水草オタクの水草がたり.

水草を探して調べるブログです.素人ながら頑張ります.

ケヤリソウのはなし1.同じようで同じでない,ちょっと同じなケヤリソウ

トニナと並んで有名な南米水草といえるケヤリソウについてはなそうと思います.とはいっても私はケヤリソウとデカケヤリしか保有していないので,主に背景事情についてです.

ケヤリソウは奇怪な見た目をした水草です.茎は直径数ミリでY字状に分岐しながら伸び,基本的に脇芽を出しません.成長は早く,調子に乗るとあっという間に水槽が占拠されます.ホシクサ類なのでとうぜん(?)pHは低い必要があり,またバクテリア環境がよい水槽でないと育たない印象があります.

そんなケヤリソウですが,その実態は奇怪なホシクサで,日本で有名なものの中ではクロホシクサに近縁です.しかしこの類縁関係に関しては少なくとも一部はそうですが,たぶんそうでないものもあります.(クロホシクサは水深が深いと茎が数センチ伸びてくるので,ちょっとケヤリソウとの関連を感じますね)

ケヤリソウの構造は「株別れするロゼットが滅茶苦茶間延びして細くなった形」だと考えるとわかりやすいかもしれません.二分岐するのは株別れの痕跡だと思います.

 

さて.

ケヤリソウはトニナと同列に扱われ,なんとなく「南米水草」であると思われています.しかし,たしかに当初の入荷および現在流通が多い個体群は南米アラグアイア川産であるものの,似たような水草は世界各地に分布します.アジアやオーストラリアの「セタケウム」,アフリカの「ギニアンケヤリ」などです.それらしき種は世界中の温暖な地域で発見されており,日本にも分布していました.それが「タカノホシクサ」です.

 

この手のケヤリソウ類はかつて膨大な数の学名がつけられ細分化されていましたが,現在では殆どがEriocaulon setaceum一種にまとめて扱われています.(シノニムリストはあとでつくりたいと思っています.)ただしここ数年で南米から2種が新たに記載されているので,また細分化されるかもしれません.

これらケヤリソウ類はどうやら…(研究が進んでいないのでまだはっきりとは言えませんが)「違うグループのホシクサが独自に同じ環境に適応した結果,互いに見分けがつかないほどそっくりになってしまった」可能性があります.少なくとも最近記載されたうちの一種はクロホシクサとは花が全く似ていません.

ケヤリソウに比べて茎がのびていない”マットグロッソスター様の植物”に至っては,ホシクサ属ですらないにもかかわらずほとんど見分けがつかないほどよく似ている種が発生しているのですが,これに関してはマットグロッソスターをよく観察してから書きたいです.

 

この仲間を語るにあたって,欠かすことができないのが「日本で唯一絶滅した水草」タカノホシクサでしょう.

多々良沼に戦前ごろまで分布していたタカノホシクサは現状ではEriocaulon setaceumとする説が有力で,遺伝子的にもE. setaceumの一員であるということが知られつつあります.このホシクサは種子から発芽した後急激に成長し,あまり分岐せず高さ数十センチで水面に到達すると花を咲かせていたようです.奇怪な見た目からコレクターの採集圧で絶滅したという説もあります.しかし,絶滅は第二次世界大戦付近であり,原因は正直よくわからないのではないかと個人的には思います.そもそもホシクサ類は種子産生数がおおく,タカノホシクサも例にもれないようです.ある博物館で成熟した株の標本を見せてもらいましたが,膨大な数の種子がくっついていました.種子産生数が少ない”イヌノヒゲ類”というか合生咢節のホシクサとは繁殖力が段違いであったと思います.しかしその生態から,食害や水位上昇,水質汚濁には極めて敏感であったことでしょう.ひとまずいえることは,このホシクサはたぶんE. setaceumの北限に近い飛び地分布であったということです.

 

E. setaceumは基本的に一年草で,水面に到達すると花が咲いて枯れてしまう…らしいです(そんなE. setaceumに会いたいです….).実際文献に記述があるものは「水面に到達すると大量の花茎をのばし,大量の種子をつける」タイプばかりです.カンボジアやキンバリーがそうなのかな?

カンボジアは実物を見たことがありますが,茎が太く葉はきわめて細い糸状で,これはもう最高の水草だと思いました.入手の機会に恵まれたらぜひとも育てたい水草です.花を咲かせるのであれば花も鑑賞して,実生チャレンジしたいですね.果たして他のホシクサと同じような管理で実生できるのか?発芽からどのように育ってああなるのか?興味が尽きません.そしていつかは,「失われた多々良沼ビオトープを作りたい.

 

しかし,水槽でいわゆるケヤリソウやデカケヤリを育てていてよく水面に到達しますが,これが咲かない…全然咲かないのです.咲いてくれよと思ってもうすぐ丸一年がたちますが,佃煮になるだけ.屋外栽培してもダメでした.

さらに葉幅が若干太く,葉の密度もあまり高くならない印象です.

葉を一枚とって拡大してみると,ケヤリソウとデカケヤリは少し構造が違うようです.恐らく...まだ類推にすぎませんが…こうした南米のセタケウム様植物にもいくつかあるようです.

これらとは別に,南米にも一年草のセタケウム様植物がいるようです.

 

こいつら「南米のケヤリソウ」はそのため,別種で何種類もいるのではないかという気がします...というか実際そのようです.つづく.