水草図鑑、第二弾はクロホシクサです。
本種はホシクサブーム時には過大評価を受けていたように感じます。しかし育てる分にはまぁ…ホシクサと五十歩百歩だと思いますよ。わざわざ乱獲するような草ではないです。誰か育てていれば無限に増えますし。
基本データ
和名 クロホシクサ
学名 Eriocaulon parvum
生活形 浅水深での沈水
水上でも耐えるが、浅い水中の方が好き
分布 東アジア
野外での遭遇頻度 きわめて珍しい
ショップでの遭遇頻度 きわめて珍しい
栽培 やや難(室内)
きわめて容易(屋外)
pH 5〜6.5
底床 ソイル、黒土、ケト土、田土
ミズゴケは向かない
適した水深 10cm程度 透明度あれば50cmくらいまで可
CO2添加 必要
ホシクサとよく似たレア水草です。しかしこれでもホシクサ属としてはかなり勝ち組です。「1箇所しか現存しない」とか「少なすぎて存在の真贋がよくわからない」とかが溢れるのがホシクサの世界…。各県の最も保存状態の良い低湿地に1箇所くらいは残っているというのはかなりの勝ち組なのです。
本種はやや貧栄養にも耐えるので、保護対象にされがちな安定した湿地でもギリギリ耐えることができます。しかしジリ貧になることも多いようです。水田は環境こそいいものの農薬に弱いのと、ホシクサに比べて水位変化に脆弱なので中干しでも影響を喰らうのでしょう。
これだけ珍しい水草の野外採集品が高額で取引されていたというのは不健全な状況でしょう。しかもこいつもまた、増やそうとすれば無限に殖えるのです。栽培品を売るならともかく…。
まぁクロホシクサが高額で取引される時代も終わり(というかホシクサ類が売られなくなりました)、ちょっと安心しています。
本種は実に美しい水草です。無印ホシクサとどう違うの?と聞かれそうですが、私としては最大の違いは水中への適応度だと答えたいところです。無印ホシクサは水中葉と水上葉の区別が殆どなく、水位変動には強いのですがあまり深い水深では見られません。一方でクロホシクサの水中葉は細く薄くなり、水中でのガス交換に有利です。
先日見に行ってきた無印ホシクサとクロホシクサの混成産地では無印ホシクサが水深ゼロから10cm程度まで、クロホシクサは水深10から60cmまでに群生していました。
サイズもだいぶ違います。無印ホシクサもまぁ大きくなりますが、クロホシクサのほうがだいぶ大型です。混成産地では無印ホシクサは直径5から10cmで大きい方でしたが、クロホシクサは直径30cmを超えるものも多く見られました。
なお同定に関しては花や水中葉の質感だけでなく、タネの色とサイズを見た方がいいと思います。濡れていると花の構造は訳がわからないので、タネを見ましょう。
この性質は栽培でも問題になってきます。
水中葉を展開したクロホシクサは干からびると死にかねません。また水中葉は物理的刺激にデリケートで、折れるとそこから腐ることがよくあります。デリケートな運搬が必要ですので、タネで動かした方がいいでしょう。とくに子株だと歩留まり半数とかになります。
栽培自体はホシクサに準じますが、水深は少し浅めに取っておくか、逆に水がたまらないようにするかのどちらかにしましょう。こういう点も、ホシクサとは似て非なる植物です。ホシクサは両生植物ですが、クロホシクサは水草といった方が近い気がします。←学術的に正しい用語の使い方をしているわけではありませんが、イメージまでに。
用土は屋外では黒土が基本です。全日照雨ざらし、水深5cmで乾かないように管理です。深くするとトラブル多発、浅くすると乾いてダメージ喰らいます。
屋内でアマゾニアに植えるとでかくなります。屋外でIB化成入れると大きくなりますが枯れる株も増えるので注意。ミズゴケで湿地環境でも矮小化しますが育ちます。
いろいろ言われますが基本的に本種も一年草です!他の一年草水草に比べてタネを取るのが簡単で発芽も容易なので、年魚の感覚で挑みましょう。あっという間に巨大化してあっという間に咲いて枯れます。その感覚が好きです。気まぐれに古株から子株を吹いて多年化しますがあまり期待しないで良いかと…。
本種もホシクサ並みに繁殖力が強いので、屋外では育てるより間引きの方が忙しいです。
水槽でもポツポツ生えてくることがあり、育てていて楽しいです。