水草において硬度を下げた方がいいというのはもはや通説になっているのですが,その理由について予想を立ててみます.
「KHが高いのがよくない」は特によく言われていますし,体感的にもそう感じます.これに関して今回はCa2+が悪さをしていると仮定します.
まず水草のCa毒性(?)について.
植物においてはAl毒性は有名ですが,Ca毒性はあまり知られていません.
つまり,そもそも水草においてだけCa毒性が非常に問題になるというのが変な話です.
しかし.
水草においては全草が水中にあるため,Ca2+が生長点を外から直撃するという点において陸上職物と大きな違いがあるのではないか?という予想を立てました.
Caは当然ながら空中を飛んでいないため,陸上植物ではもっぱら根から吸収して草体に配分されます.生長点付近では需要に対して不足気味になりやすく陸上植物ではしばしば頂芽にCa不足による症状を呈します.
植物の成長ではプロトンポンプによる細胞壁のpH低下による細胞壁の強度低下,および細胞体積の増大が同時におきますが,水中の高pH, 高Ca環境では2つの問題がすぐに思いつきます.
・高pHのため外界に接する細胞の細胞壁の強度低下が起きなくなる
・高Caのためペクチンが重合し細胞壁の強度低下が起きにくくなる
さて.pH,Caともに細胞壁の強度低下を阻害することにより成長を抑制するのでは?ということです.普通はCaが不足するはずの頂芽付近にまで均等にCaが勝手に配分されるのが問題になるだろうというのは容易に想像がつきます.
さらに,水中への適応が浅い水草では陸上植物と同様にCaが根から吸収されるのが前提となるはずです.つまり,水中への適応が浅い水草ほど低pH, 低KHの環境を好むという推測ができます.ここで水田雑草のような水中への適応が浅い水草の栽培をみていくと,日本に生えているにもかかわらず南米水草並みかそれ以上といっていいほどpHにシビアな管理を要求されることがしばしばあります.
さて,Caが生長点周囲を漂っていることが問題であるということならば,底にCaが沈んでいることは特に問題にならないはずです.水上では水やりが硬水でも育ちますし.
さて…
これを前提として硫酸と塩酸の混合物であるテトラpH/KHマイナスを考えてみると…
CaSO4が沈殿し水中のCa濃度が下がりますが,一方でCaCl2は易溶で,しかもアルカリ性の塩であるため水中のCaをすべて落とすことはできません.(全部硫酸にしないのはpHを下げつつKH降下をマイルドにするためでは?)沈殿したCaSO4は根から吸収されるのか?正直よくわかりません.
で,よくある「魚が多い水槽でpHが下がってるのに水草は全然ダメ」という場合を次に考えます.ここではNO3-及びNO2-が主要な陰イオンですが,亜硝酸Ca,硝酸Caともに極めて溶解度が高く,水中のCa量を減らすのには寄与しないと思われます.(むしろCaを溶出させている疑惑すらある)
余談ですが,NO3ーは強い酸化剤なので,pHが下がっている状況で藍藻が発生しにくいといわれるのはpH云々よりもこれが理由かもです.(藍藻駆除用のアンチグリーンやオキシドールにしても酸化剤として入れてますし)
以上はあくまで予想ですのであしからず.