水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ピグミーチェーンサジタリアと,ヒメウキオモダカと,ヒメウリカワについて.

基本的にレビューが多い=人気ととらえてこの記事を書いています.

でもピグミーチェーンサジタリアってそんなに人気なのかなあ…?

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通名    ピグミーチェーンサジタリア

別名・略称    ヒメウリカワ,アメリカウリカワ

学名 Sagittaria subulata 

海外流通名 Sagittaria subulata var. pusilla 

分類   オモダカ

分布    北米

この水草について 

小型のオモダカ科ですが,いまいち得体が知れません.水上葉と水中型があり,水中から長い花茎を水面にたなびかせることがあるようで,海外で開花させた人の花写真を見る限り雄蕊は7本のようです.ガクは上向きにカーブしており,タイリンオモダカなどと同じように花後には閉じるようです.浮葉は見たことも聞いたこともありません.このことからはSagittaria subulata complexであることが伺われ,eFlora of North Americaの検索表では別段矛盾なくS. subulataに落ちるようです.

 

 

野生下での生態

汽水域に生息…するのだと思いますが正直いえば種の定義が微妙である以上詳しいことは言えません.採集地も謎です.

私なりの育て方

水槽以外での楽しみ方

栽培経験があまりないので,水上や汽水への順化,浮葉移行の有無確認,開花など,いろいろ試してみなければと思っています.

 

混同されがちな種と見分け方

S. subulataまわりは変異が多く,S. subulata, S. kurziana, S. filiformisの三者をはじめとして様々なものが報告されています.(S. subulata種複合体)この中でS. subulataは基本的には汽水に生息するということですが,少なくとも栽培上では淡水で育てられており疑問です.さらに,この3者はいまだに分枝系統学的な差が認められておらず,生息域と形態に差があるにもかかわらずその境界はあやふやなものです.

ザックリした特徴としてはこんな感じ.

*S. subulata 小型種で~40㎝.主に汽水に生息.浮葉は基本的になく抽水葉を伴う場合もある

*S. filliformis 大型種で~1.7mのテープ状の葉をたなびかせる.主に淡水に生息,浮葉がある.水のない場合に水上化する

*S. kurziana 大型種で~2.5mのテープ状の葉をたなびかせる.フロリダの泉に生息.

・・・・(2.5mの沈水サジタリアだと?珍妙水草タグつけていいなもうコレ…)

 

角野(2021)では富山に帰化したS. subulata(広義,上記3種を含む)に対しヒメウキオモダカの和名を与えていますが,この個体群は記述を読む限りどうもS. subulata complexとはいえピグミーチェーンサジタリアとは違うもののように見えます.富山に帰化したヒメウキオモダカは葉長が~45㎝と大型で基本的には抽水葉を作らず,止水では盛んに浮葉を形成します.「葉の辺縁部が薄くなりレンズ状になる」という点ではS. subulata的で,その他浮葉を作る,大型であるなど多くの特徴がS. filliformis的です.

 

さて,アクアリウムではこういう植物には凄く心当たりがあります.

アクアリウムで「サジタリア ナタンス」として流通するもの(たとえば,オリエンタルのカタログに載っていたり,国内でも時々生産されています)です.バリスネリアのような葉を伸ばし,丸い浮葉を出します.さらに,「ナタンス」として流通するものとほぼ同様の浮葉を作るものが「スブラタ」としても過去に流通した経緯があります(たとえば728種図鑑).

(これらは↑に記したザックリとした特徴ではS. filliformisに該当しますが,流通名はスブラタとナタンスです・・・.)

その他,「サジタリア テレス」もバリスネリア並みに長いサジタリアで,その類かもしれません.

 

 

恐らくピグミーチェーンサジタリアと同じものが「ヒメウリカワ」として園芸では流通しており,一部のアクアリウム書籍ではヒメウリカワ=ピグミーチェーンサジタリアと書かれています.(花の咲いていない「ヒメウリカワ」のポットを見たことがあるのですが実際同じだと思います.現在は石田精華園の写真が見られるはずです)

 

「ヒメウリカワ」は見たことがあるのでヒメウリカワ=ピグミーチェーンサジタリアということは知っていたのですが,「ヒメオモダカ」と名前も用途も紛らわしいため,てっきり「ヒメウリカワ」からチャームの写真にある「ヒメオモダカ」の花が咲くのだと思い込んでしまっていました.

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しかしこの「ヒメオモダカ」に関しては角野(2021)でナガバオモダカの矮小品ではないかと指摘されていたためチャームの写真を再度確認してみましたが確かにこれはナガバオモダカの矮小品のようでした.となると「ヒメウリカワ」もナガバなのでは?確かにピグミーチェーンサジタリアの水中葉はそんなに長くないのでまるで矮小化したナガバオモダカみたいだ…と思ってしまっていたわけです.

ishidaseikaen.com

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しかし今回この記事を書くにあたって,改めて「ヒメウリカワ」の花を再確認してみるとああ,これは調べると出てくるピグミーチェーンサジタリアの雄花そっくりの7つの雄蕊をもつものですね.

そして面白いことに,というかこれは前から知ってはいたのですが,ヒメウリカワは浮葉は基本的に出さず,抽水葉を出してきます.

(たとえば「はじめてのアクアガーデニング」49頁,先のみんなの趣味の園芸の背景にも抽水葉の葉柄が映り込んでいる)

はじめてのアクアガーデニング: はじめよう水と植物のある暮らし - Google ブックス

うーん.....

こういうのを含めたSagittaria subulata complex全体をヒメ「ウキ」オモダカと呼ぶのはすごく抵抗があるんですよね.ヒメウキオモダカと呼ぶ対象はS. filliformis的な浮葉をよく出す個体群だけのほうがしっくりくるのではないかなあ,などと思いました.

 

角野康郎. (2021). 富山県高岡市の湧水に野生化した外来水生植物ヒメウキオモダカ (新称) Sagittaria subulata (L.) Buch.(オモダカ科). 植物地理・分類研究69(2), 225.

http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=1&taxon_id=129016#KEY-1-6