとえば「世界の水草」など)を見ていると稀に見かける種ではあるが,2021年まで生き残っていたのだということに感動.
本種は山崎美津夫氏がマダガスカル東部で採集した水草で,ヤマサキカズラと同様にある程度の沈水耐性をもつものの抽水のほうが調子がいい類と言われている.
好みにどストライクじゃないか.突き抜けアクアリウムを推していきたい人としては.
ハイグロフィラって流通する多くの種がちゃんと水中葉を展開してしまうから,突き抜けたときに多くの種で水上水中移行部の葉が汚らしくなるんですよ.水面這いまわったりする他の水草に比べりゃだいぶましですが.
でも「水上は逃げ」勢が多かったころにはこの草は辛酸をなめさせられたのではなかろうか.水草とは水辺の草のことで,その草が好む環境で育ててやればいいと思っている人としては,水上の方が向いている草は水上で育てる方が草のためになると思っている.(この辺の話も記事にしていきたい)
ところで,本種はハイグロフィラなのだろうか?山崎氏の「世界の水草 II」によれば,本種はハイグロフィラの一種とされていたが,花の写真をみた印象だと,Justiciaであるようにぱっと見見えた.
花の雰囲気,つき方,草姿はたとえばインドのJusticia gendarrusaにそっくりだ.
山崎氏が産地偽装する可能性はまあまず考えられないので,検索はかなりイージーなはずだ.
まずはそもそもハイグロフィラじゃないんじゃないの?と思ってまずはハイグロフィラの可能性を消していこう.
Plants of the worldとWorldplantsillustration.orgでマダガスカルから知られているハイグロフィラの標本写真及び図は全種入手できるが,どれも小型の草本で,草本というよりは低木に近い風合いすら見せるマダガスカルキツネノマゴとは全くもって似ていない.
さらにいえば,茎頂に花穂を作るという性質自体がハイグロフィラとしてはイレギュラーな部類に入る(そういうハイグロもいるけれど.)
ではJusticiaとHygrophilaの違いとは如何なるものか?と思ったとき,かなり大きな障壁にぶち当たった.
キツネノマゴ科,でかすぎる….
さて,まず亜科のレベルで見ていこう.
まず,Acanthoideaeではフック状の構造物が種子を支持する.残念ながらマダガスカルキツネノマゴの果実は確認できていない….ハイグロフィラもJusticiaもこちらです.
次に,Avicennioideae.こちらはマングローブ植物だ.1属のみだし,除外しておこう.
そしてThunbergioideaeは基本的につる性植物のようだ.まあ除外しても良かろう.2属のみ.
残るはNelsonioideae.スタウロギネとかの類ですね.6属候補が減るぞ.
あれ?基本的には,蔓性でもマングローブの樹木でもなければ,果実を見るだけでNelsonioideaeかAcanthoideaeかを識別出来るって.イージーじゃん?
と思ったら大間違い.ここから地獄が始まるよ.
まず鍾乳体をもたないのはAcantheaeのみ.15属候補が減らせるぞ.
で...残りがですね...
164属あるんですよ…
鍾乳体を持つ→ハイグロフィラということはまずなくて,ないのなら割と絞り込めるが,有った場合もうこりゃ大変ということがわかりました.
もうこれは独立した記事を書くしかありませんね.
ひとまず今言えることは,マダガスカルキツネノマゴの花や草姿はJusticia属の一部ととてもよく似ているよ,ここまでです.
Justicia ankazobensisの写真に雰囲気は似ていますが,まだまだ何とも言えません.さきに出したJusticia gendarrusaとはものすごく似ていて,マダガスカルにも帰化種として確認されているようです.つまり候補から外せない.うーっむ,これは闇に片足突っ込んだぞ….まあ属はJusticiaと仮定して,これ以上の情報が万が一でも得られたならば進めていきましょうか.