水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ホシクサ Eriocaulon cinereum

水草図鑑シリーズを始めます。(唐突)

第一回は

ホシクサ Eriocaulon cinereum です。

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私が水草にハマり始めた頃、世間ではホシクサブームなるものが起きていました。当時はネットを漁ることもまだそこまで無かったのですが、今になって当時の2chを見返してみるとまぁ凄いですね。当時は本当にブームだったのだなぁと思わされます。乱獲が問題になるような時代だったようで、今の私がもし当時にいたならば、ホシクサは避けて通ったことでしょう。

さて、2021年にもなってホシクサを集める物好きは殆どいないと言っていいと思います。そのため、正直めったに売られていませんし、個人が趣味目的に採集するかぎりではそこまでの採集圧はかからないと思います。

売られていると言っても栽培株がポツポツ、ヤフオクに出るくらいでしょうか。もう無印ホシクサを野どりして売ろうとする人もいません。


 さて今回は、無印ホシクサEriocaulon cinereumについて語ろうと思います。


基本データ

和名 ホシクサ

学名 Eriocaulon cinereum

生活形 浅水深での沈水

水上でも耐えるが、浅い水中の方が好き

分布 北米とヨーロッパを除く世界中の温帯から熱帯(最近では北米とヨーロッパにも移入分布あり)

野外での遭遇頻度 ふつう〜やや珍しい

ショップでの遭遇頻度 珍しい

栽培 難(室内)

   きわめて容易(屋外)

pH 5〜6.5

底床 ソイル、黒土、ケト土、田土 

ミズゴケは向かない

適した水深 5cm±5

CO2添加 深いなら必要


本種は世界で最も分布の広いホシクサ属で、世界中どこに行っても基本的に一年草です。しかしながら花芽がつかない限りわりと長持ちすることもあり、特に南方の個体群では花を咲かせることを忘れかけているものもいるようです。

南米には分布しないとされていましたが、これは嘘です。南米に分布するとされていた別種が本種のシノニムになったので、南米でも最普通種であります。(何故北米にいない?)

本種は基本的に浅水深のやや肥沃で一時的な水域を好み、乾季と雨季がある平野や、氾濫原の環境によく適応しているものと思われます。日本では殆どの場合水田で見られ、野生環境で見かけることはあまりありません。そのため稲作とともにやってきた史前帰化種とする説もあります。しかし自然度の高い環境で見かけることもあることにはありますので、私は史前帰化種であるという見方にはあまり賛同しません。本種が好むような平地の氾濫原がひとつ残らず水田か宅地になってしまっただけではないでしょうか。本種は保護されているような環境の安定した湿地では生きていけません。暴れ川によって毎年掘り返されるようなところのパイオニア植物だと思います。


日本においては同定は極めて容易です。

水田に生える深緑色でウニ型の水草はほぼ本種だけです。クロホシクサはもっと色が淡いことが多いですが、困ったらタネの色とサイズでわかりやすいです。クロホシクサは黄色でやや大きい、ホシクサは茶色で極限まで細かいです。

探すのは割と簡単だと私は思っています。いる地域にはよくいるので、広範囲の水田を浅く広く廻っていればいずれ出会えるでしょう。


栽培は極めて容易です。

屋外の全日照が当たるところ(一日中かんかん照りがちょうどいい)にトロ船を置き、黒土で満たして水を数センチ張り、種を撒くor若い株を土ごと植え付ければよく育ちます。寿命が短いことから葉焼けした場合のダメージ回復が遅いので、屋内株からの馴化は困難です。また、採集時に一旦泥を落とすと根に大ダメージを与えるので根についた泥ごと持ち帰って植えましょう。

秋にタネを取ってくるのが手っ取り早いです。本種のタネは適当に乾燥保存して春蒔きでOK.

注意すべきこととして、本種は一株から1サイクルで数百倍に増えかねない植物です。放っておくと過密になって本来の美しさを堪能できないばかりか、全滅することすらあります。種子は適度に間引いた方がいいですし、前年使った土はかき混ぜてシャッフルした方がいいです。それだけで発芽してくる数がだいぶ下がってくれます。発芽は7月ごろになることもあり遅いので、発芽しないからと蒔きすぎないことも肝要です。


水槽栽培は生育初期のできるだけ小さい株から始めます。屋内で播種するのだという人が多いですが、タイミングを見計らえば屋外栽培からでも可です。

私は栄養増殖に頼るよりライフサイクルを回すことこそ栽培だと感じているので、花が咲いたらタネを取って、枯れる頃になったら捨てます。グングン育って花をつけて枯れる感じはノソブランキウスとかカブトエビに近いですね。

トロピカの組織培養のやつなどは花を咲かせた後脇から子株が出てくるようですね。クロホシクサやゴマシオホシクサでよくみるのですが、ホシクサにもこういう奴が時々います。


本種は全日照を好む草ですので基本的には光は強い方がいいと思います。CO2はなくても意外に大丈夫ですが、あった方がいいでしょう。


さいごに。

海外産の様々なウニ型ホシクサ、実はみんな本種のバリエーションかもしれません。だとすれば容易に交雑するはずなのでくれぐれもお気をつけて。


ではでは。